TPIは「Physical Screen」と呼び、スイングに必要な可動域・安定性・バランスが足りているか、足りない所がどのスイングの特徴に出やすいかを確かめます。クラブは振らず、紙の試験でも医学的な診断でもありません。16項目のやり方と合格の目安を、TPIの公式ページ(2026年9月28日確認)に沿って1つずつまとめました。
この記事は、六本木の完全個室パーソナルジム Disport World で、TPI認定(Fitness 2/Power 2)と日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)の岡本隼人が、ゴルファーの身体を実際に測ってきた経験から書いています。扱うのはスイングの技術ではなく、身体の側の原因です。ゴルフの身体づくり(記事一覧・体験)→
・TPI診断=TPIの「16項目の身体スクリーン(sixteen-part screen)」。スイングの上手い下手ではなく、スイングを支える身体の可動域・安定性・バランスを測る。医学的な診断ではない
・数値の目安があるのは座位体幹回旋(左右45度超)、下半身回旋(60度以上)、片脚立ち(閉眼25秒)など一部。多くは、ほかの部位で補わずに(代償なく)動けるかで見る
・結果が示すのはスイング特性の「出やすさ」。ゴルファー36名の研究では、前屈とアーリーエクステンションなど一部の組み合わせに関連があった(Gulgin ら、2014)
・20研究のメタ解析では、柔軟性とバランスはヘッドスピードと有意な関連がなかった(Brennan ら、2024)。TPI診断は飛距離の予言ではなく、「今どこが動かないか」の地図
TPI診断とは?——TPIが定めた16項目の身体スクリーン
TPI診断とは、TPIが定めた16項目の動きのテストで、ゴルファーの身体に「スイングを制限している所」がないかを確かめる評価です。TPIは専門家向け認定講座の紹介で、この16項目を「sixteen-part screen(16項目のスクリーン)」と呼び、シンプルで短時間に行え、TPIのすべての上位講座の土台になるものだと説明しています。日本では「TPIスクリーニング」「TPI評価」とも呼ばれます。
TPI(Titleist Performance Institute)は2003年に始まった、身体の働きとゴルフスイングの関係を扱う教育機関で、米カリフォルニア州オーシャンサイドにあります(創設者は Greg Rose 氏と Dave Phillips 氏)。成り立ちや考え方はTPIとはのページにまとめています。
考え方の土台は、TPIが「Body-Swing Connection(身体とスイングのつながり)」と呼ぶものです。正しい振り方は1つではないが、その人にとって効率のよい振り方は「その人の身体ができること」で決まる。だからまず測る(スクリーンする)、というのがTPIの立場です。16項目の身体テストは、そのうち「身体の側」を受け持つ部分です。
TPIの公式サイトは、世界ランキング上位30人のうち24人がTPI認定の専門家の助言を受けていると公表しています(2026年9月28日確認。集計の時点は記載なし)。どの選手がどう関わっているかは、PGAツアー選手とTPIで出典つきで紹介しています。
16項目の一覧——何を見て、どこまでできれば合格か
16項目のうち、合格の目安が数値で示されているのは一部で、多くは「ほかの部位で補わずに動けるか」で判定します。公式ページは英語名のアルファベット順ですが、ここでは部位ごとに並べました。右端の列は、TPIの公式ページ(テストとスイング特性の解説)の記述から整理したつながりです(特性の意味はスイングエラー14種の解説で)。
| No. | テスト(公式名) | 見るもの | 合格の目安(TPI公式) | つながりやすいスイング特性 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 骨盤前後傾(Pelvic Tilt) | 骨盤だけを前後に傾けられるか | 前傾・後傾とも、脚と上体をほぼ動かさずに動く(角度の基準なし) | S・Cポスチャー、ロスオブポスチャー |
