2026.03.24 / Updated 2026.05.27
読了 約11分
Contents
「筋トレ=飛ばなくなる」は本当か
研究が示す、筋トレと飛距離の関係
可動域と筋トレの関係
ゴルファーがやるべき筋トレ・避けたい筋トレ
「飛ぶ身体」をつくる筋肉
ゴルフ特異的トレと非特異的トレ
頻度・栄養・回復の考え方
TPIの考え方に基づく個別最適化
よくあるご質問
「筋トレをすると身体が硬くなって飛ばなくなる」——ゴルフの世界で根強い通説です。結論から言えば、飛距離を落とすのは「やり方を誤った筋トレ」であって、筋トレそのものではありません 。むしろ研究では、適切なトレーニングがクラブヘッドスピードと飛距離の向上に関連すると報告されています。鍵は「何を・どう鍛えるか」です。
「筋トレ=飛ばなくなる」は本当か
まず通説の正体を整理します。「筋トレで硬くなって飛ばなくなる」と言われるのは、多くの場合次のようなやり方をした場合 です。
飛距離を落としかねない筋トレの例
可動域を無視して、重量やボリュームだけを追い求める
身体を大きくすること自体が目的になり、動きの質を伴わない
一方向の動きばかりで、回旋やしなやかさを育てない
逆に言えば、可動域を保ちながら、ゴルフの動きにつながる形で鍛えれば、筋トレは飛距離の味方になります 。実際、近年は多くのトッププレーヤーがフィジカルトレーニングを取り入れており、「鍛えること」と「飛ばすこと」は両立する、という考え方が一般的になってきました。
01 研究が示す、筋トレと飛距離の関係
「筋トレが飛距離につながる」のは、感覚論ではなく研究でも示されています。20の研究を整理したシステマティックレビュー(Uthoffら, 2021)では、レジスタンストレーニングがクラブヘッドスピード(CHS)と飛距離の向上に全体としてプラスに働く と報告されています。
+1.6%
一般的な筋力トレーニング(非特異的)による クラブヘッドスピードの平均的な向上
+4.1%
ゴルフ特異的トレと組み合わせた場合の クラブヘッドスピードの平均的な向上
注目すべきは、一般的な筋トレ単独でも飛距離は伸びるが、ゴルフの動きに特化したトレーニングを組み合わせるとさらに伸びやすい という点です。数字は平均値であり個人差はありますが、「鍛えると飛ばなくなる」どころか、むしろ逆の傾向が示されているのです。
研究が示すポイント
別のレビューでは、脚・股関節のパワー、体幹のパワー、握力 が、ゴルフのパフォーマンス向上にとくに関連すると指摘されています。下半身と体幹の爆発的なパワーが、クラブヘッドスピードや飛距離と正の相関を示すことも複数の研究で報告されています。「飛ばす力」は、腕ではなく地面から体幹へとつながるパワー から生まれる、というわけです。
02 可動域と筋トレの関係
「筋トレで硬くなる」という不安の核心は、可動域(柔軟性)への心配でしょう。しかしこれは、やり方次第でむしろ逆になります 。鍵は「全可動域(フルレンジ・オブ・モーション)で動かす」ことです。
関節を最大限に動かしながら負荷をかけるトレーニングは、筋力を高めると同時に、その可動域を「使える状態」で維持・向上させます。たとえばディープスクワットは、股関節・足首を深く曲げながら力を発揮するため、脚力と可動域を同時に養えます。狭い範囲で重いものだけを扱う と硬さにつながりやすい一方、広い範囲を丁寧に動かす と、しなやかさと力強さは両立します。
ゴルフに必要なのは「使える可動域」
ゴルフスイングは、胸郭の回旋・股関節の捻り・肩の可動性が連動して生まれます。単にやわらかいだけでなく、その範囲をコントロールし、力を発揮できる「使える可動域」 が重要です。可動域を引き出すストレッチと、その範囲で力を出す筋トレは、対立するものではなく補い合う関係にあります。
03 ゴルファーがやるべき筋トレ・避けたい筋トレ
同じ「筋トレ」でも、ゴルフにつながるものと、つながりにくいものがあります。部位ごとに整理します。
部位 取り入れたい 偏りすぎを避けたい
上半身 ケーブル回旋、メディシンボール回旋スロー ベンチプレスだけに偏った大量のボリューム
