2026.03.24 / Updated 2026.05.27
読了 約8分
Contents
方向性が安定しない、身体側の原因
回旋可動域が方向性に影響する仕組み
回旋可動域を整える5つのエクササイズ
効果を高める取り入れ方
TPIの考え方で「自分に必要な順番」を見つける
よくあるご質問
「同じスイングをしているつもりなのに、球が右に左に散る」——その背景には、スイング技術だけでなく身体の回旋可動域 が関わっていることが少なくありません。可動域が足りないと、身体は無意識に他の部位で補おうとし、その「補い方」が毎回変わることで、方向性が安定しにくくなります。
方向性が安定しない、身体側の原因
ドライバーの方向性が安定しない原因はいくつかありますが、身体側の要因として胸椎(背骨の胸の部分)と股関節の回旋可動域の不足 はよく見られるものの一つです。可動域が足りないと、身体は代償動作 ——本来とは別の部位を使って動きを補うこと——でカバーしようとします。
問題は、この代償動作が毎回同じとは限らない ことです。その日の体調や緊張、疲労によって補い方が変わるため、「同じように振っているつもりなのに結果がばらつく」という状態につながりやすくなります。可動域を整えることは、この“ばらつきの土台”を減らすことにつながります。
「技術」の前に「身体」を見る理由
スイングの再現性を高めようと練習を重ねても、そもそも身体が動ける範囲が狭い と、フォームの土台が安定しません。技術の習得と並行して、身体が無理なく動ける範囲を広げておくことで、練習の成果も定着しやすくなります。
01 回旋可動域が方向性に影響する仕組み
バックスイング——胸椎の回旋
胸椎の回旋可動域が不足すると、その分を腰椎(背骨の腰の部分)が過剰に回そうとしたり、テークバックが浅くなったり しがちです。どちらもトップのポジションが安定しにくく、毎回わずかに違う位置から切り返すことになります。本来、回旋の多くは胸椎で起こるのが理想とされます。
ダウンスイング——股関節の回旋
股関節の回旋可動域(とくに前の脚側)が不足すると、骨盤の回旋が途中で止まりやすくなります。すると上半身と下半身のタイミングがずれ、クラブが外から入ったり、逆に過度に内側から入ったり といったばらつきにつながります。下半身がスムーズに回れることが、安定した方向性の土台になります。
局面 不足しやすい可動域 起こりやすい代償
バックスイング 胸椎の回旋 腰椎の過回旋/浅いトップ
ダウンスイング 股関節の回旋 骨盤回旋の停滞/上下のタイミングのずれ
02 回旋可動域を整える5つのエクササイズ
いずれも自宅で道具なしでできる、回旋可動域のための代表的なエクササイズです。痛みのない範囲で、ゆっくり呼吸をしながら行ってください。回数はあくまで目安です。
01
オープンブック
主に:胸椎の回旋
横向きに寝て両膝を軽く曲げ、両腕を前にそろえます。上側の腕を、本のページをめくるように反対側へゆっくり開いていきます。視線は手を追い、胸を開く意識で。骨盤は動かさず、胸の部分から回すのがポイントです。
胸椎の回旋可動域に直接アプローチできる、定番のエクササイズです。呼吸を止めず、開いた位置で軽く息を吐くと、より動きが出やすくなります。
左右各 10回 2セット ゆっくり呼吸
02
90/90 ヒップストレッチ
主に:股関節の内旋・外旋
床に座り、前後の脚をそれぞれ90度に曲げます(前脚は外旋、後脚は内旋の形)。背すじを保ったまま、前後に体重を移動させたり、上体を前に倒したりして、股関節まわりをゆっくり動かします。
股関節の内旋・外旋を同時に動かせるため、スイングで必要な股関節の回旋づくりに役立ちます。痛みが出る手前で止め、無理に押し込まないことが大切です。
左右各 10回 2セット 痛みのない範囲
03
キャットカウ+回旋
主に:胸椎の屈曲・伸展・回旋
四つん這いになり、背中を丸める・反らす(キャットカウ)を数回行って背骨をほぐします。続いて片手を頭の後ろに添え、その肘を天井へ向けるように上体をゆっくり回旋させます。
背骨を多方向に動かしながら、胸椎の回旋を引き出せる複合的な動きです。腰ではなく、みぞおちのあたりから回す意識を持つと効果的です。
左右各 8回 2セット 背骨から動かす
04
ハーフニーリング回旋
主に:股関節を固定した胸椎回旋
片膝立ち(ハーフニーリング)の姿勢になり、クラブや棒を肩の後ろに担ぎます。下半身を安定させたまま、上体だけをゆっくり左右に回旋させます。
股関節を固定した状態で胸椎だけを回す感覚が身につきます。スイング中に「下半身を安定させて上半身で捻る」動きの土台づくりに役立ちます。骨盤が一緒に回らないよう注意します。
左右各 8回 2セット 下半身は固定
05
ワールドグレイテストストレッチ
主に:股関節・胸椎・ハムストリングス
