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FMS 機能的動作スクリーニング 完全ガイド
Movement Assessment Science

FMS(機能的動作スクリーニング)
完全ガイド
——7項目+クリアリングテストの全解説

「体重は測ったことがある。でも、自分の動きの質を数値で見たことはない」——FMSはその問いに答える枠組みです。Cook & Burton 1995年開発、Kiesel 2007 NFL研究で怪我リスクとの関連が示された世界水準の動作スクリーニング。7項目+クリアリングテストの手順、スコアリング基準(3/2/1/0点)、代償動作、矯正エクササイズ、そして信頼性と限界まで、JSPO-AT × TPI認定(Fitness 2/Power 2)・NASM-PESを保有する岡本隼人が完全網羅します。

2026.02.05 / Updated 2026.07.28 読了 約45分
7+3
テスト+
クリアリング
21点
満点
(0-3点×7項目)
1995年
Cook & Burton
FMS開発
ICC .81
合計点の
信頼性*

* 系統的レビューでの合計スコアの判定者間・判定者内信頼性の代表値(研究により0.76〜0.98と幅がある)。

「ベンチプレス何kg挙げられるか」「スクワット何kgか」——筋力の数値は記録できます。けれど、「あなたの動きの質」を数値で見たことがあるでしょうか。

FMS(Functional Movement Screen)は、この問いに答える枠組みです。1995年、米国の理学療法士Gray Cookと、アスレティックトレーナーのLee Burton(PhD, ATC)によって考案され、いまではプロスポーツ、軍、一般フィットネスまで世界水準の動作スクリーニングとして広く使われています。本記事では、FMSの全体像を、各テストの手順・スコアリング・代償動作・矯正エクササイズ、さらに科学的な信頼性と限界まで、できるだけ誠実に解説します。

This Article

この記事でわかること:
① FMSとは何か——開発の背景と設計思想
② FMS Performance Pyramid——「動きの質」が土台
③ スコアリングの正確な意味(3/2/1/0点)
④ 7項目の完全解説(手順・基準・代償・矯正)
⑤ 3つのクリアリングテスト
⑥ Kiesel 2007 NFL研究のエビデンスと、その限界
⑦ FMSの信頼性(ICC・MDC)——科学的にどこまで当てになるか
⑧ FMS・SFMA・TPIの使い分け
⑨ 確認後のプログラム設計(Corrective Strategies)
⑩ FMSの限界

本記事の位置づけ

FMSは一般の方の「動きの質」を確認するためのスクリーニングであり、痛みや疾患の診断・治療を目的とするものではありません。痛みがある・しびれを伴うなどの場合は、まず医療機関を受診してください。Disport Worldでは、動作確認の結果を、必要に応じて医療機関との連携を前提にトレーニング設計へ活かします。

FMSとは何か
——Cook & Burton 1995年開発の背景

結論から書きます。FMS(Functional Movement Screen/機能的動作スクリーニング)は、7つの基本動作を0〜3点で採点し、21点満点で「動きの質」を数値にするための共通のものさしです。目的は、痛みの原因を診断することでも、点数の高さを競うことでもありません。「いま負荷をかけて伸ばしてよい動き」と「先に整えておきたい動き」を仕分けること——FMSの仕事はここに絞られています。

開発したのは、Gray Cook(理学療法士)Lee Burton(PhD, ATC)。1995年、米国バージニア州でのことでした。二人は同じ南バージニアの小さな地域で育ち、同じ高校を出た「兄弟のような関係」だとBurton自身が語っています。Cookが理学療法士の視点で動作確認のフレームワークを設計し、Burtonがアスレティックトレーナーとしての現場経験で実装を磨く——この役割分担が、FMSの土台になりました。

当時の課題は、はっきりしていました。「フィットネスやリハビリの専門家が、動作パターンの左右差や主要な制限を、体系的に確認する共通の手続きを持っていなかった」こと。1990年代後半、二人は数百人の高校生アスリートを見ながら、「動きに制限がある状態のまま高強度トレーニングを続けると、代償動作が強化され、負担が特定の場所に偏りやすい」という臨床上の実感を共有していました。その実感を、誰が使っても同じ手順・同じ基準で再現できる形にしたのが、7つのテストとクリアリングテスト(当初3種、2020年以降は足関節を加えた4種)で構成される現在のFMSです。

FMSの設計思想——「重さ」ではなく「動きの質」

FMSを支える3つの前提

動きの質 > 動きの量——どれだけ重いものを持てるかより、基本動作が正しく行えるか。FMSは自体重1倍の範囲でしか動作を見ません。

左右差とパターン不全に注目する——左右差は、負荷が上がったときに問題として表面化しやすいと考えられてきました(その予測力がどこまであるかは後述のとおり議論が続いています)。

修正には順序がある——「可動域 → 安定性 → 動作の協調 → パフォーマンス」。この順序を飛ばして負荷だけ上げると、代償動作のほうが先に固定化してしまう。

「テスト」ではなく「スクリーン」——名前に込められた線引き

見落とされがちですが、公式は一貫してこれを「screen(ふるい分け)」と呼び、「test/assessment(診断的な評価)」とは呼びません。空港の保安検査を思い浮かべてください。検査ゲートは「この人が何を持っているか」を診断する装置ではなく、「詳しく調べるべき人」と「そのまま通してよい人」を短時間で分ける装置です。FMSの役割もこれと同じです。開発者らは論文の中で、FMSは診断のためのテストやアセスメントとして設計されたことは一度もない、と明言しています。

FMSが「答えない」3つのこと

1. 痛みの原因の診断——FMSの対象は、現在痛みのない方です。痛みやしびれがある場合は、まず医療機関へ。トレーナーは診断を行いません。

2. 競技パフォーマンスの高さ——FMSは自体重1倍での基礎動作を見るスクリーンです。速さ・強さ・巧さの判定には、別の評価が必要です。

3. 怪我の予測——FMS公式自身が「単独の傷害予測ツールではない」と述べています。怪我歴・現在の痛み・練習量・生活要因と組み合わせて、はじめて意味を持ちます。

原典と基準書

原著論文:Cook G, Burton L, Hoogenboom B.「Pre-participation screening: the use of fundamental movements as an assessment of function」North American Journal of Sports Physical Therapy 2006;1(2):62-72(Part 1)/1(3):132-139(Part 2)。
再掲載:2014年に International Journal of Sports Physical Therapy 9(3):396-409(Part 1)/9(4):549-563(Part 2)として再掲載され、この再掲載版でVoightが著者に加わっています。
実技基準:Gray Cook『Movement: Functional Movement Systems』(2010)。本記事の採点基準の記述は、この基準書と公式資料に沿っています。

FMSが使われている場所

FMSは「短時間で実施できる標準化された動作スクリーン」として設計されており(公式の目安は約10分、実務では確認と説明を含め15〜25分)、道具も場所も最小限で済みます。この手軽さと再現性から、現在は次のような領域で使われています。

プロスポーツ:NFLやNHLのチームなどで活用実績があります
:米軍の傷害予防研究プログラムで用いられ、多くの研究データがこの領域から出ています
大学スポーツ:コンディション把握の一環として広く用いられています
一般フィットネス・パーソナルジム:トレーニング開始前の動作確認

なお、7項目+クリアリングテストという「実技そのもの」は15〜25分程度で終わります。時間がかかるのは、その先——点数を「あなたの身体で何が起きているか」に翻訳し、優先順位に落とし込む工程です。Disport Worldの体験90分でも、確認そのものより、この翻訳とプラン設計に時間を使います。

FMS Performance Pyramid
——「動きの質」が全ての土台

なぜFMSは、たった7つの動作しか見ないのか。答えは、FMSが「パフォーマンス・ピラミッド」の一番下の層だけを担当する道具だからです。Gray Cookが提唱したこのモデルは、人の運動能力を3つの層で説明します。FMSを理解する上で、いちばん大切な考え方です。

Skill技術——競技・仕事に固有のスキル
Performance出力——筋力・スピード・パワー・持久力
Movement動きの質——FMSが確認する基礎層
中身主に測る手段
Skill(技術)競技固有のスキル、仕事特有の動作競技別のスキルテスト、ゴルフならスイング分析
Performance(出力)筋力・パワー・スピード・持久力挙上重量、ジャンプ、スプリント等の体力測定
Movement(動きの質)可動域・安定性・左右対称性・動作の順序性FMS(=本記事の対象)

Cookの主張は明快です——「土台のMovement(動きの質)がぐらついたまま、その上にPerformance(筋力・パワー)やSkill(技術)を積み上げても、ピラミッドは安定しない」。彼はこれを「機能不全の上にフィットネスを積み上げてしまう」と表現します。逆に、動きの質を整えてから筋力強化に進めば、負担を抑えながら効率よく積み上げやすくなります。

30〜50代の方から、こんな話をよく聞きます。「重量は伸びているのに、翌日いつも同じ側の腰が張る」「走ると決まって右膝だけ痛む」「飛距離は落ちていないのに、ラウンド翌日の身体の重さが年々ひどくなる」。ピラミッドの言葉に直せば、これは土台に手をつけないまま2階・3階を建て増ししている状態です。増築を止める必要はありません。ただ、土台のどこが沈んでいるかを一度測っておく価値はあります。

動きはベースライン。他のことに取り組む前に、まず痛みや大きな機能不全なく基本ができるかを確かめよう——これがFMSの入口です。 — Lee Burton, PhD, ATC(FMS共同開発者)の考え方より

ピラミッドの「痛みのライン」——ここから先はトレーナーの仕事ではない

開発者らの論文(IJSPT 2014)には、このピラミッドに「痛みのライン」を引いた図が載っています。FMSが担当するのは「痛みのラインより上、かつ専門的なパフォーマンステスト・スキルテストより下」という、はっきり区切られた帯だけです。

痛みのラインより下——つまり、すでに痛みや機能障害がある領域は、FMSの守備範囲ではありません。そこは医療の領域であり、動作の側から丁寧に見ていく枠組みとしてはSFMA(選択的機能動作評価)が対応します。Disport Worldでは、FMSの途中で痛みが出た場合、その場でトレーニングを進めず、医療機関の受診をご案内し、その結果を前提にプログラムを組み直します

ピラミッドは「順番」の話であって、「優劣」の話ではない

誤解されやすい点を一つ。パフォーマンス・ピラミッドは、FMSの採点結果そのものではありません。「どこから手をつけるか」を決めるための概念モデルです。FMSが測るのは土台の1層だけで、中段(出力)と上段(技術)はFMSでは評価できません。

だから、「FMSが21点だから優れたアスリート」でもなければ、「14点だから運動をやめるべき」でもないのです。ピラミッドが教えてくれるのは順番だけ——「あなたの場合、次の3ヶ月をどこに使うと効率がいいか」という問いへの答えです。

7項目自体も、3つの階層に分かれている

FMSの7項目は、それぞれ独立した課題ではありません。動作の成り立ちの順に、3階層に整理できます。

階層テスト意味
Primitive(基礎的)①ディープスクワット ②ハードルステップ幼児期から獲得する最も基本的な動作。すべての土台
Transitional(移行的)③インラインランジ ④ショルダーモビリティ立位での動的安定性、上半身の複合可動域
Higher Level(上位)⑤ASLR ⑥トランクスタビリティ・プッシュアップ ⑦ロータリースタビリティ下肢の分離動作、体幹の反射的安定性、多軸協調

この分類は実務で効きます。同じ「1点」でも、ディープスクワット(Primitive)が1点なのと、ロータリースタビリティ(Higher Level)が1点なのとでは意味が違うからです。前者は土台そのものが沈んでいる状態で、他の項目にも影響が波及しやすい。後者は土台はあるが上位の協調でつまずいている状態で、手の打ち方が変わります。

なお、ゴルフのように回旋が主役になる競技では、ピラミッドの中段・上段に近い部分を別の枠組みで確認する必要があります。Disport Worldでは、ゴルファーにはTPIスクリーニング16項目を併用し、動きの土台と、スイングという固有のスキルの両方から原因を絞り込みます。

スコアリングシステムの全貌
——3/2/1/0点の正確な意味

先に結論を。FMSは「点数が高いほど良い」テストではありません。見るべきものは、優先順に3つです——①0点があるか ②左右差があるか ③どの項目が低いか。合計点は、この3つを確認したあとの参考値にすぎません。順番を逆にすると、FMSはただの「21点満点のミニテスト」になってしまいます。

採点は、各テストを0〜3点の4段階で行います。7項目の合計が0〜21点。各動作は最大3回まで試行し、最も良いスコアを採用します。一見シンプルですが、点数の定義は精密です。

