睡眠は、運動・食事と並ぶ体づくりの土台です。この記事では、厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」と、原典で確かめた研究だけをもとに、運動している大人とスポーツをしている子どもの睡眠の目安と、生活の中での整え方をお伝えします。睡眠の病気の診断や治療を扱う記事ではありません。
この記事は、六本木の完全個室パーソナルジム Disport World で、日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)の代表・岡本隼人が、身体を実際に測ってきた経験から書いています。体験トレーニング(90分)の流れ→
・睡眠時間の目安は、成人は6時間以上(個人差あり)、小学生は9〜12時間、中学・高校生は8〜10時間(厚生労働省 睡眠ガイド2023)
・睡眠を延ばした大学バスケットボール選手11名で、スプリントとシュートの成績が上がった報告がある。睡眠が8時間未満の中高生アスリートは、けがの記録が多かったという調査もある(どちらも小規模)
・成長ホルモンの分泌は「22時〜2時」という時刻より、寝ついてから最初の深い眠りと結びついている
・整える順番は、朝の光 → 日中の運動 → 夕方以降のカフェインと寝酒を控える → 寝る1〜2時間前の入浴
運動している人は、何時間眠ればいい?
成人は6時間以上を目安に、子どもは小学生で9〜12時間、中学・高校生で8〜10時間を参考にします。これは厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」の推奨です。運動量の多い人ほど、まず「時間が足りているか」から確かめてください。
睡眠ガイド2023は、成人について「適正な睡眠時間には個人差があるが、6時間以上を目安として必要な睡眠時間を確保する」としています。あわせて、朝目覚めたときに休まった感じがあるか(睡眠休養感)も大切な目安に挙げています。米国睡眠医学会と睡眠研究学会の共同声明(Watson ら、2015)は、成人は7時間以上を推奨し、若い成人や睡眠不足から回復している人では9時間を超える睡眠が適切な場合もあるとしています。
子どもの目安は、米国睡眠医学会の推奨(Paruthi ら、2016)をもとにしています。成長期は、体を動かす量に加えて、成長そのものにも睡眠が使われる時期です。
| 年代 | 睡眠時間の目安 | 出典 |
|---|---|---|
| 小学生 | 9〜12時間 | 睡眠ガイド2023(米国睡眠医学会の推奨にもとづく) |
| 中学・高校生 | 8〜10時間 | 同上 |
| 成人 | 6時間以上を目安(個人差あり) | 睡眠ガイド2023 |
| 成人(米国の推奨) | 7時間以上 | 米国睡眠医学会・睡眠研究学会(2015) |
| 高齢者 | 寝床にいる時間が8時間以上にならないように | 睡眠ガイド2023 |
数字を見るときは、平日だけでなく1週間の記録で見るのがおすすめです。睡眠ガイド2023は、休日の寝だめでは平日の日中の眠気は完全には解消できないという報告も紹介しています。
睡眠が足りないと、運動にどう響く?
睡眠を延ばすと運動の成績が上がったという試験と、睡眠が短い選手ほどけがの記録が多かったという調査があります。ただし、どちらも人数が少なく、結果がそのまま誰にでも当てはまるわけではありません。
スタンフォード大学の男子バスケットボール選手11名(平均19.4歳)の試験(Mah ら、2011)では、2〜4週間ふだんどおりに過ごしたあと、5〜7週間は毎晩10時間以上ベッドにいることを目標に睡眠を延ばしました。夜の睡眠時間は平均で約111分増え、スプリントのタイムは16.2秒から15.5秒に、フリースローの成功率は9%、3ポイントシュートの成功率は9.2%上がり、日中の眠気も減りました。比べる群のない試験です。
中学・高校(7〜12年生)のアスリート112名を対象にした調査(Milewski ら、2014)では、アンケートと学校のけがの記録を照らし合わせ、1晩の睡眠が平均8時間未満の選手は、8時間以上の選手に比べて、けがをしていた割合が1.7倍(95%信頼区間1.0〜3.0)でした。学年が上がるほど、けがも多くなっていました。過去を振り返った調査で、睡眠不足がけがの原因だと確かめたものではありません。
このため私たちは、睡眠を「けがを防ぐ方法」として約束はしません。練習やトレーニングの量を増やす前に、まず確かめておきたい生活の土台として扱っています。成長期の投げすぎや休養の考え方は野球肘の予防の記事で扱いました。
「22時〜2時のゴールデンタイム」は本当?