下半身 スクワット、デッドリフト、ランジ レッグプレスなど単関節種目だけへの偏り
体幹 パロフプレス、チョップ&リフト(抗回旋・回旋) クランチの高反復だけに頼る
ポイントは「ゴルフの動き=回旋とパワーの伝達」に近い種目を中心に据える こと。胸を張る・身体をひねる・地面を踏むといった、スイングに通じる動作を含む種目が向いています。「避けたい」とした種目も、それ自体が悪いわけではなく、そればかりに偏ると可動域や回旋能力を育てにくい 、という意味です。
04 「飛ぶ身体」をつくる筋肉
研究で「ゴルフに重要」とされる部位を踏まえると、飛距離につながる筋肉は次の3つに整理できます。いずれも可動域を保ちながら 鍛えることが前提です。
01 臀筋群(おしり)——パワーの源泉 地面を踏み込み、下半身から生まれる力を生み出す土台。研究でも脚・股関節のパワーがゴルフパフォーマンスに重要と示されています。スクワットやヒップヒンジ系で鍛えます。
02 広背筋・前鋸筋——力の伝達 体幹で生まれた力を、腕、そしてクラブへと伝える「伝達ルート」。引く動作や、肩甲帯を安定させる種目で養います。
03 体幹の回旋に関わる筋群——パワーのハブ 下半身の力を上半身へ受け渡す中継点。腹斜筋を含む体幹の回旋・抗回旋の能力が、スイングのスピードと安定の両方を支えます。回旋スローやパロフプレスが代表的です。
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05 ゴルフ特異的トレと非特異的トレ
研究では、トレーニングを大きく「非特異的(一般的な筋力トレーニング)」と「ゴルフ特異的(スイングに近い動き)」 に分けて考えます。そして両者を組み合わせると、効果が高まりやすい ことが示されています(前述の +4.1%/+5.2%)。
タイプ 内容 役割
非特異的 スクワット・デッドリフトなど、一般的な筋力・パワー種目 土台となる筋力・パワーを底上げする
ゴルフ特異的 回旋スロー・素早い切り返しなど、スイングに近い動き 高めた筋力をスイング速度につなげる
イメージとしては、非特異的トレで「エンジンの排気量」を大きくし、ゴルフ特異的トレで「アクセルの踏み方」を覚える ——という関係です。土台の筋力だけでは速いスイングに変換しきれず、動きの練習だけでは土台が頭打ちになる。だからこそ両輪が大切になります。研究でも、ゴルフ特異的な動きを速い速度で、3〜4セット程度 行うプログラムが効果的だったと報告されています。
06 頻度・栄養・回復の考え方
頻度
ゴルフと並行する場合、筋力トレーニングは週2回 が一つの目安です。ラウンドや練習の予定と重ならないよう、トレーニング日と休養・ゴルフ日をうまく配置します。大切なのは回数の多さより、可動域を保ちながら少しずつ負荷を更新していくこと(漸進性過負荷) です。
栄養
筋肉づくりの材料となるタンパク質は、体重1kgあたり1.2〜1.6g程度 が一つの目安です(運動量や目的によって必要量は変わります)。体重70kgの方なら、1日あたり約84〜112gが目安になります。3食でこまめに摂ると、身体づくりを支えやすくなります。
回復
トレーニングの効果は、休養と睡眠の中で定着します。高強度のトレーニング後は適切な休息をとり、睡眠時間を確保することが、パフォーマンスとコンディションの両面で重要です。INDIBAなどのコンディショニングを併用し、疲労を持ち越さない工夫も有効です。
無理のない範囲で
本記事の数値は一般的な目安です。腰や肩などに痛みや既往がある方、持病のある方は、自己判断で高負荷のトレーニングを行わず、医師や専門家にご相談ください。違和感や痛みが出た場合は中止し、必要に応じて医療機関を受診してください。
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07 TPIの考え方に基づく個別最適化
ここまで一般論を述べてきましたが、本当に大切なのは「あなたに合った」鍛え方 です。同じ「飛ばない」でも、原因が股関節の硬さなのか、体幹の回旋不足なのか、力の伝達のロスなのかで、必要なトレーニングはまったく変わります。