3

代償なしで基準どおり

規定の基準どおりに、代償動作を使わずに遂行できる。この動作パターンは、負荷をかけて伸ばしてよい領域。

2

代償を使えば遂行できる

動作は完了できるが、そのために不良なメカニクスや代償パターンを使う必要がある。改善の余地がある状態。

1

代償を使っても遂行できない

代償を用いても、その動作パターンを行えない。トレーニングより先に手をつける優先対象。

0

動作中に痛みが出る

動作のいずれかの局面で痛みが出た。これは点数の話ではなく医療の話。該当部位の負荷は止め、医療機関での確認へ。

※2点と1点の境目は「代償が出たかどうか」ではなく、「代償を使ってでも動作を完遂できたか」です。ここを取り違えると、点数の意味そのものが変わってしまうため、採点で最も注意を要する部分です。

最優先は0点——「痛みの検問」としてのクリアリングテスト

FMSには、7項目の本体テストとは別に、痛みが出ないかだけを見る補助テスト(クリアリングテスト)が組み込まれています。これは0〜3点で採点されるものではなく、痛みがあれば陽性、なければ陰性のみを判定します。そして陽性だった場合、他のどの判定基準よりも優先して、関連する本体テストは0点になります。可動域が十分でも、特定の角度で痛みが出るなら0点、ということです(3種の内容と手順は後述)。

0点が出たときの、当店の対応

クリアリングテストも本体テストも、痛みの原因を特定するものではありません。トレーナーは診断を行いません。0点が出た場合、Disport Worldではその部位への負荷をその場で中止し、整形外科など医療機関の受診をご案内します。そのうえで、受診結果を前提にトレーニングを設計し直します。「痛みを我慢して続ける」ことは、FMSの設計思想からいちばん遠い選択です。

左右差(Asymmetry)——「平均」ではなく「弱い方」を採る

左右両方で行う5項目(ハードルステップ、インラインランジ、ショルダーモビリティ、ASLR、ロータリースタビリティ)では、左右のうち低い方を最終スコアとして採用します。右3点・左1点なら、最終スコアは1点。ただし記録用紙には必ず左右両方を残します——最終スコアからは消えてしまう「右3点」という情報こそが、左右差の大きさを示すからです。

なぜ「低い方」を採用するのか

右3点・左1点の方は、平均すれば「2点」です。しかし実際の身体で起きているのは「左に大きな制限がある」という一つの事実であり、平均値2点の人はどこにも存在しません。負荷を上げれば、負担は左に偏って集まります。FMSが「平均」ではなく「最も弱い部分」を見るのは、身体が平均では動かないからです。

なお、左右差そのものが怪我をどこまで予測するかは、研究上まだ決着していません。ただし「どこから手をつけるか」を決める材料としては、平均値よりはるかに実用的です。

合計スコアの目安

7項目の最終スコアの合計が、FMS合計スコア(0〜21点)です。一般的な解釈の目安は次のとおりですが、この表は「点数の意味」を示すものではなく、「会話の出発点」だと考えてください。

合計スコア目安一般的な対応
18〜21非常に良好高めの負荷・競技活動にも対応しやすい
15〜17良好弱点項目を整えつつ通常のトレーニング
14以下注意(Kiesel 2007に由来する目安)矯正を優先し、高負荷は慎重に
0点の項目あり医療での確認が必要該当部位の負荷を中止し、医療機関へ

「14点以下は危険」の、正確な読み方

ここが、FMSでいちばん誤解されているところです。14点は「危険ライン」として設計された数字ではありません。2007年のNFL選手を対象とした研究(n=46)で、統計的に最もよく分かれる位置として算出された値が14点だった——それだけのことです。そして後年、いくつもの集団で平均スコアが測られた結果、14点前後は「たくさんの人がいる場所」だと分かってきました

15.7 ± 1.9
活動的な成人の平均
(Schneiders 2011・男女差なし)
active adults
14.06
学齢期(10〜17歳)の加重平均
(O'Brien 2022・19研究)
school age
14.6
英海軍新兵の平均
(Gibbs 2025・957名)
navy recruits
14
「カットオフ」として
広まった数字
the cutoff

4つ目のカードを、上の3つと見比べてみてください。カットオフとされた14点は、多くの集団の平均値とほとんど重なっています。「14点以下=異常」という読み方が成り立ちにくいことが、この並びだけで分かります。カットオフの妥当性をめぐる研究の現在地は後述で詳しく扱いますが、少なくとも「14点だった」という一点だけで不安になる必要はありません

満点を目指すテストではない

Cook自身が、よくある誤解として「点数は高ければ良いというものではない」と明言しています。公式資料でも、多くの項目は2点で「十分(good enough)」という考え方が示されています。

理由はシンプルで、3点を取りにいくために可動域だけを無理に広げると、その可動域を制御する安定性が追いつかず、かえって不安定な関節をつくってしまうことがあるからです。FMSの目的は動作の「完璧さ」を追うことではなく、次に何をするかを決めること——満点は目的地ではありません。

同じ点数でも、やることは正反対になる

FMSの本当の価値は、合計点ではなく「どの項目が、どんな形で低いか」というパターンにあります。実例で見たほうが早いので、ほぼ同じ合計点の二人を並べます。

Aさん:合計15点Bさん:合計14点
内訳6項目は2〜3点。ロータリースタビリティのみ1点、しかも左右差あり7項目すべてが均等に2点。0点も1点もなし
読み方弱点が一点に集中している。上位層の協調のつまずき目立つ弱点はないが、全体に代償が入っている
手のつけ方該当パターンの再教育を最優先。ここが動くと他項目も連動しやすい可動域と安定性を並行して底上げ。特定部位への集中は不要

合計点はAさんのほうが1点高いのに、やるべきことは正反対です。しかも「Aさんのほうが良い状態」とも言い切れません——左右差を抱えたまま負荷を上げるリスクを考えれば、優先度が高いのはむしろAさんです。合計点だけを見た瞬間に、この情報はすべて消えます。これが、FMSを「点数を出して終わり」にしてはいけない理由です。

「自分はどの項目が低いんだろう?」——
合計点ではなく、あなたのパターンを見にきてください。

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FMS 7項目の完全解説
——手順・基準・代償・矯正

結論から言えば、FMSの7項目は「できる/できない」を判定するテストではありません。身体を7つの角度から見て、いま負荷をかけて伸ばしてよい動作と、先に整えたほうがよい動作を仕分けるための地図です。ここでは各項目を「一言で言うと・確認する能力・手順・3/2/1点の基準・よくある代償と打ち手」の順に解説します(基準はGray Cook著『Movement: Functional Movement Systems』2010、および開発者らの論文——Cook G, Burton L, Hoogenboom B. NAJSPT 2006;1(2):62-72/1(3):132-139。2014年にIJSPT 9(3):396-409/9(4):549-563として再掲載され、再掲載版でVoightが著者に加わる——に基づきます)。

7動作
各0〜3点で採点
合計21点満点
seven patterns
5項目
左右それぞれを記録し
低い側を最終スコアに
left & right
3回まで
各動作は最大3回試行し
最も良い回を採用
best of three
約10分
7項目+痛みの確認
にかかる標準的な時間
quick screen

まず全体像——7項目は何を、どの順で見るか

7項目には決まった実施順序があります。単純な動作から複雑な動作へ、そして「痛みが出ないか」を確認するクリアリングテストを所定の位置で挟む設計です。順序を入れ替えると、疲労や慣れがスコアに混ざってしまいます。

テスト主に見るもの左右直後の痛み確認
1ディープスクワット
Deep Squat
全身の協調性と、下肢・肩の可動域1つの動作
2ハードルステップ
Hurdle Step
片脚立位の安定性(歩行の要素)左右
3インラインランジ
In-Line Lunge
減速・切り返し時の安定性左右足関節(2020年に追加)
4ショルダーモビリティ
Shoulder Mobility
肩と胸椎の複合的な可動域左右
5ASLR
Active Straight-Leg Raise
下肢の分離動作と骨盤コントロール左右
6トランクスタビリティ・
プッシュアップ
Trunk Stability Push-Up
体幹の反射的な安定性1つの動作脊柱伸展
7ロータリースタビリティ
Rotary Stability
多軸の体幹安定と対角の協調左右脊柱屈曲

※クリアリングテストは2020年の公式アップデートで、インラインランジの直後に行う「足関節クリアリングテスト(Ankle Clearing Test)」が加わりました。日本語で流通している解説の多くは追加前の内容のままです。判定の細部は公式の会員向け教材にあり、公開情報からは確認できていません(未検証)。痛み確認の詳細は次章でまとめます。

① ディープスクワット(Deep Squat)

一言で言うと:「深くしゃがめない」の原因は脚とは限りません。足首・股関節・胸椎・肩の4か所が同時に問われるため、最も情報量が多く、最も原因を特定しにくいのがこの項目です。

確認する能力:全身の協調性と神経筋制御、股関節・膝・足関節の左右対称な可動域と安定性、体幹の支え、肩甲帯・胸椎の可動域。

手順:足を肩幅に開き、つま先はまっすぐ前へ。棒(ダウェル)を両手で持ち、肘を伸ばしたまま頭上で水平に保持します。そこからゆっくりと、大腿が水平より下に沈むまでしゃがみ、立ち上がる。うまくいかない場合は、かかとの下に約5cm(2インチ)の板を入れて再試行します。

基準
3板なしで、上半身が脛と平行(または垂直)・大腿が水平より下・膝が足の上に整列・棒が足の上に位置する
2同じ条件を、かかとに板を入れて達成できる(=足関節背屈の制限が示唆される)
1板を入れても基準を満たせない(上半身が起こせない・大腿が水平に届かない・腰が丸まる等)
見えるサイン背景にありやすいもの打ち手の例
かかとが浮く足関節の背屈制限ふくらはぎのストレッチ、足関節モビリティドリル
膝が内に入る(ニーイン)中殿筋・股関節外旋筋の働きにくさクラムシェル、モンスターウォークなど股関節の活性化
上体が前に倒れすぎる胸椎伸展または股関節屈曲の制限胸椎モビリティ、ゴブレットスクワットでの練習
腰が丸まる(バットウィンク)ハムストリングス・股関節伸筋の柔軟性不足ヒップヒンジ練習、デッドリフトパターンの習得
スクワットは「最後に」直す

この項目が低いからといって、スクワットを反復練習するのは遠回りになりがちです。関わる関節が多いぶん、足首・股関節・胸椎のどれを整えても点が動くから。実際の設計では、④⑤などの単純な項目を先に整えてから再確認します(詳しくは後述のプログラム設計で)。デスクワークが長く、革靴やヒールでの移動が中心の方は、足関節から入ると変化が早いことが多い印象です(当店での経験則)。

② ハードルステップ(Hurdle Step)

一言で言うと:歩行と加速の縮図。片脚で立っている1〜2秒に、骨盤の支え方の癖がそのまま出ます。

確認する能力:片脚立位での動的安定性と制御、ステップ脚の股関節屈曲、支持脚側の安定性、骨盤と体幹の左右対称性。

手順:ハードル(紐)を脛骨粗面=膝の下にある骨の出っ張りの高さに設定します。両足を揃えてハードルの手前に立ち、棒を首の後ろ・肩に担ぐ。片脚をハードルの上を通してステップし、かかとを床に触れてから元の位置に戻ります。棒とハードルが平行を保てているかを見ます。左右それぞれ実施。

基準
3股関節・膝・足首が前後方向で一直線に整列し、腰・体幹の動きは最小限。ハードルと棒が平行を保つ
2整列に乱れがある、腰・体幹に動きが出る、または棒とハードルの平行を保てない
1足・膝・股関節がハードルに接触する、またはバランスを失う
見えるサイン背景にありやすいもの打ち手の例
骨盤が支持脚と反対側に落ちる支持脚の中殿筋の働きにくさサイドプランク、シングルレッグデッドリフト
体幹が横に流れる・ぐらつく体幹の安定性不足デッドバグ、バードドッグ
ステップ脚が十分に上がらない腸腰筋など股関節屈筋の柔軟性・出力不足ハーフニーリング・ヒップフレクサーストレッチ
支持脚のかかと・膝が定まらない片脚動作の協調性不足片脚立ち保持、シングルレッグスクワットの練習

階段を降りる、電車で片足に体重が乗る、荷物を持って歩く——日常はほぼ片脚立位の連続です。ここが1点だと、歩数が増えた日や久しぶりのランニングで特定の側だけに負担が集まりやすい状態と考えられます(ただし、これは動作の傾向の話であり、怪我の予測ではありません)。

③ インラインランジ(In-Line Lunge)