「決まった時刻に寝ていないと成長ホルモンが出ない」という意味では、正確ではありません。成長ホルモンの分泌は、時計の時刻よりも、寝ついてから最初に訪れる深い眠り(徐波睡眠)と強く結びついていると説明されています。
睡眠中の成長ホルモンをまとめた総説(Van Cauter・Plat、1996)は、寝始めの数時間と成長ホルモンの分泌の結びつきが、幼いころから大人まで男女ともに見られるとしています。大人では、最もはっきり現れる分泌は、寝ついて間もない最初の徐波睡眠の時期に起こり、男性では睡眠中の分泌の約70%が徐波睡眠と重なっていました。
生活の中で大切なのは、寝る時刻を日によって大きく動かさないことと、寝始めの数時間を途切れさせない環境をつくることです。ただし、子どもは必要な睡眠時間そのものが長いので、「時刻は関係ないから夜ふかしでよい」という意味ではありません。睡眠ガイド2023も、子どもについて夜ふかしの習慣化を避けるよう求めています。
今夜から何を整えればいい?——光・寝室・入浴
睡眠ガイド2023が挙げる環境の基本は、日中に光を浴びること、寝室を暗く静かにすること、寝る1〜2時間前に入浴して体を温めることの3つです。特別な道具より先に、1日の流れの中でこの順に見直します。
朝:起きたら光を浴びる
起きてすぐに朝日の強い光を浴びると体内時計が整い、日中に光を多く浴びるほど夜に寝つきやすくなるとされています。休日も、ふだんと同じ時刻に起きて光を浴びます。
日中:体を動かす
適度な運動の習慣は、良い睡眠に役立つとされています。時間帯の目安は次の節で説明します。
夜:寝室を暗く静かに
スマートフォンやタブレットは寝室に持ち込まず、できるだけ暗く、静かにして眠ります。寝室は暑すぎず寒すぎない温度にします。
寝る1〜2時間前:入浴
湯船やシャワーで体を温めてから寝床に入ると、寝つきやすくなるとされています。
入浴については、17研究の系統的レビュー(うち13研究を統合したメタ解析。Haghayegh ら、2019)があります。40〜42.5℃のシャワーや入浴は、自分で感じる睡眠の質と、寝床にいる時間のうち眠っている割合(睡眠効率)の改善と結びついており、寝る1〜2時間前に行うと、10分ほどでも寝つくまでの時間が短くなっていました。著者らは、研究の数がまだ少ないことも指摘しています。
運動と食事は、睡眠とどうつながる?
睡眠ガイド2023は、適度な運動の習慣は良い睡眠に役立ち、朝食をとって寝る直前の夜食を控えると体内時計が整う、と整理しています。カフェインとお酒は、量と時間帯に気をつけます。睡眠のためのサプリメントや薬に頼る前に、まずこの生活の部分を見直すのが私たちの考えです。
運動では、ウォーキングやジョギングのような有酸素運動が寝つきを良くし、深い睡眠や睡眠時間も増やすと報告されており、ダンベルを使うような筋力トレーニングも睡眠の改善に役立つといわれています(睡眠ガイド2023)。夕方や夜の運動でも、就寝の約2〜4時間前までなら睡眠の改善に有効だったという報告がある一方、寝る直前の激しい運動は控えたほうがよいとされています。平日に時間がとりにくい人の運動の組み方は週末だけ運動する人の記事にまとめています。
| 習慣 | 目安 | 出典 |
|---|---|---|
| 運動 | 日中に行う。夕方・夜なら就寝の約2〜4時間前まで。寝る直前の激しい運動は控える | 睡眠ガイド2023 |
| 食事 | 朝食をとる。寝る直前の夜食は控える | 睡眠ガイド2023 |
| カフェイン | 1日400mg(コーヒー700ml程度)を超えない。夕方以降は控える | 睡眠ガイド2023/Drake ら、2013 |
| お酒 | 晩酌は控えめに。眠るためのお酒(寝酒)はしない | 睡眠ガイド2023 |
カフェインでは、健康な成人12名の試験(Drake ら、2013)で、400mgのカフェインを寝る直前・3時間前・6時間前にとると、いずれも偽薬(プラセボ)に比べて睡眠が乱れ、6時間前にとった場合でも睡眠時間が1時間以上短くなっていました。午後のコーヒーやエナジードリンクの時刻を見直す理由になります。
お酒は、一時的には寝つきを促しても、睡眠の後半の質は大きく悪くなり、飲む量が増えるほど夜中に目が覚める回数が増えると報告されています(睡眠ガイド2023)。会食が多い方のお酒の量の決め方は会食で太る理由の記事と大人のダイエット(会食とお酒)で扱っています。
練習が夜遅い子どもは、どう整える?