大きく一歩踏み出したランジ姿勢から、前脚側の手を床につき、もう一方の手を天井へ向けて上体を回旋させます。続けて前脚の膝を伸ばし、もも裏(ハムストリングス)も伸ばします。
その名のとおり「最も総合的」とも言われる動きで、股関節・胸椎・もも裏を一度に動かせます。ウォームアップにも適しています。バランスを崩さない範囲で、ていねいに。
左右各 5回 2セット 総合ストレッチ
無理のない範囲で
いずれのエクササイズも、痛みのない範囲で行ってください。腰・肩・股関節などに痛みや既往がある方、過去にケガをした部位がある方は、自己判断で無理に行わず、医師や専門家にご相談ください。動作中に痛みやしびれが出た場合は中止してください。
03 効果を高める取り入れ方
可動域づくりは、たまに長時間やるより毎日少しずつ続けるほうが定着しやすい とされます。5つすべてを一度に行う必要はありません。まずは自分が苦手な動きを2〜3種目選び、習慣にすることから始めましょう。
取り入れ方のポイント
タイミング: 1日5〜10分、入浴後など身体が温まったときがおすすめ
ラウンド前: 動的なウォームアップとして取り入れると、可動域を引き出した状態でプレーに入れる
頻度: 毎日でも、痛みがなければ問題ありません。物足りなければ回数より「ていねいさ」を優先
続け方: 変化はゆっくり現れることが多いもの。数週間の単位で気長に
可動域の変化は人によって差があり、すぐに実感できる方もいれば、時間がかかる方もいます。「いつまでに必ず安定する」と断言できるものではありません が、苦手な動きを地道に続けることで、スイングの土台は少しずつ整っていきます。
04 TPIの考え方で「自分に必要な順番」を見つける
ここで紹介した5つはいずれも有効ですが、「あなたにとって優先すべき動き」は人によって異なります 。胸椎が主な制限なのか、股関節が主なのか、左右どちらに差があるのか——ここが分かると、限られた時間を効率よく使えます。
Disport Worldでは、TPI(Titleist Performance Institute)の考え方に基づく身体スクリーニング で、ゴルフに必要な可動性・安定性を項目ごとにチェックします。その結果をもとに、「あなたが優先すべきエクササイズと、その順番」 を一緒に組み立てます。やみくもに全部やるのではなく、効く順番で取り組めるのが、個別に確認することの価値です。
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よくあるご質問
Frequently Asked Questions
どのくらいで方向性が安定しますか?
可動域の変化は比較的現れやすい一方、安定の実感には個人差があります。毎日5〜10分のエクササイズを数週間続けると変化を感じる方が多いですが、「いつまでに必ず」と断言できるものではありません。苦手な動きを地道に続けることが、土台づくりにつながります。
エクササイズはラウンド前に行っても良いですか?
はい。むしろラウンド前のウォームアップとして、動きをつけながら(動的に)行うのに向いています。可動域を引き出した状態でプレーに入れるため、1番ホールから身体を動かしやすくなります。
自宅でできますか?
5つすべて、自宅で道具なしでできます。ただし、正しいフォームや「どの動きを優先すべきか」は人によって異なるため、最初に専門家のチェックを受けると、より効率よく取り組めます。痛みがある場合は無理をせず中止してください。
岡本 隼人
Disport World — Founder & Head Trainer
JSPO-AT TPI Level 2 NASM-PES INDIBA PRO MAX
JSPO-AT × TPI Level 2 × NASM-PES × INDIBA PRO MAXの4資格をすべて保有するのは岡本隼人ただ一人。2016年、六本木にDisport Worldを開設。23年・累計20,000セッション超の指導歴で、トップ選手・著名な方から、飛距離やスコアに悩むアマチュアゴルファーまで幅広い層をサポートしてきた。プロフィール →
References
Titleist Performance Institute (TPI). Body-Swing Connection / movement screening.(mytpi.com)
Uthoff A, Sommerfield LM, Pichardo AW. Effects of Resistance Training Methods on Golf Clubhead Speed and Hitting Distance: A Systematic Review. J Strength Cond Res. 2021;35(9):2651-2660.(体幹・回旋とゴルフパフォーマンス)