一言で言うと:前に進む力ではなく、止まる・切り返す力を見るテスト。減速や横方向の動きで身体にかかるストレスを、狭い足幅で再現します。

確認する能力:前後方向での動的安定性、股関節と膝の協調、体幹の側方安定性、足関節の柔軟性。上肢と下肢が反対のパターンで組み合うため、脊柱の安定性も要求されます。

手順:細い板の上に前後に立ちます。前脚のかかとが板の先端、後脚のつま先が板の後端に来るよう、間隔は脛の長さ(床から脛骨粗面まで)に合わせます。棒を背中側に縦に当て、後頭部・背中(胸椎)・仙骨の3点に接触させたまま両手で保持。バランスを保ちながら後脚の膝が板に触れるまで沈み、戻ります。左右それぞれ実施。

基準
3棒が背中の3点に接触したまま直立を保ち、体幹の動きがなく、棒と足が同一線上。後脚の膝が前脚かかとの後ろに触れる
2棒の接触が崩れる、体幹に動きが出る、または棒と足が同一線上に揃わない
1バランスを失う、または動作を完了できない
見えるサイン背景にありやすいもの打ち手の例
前脚の膝が内に入る中殿筋・股関節外旋筋の働きにくさクラムシェル、サイドプランク、片脚スクワット
体幹が横に倒れる・回る側方・回旋方向の安定性不足サイドプランク、パロフプレス、バードドッグ
後脚の股関節が伸びきらない股関節屈筋・大腿前面の柔軟性不足ヒップフレクサーストレッチ、カウチストレッチ
前脚の足首が深く曲がらない下腿三頭筋の柔軟性・足関節背屈の制限フォームローラー、足関節モビリティドリル

※この直後に足関節クリアリングテストを行うのが2020年以降の公式手順です。荷重した状態での足首の制限を見落とさないために追加された、と説明されています。

④ ショルダーモビリティ(Shoulder Mobility)

一言で言うと:肩の柔らかさテストに見えて、実質は「胸椎(背中の上部)の硬さの通知表」。肩だけをほぐしても点が動かないことが少なくありません。

確認する能力:一方の肩は屈曲+外旋+外転、もう一方は伸展+内旋+内転という相反する組み合わせの可動域、肩甲骨と胸郭・胸椎の可動性、そして左右の対称性。

手順:まず手の長さを測ります(手首の遠位のしわから中指の先端まで)。両手とも親指を中に入れて握り、一方の手は背中を上から下へ、もう一方は下から上へ、ひと続きの動作で同時に回します。背中側で両拳の最短距離を測定。左右を入れ替えて実施します。直後に必ずShoulder Clearing Test(後述)を行います。

基準(両拳の距離)
3手の長さ1つ分以内
2手の長さ1.5個分以内
1手の長さ1.5個分を超える
見えるサイン背景にありやすいもの打ち手の例
左右差が大きい片側性スポーツ(ゴルフ・テニス・野球)やデスクワーク姿勢の偏りスリーパーストレッチ、クロスボディストレッチ、肩甲骨まわりのSMR
両側とも届かない胸椎伸展の不足(猫背・長時間座位)フォームローラーでの胸椎モビリティ、オープンブック
肩がすくむ・肩甲骨が浮く前鋸筋・下部僧帽筋の働きにくさウォールスライド、YTW、プローンI-Y-T
下から上への動きだけが極端に悪い肩関節後方のタイトネス(内旋制限)スリーパーストレッチ、ポステリアショルダーストレッチ
この項目で「痛み」が出たときの扱い

クリアリングテストで痛みが誘発された場合、可動域が良好でもショルダーモビリティは0点として扱い、その部位への負荷は止めます。トレーナーは診断をしません。整形外科など医療機関での確認をご案内し、その結果を前提にプログラムを組み直す——これがFMSに組み込まれた運用ルールです。

⑤ アクティブストレートレッグレイズ(ASLR)

一言で言うと:柔軟性テストではありません。「片方を動かしながら、もう片方を止めておく」——身体を分けて使えるかを見るテストです。

確認する能力:挙上側の股関節の自動可動性(ハムストリングス・ふくらはぎの柔軟性を含む)、反対側の股関節伸展の維持、そして下肢を分離して動かす間の骨盤・体幹のコントロール。

手順:仰向けで両膝を伸ばし、つま先は上向き。腕は体側で手のひらを上に。両膝の下に板を置きます。片脚を膝を伸ばしたまま天井方向へ持ち上げ、反対脚は床に接地させたまま、つま先の向きも保ちます。挙上脚のくるぶしの位置を、上前腸骨棘(骨盤前面の出っ張り)と膝蓋骨中央の中点と比べて採点。左右それぞれ実施。

基準(挙上脚のくるぶしの位置)
3中点(上前腸骨棘と膝蓋骨中央の中間)を超える
2中点と膝蓋骨中央のにある
1膝蓋骨中央より下
ASLRの本質——「ハムの柔軟性テストではない」

見た目はハムストリングスの柔軟性テストですが、Gray Cookは「これはハムのテストではない」と明言しています。実際に見ているのは「下肢の分離動作と、腰・骨盤のコントロール」。片脚を上げている間、反対脚を伸ばしたまま床に留めておけるかが要点で、身体の前面・後面・骨盤コントロール・足関節のすべてが関わります。ストレッチだけでは伸び悩み、コントロールの練習を足すと動く——そういう項目です。

見えるサイン背景にありやすいもの打ち手の例
そもそも脚が上がらないハムストリングスの柔軟性不足大腿後面のSMR、アクティブハムストリングストレッチ
反対の脚が床から浮く股関節伸展を保てない(大腿前面・腸腰筋の硬さ)腸腰筋・大腿直筋ストレッチ、アクティブレッグローワリング
骨盤が回る・浮く腰・骨盤のコントロール不足デッドバグ、グルートブリッジ
つま先の向きを保てない足関節背屈の働きにくさトゥタップ、足関節モビリティドリル
腰の不調とASLR

7研究のメタアナリシス(Alkhathami & Alqahtani, Int J Sports Phys Ther 2024)では、腰痛のある群はFMS合計が1.81点低く(95%CI −3.02〜−0.59)、ASLRを含む7項目中6項目で有意に低いと報告されています。ただしこれらは横断研究で、「動きが悪いから腰が痛む」のか「痛むから動きが悪い」のかは区別できません。年齢・性別・体格の影響も調整されていない点には注意が必要です。

⑥ トランクスタビリティ・プッシュアップ(Trunk Stability Push-Up)

一言で言うと:腕立て伏せの回数テストではありません。公式が明記しているとおり「上半身の筋力テストではない」。押した力が体幹から漏れずに伝わるか、を見ています。

確認する能力:上肢の動きに対して体幹が反射的に(意識する前に)固まるか、上肢を左右対称に使えるか、身体を一枚の板として保てる剛性があるか。

手順:うつ伏せになり、男性は親指が額のライン、女性は親指が顎のラインに来る位置に手を置きます(通常の腕立てよりやや狭く、頭寄り)。膝を伸ばしつま先を立て、身体を一枚板のまま押し上げます。腰が反る、骨盤が先に落ちる、手より先に胸だけが上がるといった「分節して動く」状態は減点。直後に必ずPress-up(脊柱伸展)Clearing Testを行います。

基準
3男性は親指を額・女性は顎の位置で、身体を一枚板として持ち上げられる
2男性は親指を顎・女性は鎖骨の位置(やや易しい手位置)に下げれば持ち上げられる
1易しい手位置でも持ち上げられない、または身体が分節して動く(腰が反る・骨盤が落ちる)
見えるサイン背景にありやすいもの打ち手の例
腰が反る腹横筋・腹斜筋の働きにくさデッドバグ、ロールアウト、各種プランク
骨盤が落ちる体幹全体の支持力不足プランク、マウンテンクライマー
手と身体が同時に動かない反射的な安定性の不足(タイミングの問題)デッドバグ、バードドッグ
左右で押す力が違う片側の上肢・肩甲帯の働きの差片手プランク、ボトムアップ・ケトルベルプレス
この項目だけ、男女で傾向が逆

20研究の性差メタアナリシス(Ahmad et al., Front Physiol 2025)では、FMS合計は女性がやや高い傾向(MD=−0.46, 95%CI −0.83〜−0.08)で、肩の可動性・ASLR・ハードルステップ・ロータリースタビリティで女性が優位。一方、体幹安定性プッシュアップだけは男性が優位でした。女性の方がこの項目で2点から始まるのは珍しくない、ということです。なお、この研究は傷害の発生を扱っていないため、点差がそのまま怪我のしやすさを意味するわけではありません。

⑦ ロータリースタビリティ(Rotary Stability)

一言で言うと:7項目で最も3点が出にくい項目。四つ這いで手と脚を組み合わせて動かすという、大人が日常でまずやらない動作だからです。

確認する能力:上肢と下肢を同時に動かしながらの骨盤・体幹・肩甲帯の多面的な安定性、水平面(回旋方向)での反射的な安定化、対角の協調。

手順:四つ這いになり、板を背骨と平行に置きます。手は肩の真下、膝は股関節の真下、足首は立てた状態から、同じ側の手と膝を前後に伸ばし、続いて同じ側の肘と膝を身体の下で触れさせます。手と膝は板に接したまま。左右それぞれ実施し、同側が難しければ対側(右手と左膝)でも試します。直後に必ずPosterior-rocking(脊柱屈曲)Clearing Testを行います。

基準
3同側(右手+右膝)で、肘と膝を身体の下で触れさせて完了できる
2同側は難しいが、対側(右手+左膝)で完了できる
1対側でも完了できない、または板の上でバランスを保てない
見えるサイン背景にありやすいもの打ち手の例
背骨をひねって代償する回旋方向の制御不足バードドッグ(基本→対側→同側の順)、デッドバグ
支持側の肩がすくむ・崩れる前鋸筋・下部僧帽筋の働きにくさクアドラペッドホバー、プッシュアッププラス
骨盤が横に傾く中殿筋の支持力不足クアドラペッド・ヒップアブダクション、サイドプランク
肘と膝が触れない体幹を丸める協調の不足デッドバグ、リバースクランチ
ロータリースタビリティの臨床的意味

7項目の中で最も代償が出やすく、低めのスコアになりやすいのがこの項目です。背景にあるのは、現代人の「対側の協調動作」(右手と左膝のような交差の連動)が使われにくくなっていること。歩行も走行も本来は対側協調ですが、座位中心の生活では出番が少ない。3点を取れる方は多くなく、2点(対側)から始まる方が大半です。これは「異常」ではなく、生活パターンの反映と考えるのが妥当です。
なお、この項目は2020年の公式アップデートで動作と採点基準が更新され、1点の検出や左右差の拾い上げが改善したと説明されています(具体的な判定基準は公式の会員向け教材にあり、公開情報では未確認です)。

7項目を「合計」ではなく「個別」に読む理由

ここまで各項目を細かく見てきたのには理由があります。近年の研究は、合計点よりも個別項目のほうが情報を持つ可能性を示しているからです。

個別項目に関する近年の報告(いずれも研究途上)

大学バスケットボール選手85名を12ヶ月追跡した研究(Kikumoto et al., Int J Sports Phys Ther 2026)では、合計14点以下という基準は傷害と有意な関連を示さず(AUC=0.52=コイン投げと同等)、一方でディープスクワット2点以下ではオッズ比3.47、項目に重み付けをしたモデルではAUCが0.75まで改善したと報告されています。高校野球投手90名の研究(Shitara et al., Orthop J Sports Med 2025)では、合計点ではなく利き手側のロータリースタビリティの低さが独立した危険因子(オッズ比5.30)でした。
ただしいずれも単一競技・小〜中規模の集団での結果で、そのまま一般の方に当てはめることはできません。「合計点だけを見るのは情報を捨てている」という方向性を示すものとして読むのが適切です。

ただし「項目ごとの点」は合計点ほど安定していない

131研究を統合したメタアナリシス(Wijekulasuriya et al., Sports Med Open 2025)によれば、合計点の評価者間の一致度は高い(r=0.887)一方、個別動作の一致度はκ 0.20〜0.89と大きくばらつきます(特にディープスクワット・ハードルステップ・ロータリースタビリティ)。つまり項目単位では「誰が測っても同じ点」とは言い切れない。だからこそ、点数そのものより「どこで何が起きていたか」を言葉で説明できるかが評価の質を分けます(信頼性の詳細は後述)。