練習の日も、起きる時刻と朝食・朝の光をそろえ、帰宅後は画面を見る時間を短くして、学年に合った睡眠時間に近づけます。寝る時刻が遅くなる日があっても、起きる時刻と朝の過ごし方を崩さないことが土台になります。
睡眠ガイド2023によると、思春期のころから寝る・起きるリズムが後ろにずれやすくなり、部活動や勉強、スマートフォンなどで夜遅くまで活動することが増えます。休日に起きる時刻を遅らせると午前中に日光を浴びる時間が減り、さらに夜ふかしになりやすくなります。朝食を抜く習慣も、夜ふかし・朝寝坊を強めるとされています。
同じガイドは、小・中・高校生は1日60分以上体を動かし、画面を見る時間(スクリーンタイム)は1日2時間以下にすることが推奨されていると紹介しています。デジタル機器は寝室に持ち込まず、電源を切って別の部屋に置くことも勧めています。家庭でできるのは、練習から帰ったあとの流れ(食事・入浴・画面を置く時刻)を決めておくことです。お子さまの身体づくりの進め方はジュニアのページにまとめています。
現場で見えていること
私たちの体験トレーニングでは、最初に目標やお悩みとあわせて、食事・お酒・睡眠などの生活習慣をうかがい、そのうえで身体機能チェック(姿勢・関節の動く範囲・筋力の左右差・動きのくせ)を行います。睡眠そのものを測ったり、眠りの不調を判断したりはしません。私たちが一緒に考えるのは、運動をいつ・どのくらい生活に入れるか、という組み立てです。
ジュニアでは、結果をその都度保護者の方に口頭でお伝えし、自宅やチーム練習の前後にできる運動もお教えしています。代表の岡本は、2022年から世田谷区の少年野球チーム「船橋フェニックス」で学年チームの監督も務めています。トレーニングの量や頻度のご相談では、身体機能チェックの結果だけでなく、睡眠時間や朝の過ごし方を含めた生活の様子もあわせて考えます。体の状態は、トレーニングだけで決まらないからです。
眠りの悩みが続くときは?——相談の目安
睡眠時間をとっているのに日中の眠気が強い、いびきや呼吸が止まっていることを指摘されたなど、生活の工夫で変わらない不調は、医療機関に相談してください。睡眠ガイド2023も、睡眠の不調がある場合は生活習慣の改善が大切だとしたうえで、病気が隠れている可能性にも注意するよう求めています。
・睡眠時間をとっていても、日中の強い眠気が続く
・大きないびきや、眠っている間に呼吸が止まっていることを家族などに指摘された
・寝つけない、夜中に何度も目が覚める状態が続き、日中の生活に困っている
・子どもが朝起きられない状態が続き、遅刻や登校の難しさにつながっている
・治療中の病気や飲んでいる薬があり、運動の量や時間帯をどうするか迷っている(主治医に相談してください)
よくある質問
運動している大人は、何時間眠ればいいですか?