| 2 | 骨盤回旋(Pelvic Rotation) | 上半身を止めて骨盤だけ回せるか | 肩が動かず、骨盤が横にずれずに回る | ダウンスイングの順序の乱れ、オーバーザトップ |
| 3 | 胸郭回旋(Torso Rotation) | 下半身を止めて胸と肩だけ回せるか | 腰から下が動かず、反りや横倒れなしに回る | バックスイングの捻転不足、スウェー、リバーススパインアングル |
| 4 | 座位体幹回旋(Seated Trunk Rotation) | 座って下半身を止めたときの背骨の回旋 | 左右とも45度を超える | ロスオブポスチャー、フラットショルダープレーン |
| 5 | 下半身回旋(Lower Quarter Rotation) | 片脚に乗ったまま骨盤を回せるか | どちらの脚でも骨盤が60度以上回る | スウェー、スライド、リバーススパインアングル |
| 6 | オーバーヘッドディープスクワット | クラブを頭上に保って深くしゃがめるか | 胴体がすねと平行以上、太ももが水平より下、膝とクラブが足の上、つま先が正面 | アーリーエクステンション、ロスオブポスチャー、フラットショルダープレーン |
| 7 | 前屈(Toe Touch) | 膝を伸ばして股関節から曲げられるか | 足をそろえ、膝を曲げずに指先がつま先に届く | ロスオブポスチャー、アーリーエクステンション |
| 8 | ブリッジ脚伸展(Bridge with Leg Extension) | お尻で骨盤を支えられるか | 片膝を伸ばして10秒、骨盤が落ちず震えず、もも裏や腰がつらない(左右) | ロスオブポスチャー、フラットショルダープレーン、アーリーエクステンション |
| 9 | 片脚立ち(Single Leg Balance) | 目を閉じて片脚で立てるか | 左右とも25秒(25秒で打ち切り) | テストページに記載なし |
| 10 | 頸椎回旋(Cervical Rotation) | 首を回して、あごを鎖骨へ下ろせるか | 左右とも、口を閉じ痛みなく、あごが鎖骨の中央に届く | バックスイングの回転不足(認定トレーナーの記事から) |
| 11 | 90/90テスト | 肩の外旋と、構えでの肩甲骨の安定 | 合否ではなく、前腕が背骨の線より後ろ・平行・手前の3段階で記録し、立位と構えを比べる | フライングエルボー、チキンウィング、ロスオブポスチャー |
| 12 | 広背筋(Lat Test) | 腰を反らさずに腕を頭上へ上げられるか | 壁に届く(169度超)から鼻より下(120度未満)までの4段階で記録 | ロスオブポスチャー、リバーススパインアングル、オーバーザトップ |
| 13 | 前腕回旋(Forearm Rotation) | 前腕を外・内にひねる範囲 | 角度の基準なし | クラブのセットとリリース |
| 14 | 手首の伸展(Wrist Extension) | 手首を甲側へ反らせる範囲 | 角度の基準なし | キャスティング(右打ちの右手首) |
| 15 | 手首の屈曲(Wrist Flexion) | 手首を手のひら側へ曲げる範囲 | 角度の基準なし | スクーピング(右打ちの左手首) |
| 16 | リストヒンジ(Wrist Hinge:橈屈・尺屈) | 手首を親指側・小指側へ折る範囲 | 角度の基準なし | リリース(キャスティング・スクーピング) |
右打ちで書いているので、左打ちの方は左右を入れ替えて読んでください。
体幹と骨盤の4項目——上半身と下半身を分けて動かせるか
この4項目は、上と下を別々に動かす力と、背骨の回り方を見ます。座位体幹回旋以外の3つは、5番アイアンで構え、腕を胸の前で組んで手を肩に置いて行います。
骨盤前後傾テスト(Pelvic Tilt)
まず構えたときの腰の形を見ます(反りが強い=Sポスチャー、平ら=Nポスチャー、丸い=Cポスチャー)。そこから骨盤を前に傾けて腰の反りを強め、次に後ろへ傾けて反りを消します。前傾が先なのは、Sポスチャーの人は最初から前に傾いていて、前傾の余地が小さく見えるためです。骨盤だけが動くか、両方向の量、なめらかさを見ます。動きが震える(TPIは「shake and bake」と表現)のは、その筋肉を普段あまり使えていないサインです(CポスチャーとSポスチャー)。