7項目は、変えられる

ここまで「代償」の話が続きましたが、最後に重要な事実を。FMSの各項目は、適切な運動介入で改善することが繰り返し示されています。

介入によるスコア変化のエビデンスと、その限界

20研究1,596名を統合した解析(Huang et al., IJERPH 2022)では、運動介入によって7項目すべてが有意に改善(各項目 +0.37〜+0.57点)し、合計は+3.01点、左右差のあるパターンはリスク比0.40(=6割減)と報告されています。40試験1,604名・平均9週間の最新メタアナリシス(Maleki et al., Sci Rep 2025)でも、コアスタビリティ +2.89点、神経筋トレーニング +2.31点、レジスタンストレーニング +2.21点、ファンクショナルトレーニング +1.74点、FIFA 11+ +1.69点(この項目のみ根拠の確実性は非常に低い)と、おおむね8〜12週で1.7〜2.9点の改善が報告されています。
ただし限界も明確です。著者ら自身が「スコアの向上を、パフォーマンス向上や傷害予防にそのまま外挿すべきではない」と述べており、「点が上がったから怪我が減った」ことを示した無作為化比較試験は、現時点で確認できません。また、スコア上昇の一部はテストに慣れたこと(練習効果)である可能性も指摘されています。

「3点を目指すゲーム」ではない

開発者らは論文の中で、よくある誤解として「点数は高いほど良い、というわけではない」と明記しています。21点満点を取ることが目的ではなく、見るべきは①0点(=痛み)の有無 ②左右差 ③どのパターンが弱いかの3つ。多くの項目は2点あれば「日常やトレーニングを進めるには十分」という考え方です。
ゴルフをされる方は、FMSの7項目に加えて、ゴルフスイングに特化した16項目のスクリーニングを組み合わせると、より競技に近い課題が見えます(TPI 16項目スクリーニング完全ガイド)。

7項目のいずれかで痛みが出た場合

動作中のどの局面であっても痛みがあれば、その項目は0点として扱い、その部位への負荷は止めます。FMSは動作の確認であり、痛みや疾患を診断するものではありません。トレーナーは診断を行いません。Disport Worldでは、痛みが確認された場合整形外科など医療機関の受診をご案内し、その結果を前提にトレーニングを設計します。

「自分はどの項目でつまずいているのか」は、
7つを通しで見て初めて分かります。

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3つのクリアリングテスト
——痛み誘発の確認

結論から言うと、クリアリングテストは「点数をつけないテスト」です。見ているのは動きの巧拙ではなく、その方向に動かしたときに痛みが出るかどうか、それだけ。痛みが出れば(陽性)、関連する本体テストは見た目が何点相当であっても0点として扱い、そこでトレーニングの話をいったん止めて、医療機関での確認に進みます。FMSの中で唯一、「今日はここを鍛えない」という判断につながる仕組みです。

テスト実施タイミング動作痛みが出たら
Shoulder Clearing
(肩)
④ショルダーモビリティの直後・左右とも手を反対側の肩に置き、そのまま肘を上へ向ける④を0点に。肩の確認を医療機関へ
Press-up Clearing
(脊柱伸展)
⑥プッシュアップの直後うつ伏せから手で床を押し、上体を反らす⑥を0点に。腰の確認を医療機関へ
Posterior-rocking
(脊柱屈曲)
⑦ロータリースタビリティの直後四つ這いから殿部をかかとへ、胸を太ももへ近づける⑦を0点に。腰の確認を医療機関へ

※ 本記事で扱う3つは、FMSの中核となる痛み確認テストです。2020年の公式アップデートでは、インラインランジの直後に行う足関節クリアリングテストが追加され、現行仕様のクリアリングは4種になりました。ただしその判定基準の詳細は公式の認定コース内で扱われる非公開情報のため、本記事では公開情報が揃う3種を解説します。

① Shoulder Clearing Test(肩の痛み確認)

手順:立位で片手を反対側の肩の上に置き、その位置を保ったまま肘を上方へ向けて挙げます。左右両方で行います。肩の前上方でスペースが狭くなる古典的な肢位で、「可動域は足りているのに、ある角度だけ痛い」という状態を拾うために設計されています。

なぜショルダーモビリティ単体では足りないのか

④ショルダーモビリティは「背中で両拳がどれだけ近づくか」を距離で測るテストです。距離という物差しは客観的で信頼性も高い一方、「その距離を痛みなく出せているか」までは分かりません。可動域は十分でも特定の角度で痛みが出るケースは、距離だけを見ていると素通りしてしまいます。この抜けを塞ぐのがShoulder Clearingです。

陽性のとき医療機関で確認される代表例には、肩の前上方でのインピンジメント、肩峰下の炎症、腱板まわりの問題などがあります。ただし原因を判断するのは医師の役割で、私たちトレーナーが診断することはありません。この結果を持って整形外科などの受診をご案内します。

② Press-up Clearing Test(脊柱伸展の痛み確認)

手順:うつ伏せから手のひらを床につけ、肘を伸ばして上体を反らします(いわゆるプレスアップ/コブラの姿勢)。腰を反る方向に最大限動かして、痛みの有無だけを確認します。

この確認をせずに体幹トレーニングへ進むのは、「反ると痛む腰」に、反りやすい種目を積み上げることになりかねません。プランクもプッシュアップも、疲れてくると骨盤が落ちて腰が反ります。先に「反って痛くないか」を確かめる順序に意味があります。

③ Posterior-rocking Clearing Test(脊柱屈曲の痛み確認)

手順:四つ這いから手を前方へ遠く伸ばしたまま、殿部をかかとへ、胸を太ももへ近づけるように後方へ座り込みます(チャイルドポーズに近い動き)。腰と股関節を最大限曲げる方向の確認です。

②の伸展と③の屈曲はセットで意味を持ちます。腰まわりの不調は「反ると痛い」「丸めると痛い」で対応がまったく変わるためです。両方向を確認して初めて、「どの方向なら安全に動かせるか」という次の判断に進めます。

クリアリングテストの手順と「陽性なら該当項目0点」というルールは、Cook G, Burton L, Hoogenboom B. NAJSPT 2006;1(2):62-72/1(3):132-139 に記載されたものです(2014年にIJSPT 9(3):396-409/9(4):549-563として再掲載され、再掲載版ではVoightが著者に加わっています)。

最新研究が示す「痛みの確認」の重み

クリアリングテストは地味な脇役に見えますが、近年の研究はむしろこちらの重要性を高める方向で結果が出ています。

「14点以下」より「痛みが出たこと」のほうが情報量が多い

軍人の筋骨格系の傷害リスク要因を整理したメタアナリシス(Rhon DI, et al. European Journal of Sport Science 2022/170研究をスクリーニングし46研究をメタ解析)では、FMS中に痛みが出たこと(RR 1.70)のほうが、合計スコア14点以下(RR 1.42)よりも、その後の傷害と強く関連していました。参考までに、同じ解析での既往歴はRR 1.54、高BMIはRR 1.36です。

つまり、点数を1点上げる話より先に「痛みが出る動きがあるかどうか」を確かめるほうが、実務的な優先度は高い。ただしこれは軍人集団のデータであり、個人の将来を言い当てる数字ではありません。あくまで「どこから手をつけるか」の順番の根拠として使うべきものです。

クリアリングテストで痛みが出たときの対応

クリアリングテストは痛みの有無を確認するもので、診断ではありません。痛みが誘発された場合、自己判断でトレーニングを続けず、整形外科など医療機関での確認をおすすめします(どのような検査を行うかは医師の判断です)。Disport Worldでは、代表・岡本隼人(日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー/JSPO-AT)の知見をもとに、こうした場合は医療機関の受診をご案内し、その結果を前提にトレーニングを設計します。痛みのある部位に負荷をかけたまま進めることはしません。

Kiesel 2007 NFL研究
——14点カットオフのエビデンスと限界

先に結論を書きます。「14点」は危険ラインというより、多くの集団の“真ん中あたり”の値です。だから14点だった方が過度に不安になる必要はなく、17点だった方が安心してよいわけでもありません。この節では、14点という数字がどこから来て、その後の19年で何が分かったのかを、都合の悪い結果も含めて整理します。

FMSは現在、NFLやNHLのチーム、米軍の傷害予防研究プログラムなどで活用実績があり、大学スポーツでも広く用いられています。その普及のきっかけになったのが、Kiesel・Plisky・Voightによる2007年のNFL研究でした。

論文情報

タイトル:Can Serious Injury in Professional Football be Predicted by a Preseason Functional Movement Screen?
著者:Kyle Kiesel, Phillip J Plisky, Michael L Voight
掲載誌:North American Journal of Sports Physical Therapy 2007;2(3):147-158
PMID:21522210 / PMCID:PMC2953296

研究デザイン:NFLの1チーム(n=46)にシーズン前FMSを実施し、シーズン中の重傷(3週間以上の離脱)を追跡。ROC曲線で最適なカットオフ値を求めました。

指標読み方
負傷選手の平均スコア14.3 ± 2.314点前後に分布
非負傷選手の平均スコア17.4 ± 3.117点前後に分布
カットオフ値14点この46名のデータからROC曲線で算出された値
オッズ比11.67この1チームでは14点以下の群に負傷が集中した。ただし小規模研究で推定の幅が広く、後続研究でこの水準は再現されていない
感度54%負傷した選手の約半数しか、14点以下では拾えなかった
特異度91%負傷しなかった選手の多くは14点超だった
陽性尤度比5.92後続研究では1.7〜1.8まで下がる(後述)

この研究の意義は、「動きの質の低下が、客観的に測れる数字として傷害と関連しうる」ことを最初に示した点にあります。一方で、押さえておくべき前提が3つあります。①対象は単一チーム46名のパイロット研究であること、②感度54%——つまり「14点超でも約半数の負傷者を見逃す」こと、そして③FMSの開発元自身が、この研究について「決定的とは程遠い(far from definitive)」と述べていることです。11.67という数字だけが独り歩きしてきたのが、この19年間の実情でした。

追試は割れ、「カットオフを最適化する」という逃げ道も閉じた

集団(研究)報告された内容読み取り
米海兵隊士官候補生874名
(O'Connor et al. 2011)
14点以下で傷害リスクが1.65〜1.91倍(相対リスク)14点カットオフを部分的に支持
Division I大学アメフト
(一研究)
最適カットオフとして18.5が算出されたが、統計的有意性はなし最適値は集団によって大きく変動する
エリートジュニア豪州フットボール809名
(Moore et al. J Sports Sci 2023)
≤14/≤13/≤12のいずれも臨床的に意味のある関連なし閾値を下げても解決しない
大学バスケットボール85名・12ヶ月追跡
(Kikumoto et al. 2026)
合計≤14は有意でなく、AUC 0.52合計点だけならコイン投げと同水準
プロサッカー169名・5シーズン
(Bayrak 2025)
単一シーズン・全期間ともFMSは傷害を予測せず競技によっては明確に否定的
体育専攻の学生355名
(Shao et al. 2026)
15点前後を閾値にAUC 0.834と良好肯定的な報告も残る(単施設・短期追跡)
決定打になった2023年の研究——「閾値をいじっても答えは出ない」

エリートジュニア・オーストラリアンフットボール選手809名を追跡したMooreらの研究(J Sports Sci 2023)は、≤14・≤13・≤12という3つの閾値を同じデータで直接比較しました。結果は明快です。

≤14:直近の怪我歴がある場合のみRR 1.45。怪我歴がない場合はRR 0.98(=関連なし)
・最良の条件だった≤12かつ怪我歴ありでも、RR 1.59/感度0.35・特異度0.80

著者の結論は、「3つの閾値のいずれも臨床的に意味のある関連を示さず、既往歴を尋ねる以上の情報は得られない」。「14がダメなら12にすればいい」という調整の余地は、ここでほぼ閉じました。

「14点」の正体——リスクの線ではなく、集団の真ん中

近年になって、もっと素朴な事実が見えてきました。そもそも14点前後は、多くの集団の平均値そのものだったということです。

14.06
小児・青少年(10-17歳)の
加重平均スコア
O'Brien 2022 / 19研究
15.7
活動的な成人の
平均スコア(±1.9・男女差なし)
Schneiders 2011
0.52
合計点で傷害を
見分ける精度(AUC)
Kikumoto 2026 / 大学バスケ

小児・青少年19研究を統合したレビュー(O'Brien W, et al. Sports Medicine 2022)の加重平均は14.06点。英海軍新兵957名の平均も男性14.6・女性14.4でした。14点は「危険域」として設計された数字ではなく、多くの集団の中央値に近い——この読み替えができるようになったのが、ここ数年の最大の変化です。

一方、活動的な成人の平均は15.7点(Schneiders AG, et al. 2011/男女差なし)と報告されています。21点満点が普通なのではありません。15点前後が「ふつう」で、そこから低い項目を一つずつ整えていけば十分だ、というのが実態に近い理解です。

