まず押さえるべき"3本柱"

動作の科学
キネマティック
シークエンス
正しい順番で回転
身体能力
可動性・安定性
筋力・パワー
身体の土台作り
用具・環境
クラブ重量
シャフト特性
最適化された道具

TPIアプローチとは

TPI(Titleist Performance Institute)の考え方では、土台となる身体の機能評価→個別ドリル→負荷設計の順で整えます。世界のトッププロの90%以上が採用する科学的メソッドです。

動作の科学:正しい"順番"で回ると速い

キネマティック・シークエンスとは

ダウンスイングでの最大角速度の伝達順序:

  1. ①骨盤(ヒップ) - 地面反力を受けて最初に回転
  2. ②胸郭(トランク) - 骨盤の回転を受けて加速
  3. ③腕 - 体幹の回転エネルギーを受け取る
  4. ④クラブ - 最後に最大速度に到達

この順番が崩れると、パワーが"逃げる"。骨盤の先行回旋と前脚のブレーシング(踏み込みで止める)で、エネルギーが"鞭"のように増幅されます。

時間 (ms) 角速度 骨盤 胸郭 クラブ 理想的なキネマティック・シークエンス

図1: 理想的なキネマティック・シークエンスの波形 - 骨盤→胸郭→腕→クラブの順で最大角速度に到達

シークエンスを整える3大ドリル

必須ドリル

  1. ステップイン・スイング:バックスイングで後ろ足に体重→切り返しと同時に一歩踏み込んで振る。骨盤先行と前脚ブレーキを学習。
  2. リードレッグ・ブレース:左足(右打ち)1本で素振り。着地で膝が前へ流れないように"止める"感覚を掴む。
  3. メディシンボール・ローテーションスロー:壁に向かって骨盤→胸→腕の順で投げる。回旋の加速と減速を体で覚える。

身体能力:可動性と安定性の"二刀流"

可動性(Mobility)- 回るべき関節が回る

必要な可動域

  • 胸椎の回旋:45°前後ほしい。硬いと腰で代償→痛めやすい&減速
  • 股関節(特に内旋):トップの深い溜め/切り返しでの骨盤先行に必須
  • 足関節背屈:下半身リズムと踏み込みの安定に影響

TPI簡易セルフチェック

  • ペルビックチルト(骨盤前後傾)
  • ペルビックローテーション(骨盤回旋)
  • トー・タッチ(前屈)
  • オーバーヘッド・スクワット

どれかに引っかかる場合、まずは胸椎回旋+股関節内旋のモビリティを最優先で整えます。

安定性(Stability)- 止めるべき所を止める

安定させる部位

  • 体幹(腹圧):回る=捻れる、ではない。腹圧で"筒"を作り、回旋力を逃さない
  • 中臀筋・大臀筋:踏み込み側のブレーキの主役。ここが弱いと膝が前へ流れてエネルギーが消える
  • 肩甲帯の安定:クラブの"鞭"を受け止める土台。過度な力みは逆効果

安定性ドリル

  1. デッドバグ/パロフプレス:体幹の"反回旋耐性"
  2. ヒップエアプレーン:片脚で骨盤を制御
  3. プランク+ローテーション:腹圧を保ったまま回す練習

筋力・パワー:速さを生む"量"と"出し方"

筋力
ベース筋力
8-10回×2-3セット
全身の土台作り
出力の上限を上げる
パワー
RFD向上
3-5回×3-5セット
爆発的な力発揮
速筋の活性化
スピード
神経系刺激
最速×少回数
完全休息
動作速度の向上

ベース筋力(Strength)

基本種目

  • ヒップヒンジ:デッドリフト系(RDL、トラップバー)
  • スクワット系:ゴブレット、フロント、ボックススクワット
  • ローイング:ケーブルロウ、ダンベルロウ
  • プレス:ランドマインプレス、ダンベルプレス

目安:8–10回×2–3セットを楽にこなせる重量まで。関節に不安があればマシン優先でOK。

パワー(RFD:力の立ち上がり)

パワー種目

スイングスピードは"どれだけ早く力を出せるか"が肝。

  • ジャンプ系:ボックスジャンプ、カウンタームーブメントジャンプ、トリプルエクステンション
  • メディボール投擲:ローテーションスロー、ショットプット投げ(軽量2–3kg)、高速で少回数
  • ウエイトの"速さ"トレ:ケトルベルスイング、トラップバー・ジャンプなど中軽量×速く

ベース筋力を最低限作ったら、スピード領域(スピードストレングス)に時間を割くとヘッドスピードが伸びやすい。

スピード練習(神経系):軽い・速い・休む

スピード向上メニュー

  1. オーバースピード素振り:軽い棒/短尺クラブで10~15本を完全休息を挟みながら
  2. 通常クラブでの"最速3本":フォームの細部を捨て、ただ速く。その後に通常ショットで感覚をなじませる
  3. 頻度:週2–3回、合計10–15分で十分。翌日に疲労を残さない量が鉄則
40 42 44 46 48 開始 2週 4週 6週 8週 40.5 41.8 43.2 45.1 47.3 ヘッドスピード向上推移 (m/s) +16.8% 平均向上率

図2: オーバースピード練習による8週間でのヘッドスピード向上データ

用具・打ち方の"制約"を味方に

クラブフィッティングの要点

  • クラブ重量と慣性モーメント:重すぎると加速が鈍る、軽すぎると当たりが悪化。今のHSに±10%の慣性で試打
  • シャフトの硬さ・長さ:切り返しのタイミングと相性を見る。長すぎる=当たらない=結局遅いはよくある落とし穴
  • ティーの高さ/ボール位置:高め・前寄りは上から潰し過ぎを防ぎ、ロフトを使って初速を引き出す

