週3日以上運動する女子の割合は、親の世代の74.1%から39.8%へ落ちました。一方で、競技をする子は小学生のうちから身体づくりを始めています。この記事は、日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)とTPI認定(Fitness 2/Power 2)を持つトレーナーが、小学生アスリートのトレーニングで実際に何をやるのか、そしてなぜ小学生の時期なのかを、公的統計と研究の数値で説明します。
公開 2026年7月31日 | 読了 約14分 | 著者 岡本隼人(JSPO-AT/TPI Certified Fitness 2 / Power 2)
走る、跳ぶ、投げる、止まる、方向を変える。こうした基本的な動きの引き出しをPhysical Literacy(フィジカル・リテラシー)と呼びます。
指導者向けの教材では、Physical Literacyは男子12歳・女子11歳まで、つまり成長期に入る前に鍛錬されている必要があるとされています。この時期を過ぎると、身体は大きく強くなっていくのに、動きの引き出しだけが小学生のまま止まってしまうことがあります。
実際に中学生を見ていると、体格も筋力も十分あるのに、切り返しで転ぶ、着地で膝が内に入る、片脚で立てない、という子がいます。多くの場合、筋力の問題ではなく引き出しの問題です。
「小学生に筋トレは早い」とよく言われますが、この時期にやるべきは重りを持つことではありません。自分の体重を思い通りに操る練習です。片脚で立つ、しゃがむ、跳んで静かに着地する。これらは重りを1グラムも使わずにできて、しかも12歳を過ぎると習得効率が落ちていきます。
骨量は20歳ごろにピークを迎え、その後は増えません。そして増加率が最も大きいのは12〜14歳です。全身と腰椎の骨量の約35%、大腿骨頸部(脚の付け根)の約27%を、この思春期に獲得します。
つまり小学生の高学年は、骨を増やす最大の時期に入る直前です。ここで跳ぶ・着地する・走るといった骨に刺激が入る運動をしておくかどうかが、一生の骨の強さに関わります。
これは競技力の話だけではありません。将来の疲労骨折や骨粗鬆症のリスクにつながる話です。
身長が最も速く伸びる時期をPHV(最大身長発育速度)と呼びます。個人差はありますが、多くは中学生の前後に訪れます。
この時期に何が起きるかというと、骨が先に伸びて、筋肉が後から追いつくという現象です。ある指導者向けの教材では次のように説明されています。「筋の長さは起始と停止の骨の位置により決定されるため、骨格発育に依存する。骨格発育が著しい時期には筋の長さも著しく増加し、その際、筋の組織形成が追いつかず、一時的に筋は張力の高い状態になる」。
結果として、それまでできていた動きが一時的にできなくなることがあります。これを現場ではクラムジー(clumsy=ぎこちない)と呼びます。成長期のサッカー選手を調べた研究では、PHVの12か月前ごろから30mダッシュの記録が落ち始め、しかも元々スキルが高い選手ほど目立つと報告されています。
この時期に記録が落ちても、サボっているわけでも下手になったわけでもありません。一過性の成長現象で、抜本的な解決法はありません。むしろ性急に修正しようとすると悪化させる可能性があると指摘されています。教材では「現在の達成状態と獲得した質を維持することに大きな価値をおくべき」とされ、新しい技術を詰め込むより、今できることを守る時期だと考えられています。
だからこそ、この波が来る前の小学生のうちに、動きの土台を作っておく意味があります。
データを見ると変化がはっきりしています。92%が「屋外遊びが減った」と回答し、週3日以上運動する子の割合は親の世代と比べて男子78.8%→62.1%、女子74.1%→39.8%と落ちています。女子はほぼ半減です。
木登り、鬼ごっこ、缶蹴り。こうした遊びには、登る・ぶら下がる・急に止まる・方向を変える・転ぶ、といった動きが全部入っていました。誰も教えていないのに、遊んでいるだけで動きの引き出しが増えていたわけです。
それが無くなった今、「競技の練習」と「動きの土台」が分離してしまいました。チームの練習は競技の技術を教えますが、その土台になる身体の使い方を教える時間はありません。
少年野球でもサッカーでも、監督やコーチは技術を熱心に見てくれます。フォーム、判断、戦術。ただし「その子の身体が今どうなっているか」を診る役割の人は、多くのチームにいません。
股関節がどれだけ動くか。左右で差はないか。かかとや膝のお皿の下に押して痛い場所はないか。腰の痛みは何週間続いているか。これらは技術指導とは別の専門領域です。
もうひとつの現実として、二極化が進んでいます。運動をする子はチームと個人指導を掛け持ちして週の大半を運動に使い、しない子はほとんど動きません。