厚生労働省の睡眠ガイド2023は、個人差があるとしたうえで、成人は6時間以上を目安にしています。米国睡眠医学会と睡眠研究学会は、成人に7時間以上を推奨しています。時間に加えて、朝起きたときに休まった感じがあるかも確かめてください。
スポーツをしている子どもは、何時間眠ればいいですか?
睡眠ガイド2023は、小学生は9〜12時間、中学・高校生は8〜10時間を参考に睡眠時間を確保するよう勧めています。練習が遅い日も、起きる時刻と朝食をそろえ、帰宅後に画面を見る時間を短くして、この範囲に近づけるのが現実的です。
22時〜2時に寝ないと、成長ホルモンは出ませんか?
そういう仕組みではありません。成長ホルモンの分泌は、時計の時刻より、寝ついてから最初に訪れる深い眠り(徐波睡眠)と強く結びついていると説明されています(Van Cauter・Plat、1996)。ただし、子どもは長い睡眠時間が必要なので、夜ふかしでよいという意味ではありません。
夜にトレーニングをすると、眠れなくなりますか?
睡眠ガイド2023では、夕方や夜の運動でも、就寝の約2〜4時間前までなら睡眠の改善に有効だったという報告が紹介されています。一方で、寝る直前の激しい運動は控えたほうがよいとしています。
眠れないときに、お酒を飲むのはよいですか?
おすすめしません。睡眠ガイド2023は、お酒は一時的に寝つきを促しても睡眠の後半の質を悪くし、飲む量が増えるほど夜中に目が覚める回数が増えると整理しています。眠るためのお酒(寝酒)は控えてください。
体験のご案内
睡眠を整えたら、次は「今の身体がどう動くか」を知ることから始めてください。体験では生活習慣をうかがったうえで身体機能チェックを行い、結果をその場でご説明します。流れは体験トレーニングのページ、お子さまの場合はジュニアのページ、自宅で体力の目安を知りたい方は無料の身体年齢チェック(オンライン・約3分)もどうぞ。
主な参考(タップで開く)
- 健康づくりのための睡眠指針の改訂に関する検討会. 健康づくりのための睡眠ガイド2023(令和6年2月、厚生労働省。推奨事項 成人版・こども版・高齢者版、INFORMATION 1〜3)。PDF
- Paruthi S, Brooks LJ, D'Ambrosio C, et al. Recommended Amount of Sleep for Pediatric Populations: A Consensus Statement of the American Academy of Sleep Medicine. J Clin Sleep Med. 2016;12(6):785-786.(専門家の合意声明)PMC
- Watson NF, Badr MS, Belenky G, et al. Recommended Amount of Sleep for a Healthy Adult: A Joint Consensus Statement of the American Academy of Sleep Medicine and Sleep Research Society. Sleep. 2015;38(6):843-844.(専門家の合意声明)PMC
- Mah CD, Mah KE, Kezirian EJ, Dement WC. The effects of sleep extension on the athletic performance of collegiate basketball players. Sleep. 2011;34(7):943-950.(大学男子バスケットボール選手11名)PMC
- Milewski MD, Skaggs DL, Bishop GA, et al. Chronic lack of sleep is associated with increased sports injuries in adolescent athletes. J Pediatr Orthop. 2014;34(2):129-133.(中高生アスリート112名)PubMed
- Van Cauter E, Plat L. Physiology of growth hormone secretion during sleep. J Pediatr. 1996;128(5 Pt 2):S32-S37.(総説)PubMed
- Haghayegh S, Khoshnevis S, Smolensky MH, Diller KR, Castriotta RJ. Before-bedtime passive body heating by warm shower or bath to improve sleep: A systematic review and meta-analysis. Sleep Med Rev. 2019;46:124-135.(17研究、うち13研究を統合)PubMed
- Drake C, Roehrs T, Shambroom J, Roth T. Caffeine effects on sleep taken 0, 3, or 6 hours before going to bed. J Clin Sleep Med. 2013;9(11):1195-1200.(健康な成人12名)PMC