骨盤回旋テスト(Pelvic Rotation)
同じ構えで上半身を止め、ベルトから下だけを左右に回します。肩や頭が動かないか、骨盤が回らずに横へずれていないかを見ます(脚と膝の軽い動きはかまいません)。うまくできないときは、測る人が上半身を支えてもう一度。支えても分けられなければ動く範囲の問題(可動性)、支えると分けられれば止める力の問題(安定性)と切り分けます。ダウンスイングを下半身から始める順序に関わるテストです。
胸郭回旋テスト(Torso Rotation)
今度は下半身を止め、胸と肩だけを左右に回します。腰から下が動かないか、回す代わりに背中を反らしたり横へ倒したりしていないかを見ます。骨盤を支えて測り直せば、可動性か安定性かを切り分けられます。バックスイングの順序と捻転(上下のねじれの差)に関わります。
座位体幹回旋テスト(Seated Trunk Rotation)
膝と足をそろえて背すじを伸ばして座り、クラブを肩に渡して両腕で支えます(腕はW字)。床にクラブ2本で左右45度の目印を作り、胸を左右にできるだけ回して、両側とも45度を超えるかを見ます。TPIは、肩甲骨を前後に動かして回っているように見えても、胸椎は回っていないゴルファーが多いと指摘しています。胸椎が回らないと、腰椎に過剰な回旋の力をかけるか、肩を使いすぎて補うおそれがある、というのがTPIの説明です(ゴルフの胸椎の回し方)。
TPI公式のスクリーンをベースにした16項目を実測し、左右で測る項目は左右それぞれをP(合格)/L(制限あり)/F(不合格)で判定。出やすいスイング特性と根拠のテスト、まず取り組む3項目を、評価レポートとプログラムのPDFでお渡しします。
TPIフィジカルアセスメントの詳細を見る下半身と全身の4項目——股関節で回れるか、深くしゃがめるか
この4項目は、片脚に乗って回る力、深くしゃがむ・股関節から曲がる動き、お尻で骨盤を支える力を見ます。下半身の制限は、横に流れる動きや前傾が起き上がる動きとして出やすいとTPIは説明しています。
下半身回旋テスト(Lower Quarter Rotation)
片脚に全体重を乗せ、反対の膝を曲げてつま先を軸足の横に置きます。両手を腰に当て、軸足のつま先を正面に向けたまま、骨盤を両方向にできるだけ回します。反対の脚でも行い、どちらの脚でも骨盤が60度以上回れば目安を満たします。右打ちのバックスイングは、右脚の上で骨盤を右へ回す動き(右股関節の内旋)で、TPIはこれを、横に流れずに右股関節へ乗り込むための要としています(スウェーの直し方)。
オーバーヘッドディープスクワットテスト(Overhead Deep Squat)
足を肩幅に開いてつま先を正面に向け、クラブを肩幅で握って頭の真上に上げます(シャフトは頭と足の真上)。クラブを高く保ったまま、できるだけ深くしゃがみます。痛み、かかとが浮く、クラブが前に倒れる、バランスを崩す、のどれかが出たら止めます。できないときは腕を胸の前で組んでやり直し、組めばしゃがめるなら胸椎の伸展と肩の可動性、組んでもしゃがめないなら体幹の安定か足首を疑います(足首は、片膝立ちで前の足のかかとを浮かさずに、膝がつま先より前に出るかで確かめる)。TPIは、かかとをつけたまま深くしゃがめない人には、ダウンスイングで下半身がボールに近づき上体が起きる動き(アーリーエクステンション)がよく見られるとしています。
前屈テスト(Toe Touch)
足をそろえ、つま先を正面に向けて立ち、膝を曲げずに股関節から前へ倒れて、指先をつま先に届かせます。届かないときは、片足の下に薄い台(マットなど)を置いてもう一度行い、反対側も同じようにします。片側だけ難しく反対側は楽なら、腰やもも裏の硬さではなく、片側の股関節の制限を疑います。
ブリッジ脚伸展テスト(Bridge with Leg Extension)
仰向けで膝を立て、膝と足をそろえ、腕は胸の上へまっすぐ伸ばします。お尻を持ち上げ、ベルトのラインを床と平行に保ったまま右膝を伸ばし、10秒保ちます。反対側も行います。右脚を伸ばしたときに右の骨盤が下がる、または左脚が震えるなら、左のお尻の筋肉(大殿筋)の安定不足。左のもも裏や腰がつりそうになるなら、お尻の代わりに、もも裏や腰の筋肉が肩代わりしているサインです(TPI)。