これはケガのリスクという意味では、両極端とも危ない状態です。やりすぎる子は使いすぎによる障害、動かない子は土台が弱いまま急に運動を始めることによる障害。どちらも小学生年代で実際に起きています。
最初にやるのは測定です。当ジムでは、成長期の身体を診るための評価システムを自社で構築しています。
| 層 | 内容 |
|---|---|
| 問診 | 心臓に関する確認、からだ全体の注意サイン、腰の痛みの持続週数、これまでのケガ、練習量と投球数 |
| 成長 | 身長・体重と、前回からの伸び(成長速度) |
| 触診スクリーン | すねの骨の出っぱり、膝のお皿の下、かかとの後ろ、背骨の突起に押して痛い場所がないか |
| 運動器スクリーン | しゃがみ込み・片脚立ち5秒・両腕を真上に挙げる・体幹の前後屈(学校健診と同じ4動作) |
| 可動域スクリーン | 足首・股関節・もも裏・太もも前・胸の背骨など、部位別に左右を計測 |
| パフォーマンス | 跳ぶ・投げる・握る・体幹・敏捷性・柔軟性 |
可動域は31項目、受診をおすすめする目安は10種類設定してあります。合計点や5段階評価は出しません。理由は後述します(よくある4つの誤解(筋トレと身長の話を含む))。
跳ぶ・投げる・走るといった能力を、記録として残します。ここで大事なのが身長比という見方です。
小学生は身長差が大きいため、記録(cm)だけで比べると背の高い子が有利になります。そこで「跳んだ距離 ÷ 身長」で見ます。
「立ち幅跳びは身長比100%が目安」という言い方が広く使われていますが、公的統計から計算すると実態とかなりずれています。下の表は、令和6年度の学校保健統計調査(文部科学省)の平均身長と、令和6年度の体力・運動能力調査(スポーツ庁)の立ち幅とび平均値から、当ジムが年齢・性別ごとに計算したものです。
| 年齢 | 男子 平均 | 男子 上位16%目安 | 女子 平均 | 女子 上位16%目安 |
|---|---|---|---|---|
| 9歳(小4) | 109% | 122% | 101% | 115% |
| 10歳(小5) | 110% | 125% | 103% | 117% |
| 11歳(小6) | 114% | 130% | 105% | 120% |
| 12歳(中1) | 121% | 138% | 109% | 124% |
ご覧のとおり、男子は小4ですでに平均109%、中1で121%です。100%を目安にすると低すぎます。
もうひとつ大事なことがあります。身長が急に伸びる時期は、記録が同じでも身長比は下がります。身長比が下がったことを「悪くなった」と読まないでください。当ジムの評価システムでは、身長を入力した時点でその子の身長に換算した目安の距離(cm)が自動で表示され、成長速度と並べて読めるようにしています。
成長期のケガには、年齢と性別によって「真っ先に疑うもの」が変わるという特徴があります。
| 年齢・性別 | 症状 | 知っておきたいこと |
|---|---|---|
| 10代 | 腰の痛み | 若いアスリートの腰痛の原因として最も多いのが背骨の疲労骨折。腰痛を訴える若年アスリートの30.0%、日本の報告では39.7%という数字があります |
| 5〜11歳 | かかとの痛み | かかとの成長軟骨の障害が典型的です |
| 4〜8歳の男児 | 足を引きずる | 股関節の病気が隠れていることがあります |
| 10〜14歳の男児 | 膝や太ももの痛み・足を引きずる | 股関節が原因のことがあります。膝が痛いと訴えていても股関節を診る必要があります |
| 11〜14歳 | 膝の前の痛み | すねの骨の出っぱりやお皿の下の成長軟骨の障害が多い年代です |
腰の痛みが2週間以上続いている場合は、すぐに整形外科を受診してください。腰の痛みでレントゲンが陰性だった18歳以下のスポーツ選手200名をMRIで調べた研究では、48.5%に所見が見つかりました(Kobayashi 2013)。同じ研究は「早期発見に寄与する有意な理学所見因子は見つからなかった」とも結論しています。つまり押して痛くなくても、動けていても、否定できません。早く見つかるほど治りやすいことが分かっている一方、進行すると治りにくくなります。
股関節は、走る・跳ぶ・投げる・打つのすべてで力の出どころになります。そして成長期に硬くなりやすい場所でもあります。
とくに見るのは「股関節がどれだけ後ろに伸びるか」です。中学生サッカー選手37名を調べた研究では、腰の治療歴がある群8名のうち6名(75%)が股関節伸展15度未満だったのに対し、治療歴のない群29名では2名(7%)でした。
股関節が後ろに伸びないと、その分を腰の反りで補うことになります。腰に負担が集まる、という機序が一般に想定されています。
そして重要なのが、硬くなる時期が部位ごとに決まっていることです。
| 部位 | 最も硬くなる時期 | 関係する動き |
|---|---|---|