集団では弱い関連、個人では使えない——診断精度の話

この分野でよく引かれるのが、2019年にBMJ Open Sport & Exercise Medicineで報告された系統的レビュー(Trinidad-Fernandezら)です。13研究をレビューし、プールされたオッズ比は1.86(95%CI 1.32–2.61)。ただし研究間のばらつきが大きく(I²=70%)、著者の結論は「関連は不明確」でした。同じ年のPhys Ther Sport誌のレビュー(Bunnら)もRR 1.51と報告しつつ、エビデンスの確実性は「very low」と評価しています。

重要なのは、「集団として弱い関連がある」ことと「あなた個人のリスクが判定できる」ことは別だという点です。個人の選別に使えるかを測る指標を並べると、この差がはっきりします。

感度は概ね22〜48%:「低スコアの人を要注意とする」やり方では、実際に負傷する方の半分以上を取りこぼします(複数研究をレビューで整理した値/Eckart AC, et al. Sports 2025 ほか)。
FMS合計点単独のAUCは0.58前後(多因子モデルでは0.64〜0.73):1.0が完璧、0.5が当てずっぽう。0.6前後は「ほとんど区別できていない」水準です。
陽性尤度比は1.7〜1.8:Kiesel 2007の5.92から大きく下がりました。この水準では、検査前に持っていた見立てをほとんど動かしません。
説明力は限定的:英海軍新兵957名の研究(Gibbs J, et al. BMJ Military Health 2025)では、13点以上で2.6倍という関連が出た一方、R²=0.1——傷害リスクのばらつきの10%しか説明していませんでした。著者の結論は「FMSスコア単独は傷害予測ツールとして不適切」です。

研究の関心は「合計点」から離れつつある

否定的な結果が積み上がった結果、いま研究が向かっているのは「合計21点を1つの数字に潰さない」方向です。

個別項目のほうが情報を持つ:大学バスケ選手85名の追跡(Kikumoto et al. 2026)では、合計点のAUCが0.52だったのに対し、ディープスクワット2点以下でオッズ比3.47。項目に重み付けをしたモデルではAUCが0.75まで改善しました。高校野球投手90名の研究(Shitara et al. 2025)でも、合計点ではなく利き手側のロータリースタビリティの低さが独立した危険因子(OR 5.30)として挙がっています。
痛みの有無が効く:前節のとおり、軍人メタでは「FMS中の痛み(RR 1.70)」が「14点以下(RR 1.42)」を上回りました。
単独ではなく多因子で:FMSとYバランステストを検証したレビュー(Eckart et al. Sports 2025)は、合計点は単独では臨床的関連性を欠くとし、練習量の増減・既往歴・体力データを組み合わせた多因子モデルへの移行を推奨しています。
競技特異性は別枠で見る:FMSが見るのは自体重レベルの基礎動作までです。ゴルフのように回旋と分離動作が主役の競技では、TPIスクリーニング16項目のような競技特異的な確認を重ねる必要があります。
では、FMSは意味がないのか——Disport Worldでの位置づけ

いいえ。位置づけを間違えなければ、有用です。FMSは「怪我を予防できる装置」ではなく、「リスク要因の早期発見と、段階的なプログラム設計に役立つ共通のものさし」——予防効果そのものは、いまも研究途上です。

Disport Worldでは、合計点を「ランク付け」には使いません。使うのは次の3つです。
0点(痛み)があるか——あれば医療機関へご案内し、その部位の負荷は止める
どの項目が低く、左右差がどこにあるか——ここが実際のメニューを決める
4〜8週後に同じ物差しで測り直したときの変化——順序が正しかったかの答え合わせ

「14点だから危ない」と言うためのツールではなく、「今日は何から始めるか」を決めるための地図として使う。これが、現在のエビデンスに照らして誠実な使い方だと考えています。

FMSの信頼性
——科学的にどこまで当てになるか

結論から言うと、「訓練された人が測れば、合計点はかなり安定して同じ数字が出る」。ただし、安定して測れることと、その数字が役に立つことは別問題です。この2つを分けて考えるのが、2020年代の研究がたどり着いた到達点です。ここは記事の中で最も誠実さが問われる部分なので、都合の悪いデータも含めて書きます。

0.89
合計点の検者間信頼性
(131研究の統合値・r)
Wijekulasuriya 2025
2.54点
最小可検変化(MDC)
21点満点中
meaningful change
0.60
訓練不足の評価者だけで
採点した場合のICC
Ab Malik 2025

合計スコアの信頼性は「良好〜優秀」で一貫している

ICC(級内相関係数)は、別の人が採点しても/同じ人が時間をおいて採点しても、どれだけ同じ数字になるかを表す指標です。1に近いほど一致が高く、一般に0.75超で「良好」、0.90超で「優秀」とされます。FMS合計スコアについては、この10年で結論が動いていません。

研究対象合計スコアの信頼性
Cuchna et al. 2016
(Phys Ther Sport/7研究のメタ)
従来版FMS検者間 ICC 0.843/検者内 0.869
Bonazza et al. 2017
(Am J Sports Med/メタ)
従来版FMS検者間 ICC 0.81/検者内 0.81
Morgan et al. 2023
(IJSPT)
改訂版FMS・動画評価ICC 0.95(最高=ロータリースタビリティ0.96/最低=ディープスクワット0.78)
Wijekulasuriya et al. 2025
(Sports Med Open/131研究の多階層メタ)
動作の質評価全般(FMSが63%)検者間 r 0.887/検者内 r 0.939

2020年の改訂(足関節クリアリングテストの追加、ロータリースタビリティの採点基準変更)を経ても、合計点の信頼性は維持されています。「別のトレーナーが測っても、合計点はだいたい同じになる」——ここは安心してよい部分です。

「改善した」と言うには、2.5点以上の変化が必要

実務的に最も大切な数字がこれです。FMS合計スコアの測定誤差(SEM)は約0.92点、最小可検変化(MDC)は約2.54点と報告されています。つまり「合計点が2.5点を超えて変われば、測定の誤差ではなく本当に変わった可能性が高い」。逆に言えば、14点が15点になった程度の1点の動きは、誤差の範囲かもしれない、ということです。

ここで面白いのは、介入で実際に得られる改善幅が、ちょうどこの境界線あたりにあることです。40試験・1,604名を統合した2025年のメタアナリシス(Maleki et al. Scientific Reports)によれば、平均9週間の介入による合計スコアの改善幅は、コアスタビリティ系で+2.89点、神経筋トレーニングで+2.31点、レジスタンストレーニングで+2.21点、ファンクショナルトレーニングで+1.74点、FIFA 11+で+1.69点(この項目のみエビデンスの確実性は very low)でした。

この数字を読むときの2つの注意

① 「上がった」と胸を張れるのは2.5点超から。2ヶ月の努力で+1.7点なら、統計的には「誤差と区別がつかない可能性が残る」水準です。私たちが再確認の結果をお伝えするときも、この基準を踏まえて言葉を選びます。

② スコアが上がったこと=怪我が減ったこと、ではありません。Maleki 2025の著者自身が「FMSスコアの向上を、パフォーマンス向上や傷害予防に直接外挿することには慎重であるべき」と明記しています。さらにEckart 2025は、多くの介入研究が練習効果(テストに慣れることによる上昇)を統制していないと指摘しています。2回目のスクワットが上手いのは、動きが良くなったからかもしれないし、単に段取りを覚えたからかもしれない——この区別がまだついていません。

信頼できるのは「合計点」で、項目ごとの一致度はばらつく

合計点が安定していても、7項目それぞれの採点はそこまで揃いません。131研究を統合したWijekulasuriya 2025では、個別動作の一致度(κ係数)は検者間 0.63±0.34(範囲0.20–0.89)、検者内 0.57(0.27–0.89)と、研究によって極端にばらついていました。

項目別に見ると傾向は一貫しています。距離を測るショルダーモビリティは最も安定(ICC 0.96〜0.98)、複雑な動的バランスを見るハードルステップは最も不安定(ICC 0.30〜0.35)(Smith CA, et al. J Strength Cond Res 2013)。改訂版を用いたMorgan 2023でも、最も低かったのはディープスクワット(0.78)でした。ものさしで測れる項目は揺れず、「どこまでを代償と見るか」の判断が入る項目は揺れる——直感どおりの結果です。

だからこそ、「合計点は信頼できるが、項目ごとの解釈の確かさは同じではない」と理解しておく必要があります。ハードルステップが1点だったからといって、その1点だけを根拠に断定的な話をするのは適切ではありません。

採点者の訓練量で、数字そのものが変わる

見落とされがちですが、これは決定的な要素です。2時間程度の講習を受けた評価者であれば、合計点のICCは0.87〜0.89に達します(Smith 2013)。一方、まったく未経験の評価者12名に1回限りの講習だけを行った条件では、合計点のICCが0.60、7項目の平均は0.35まで落ちました(Ab Malik Z, et al. Malays J Med Sci 2025)。

同じテストでも、誰が測るかで数字の信頼度が変わる。「FMSは信頼性が高い」という主張は、正確には「訓練された評価者が測れば」という条件つきです。

平均点はどのくらいか——「15点前後がふつう」

満点を目指すテストではありません

活動的な成人の合計スコアの平均は15.7±1.9点(Schneiders AG, et al. 2011/男女差なし)。小児・青少年(10-17歳)を対象とした19研究の加重平均は14.06点(O'Brien 2022)と報告されています。

性差については見解が分かれます。Schneiders 2011は男女差なしとし、20研究を統合した2025年のメタアナリシス(Ahmad et al. Frontiers in Physiology)は女性がやや高い(差は0.46点)としました。ただし0.46点という差は、前述のMDC 2.54点よりはるかに小さく、実務上は「ほぼ差がない」と考えて差し支えない水準です。

そしてFMSの開発者自身が「高い点数が必ずしも良いわけではない」と述べています。21点満点を目指すテストではなく、0点(痛み)をなくし、左右差を減らし、低い項目を整えていくための道具です。

最も誠実な限界——「安定して測れているが、何を測っているかは検証途上」

最後に、2019年時点では存在しなかった、より根本的な論点に触れておきます。2025年、43研究を検討したレビュー(Bhudarally M, et al. Journal of Bodywork and Movement Therapies)は、FMSのスコアと、他の安定性・関節可動域テストの結果との間に、期待されるような相関が確認できなかったと報告しました。著者らの表現を借りれば、FMSは安定性・可動性の評価に関する収束的妥当性を持たないと思われる、という結論です。

ただし著者自身が、比較に使われた測定側の質の低さが原因である可能性も指摘しており、より質の高い基準での再検証が必要だとしています(43研究すべてが方法論的質「弱い」と評価されました)。つまり「FMSが間違っている」と確定したわけではなく、「FMSが可動性と安定性を測っているという前提が、まだ十分に検証されていない」という段階です。

まとめると、現在のFMSは「安定して同じ数字を出せることは確かめられている。その数字が何を意味するかは、いまも検証が続いている」ツールです。これは弱点であると同時に、使い方の指針でもあります。FMSは体の状態を言い当てる装置ではなく、トレーナーとお客様が同じものを見て話を始めるための共通のものさし。そう位置づければ、限界を知った上でも十分に役立ちます。

点数を出すことと、その先の解釈は別の仕事

ここまで見てきたとおり、点数を出すだけなら、講習を受けた人であれば誰でもある程度できます(合計点のICCは訓練後0.87〜0.89)。難しいのはその先です。

・その1点差は誤差なのか、意味のある変化なのか(MDC 2.54点の判断)
・低かった項目の背景に何があるのか(可動域か、安定性か、単に動作の段取りか)
・どの順序で整えれば、代償を固定化させずに済むのか
・クリアリングテストの反応をどう扱い、いつ医療機関へつなぐのか

Disport World代表の岡本は、JSPO-AT(日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー)・TPI認定(Fitness 2/Power 2)・NASM-PESの3資格を保有し、INDIBA® EDNA PRO MAXを導入しています。この組み合わせを併せ持つトレーナーは多くありません。累計20,000セッション以上の指導で積み上げてきたのは、点数を出す技術ではなく、点数の先を読んで、次の8週間を設計する判断のほうです。

「自分はどの項目が低いのか」「その変化は誤差なのか、本物なのか」——
数字の意味は、実際に動きを見てからのほうが正確にお伝えできます。

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FMS・SFMA・TPIスクリーニングの使い分け

結論から言うと、選び方は2つの質問で決まります。「いま痛みがあるか」——これがFMSとSFMAの分岐点。「ゴルフを身体から変えたいか」——これがTPIスクリーニングを足すかどうかの分岐点です。3つは競合する検査ではなく、入口・深掘り・競技特化という役割分担だと考えてください。

30秒でわかる振り分け

Q1. いま痛みがありますか?
 → ないFMS(本記事)。動きの質を21点で確認し、どこから整えるかを決めます。
 → ある:まず医療機関へ。並行してSFMA的アプローチで「痛みと関わる動作パターン」を丁寧に確認します。