6週間モデルプログラム(オフ〜プレシーズン)

曜日トレーニング内容重点項目
Day1(月)下半身+パワーヒップヒンジ/スクワット→ケトルベルスイング→メディボール高速
Day2(水)可動+スピード胸椎回旋・股内旋→ステップイン素振り→最速スイング3本×3
Day3(金)上半身+体幹ローイング/プレス/パロフプレス→ヒップエアプレーン→ジャンプ少量
毎日5分モビリティ胸椎回旋・股関節内旋・足首背屈

進捗管理

計測:週1回、PRGR等の計測器でHSを3本平均。垂直跳び/メディボール距離も記録し、停滞の原因を切り分ける。

※痛みがある場合は即中止し、負荷を下げるか医療機関で評価を。

Week 1-2 基礎構築期 可動性・安定性 フォーム確認 Week 3-4 筋力強化期 ベース筋力向上 負荷漸増 Week 5-6 スピード特化期 オーバースピード パワー発揮 6週間プログラム進行 負荷: 60-70% 負荷: 70-85% 負荷: 30-50% (高速)

図3: 6週間での段階的負荷設計とトレーニングフォーカスの推移

よくあるつまずきと処方箋

問題パターン

  • 力みで上半身主導になる → ステップイン素振り+前脚ブレーシングを反復
  • 腰が痛む → 胸椎回旋が不足。胸椎モビリティと体幹の反回旋耐性を先に
  • 練習量は多いがHSが伸びない → ベース筋力不足 or 神経系刺激が足りない。8–12回域の筋トレと最速スイングを週2へ
  • 当たらないのが怖くて速く振れない → 短尺・軽量で"当たる最速"を成功体験化→徐々に通常クラブへ戻す

解決のヒント

多くの問題は「順番」「可動性」「筋力不足」のいずれかに起因します。TPIスクリーニングで原因を特定し、個別アプローチで解決します。

栄養・回復も"スピードの部品"

1.2-1.6g
体重1kgあたり
たんぱく質/日
筋合成と回復
7時間+
推奨睡眠時間
RFD低下防止
学習効率向上
3-5g
クレアチン/日
パワー維持
※必要な人のみ

栄養戦略

  • たんぱく質:体重×1.2–1.6g/日(筋合成と回復)
  • 炭水化物:パワー系日は練習前後にしっかり
  • 睡眠:7時間以上。寝不足はRFD低下&学習効率ダウン
  • サプリ(必要な人):クレアチン(3–5g/日)はパワー維持に有用

よくある質問(FAQ)

Q1. どのくらいでヘッドスピードは上がりますか?
A. 適切なプログラムで6-8週間で平均3-5mph、最大で8-10mphの向上が期待できます。個人差はありますが、特に筋力不足の方は初期の伸びが大きいです。
Q2. 年齢的に遅すぎませんか?
A. 60代、70代でもスピード向上は可能です。むしろ加齢による筋力低下を補うトレーニングは飛距離維持に必須です。負荷と頻度を調整すれば安全に実施できます。
Q3. 筋トレすると体が硬くなりませんか?
A. 適切な可動域でのトレーニングとモビリティワークを併用すれば、むしろ柔軟性は向上します。TPIアプローチは可動性と筋力の両立が前提です。
Q4. ラウンド前日にトレーニングしても大丈夫?
A. ラウンド前48時間は高強度トレーニングを避け、軽いモビリティワークとスピード練習(5-10スイング)程度に留めることをお勧めします。
Q5. TPIスクリーニングはどこで受けられますか?
A. 当ジムではTPI Level 2認定トレーナーが60分の評価セッションを提供しています。16項目の身体評価から個別プログラムを作成します。

実績データ:スイングスピード向上効果

0 2 4 6 8 向上値 (mph) +7.5 30代 +6.2 40代 +5.1 50代 +4.2 60代 年代別ヘッドスピード向上実績(8週間) n=15 n=18 n=12 n=5

図4: 当ジム会員様の年代別ヘッドスピード向上実績(n=50、8週間プログラム完走者)

+6.2mph
平均向上値
8週間プログラム
週2回トレーニング
+15ヤード
平均飛距離増
ドライバー
ミート率改善含む
92%
目標達成率
5mph以上向上
完走者ベース

まとめ:3つの要点

スイングスピードアップの核心

  1. 骨盤先行→胸→腕→クラブの順番が速さの土台
  2. 胸椎回旋・股関節内旋の可動を出し、体幹と臀筋で"止める"
  3. ベース筋力を作ったら、軽く速く+十分休むスピード練習でHSを伸ばす

「力むほど遅くなる」のがスイングスピード。動作の順番と身体の条件を整え、"勝手に速い"をつくりましょう。

まずは"次の一歩"だけ

スイングスピード測定+TPI簡易評価(60分)

  • ・胸椎/股関節の可動チェック
  • ・前脚ブレーシング&オーバースピード素振りの体験
  • ・クラブが「勝手に走る」ための3つの宿題をお渡しします

→ 公式LINEで「スピード体験」と送ってください
https://lin.ee/d7Kxs9e

監修・資格・体制(E-E-A-T)

監修
Disport World
(六本木パーソナルジム)
保有資格
TPI Level 2 (Power/Jr.)
NASM-PES / FMS認定
医療連携
看護師在籍
身体評価・健康相談
アクセス良好
六本木一丁目・乃木坂
麻布十番・広尾・赤坂

実績:ゴルファー指導実績500名以上、平均ヘッドスピード向上6.2mph(8週間)

※本記事は一般的なトレーニング情報であり医療行為ではありません。痛みや既往歴のある方は医師の指示のもと実施してください。

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