バランスと首の2項目——閉眼で片脚立ちできるか、首だけで回せるか
片脚立ちは全身のバランスを、頸椎回旋は首の回旋と横への倒れを見ます。どちらも左右で比べます。
片脚立ちテスト(Single Leg Balance)
背すじを伸ばして立ち、腕は体の横に下ろして体に触れないようにします。片脚を太ももが床と平行になるまで上げ、安定したら目を閉じて、何秒立っていられるかを測ります。軸足の位置を直したら、その時点でバランスを失ったとみなします。反対の脚も行います。25秒以上が正常で、25秒で打ち切ります(TPI)。足首の可動性や感覚の左右差、体幹の安定を浮かび上がらせるテストです。
頸椎回旋テスト(Cervical Rotation)
足をそろえ、つま先を正面に向けて立ちます。頭をできるだけ右に回し、そこからあごを鎖骨の方へ下ろします。肩をすくめたり前に出したりせず、口は閉じたままです。左も同じように行い、左右とも痛みなくあごが鎖骨の中央に触れれば正常です(TPI)。TPIサイト掲載の認定トレーナーの記事は、右打ちのバックスイングでは胸椎が右に45〜50度、首が左に70度以上回る必要があるとし、首の回旋に制限や痛みがあると胸椎の回旋も損なわれると述べています。
肩・腕・手首の6項目——トップとリリースに必要な可動域があるか
残る6項目は、トップで腕とクラブを収める肩の動きと、クラブをためて放す(セットとリリース)ための前腕・手首の動きを見ます。
90/90テスト
まっすぐ立ち、右腕を横に90度上げて肘を90度に曲げます。背中を反らさずに、手を上・後ろへ倒すように肩を外へ回し(外旋)、前腕が背骨の線より手前(多くは90度未満)・平行(90度前後)・後ろまで倒れる(90度超)の3つに分けます。左も行ったら、5番アイアンの構えで同じことをして比べます。構えると回る量が減るなら、肩甲骨が上がったり浮いたりして肩関節の向きが変わっている(肩甲骨の安定不足)と考えます(TPI)。肩の外旋の不足は、トップで右肘が浮くフライングエルボーや、インパクトで左肘が引けるチキンウィングの身体側の要因としてTPIが挙げています。
広背筋テスト(Lat Test)
壁に背をつけ、膝が90度より少し浅い半座りになり、腰を壁に密着させます(足は膝の真下で肩幅)。親指を上に向けて腕を前に伸ばし、両手の間をバレーボール1個分ほど空けて、肘を伸ばしたまま頭上へ上げます。肘が曲がる、腰が壁から離れる、痛みが出る、腕が壁に届く、のどれかで止め、6番アイアンの傾き(腕の角度で約120度)か鼻の高さを目安に4段階で記録し、左右も比べます。広背筋は背中全体に広がって腕につく筋肉で、硬いと腕を上げたとき(バックスイングなど)に背骨の姿勢が崩れやすい、とTPIは説明しています。
前腕回旋テスト(Forearm Rotation)
立って肘を90度に曲げて脇につけ、前腕を前へ向けます。親指を上、手のひら同士を向かい合わせた位置から、前腕を平行に保ったまま親指を外へ倒し(回外)、次に内へ倒して親指を下へ向けます(回内)。回外・回内の両方が、クラブのセットとリリース、パワーを生むのに欠かせない、というのがTPIの説明です。
手首の伸展テスト・屈曲テスト(Wrist Extension/Wrist Flexion)
2つは同じ構えで行う別々のテストです。腕を前へ伸ばして床と平行・胸の高さに保ち、こぶしを握って手のひらを下へ向けます(両手の間は15〜25cm)。腕を伸ばしたまま、こぶしを天井へ反らせるのが伸展、床へ曲げるのが屈曲です。制限があると別の所で補う動きが起き、動きの悪さやけがにつながりうるとTPIは述べています。右打ちなら、右手首の伸展が足りないとダウンスイングでタメを保ちにくく(キャスティング)、クラブを正しくリリースするには左手首の屈曲と右手首の伸展が要る、とTPIのスイング特性の解説にあります。
リストヒンジテスト(Wrist Hinge:橈屈・尺屈)
腕を体の横に下ろして肘を90度に曲げ、こぶしを握って親指を上に向けます。手のひら同士を向かい合わせたまま、肘を動かさずに手首を上下に折ります(親指側へ=橈屈、小指側へ=尺屈)。クラブを正しくリリースし、パワーを生むのに欠かせない動きです(TPI)。肘や手首が痛む方は、ゴルフで肘・手首が痛い原因も参考にしてください。