Disport Worldでは、TPI(Titleist Performance Institute)の考え方に基づく身体スクリーニング で、ゴルフに必要な可動性・安定性・パワーを項目ごとにチェックします。スイングの特徴と身体の状態を照らし合わせ、「どの筋肉を・どの方向に・どのくらいの速度で鍛えるか」 を一人ひとりに合わせて設計します。万人共通のメニューではなく、あなたのスイングに最適化したプログラムです。
Disport Worldのゴルフトレーニング
TPIの考え方に基づく身体スクリーニング(可動性・安定性・パワー)
スイングの特徴と身体状態の照合
「飛ぶ身体」をつくる個別プログラムの設計
少数精鋭の担当制で、同じ担当が継続してサポート
JSPO-AT・TPI Level 2・NASM-PESといった複数の視点を一貫して扱える担当が、確認からトレーニング、コンディショニングまでを継続して見ていきます。「確認して終わり」ではなく、その後の変化まで伴走できることが、Disport Worldの特長です。
よくあるご質問
Frequently Asked Questions
筋トレをすると身体が硬くなりませんか?
可動域を保ちながら(全可動域で)行う筋トレであれば、硬くなる心配は小さいです。むしろ、関節を大きく動かしながら鍛えることで、力強さとしなやかさを両立しやすくなります。狭い範囲で重さだけを追うと硬さにつながりやすいため、動かし方が大切です。
筋トレで本当に飛距離は伸びますか?
研究では、適切なレジスタンストレーニングがクラブヘッドスピードと飛距離の向上に関連すると報告されています。20の研究をまとめたレビューでは、一般的な筋トレで平均的にクラブヘッドスピードが約1.6%・飛距離が約4.8%、ゴルフ特異的な動きと組み合わせると約4.1%・約5.2%向上したと示されています(平均値で個人差があります)。
ゴルフに必要な筋トレの頻度は?
ゴルフと並行する場合、週2回が一つの目安です。トレーニング日とゴルフ・休養日をうまく配置し、可動域を保ちながら少しずつ負荷を更新していくことが大切です。回数の多さより、継続と質を重視してください。
プロテインは飲んだ方がいいですか?
必須ではありませんが、食事でタンパク質が不足しがちな方には有効な選択肢です。目安は体重1kgあたり1.2〜1.6g程度(運動量や目的で変わります)。まずは3食でこまめにタンパク質を摂ることを基本に、補いきれない分をプロテインで補う、という考え方がおすすめです。
岡本 隼人
Disport World — Founder & Head Trainer
JSPO-AT TPI Level 2 NASM-PES INDIBA PRO MAX
JSPO-AT × TPI Level 2 × NASM-PES × INDIBA PRO MAXの4資格をすべて保有するのは岡本隼人ただ一人。2016年、六本木にDisport Worldを開設。23年・累計20,000セッション超の指導歴で、トップ選手・著名な方から、飛距離やスコアに悩むアマチュアゴルファーまで幅広い層をサポートしてきた。プロフィール →
References
Uthoff A, Sommerfield LM, Pichardo AW. Effects of Resistance Training Methods on Golf Clubhead Speed and Hitting Distance: A Systematic Review. J Strength Cond Res. 2021;35(9):2651-2660.
Muscle Strength and Golf Performance: A Critical Review. J Sports Sci Med.(脚-股関節・体幹パワー・握力の重要性)
Titleist Performance Institute (TPI). Body-Swing Connection / movement screening.(mytpi.com)