Q2. ゴルフのパフォーマンスを身体から改善したいですか?
 → はい:FMSにTPIスクリーニング(16項目)を追加し、基礎とスイング特異的な制限を両面から見ます。
 → いいえ:FMSだけで、日常動作とトレーニングの方向づけには十分機能します。

枠組み対象目的構成Disportでの用途
FMS痛みのない方動きの質のスクリーニング7つの基本動作を0〜3点で採点(21点満点)+痛みを確認するクリアリングテストトレーニング開始前の動作確認
SFMA的アプローチ痛みのある方痛みに関わる動作パターンの確認10の基本動作を「機能的か/痛みが出るか」で分類し、そこから分解して絞り込む慢性的な不調・既往のある方(医療連携が前提)
TPIスクリーニングゴルファースイングに影響する身体的制限の確認16項目(胸椎回旋・股関節の内外旋・分離動作など)ゴルフパフォーマンスプログラム

FMSとSFMA——「痛みの有無」が分岐点

FMSは公式にも一貫して「screen(ふるい分け)」と呼ばれ、診断的な検査とは明確に区別されています。対象は「現在痛みや外傷のない方」。痛みがある状態でFMSを続けても、点数は「痛みで動けない」ことを反映するだけで、次の一手が見えてこないからです。

対してSFMA(Selective Functional Movement Assessment/選択的機能的動作評価)は、「痛みのある方」を対象とした、より専門的な確認の枠組みです。10の基本動作パターンを、次の4つの組み合わせで分類していきます。

機能的・痛みなし:問題のないパターン。ここは負荷をかけて伸ばしてよい領域。
機能的・痛みあり:動けてはいるが痛みが出る。医療機関での確認が優先されます。
機能不全・痛みなし:痛みはないが動きが崩れている。多くの場合、ここが改善の主戦場。
機能不全・痛みあり:最も慎重を要する組み合わせ。トレーニングより先に医療的な確認を。

さらにSFMAでは、崩れが見つかったパターンを「分解して」——荷重をなくす、片方の関節だけ動かす、といった条件を変えながら——原因が可動性の側にあるのか、動きを制御する側にあるのかを絞り込みます。この枠組みは医療資格を持つ専門家向けに設計されたものです。

Disport Worldでは、岡本のJSPO-AT(日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー)としての知見を活かし、FMSで痛み(0点)が出た方や既往のある方には、より丁寧な確認を行います。ただしトレーナーは診断をしません。痛みが確認された場合は整形外科などの受診をご案内し、その結果を前提にプログラムを設計します。SFMAの考え方そのものについてはSFMA(選択的機能的動作評価)の解説記事で詳しくまとめています。

TPIスクリーニングとの関係——ゴルファーの場合

TPI(Titleist Performance Institute)のスクリーニングは、ゴルファー向けの身体機能チェック(16項目)です。オーバーヘッドディープスクワットやASLR(仰向けで片脚を上げる動き)のようにFMSと発想を共有する項目もありますが、TPIが見ているのはゴルフスイングに直結する制限——胸椎の回旋、肩甲帯の分離、股関節の内旋・外旋、骨盤と胸郭を別々に動かせるか、といった要素です。

なぜ両方必要なのか。理由はシンプルで、FMSが見ているのは「自体重・左右対称・低速」の基礎動作だからです。ゴルフスイングは片側性で、高速で、回旋が主役。この差はFMSの点数だけでは埋まりません。実際、FMSの原典自体が「これは自体重レベルの基礎動作を見るスクリーンであり、競技パフォーマンスの判定には別の評価が必要」と明言しています。

ゴルファーの方には、FMSで基礎の動きを、TPIでスイング特異的な制限を——という組み合わせが有効です。岡本はTPI認定(Fitness 2/Power 2)を保有しており、この両面からの確認に対応できます。16項目それぞれの内容はTPIスクリーニング16項目の完全ガイドで解説しています。

3つに共通する1本の線

FMS・SFMA・TPIは別々のツールに見えますが、共通しているのは「痛みのラインをどこに引くか」という考え方です。FMSの原典では、FMSは「痛みのラインより上、専門的なスキルテストより下」に位置づけられています。痛みのラインより下は医療的な評価の領域、上はまず動きの土台、そのさらに上が競技特異的なパフォーマンス。自分がいまどの階層にいるかを取り違えないこと——これが3つを使い分ける唯一の目的です。

確認後のプログラム設計
——Corrective Strategies

FMSの点数そのものには、ほとんど価値がありません。価値が生まれるのは、その点数が「今日から何をやるか」に変換された瞬間です。この変換の作法を、FMSではCorrective Strategies(矯正戦略)と呼びます。Gray Cook著『Movement: Functional Movement Systems—Screening, Assessment, Corrective Strategies』(2010)で体系化された考え方を、実践の形で解説します。

基本原則——「可動域 → 安定性 → 動作 → パフォーマンス」

最大の原則は「順序を守ること」。下の層を整えてから、上の層に進みます。

Performance筋力・スピード・パワー(最後に応用)
Movement動作パターンの協調(ヒップヒンジ等)
Stability動的安定性・コア安定性
Mobility関節可動域・柔軟性(まず最初に)
4つの階層で、実際に何をするのか

① Mobility(可動域)——関節の動く範囲と筋の柔らかさを確保する。
 例:足関節の背屈(すねが前に倒れる動き)、胸椎の伸展・回旋、股関節の屈曲と内旋

② Stability(安定性)——動きの中で関節を支える力を立ち上げる。
 例:肩甲骨の安定、骨盤の安定、体幹が反射的に固まること

③ Movement(動作パターン)——基本の動きを、正しい順序で連動させる。
 例:ヒップヒンジ(股関節から折る)、スクワットパターン、回旋動作

④ Performance(パフォーマンス)——ここで初めて負荷とスピードを乗せる。
 例:デッドリフト、各種挙上種目、ジャンプ系のトレーニング

この順序を飛ばすと、「弱い土台の上に強い動作を積み上げる」ことになり、代償動作が固定化しやすくなります。たとえば足関節の背屈が制限されたまま高重量のスクワットを続ければ、しゃがむ深さを稼ぐために腰が丸まる、膝が内に入る、といった逃げ道が生まれ、負担が膝や腰に偏りがちです。公式が繰り返し言っているのも同じことで——「機能不全の上にフィットネスを積み上げるな」。これが優先順位の話のすべてです。

FMSスコア別・矯正の優先順位

低かった項目ごとに、まず何を疑い、どこから整えるか。実際の設計の骨格は次のようになります。

低かった項目起きていると考えられること優先して整える領域代表的なエクササイズ例
ASLR上げる側の股関節の可動性不足と、反対脚を伸ばしたまま骨盤を保つ力の不足。ハムストリングス・腸腰筋の硬さも関与下肢の分離+腰骨盤コントロールアクティブレッグローワリング、デッドバグ、ハムストリングス・腸腰筋のストレッチ
ショルダーモビリティ胸椎の伸展・回旋不足と肩甲帯の安定不足。デスクワーク中心の生活で最も出やすい胸椎モビリティ+肩甲帯の安定オープンブック、ウォールスライド、YTW、スリーパーストレッチ
ロータリースタビリティ右手と左膝のような対側の協調が使えていない。歩行・走行の基本パターンでもある体幹の多軸安定性バードドッグ、デッドバグ、クアドラペッドホバー
プッシュアップ筋力ではなく、体幹が反射的に固まるまでの時間差。腰が先に落ちる、タイミングがずれる体幹の反射的安定性プランク、ロールアウト、プッシュアッププラス
ハードルステップ片脚立位の安定と、上げる側の股関節を単独で曲げる分離の不足片脚安定+股関節屈曲シングルレッグスタンス、ハーフニーリングでの腸腰筋ストレッチ
インラインランジ後ろ脚の股関節伸展の制限と、支持面が狭い中での前後方向の安定不足矢状面の安定+股関節伸展カウチストレッチ、サイドプランク、ボトムズアップKBキャリー
ディープスクワット足関節・股関節・胸椎・肩・体幹が同時に関わる複合動作。単独の原因を特定しにくい全身協調(複合要因)他項目を整えてから最後に
なぜディープスクワットは最後なのか

Cookの教えで重要なのは、「ディープスクワットは矯正の最後に取り組む」こと。スクワットは足関節・股関節・胸椎・肩・体幹のすべてが関わる複合動作です。ここを直接練習しても、どの要素が足を引っ張っているのかが分からないまま、代償の入ったスクワットが上手になるだけ——ということが起こります。

逆に、個別要素(ASLR、ショルダーモビリティ、ハードルステップなど)を先に整えてから再確認すると、スクワット自体を一度も練習していないのに点数が上がっていることがよくあります。「スクワットを直接練習するより、構成要素を整える方が近道」——これがFMSの考え方の核心です。

プログラム例:合計12点の方の8週間

合計FMS 12点(ハードルステップ左1点・ショルダーモビリティ左1点・他は2点)の方を例にした設計イメージです。あくまで一例で、実際は生活習慣・目的・既往に合わせて個別に調整します。

期間テーマ主な内容
Week 1–2Mobility(土台づくり)足関節・股関節まわりのセルフリリース(フォームローラー等)/胸椎モビリティ(オープンブック、キャット&カウ)/肩は左側を重点(スリーパーストレッチ、クロスボディ)/ハーフニーリングでの腸腰筋ストレッチ(左側を重点)/収縮と弛緩を使ったアクティブレッグローワリング(ASLR改善)
週3回・各30〜45分
Week 3–4Stability(安定性)デッドバグ、バードドッグ(多軸の安定)/プランク、サイドプランク/クアドラペッドホバー、プッシュアッププラス(肩甲帯)/片脚立位/ウォールスライド、YTW(肩甲帯後面)
週3回・各45〜60分
Week 5–6Movement(動作統合)ヒップヒンジの習得(棒を背中に当てたルーマニアンデッドリフト)/ゴブレットスクワット(フォーム最優先)/スプリットスクワット(左右差の矯正)/ハーフニーリングでのプレス・プル(多面の協調)
週3〜4回・各60分
Week 7–8再確認+負荷導入FMSを再確認し、変化を数値で共有/整った項目から基本種目(スクワット、デッドリフト等)の負荷を段階的に導入/メディシンボールや軽い跳躍などパワー系を少しずつ追加
週3〜4回・各60〜90分

※改善幅には個人差があります。前述のとおり、合計点で「本当に変わった」と言うには2.5点を超える変化が目安です。1点の増減は測定誤差の範囲かもしれません。

再確認は「4〜6週ごと」が目安

公式が推奨しているのは、4〜6週ごと、または優先して取り組んでいたパターンが改善したタイミングでの再スクリーニングです。動作パターンの変化には神経系が適応する時間が必要で、それより短い間隔では変化を捉えきれません。逆に、半年も測らずに続けるのは、プログラムが効いているのかどうかを確かめないまま走り続けるのと同じです。FMSの再確認は「成績発表」ではなく、プログラムそのものへのフィードバックだと考えてください。

正直に言うと——「点数が上がったから怪我が減る」はまだ証明されていない

ここは誠実に書いておきます。矯正エクササイズでFMSの点数が上がることは、研究上かなりはっきりしています。2025年に報告された40試験・約1,600名を統合したメタアナリシスでは、8〜12週程度の介入で合計スコアが1.69〜2.89点改善したと報告されました(改善幅が最も大きかったのはコアスタビリティ系のトレーニング)。前述の「意味のある変化=2.5点超」という基準に照らしても、届きうる水準です。

+1.7〜+2.9
矯正エクササイズで報告されている
合計点の改善幅(21点満点中)
2025 meta-analysis
0
「点数の改善」が「怪我の減少」に
つながったと直接示した比較試験
2026年7月時点で確認できず

一方で、「FMSの点数が上がったから怪我が減った」ことを直接示した無作為化比較試験は、2026年7月時点で確認できていません。同じメタアナリシスの著者自身が「スコアの向上を、パフォーマンス向上や傷害予防にそのまま外挿することには慎重であるべき」と釘を刺しています。さらに、点数の上昇が「本当に動きが変わった」のか「テストのやり方に慣れただけ」なのかを区別できていない研究が多い、という指摘もあります。

だから当店は「点数を上げること」を目的にしません

私たちがFMSを使うのは、点数を上げるためではなく、「今のあなたに、どのエクササイズを、どの順番で処方するか」を決めるためです。点数はその過程で自然に動きますが、それは目的ではなく副産物。コアトレーニングや神経筋トレーニング自体に価値があることは別途研究の蓄積があり、私たちが根拠を置いているのはそちらです。「点数のためのトレーニング」になった時点で、この道具は本来の役目を失います。