自宅で試す場合は、痛みや違和感が出る手前で止め、反動をつけないでください。片脚立ち(閉眼)は壁や椅子のそばで行い、ふらついたらすぐ目を開けます。頸椎回旋で、めまい・腕へ広がるしびれ・目の見え方の異常が出たら中止してください。
結果はどう読む?——1項目で決めつけず、組み合わせで読む
TPI診断の結果は、1つの不合格ではなく「どの項目が、どちら側で、どう組み合わさって引っかかったか」で読みます。同じ「できない」でも、動く範囲が足りないのか、止める力が足りないのかで、取り組むことが逆になるからです。TPIの公式ページに沿った流れは次のとおりです。
今の状態と経過を聞く
TPIは、スクリーンにはスイングの動きや体力のほか、今の健康状態とこれまでの経過も含むとしています。痛みがある部位は、測る前に確認します。
16項目を、左右とも同じやり方で測る
左右に分かれる項目は両側を測り、差を記録します。左右差の扱い方はゴルフの左右差はなくすべきかで整理しています。
できなかった項目を切り分ける
回旋は支えて測り直し、スクワットは腕を組んでやり直し、前屈は片足を台に乗せる。条件を変えると、可動性・安定性・片側の股関節など、原因の見当がつきます。
組み合わせて、スイング特性とつなぐ
たとえば前屈とオーバーヘッドディープスクワットの両方でつまずけば、下半身全体の硬さから、構えの前傾が保てないロスオブポスチャーを疑います(TPIの解説は、この2つのテストで評価するとしています)。実際にその特性が出ているかは、スイング映像やコーチの目で確かめます。
計画を作り、同じ手順で測り直す
TPIは、スクリーンの結果からその人だけの計画を作るとしています。変化は、初回と同じ手順で測り直して確かめます。
研究でわかっていること——TPI診断は飛距離の予言ではない
TPIのテストとスイングの関係を調べた研究は、まだ対象が数十名規模のものが中心です。わかっているのは「一部のテストと、一部のスイング特性や成績に関連がある」ところまでで、テストの結果だけでスイングや飛距離を言い当てられる段階ではありません。確認できた一次資料を並べます。
| 研究 | 対象 | わかったこと |
|---|---|---|
| Gulgin ら、2014 | ゴルファー36名(男女、平均25歳) | TPIのスクリーンの12テストと、動画で見た14のスイングフォルトを比較。有意だったのは前屈とアーリーエクステンション、右側のブリッジとアーリーエクステンション・ロスオブポスチャーの3つ。オーバーヘッドディープスクワットか左脚の片脚立ちができない人は、アーリーエクステンション・ロスオブポスチャー・スライドがオッズ比で2〜3倍出やすかった |
| Speariett・Armstrong、2020 | アマチュア11名 | 合計点が高い人ほどハンディキャップが少なく、ヘッドスピードとボール初速が高い相関。構えで行う90/90もヘッドスピードと相関(人数が少なく、因果は示していない) |
| Skibski ら、2025 | 成人ゴルファー24名 | 動的なウォームアップのあとに測ると、15テストの合計点の中央値が33から36に上がった |
| Brennan ら、2024 | 20研究のメタ解析 | ヘッドスピードと関連したのは筋力・跳躍・パワー(最も強いのは跳躍の力積)。柔軟性とバランスは有意な関連なし |
| Vad ら、2004/Smith ら、2018 | 男子プロ42名/19研究の系統的レビュー | プロでは腰痛歴とリード側股関節の内旋不足が相関。一方、4研究をまとめると股関節の内旋・外旋と腰痛の関連は有意でなく、前向きの研究では以前の腰痛が次の腰痛を予測した |
つまりTPI診断は、「このテストでつまずく人には、この特性が出やすい」という傾向を示す道具で、実際のスイングと照らして使うものです。可動域やバランスのテストは飛距離の予言ではありません。ヘッドスピードとの関連が強いのは、跳ぶ・押すといったパワーの指標のほうです(回旋パワーの作り方)。それでも意味があるのは、「今どこが動かないか」を項目名と左右で示し、練習とトレーニングの優先順位を決める材料になるからです。
Disport WorldのTPI測定は、公式の16項目とどう違う?
私たちのTPIフィジカルアセスメントは、TPI公式のスクリーンをベースに、一部を私たち独自の評価項目で代替・補完した16項目の実務構成です。項目名や順序は、公式と完全には一致しません。違いは次のとおりです。
| 項目 | TPI公式の16項目 | 私たちのTPIフィジカルアセスメント |
|---|---|---|
| 構成 | 本記事の16項目(手首まわりは4項目) | 公式をベースに、手首まわりを少ない項目にまとめ、胸椎と肩甲骨まわりを見るリーチ・ロール・リフトなどを加えた16項目(内訳はTPI測定のページに掲載) |
| 判定 | テストごとの基準(45度・60度・25秒、3〜4段階の記録など) | 各項目をP(合格)/L(制限あり)/F(不合格)の3段階で判定。左右に分かれる項目は左右それぞれ |
| 行わないこと | — | スイング動画の撮影・スイング解析、医学的な診断・治療、スコアや飛距離の保証 |
リーチ・ロール・リフトは公式サイトのテスト解説16本(2013年掲載)にはありませんが、スクリーンの構成は改訂されてきており、TPIのスイング特性の解説(ロスオブポスチャー、フラットショルダープレーン)では、座位体幹回旋・広背筋テストと並んで、上半身と下半身の分離を評価するテストとして名前が挙がっています。
現場で見えていること
測ったときによく聞くのが、「回っているつもりだった」という言葉です。座位体幹回旋で肩甲骨を前後に動かして回ったように感じていても、45度の目印に対して胸は回り切っていない。TPIが指摘しているのと同じことが、実際に起きます。感覚と実測のずれは、測って初めて本人にも見えるようになります。
もう1つは、「硬いから動かない」とは限らないことです。骨盤回旋や胸郭回旋で、こちらが上半身や骨盤を支えると分けて回せる方がいます。この場合に要るのはストレッチではなく、止める側を働かせる練習です。支えても動かないなら、先に動く範囲を作ります。
ウォームアップの有無で点数が変わるという報告もあります(Skibski ら、2025)。私たちの再評価では、初回と同じ16項目を同じ手順で測ります。測定中に痛みが出た項目は無理に続けず「痛みあり」と記録し、その部位に負荷をかける種目はプログラムから外します。
よくある質問
TPI診断とは何ですか?
TPI(Titleist Performance Institute)が定めた16項目の身体テストで、スイングに必要な可動域・安定性・バランスが足りているかと、足りない所がどのスイング特性に出やすいかを確かめる評価です。TPIは「Physical Screen」と呼び、医学的な診断ではありません。
TPI診断ではどんなテスト(問題)が出ますか?
紙の問題に答える試験ではなく、16の動きのテストです。骨盤前後傾・骨盤回旋・胸郭回旋・座位体幹回旋、下半身回旋、オーバーヘッドディープスクワット、前屈、ブリッジ脚伸展、閉眼の片脚立ち、頸椎回旋、90/90、広背筋、前腕回旋、手首の伸展・屈曲、リストヒンジを行います(TPI公式サイトのテスト解説16本、2013年掲載)。専門家向けの認定講座(約10時間のオンライン講座)でも、16項目のスクリーンの測り方とスイング特性とのつながりを学びます(TPI公式)。
TPI診断は自分でできますか?
座位体幹回旋(左右45度超)、片脚立ち(閉眼25秒)、前屈(膝を伸ばしてつま先に届く)などは、目安を自分で確かめられます。ただし、腰を反らせる・膝を曲げるといった代償は自分では気づきにくく、できなかったときに可動性か安定性かを切り分けるには、支えたり条件を変えたりして測り直す人が必要です。痛みが出る場合は試さず、先に受診してください。
TPI診断を受けると飛距離は伸びますか?
診断そのものが飛距離を伸ばすわけではなく、伸びる距離も約束できません。20研究のメタ解析では、ヘッドスピードと関連したのは筋力や跳躍・パワーで、柔軟性とバランスには有意な関連がありませんでした(Brennan ら、2024)。TPI診断が示すのは、「今どこが動かないか」です。
TPI診断にはどれくらい時間がかかりますか?
TPIは16項目を「シンプルで短時間に行える」と説明していますが、公式の所要時間は示していません。私たちのTPIフィジカルアセスメントは約90分で、お話を伺い、16項目を測り、結果のご説明とプログラムのご提案まで行います。
腰や首に痛みがあっても受けられますか?
痛みがある場合は、先に整形外科などの医療機関を受診してください。TPI診断は運動機能の確認で、診断や治療ではありません。医師から運動の許可が出ている場合はその範囲で行い、測定中に痛みが出た項目は中止して記録します。
結果はレッスンのコーチに見せてもいいですか?