ご自身の7項目がいま何点で、どこから、どの順番で整えるべきか。六本木の完全個室で、確認から設計・その場での説明まで90分で行います。

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毎月先着3名さま半額・税込/手ぶらOK/完全個室/無理な勧誘はありません

FMS Level 1 / Level 2と、FMSの限界

最後に、「誰が採点しているのか」「この道具に何ができて、何ができないのか」を整理します。ここを飛ばした記事は多いのですが、実際に受ける側にとっては最も判断材料になる部分です。

認定はLevel 1とLevel 2の2段階

FMSの認定は、開発元であるFunctional Movement Systems社が提供する公式プログラムで、Level 1とLevel 2の2段階です(2026年7月時点で構成に変更はありません)。

レベル学ぶ内容受講要件・形式主な対象
Level 17項目とクリアリングテストの実施・採点、よくある誤りの識別、基礎的な解釈受講要件なし。オンラインは動画5時間以上・19章構成、認定試験込み(ほかにライブ受講あり)トレーナー、コーチ
Level 2採点結果の解釈、矯正(Corrective Strategies)の設計と実施、再確認の方法、伝え方Level 1が前提。オンラインは動画7時間以上上級トレーナー、理学療法士、アスレティックトレーナー

重要なのは、Level 1は「採点できるようになる」段階、Level 2は「そこから処方に変換できるようになる」段階だということ。前のセクションで見たとおり、FMSの価値の大半は後者にあります。「FMSをやっています」と書かれていても、点数を出すところで終わっているのか、そこから設計まで一本の線でつながっているのかは、まったく別の話です。

認定を持っていること=最新仕様を知っていること、ではない

見落とされがちな点として、スクリーンの内容そのものが2020年に公式アップデートされています(インラインランジの後に足関節のクリアリングテストが追加され、ロータリースタビリティの採点基準が変更されました)。この差分は、有資格者が公式コース内で自ら確認する運用になっているため、古い世代の認定保持者が自動的に新仕様を知っているとは限りません。日本語のネット情報の多くも、まだ更新前の内容のままです。

開発者自身が「よくある誤解」として挙げていること

原典が明言している3つの誤解

FMSの手順を定めた原典は、Cook G, Burton L, Hoogenboom B. NAJSPT 2006;1(2):62-72/1(3):132-139。これは2014年にIJSPT 9(3):396-409/9(4):549-563として再掲載されています(再掲載版でVoightが著者に加わります)。その中で開発者自身が挙げている誤解が、そのままFMSの限界を示しています。

誤解①「FMSは診断のための検査だ」——原典は、診断的な検査や評価として意図されたことは一度もない、と明記しています。整形外科的な問題を診断する道具ではありません。

誤解②「点数が高いほど競技力も高い」——FMSが見るのは自体重レベルの基礎動作。競技パフォーマンスの判定には別の評価が必要です。

誤解③「21点満点を目指すべき」——原典は「点数は高ければ良いというものではない」と述べています。合計点よりも、左右差と0点(痛み)の有無の方が重要です。2点は多くの場面で「必要十分」であり、動作の完璧さを追う競技ではありません。

FMSの限界も正直に知っておく

FMSは有用な枠組みですが、万能ではありません。次の限界を理解した上で使うことが大切です。

対象集団によって見え方が変わる:軍人や成人のコンタクト競技選手では低スコアと怪我の弱い関連が繰り返し報告される一方、ジュニア世代やサッカー、野球では関連が示されない研究が目立ちます。「万人に共通する魔法の点数」は存在しません。
個人の予測には使えない:低スコアで実際の負傷者を拾える割合(感度)は各研究で低く、前述のKiesel 2007ですら54%です。集団の傾向として弱い関連が観測されることと、目の前の一人の将来を当てられることは、まったく別です。
「14点」は危険ラインではなく、集団の真ん中に近い:活動的な成人の平均は15.7±1.9点(Schneidersら/男女差なし)、小児・青年を対象とした19研究の加重平均は14.06点と報告されています。14点前後は「異常」ではなく、多くの人がいる帯です。
合計点は安定していても、項目ごとの判定は揺れる:複数の評価者による一致度は項目によってばらつきが大きく、ハードルステップのように差が出やすい項目があります。訓練が不十分な評価者だけで採点すると、合計点の信頼性自体も落ちます。
合計点の1点差は誤差の範囲のことも:意味のある変化と言うには2.5点超が目安(前述)。
「何を測っているのか」自体に議論がある:2025年に報告された43研究のレビューでは、FMSのスコアと他の可動性・安定性テストの間に一貫した相関が見られず、「可動性と安定性を測っているという前提は確認しきれていない」と結論されました。ただし著者自身が、比較対象となる検査側の研究の質の低さも一因と指摘しています。
動作パターンしか見ていない:心肺機能・最大筋力・スピード・持久力などは、別の確認が必要です。
競技特異性は補えない:ゴルファーにはTPI、他競技にはそれぞれの確認との組み合わせが望ましい。
痛みのある人には使わない:これは限界というより設計上の前提です。痛みがある場合は、まず医療機関での確認が先になります。
1.86
低スコアと怪我のオッズ比
(2019年・13研究の系統的レビュー)
結論は「関連は不明確」
15.7 ± 1.9
活動的な成人の合計点の平均
(Schneidersら・男女差なし)
21点満点が普通ではない
それでもFMSを使う理由

限界を並べたうえで、なおFMSが世界中で使われ続けているのはなぜか。NFLやNHLのチーム、米軍の傷害予防研究プログラムなどで活用実績があり、大学スポーツでも広く用いられているのは、「共通のものさしで、痛みのない人の動きの質を、15〜25分で・何度でも確認できる」枠組みだからです。開発元自身も「単独の傷害予測ツールではない」と明記しており、既往歴・現在の痛み・生活要因などと組み合わせて初めて価値が上がる、という立場を取っています。

正確に言えば、FMSは「怪我リスク要因の早期発見と、段階的なプログラム設計に役立つ道具」です(予防効果そのものは研究途上)。完璧な予測装置としてではなく、「どこから整えるかを決める出発点」として使う。この使い方なら、限界を知っていることは弱点ではなく、そのまま処方の精度になります。

Disport Worldでの動作確認の特長

結論から言えば、Disport Worldの動作確認は点数をつけて終わりにしないことに尽きます。ここまで見てきたとおり、FMSは「合計点で将来の怪我を言い当てる装置」ではありません。価値が出るのは、点数から優先順位を決め、数週間後に同じものさしで測り直し、変化を追うという使い方をしたときです。その運用を成り立たせるために、Disport Worldが用意している5つの条件を整理します。

20,000+
累計セッション
90分
体験セッション
(完全個室)
2016年
六本木にて
開設

特長①|「確認」から「その先」までを、同じ考え方でつなぐ

岡本隼人はJSPO-AT・TPI認定(Fitness 2/Power 2)・NASM-PESの3資格を保有し、INDIBA® EDNA PRO MAXを導入しています。この組み合わせを併せ持つトレーナーは多くありません。動作の確認・矯正・トレーニング・コンディショニングが別々の人・別々の理屈で提供されると、前の工程で見つけた課題が次の工程で消えてしまいます。同じ枠組みで最後までつなげられることが、遠回りを減らします。

JSPO-AT(日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー):スポーツ現場での外傷・障害への対応とコンディショニングを学ぶ公認資格です。トレーナーは診断を行いません。確認中に痛みや神経症状が出た場合は、その場で整形外科など医療機関の受診をご案内し、受診結果を踏まえて内容を組み立て直します。
TPI認定(Fitness 2/Power 2):FMSと共通する「動作を階層で見る」考え方を、ゴルファー向けに拡張した評価体系です。ゴルフが目的の方には、FMSの7項目に加えてゴルフ特有の視点を重ねられます(TPIスクリーニング16項目の全解説)。
NASM-PES:確認の結果を「では何から、どの順で、何週間やるか」という矯正プログラムに落とし込むための体系です。FMSは課題を示しますが、処方そのものは示しません。その空白を埋める役割を担います。
INDIBA® EDNA PRO MAX:ご希望に応じて用いる温熱ケア機器です(当店の保有機は医療機器ではありません)。医療行為ではなく、動きにくさが残る部位をトレーニング前に温めるなど、コンディショニングの一助として使います。

特長②|「再確認の精度」を保つための担当制

FMSの核心は再確認(re-screen)にあります。公式が推奨するのは4〜6週ごと、あるいは優先パターンが改善したタイミングでの測り直しです。ところが、初回を見た人と再確認する人が違うと、点数の変化が「身体が変わったから」なのか「見る人が変わったから」なのか区別がつかなくなります。

これは感覚論ではありません。2025年の統合解析(131研究)では、合計スコアの検者間一致は r=0.887と高い一方、7項目それぞれの一致度はκ 0.20〜0.89と大きくばらつくと報告されています。さらに、1回限りの講習しか受けていない評価者では合計点のICCが0.60まで落ちたという報告もあります。「誰が、どれだけ訓練を積んで見るか」で、細部の判定は変わりうるのです。

Disport Worldは完全予約制・担当制で、初回の確認から再確認まで同じ担当が継続して関わります。長く通い続けてくださる方が多いことは、そのまま「同じ目線で変化を追い続けられている期間の長さ」を意味します。

特長③|20,000セッション以上の蓄積が効くのは「解釈」の部分

7項目を実施して採点すること自体は、認定講習で習得できます。差が出るのは、その後です。「同じ2点でも、この人の2点は放置してよく、この人の2点は最優先」という判断は、点数表には書かれていません。

岡本はこれまで累計20,000セッション以上の指導の中で、トップ選手や著名な方から、運動が久しぶりの方、ジュニア、過去に大きな怪我をした方まで、幅広い層の動作を見てきました。限られた90分で「今日どこから触るか」を外さないための蓄積が、ここにあります。

なぜ「合計点」より「内訳」を見るのか

近年の研究は、合計点よりも個別項目や左右差のほうが情報量が多い方向を指しています。大学バスケットボール選手を12か月追跡した研究では合計14点以下は有意な指標になりませんでした(AUC 0.52=コイン投げと同等)が、ディープスクワットが2点以下という単一項目には有意な関連(オッズ比3.47)が見られ、項目に重みをつけたモデルではAUC 0.75まで改善しています。高校野球の投手を対象とした研究でも、合計点ではなく利き手側のロータリースタビリティの低さが独立した危険因子として挙がりました。いずれも単一集団・限られた人数の研究であり一般化はできませんが、「21点満点を目指す」より「0点と左右差をなくす」ほうが理にかなっているという方向性は共通しています。

特長④|六本木 鶯ビルB1の完全個室。手ぶらで受けられる

動作確認には、仰向けで脚を上げるASLRや、うつ伏せから行うトランクスタビリティ・プッシュアップなど、普段は人に見られない姿勢が含まれます。フロアの端で他の利用者に見られながら受けるものではありません。

Disport Worldは港区六本木3-15-21 鶯ビル地下1階の完全個室。六本木駅から徒歩4分です。ウェアやタオル類はご用意していますので、お仕事帰りに手ぶらでお越しいただけます

特長⑤|痛みが出たときの「行き先」を先に決めてある

動作確認で最も重要な情報は、実は点数ではなく痛みの有無です。軍人集団を対象とした2022年のメタ解析では、「合計14点以下」(相対リスク1.42)よりも「確認中に痛みが出たこと」(相対リスク1.70)のほうが、その後の障害との関連が強いと報告されています。

痛みが確認されたときの当店の対応

クリアリング(痛みの確認)で反応が出た項目、および動作中に痛みが出た項目は、他の基準に優先して0点として扱います。その部位に負荷をかけるトレーニングはその日は行いません。トレーナーは診断を行いませんので、整形外科など医療機関での確認をその場でご案内し、受診の結果を踏まえてプログラムを組み直します。すでに痛みがある状態は、そもそもFMSの対象外(FMSは痛みのない方の動きの質を見る枠組み)です。この線引きを曖昧にしないことが、安全側に倒すということだと考えています。

Disport Worldで動作確認を受けるメリット — まとめ

① JSPO-AT・TPI認定(Fitness 2/Power 2)・NASM-PESを保有し、INDIBA® EDNA PRO MAXを導入
② 確認 → 矯正 → トレーニング → コンディショニングを一貫した考え方でつなぐ
③ 完全予約制・担当制で、初回と再確認を同じ目線で比較できる
④ 累計20,000セッション以上の解釈経験
⑤ 六本木 鶯ビルB1の完全個室。ウェア・タオル完備で手ぶらOK
⑥ ゴルファーにはTPIの視点、痛みのある方には医療機関との連携という選択肢
⑦ 痛み・クリアリング陽性時は0点として扱い、医療機関の受診をご案内
⑧ 無理な勧誘は一切なし。体験後にその場で入会を決める必要はありません
⑨ 体験セッション 90分 ¥15,000 → ¥7,500(毎月先着3名さま半額・税込)

あなたの「動きの質」を
数値で確認してみませんか。

FMSの考え方に基づく動作確認と、
あなたに合わせた優先順位づけをご提案します。

¥15,000¥7,500
First Trial — 90 min(税込)/毎月先着3名さま半額

完全個室・手ぶらOK。体験後の入会判断は不要です。

よくあるご質問

Frequently Asked Questions
FMSとは何ですか?