見せてください。私たちの評価レポートには、16項目の判定に加えて、出やすいスイング特性と根拠になったテストが書いてあり、持ち出しの制限はありません。身体の側の条件をコーチと共有できると、技術の指導と身体の状態がぶつかりにくくなります。
TPI測定のご案内
16項目を読んで「自分はどこで引っかかるのか」が気になったら、まず今の身体を測ってください。私たちのTPIフィジカルアセスメントは、練習の前にどこから手をつけるかを決めるための90分で、レポートとプログラムはその日のうちにお渡しします。
TPI Physical Assessment
16項目のどこで引っかかるか
自分の身体で確かめる90分
TPIの16項目をベースにした私たちの16項目を実測し、どの身体の制限がどのスイング特性と結びつきやすいかを評価レポート+プログラムPDFにまとめてお渡しします。単発で完結し、入会は不要です(6週後の再評価は、会員の方は追加料金なし、会員以外の方は¥19,800・税込)。
まず動いて確かめたい方は、体験トレーニング(90分・¥15,000/毎月先着3名さま¥7,500)もお選びいただけます(先着枠は毎月1日起算、定員後は通常¥15,000)。
ウェア・タオル無料 | 完全個室 | 六本木駅徒歩4分
主な参考(タップで開く)
- Rose G. The 90/90 Test/The Bridge with Leg Extension Test/The Cervical Rotation Test/The Forearm Rotation (Pronation/Supination) Test/The Lat Test/The Lower Quarter Rotation Test/The Overhead Deep Squat Test/The Pelvic Rotation Test/The Pelvic Tilt Test/The Seated Trunk Rotation Test/The Single Leg Balance Test/The Toe Touch Test/The Torso Rotation Test/The Wrist Extension Test/The Wrist Flexion Test/Wrist Hinge Test (Radial-Ulnar Deviation). Titleist Performance Institute(mytpi.com の Screening の16ページ、2013年5月28日掲載、2026年9月28日確認)。
- Titleist Performance Institute. Level 1 Certification(「sixteen-part screen」の記述)/Certification(世界ランキング上位30人のうち24人)/About(2003年・オーシャンサイド・スクリーンの考え方)(mytpi.com、2026年9月28日確認)。
- Titleist Performance Institute. Swing Characteristics(S-Posture/C-Posture/Loss of Posture/Flat Shoulder Plane/Flying Elbow/Early Extension/Over the Top/Sway/Slide/Reverse Spine Angle/Casting/Scooping/Chicken Winging)(mytpi.com、2026年9月28日確認)。
- Gozbekian P. Why Neck Mobility May Be Limiting Your Backswing. Titleist Performance Institute(mytpi.com、掲載日の記載なし、2026年9月28日確認)。
- Glass J. Advanced Screening: How I Use the TPI Screen. Titleist Performance Institute(mytpi.com、掲載日の記載なし、2026年9月28日確認)。
- Gulgin HR, Schulte BC, Crawley AA. Correlation of Titleist Performance Institute (TPI) level 1 movement screens and golf swing faults. J Strength Cond Res. 2014;28(2):534-539.(ゴルファー36名)
- Speariett S, Armstrong R. The relationship between the golf-specific movement screen and golf performance. J Sport Rehabil. 2020;29(4):425-435.(アマチュア11名)
- Skibski A, Vanguri P, Stout JR, Ingersoll CD, Mangum LC. A dynamic warm-up improves Titleist Performance Institute screen scores in adult golfers. J Sport Rehabil. 2025;34(4):449-455.(成人ゴルファー24名)
- Brennan A, Murray A, Mountjoy M, et al. Associations between physical characteristics and golf clubhead speed: a systematic review with meta-analysis. Sports Med. 2024;54(6):1553-1577.(20研究)
- Vad VB, Bhat AL, Basrai D, et al. Low back pain in professional golfers: the role of associated hip and low back range-of-motion deficits. Am J Sports Med. 2004;32(2):494-497.(男子プロ42名)
- Smith JA, Hawkins A, Grant-Beuttler M, Beuttler R, Lee SP. Risk factors associated with low back pain in golfers: a systematic review and meta-analysis. Sports Health. 2018;10(6):538-546.(19研究)