FMS(Functional Movement Screen)は、Gray CookとLee Burtonが1995年に考案した動作スクリーニングです。7つの基本動作を0〜3点で採点し、21点満点で「動きの質」を可視化します。あわせて、痛みが出ないかを確認するクリアリングテストも行います。所要時間は15〜25分程度で、繰り返し実施できるのが特長です。開発者らによる原典はCook G, Burton L, Hoogenboom B. NAJSPT 2006;1(2):62-72/1(3):132-139で、2014年にIJSPT 9(3):396-409/9(4):549-563として再掲載されています(再掲載版でVoightが著者に加わる)。なお公式は一貫して「screen(ふるい分け)」と呼んでおり、痛みや疾患の診断を目的とするものではなく、医療行為でもありません

FMSの7項目は何ですか?

①ディープスクワット、②ハードルステップ、③インラインランジ、④ショルダーモビリティ、⑤アクティブストレートレッグレイズ(ASLR)、⑥トランクスタビリティ・プッシュアップ、⑦ロータリースタビリティの7つです。①〜③は立位での複合的な動作、④⑤は左右の可動性、⑥⑦は体幹の安定性を見ます。②③④⑤⑦の5項目は左右それぞれ採点し、最終スコアには低い方を採用します(左右差そのものが重要な情報になるため、両側の記録は必ず残します)。

採点はどのように決まりますか?

公式の定義は、3点=規定の基準どおり、代償なく動作できる/2点=動作は完了するが、不良なメカニクスや代償を使う必要がある/1点=代償を使っても動作パターンを遂行できない/0点=動作のいずれかの局面で痛みがあるです。各動作は最大3回まで試行し、最良のスコアを採用します。誤解されやすいのですが、点数は高ければ高いほど良い、というものではありません。開発者自身が「より高いスコアが必ずしも良いわけではない」と明言しており、生の合計点よりも0点の有無と左右差のほうが優先して見るべき情報です。

スコアが14点以下だと、必ず怪我をしますか?

いいえ。そして「14点を超えていれば安全」でもありません。出発点となったKiesel 2007はプロアメフト選手46名のパイロット研究で、14点以下のオッズ比11.67という数字が有名になりましたが、感度は54%(=実際に怪我をした人の約半数を見逃す)で、公式サイト自身がこの結果を「決定的とは程遠い」と述べています。その後、米海兵隊士官候補生874名を対象とした研究(O'Connor et al. 2011)では14点以下で傷害リスクが1.65〜1.91倍(相対リスク)となり、14点というカットオフを部分的に支持しました。一方で、エリートジュニア選手809名を対象に14点・13点・12点の3つの閾値を直接比較した2023年の研究では、いずれも臨床的に意味のある関連を示さず、「既往歴を尋ねる以上の情報は得られない」と結論づけられています。14点は「危険ライン」というより、集団の真ん中に近い数字と考えたほうが実態に合います(小児・青年を対象としたメタ分析の加重平均は14.06点、活動的な成人を対象としたSchneiders 2011の平均は15.7±1.9点で男女差なし)。当店では絶対値ではなく、「どこから整えるか」の優先順位づけとして使います。

FMSの数値は、どのくらい信頼できますか?

「合計点は安定して測れる。ただし個別項目はばらつく」というのが現在の到達点です。訓練された評価者どうしであれば、合計点の一致度はICC 0.81〜0.95、2025年の多階層メタ解析による統合値は検者間 r=0.887と報告されています。一方、個別動作の一致度はκ 0.20〜0.89と幅が大きく(下端はFMS外のシングルレッグスクワット、上端はトランクスタビリティ・プッシュアップ)、FMS7項目の中ではディープスクワットとハードルステップが相対的に不安定とされます。また評価者の訓練量は決定的で、1回限りの講習では合計点のICCが0.60まで低下したという報告もあります。測定誤差もあるため、合計点で「本当に変わった」と言うには約2.5点を超える変化が目安です。1点差は誤差の範囲に収まることがあります。

クリアリングテストとは何ですか?

本体の7項目では拾いにくい症状を確認するための、痛みの有無だけを見るテストです。従来は3種で、①肩(ショルダーモビリティの後)、②脊柱伸展=プレスアップ(プッシュアップの後)、③脊柱屈曲=後方への座り込み(ロータリースタビリティの後)に対応します。それ自体は0〜3点で採点されず、痛みが出た場合は該当する本体テストを、他のどの基準よりも優先して0点とします。当店ではその時点でその部位への負荷を中止し、医療機関での確認をご案内します。なお公式は2020年のアップデートで足関節のクリアリング(インラインランジの直後に実施)を追加しており、実施手順は更新されています。詳細な判定基準は公式の会員向け資料内にあり、一般公開されていません。

FMS・SFMA・TPIスクリーニングは、どう違いますか?

対象と目的が違います。FMSは「痛みのない方」の基本動作の質を短時間でふるい分ける入口SFMAは「痛みのある方」を対象に、医療専門職が原因を絞り込んでいくための枠組みSFMAの解説はこちら)、TPIスクリーニングはゴルフスイングという競技動作に特化した16項目TPIスクリーニング16項目の全解説)です。FMSは自体重で行う基礎動作のスクリーンなので、競技パフォーマンスの高さを測るものではありません。ゴルフが目的ならFMS+TPI、痛みが主訴なら医療機関との連携を前提とした確認、という使い分けになります。

今、痛みや違和感があるのですが、受けられますか?

FMSは、現在痛みや筋骨格系の怪我がない方を対象とした枠組みです。痛みがある場合は、まず整形外科など医療機関での確認をおすすめします。トレーナーは診断を行いません。受診済みで「運動の許可は出ている」「この動きは避けるように言われている」といった情報がある場合は、その内容に沿って、痛みの出ない範囲で動作を確認し、できるところから組み立てます。過去の怪我についても、その後の動きにどう影響が残っているかを見ることは可能です。ご予約時にお伝えいただければ、当日の進め方を事前に調整します。

どれくらい時間がかかりますか?再確認はいつ行いますか?

7項目+クリアリングの実施自体は15〜25分程度です。Disport Worldの体験セッションでは、これに問診・動作の詳しい確認・結果のご説明・個別プランのご提案を加えて90分。確認そのものより「結果の解釈とプランへの落とし込み」に時間を使うのが特徴です。再確認は公式が推奨する4〜6週ごとを基本に、当店では6〜8週後を目安にしています。矯正的なトレーニングでスコアが上がること自体は、2025年のメタアナリシス(40試験・1,604名、平均9週)で確認されており、改善幅の目安はコアスタビリティ系で+2.89点、ファンクショナルトレーニング系で+1.69〜1.74点です。ただし著者自身が「スコアの向上を、そのままパフォーマンス向上や傷害予防に外挿することには慎重であるべき」と注意しており、「点数が上がったから怪我が減った」ことを示した無作為化比較試験は今のところありません。点数は目的ではなく、進捗を共有するための共通言語だとお考えください。

運動が久しぶりでも大丈夫ですか?年齢制限や、必要な持ち物は?

運動が久しぶりの方こそ、いきなり負荷をかける前に現在地を確認する意味があります。FMSは自体重で行う基本動作なので、体力に自信がなくても実施できます。年齢の上限はありませんが、対象集団によって解釈の目安は変わります(特にジュニアでは14点というカットオフの予測力が弱いという研究があり、年齢・成熟度に応じた個別の解釈が必要です)。当店では小学生から60代以上の方まで、年代に合わせて確認と解釈を行っています。持ち物は不要です。ウェア・タオル類はご用意していますので手ぶらでお越しください。完全個室のため、周囲の目を気にせず受けていただけます。体験後に無理な勧誘は一切ありませんので、その場で入会を決める必要もありません。

体験セッションのご案内

「自分の動きの質を数値で見てみたい」「トレーニングを始める前に、まず身体の状態を確認したい」「昔の怪我の影響が今も残っている気がする」——そんな方には、Disport Worldの90分の体験セッションをおすすめします。動作の確認から、結果の解釈、あなた個人の優先順位づけまでを一度に行います。

体験セッション(90分)で行うこと
問診(生活習慣・運動歴・怪我歴・目標)
FMSの7項目+クリアリング(痛みの確認)の実施
採点と結果のご説明(スコアシートをお渡しします)
点数の低かった項目について、原因の切り分け(可動性か、安定性か、動作の順序か)
個別の矯正プラン(数週間単位のイメージ)と、再確認の時期のご提案
ゴルファーの方には、ご希望に応じてTPIの視点を追加
ご希望に応じてINDIBA® EDNA PRO MAXによる温熱ケア(コンディショニングの一助として)
ご自宅でできる、優先度の高いエクササイズのご案内
項目内容
料金¥15,000 → ¥7,500(毎月先着3名さま半額・税込)
所要時間90分(完全予約制・担当制)
持ち物不要。ウェア・タオル類をご用意しています(手ぶらOK)
環境完全個室。周囲の目を気にせず受けられます
場所港区六本木3-15-21 鶯ビルB1(六本木駅より徒歩4分)
ご予約LINE/Web/お電話 03-6260-8926

ご予約の方法

LINEからのご予約が最もスムーズです。ご希望の日時と、気になっている部位や過去の怪我をあらかじめお知らせいただければ、当日の進め方を事前に調整しておきます。お電話(03-6260-8926)やWebフォームからのご予約も承っています。体験後に無理な勧誘は一切ありません。その場で入会を決めていただく必要はなく、結果とプランだけを持ち帰っていただいても構いません。

なお、現在痛みがある方は、まず医療機関での確認をおすすめします。トレーナーは診断を行いません。受診済みで運動の許可が出ている場合は、その内容に沿って進めますので、ご予約時にお知らせください。

「自分はどの項目が弱いんだろう?」——
まずは岡本に直接LINEでご相談いただけます。

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体験トレーニング 90分 ¥15,000 → ¥7,500(毎月先着3名さま半額・税込)/完全個室・手ぶらOK・無理な勧誘なし

岡本隼人
岡本 隼人
Disport World — Founder & Head Trainer
JSPO-ATTPI CertifiedNASM-PESINDIBA® EDNA PRO MAX

JSPO-AT・TPI認定(Fitness 2/Power 2)・NASM-PESの3資格を保有し、INDIBA® EDNA PRO MAXを導入。この組み合わせを併せ持つトレーナーは多くありません。2016年、六本木にDisport Worldを開設。23年・累計20,000セッション超の指導歴で、トップ選手・著名な方から、運動が久しぶりの方、ジュニアまで幅広い層の動作確認とトレーニングを担当してきた。プロフィール →

References
  1. Cook G, Burton L, Hoogenboom BJ, Voight M. Functional movement screening: the use of fundamental movements as an assessment of function. Int J Sports Phys Ther.
  2. Cook G. Movement: Functional Movement Systems—Screening, Assessment, Corrective Strategies. 2010.
  3. Kiesel K, Plisky PJ, Voight ML. Can Serious Injury in Professional Football be Predicted by a Preseason Functional Movement Screen? NAJSPT. 2007;2(3):147-158. PMID:21522210.
  4. Teyhen DS, et al. FMS信頼性(合計点ICC・SEM 0.92・MDC 2.54点)に関する研究。
  5. Smith CA, et al. Interrater and intrarater reliability of the FMS(2時間研修後 ICC 0.87–0.89、項目別: shoulder mobility 0.96–0.98 / hurdle step 0.30–0.35). J Strength Cond Res. 2013.
  6. Schneiders AG, et al. 一般・活動的成人のFMS合計平均(15.7/21、男女差なし)。
  7. FMS injury prediction systematic review. BMJ Open Sport & Exerc Med. 2019(決定的カットオフは存在しない)。

動きの質を整えることが、
すべてのトレーニングの土台になる。

FMSの考え方に基づく動作確認から、あなたに合わせた
優先順位づけとプランづくりまで。岡本が直接担当します。

¥15,000¥7,500
First Trial — 90 min(税込)/毎月先着3名さま半額

体験後の入会判断は不要。無理な勧誘は一切ありません。
六本木3-15-21 鶯ビルB1(六本木駅徒歩4分)