| ふくらはぎ(腓腹筋) | 小学6年 | しゃがむ・走る・着地する |
| 太ももの前・もも裏 | 中学1年 | 跳ぶ・蹴る・スプリント |
| 股関節の前(腸腰筋) | 中学2年以降 | 腰を反らさずに脚を後ろへ送る |
跳ぶ練習より、着地の練習のほうが優先度が高いと考えています。ケガは跳ぶ瞬間ではなく、着地と切り返しで起きるからです。
見るポイントは3つ。
跳躍系のトレーニング(プライオメトリクス)には量の上限があります。指導者向けの教材では、1回のセッションで30〜50回の接地、週の合計で120回以下、セッションの間隔は72時間とされています。10秒間の連続ジャンプは1種目で20〜35回の接地になるため、種目を増やしすぎると1日で週の上限に届いてしまいます。当ジムでは測定日の接地数も記録しています。
トレーニングより先に効くことがあります。成長期は「何を食べるか」以前に量が足りていないことが多いためです。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| たんぱく質 | 6歳以上15歳未満は体重1kgあたり1.2〜1.5g(体重35kgなら42〜52.5g) |
| 食事回数 | 1日3食+補食1〜3回。練習前後の補食は必須 |
| 歩数の目安 | 男子13,000歩/女子10,000歩 |
サプリメントより先に、3食と補食を整えることを優先します。小学生年代でサプリメントが必要になる場面は多くありません。
Body Assessment(初回身体評価)は90分。可動域31項目のスクリーン、成長段階の確認、パフォーマンス測定、そして保護者の方向けのレポートまでお渡しします。
毎月先着3名 | 税込 | 単発でご利用いただけます | 90分 | 無理な勧誘はいたしません
3〜5番目は、学校の健康診断で行われる運動器の検査と同じ動作です。指導者向けの教材でも「子どもロコモ4検査」として同じ4つが挙げられています。
| 時期 | やること | この段階のゴール |
|---|---|---|
| 0ヶ月目 | Body Assessment(90分)。問診・成長・触診・運動器スクリーン・可動域31項目・パフォーマンス測定 | 現在地を数値で把握する。受診が必要なものがあれば、まずそちらを優先 |
| 1〜2ヶ月目 | 評価で出た制限に絞った改善。片脚立ち、しゃがみ込み、着地の3つを軸に。自宅でできる種目を2〜3個 | 基本の動作が痛みなくできる |
| 3〜4ヶ月目 | 跳ぶ・切り返す・投げるの土台づくり。接地数を管理しながら跳躍系を導入 | 着地で膝が内に入らない。音が小さくなる |
| 5〜6ヶ月目 | 競技特性に合わせた動きへ。ゴルフならスイングの土台、野球なら投球と打撃の土台 | 競技の場面で使える動きになる |
| 6ヶ月目 | 再評価。同じ31項目を測り直し、前回と比較 | 数値で変化を確認し、次の6ヶ月を決める |
まず、専門機関の見解を並べます。
| 団体・年 | 見解 |
|---|---|
| NSCA(米国ストレングス&コンディショニング協会)2009 | 「これまでのところ、若年者のレジスタンストレーニングを扱った前向き研究において、成長軟骨の損傷が報告された例はない」「レジスタンストレーニングが小児期・青年期の成長と成熟に悪影響を及ぼすことを示す根拠はない」 |
| AAP(米国小児科学会)2020 | 「レジスタンストレーニングは成長を妨げるかもしれない」という誤解に対し、「適切に設計されたレジスタンストレーニングのプログラムが、成長板の健康・身長の伸び・心血管の健康に悪影響を及ぼすことは示されていない」と明記 |
| UKSCA(英国ストレングス&コンディショニング協会)2012 | 「レジスタンストレーニングが小児期・青年期の身長の伸びに悪影響を与える、あるいは成人後の最終身長を低くすることを示す科学的根拠はない」 |
元になった観察はこうです。「重量挙げや体操の選手は、背が低い人が多い」。ここから「筋トレをすると背が伸びなくなる」という因果が推測されました。
しかし、実際に起きているのは逆向きのことです。
重量挙げや体操では、背が低いほうが構造的に有利です。てこが短いぶん力を出しやすく、回転もしやすい。つまり背が低い子がその競技で勝ち残ります。
背が高い子は勝てずに、途中で別の競技へ移ります。だから私たちの目に入る選手=残った人(生存者)は、背が低い人ばかりに見えるのです。
見えているのは「トレーニングがもたらした結果」ではなく、「誰が残ったか」です。バスケットボール選手に背が高い人が多いのを見て「バスケをやると背が伸びる」とは言わないはずですが、それとまったく同じ構造の錯覚です。
因果が逆になっている、と言い換えてもいいでしょう。トレーニングが身長を決めたのではなく、身長がその競技への残りやすさを決めたのです。
ここを省略すると誤解を別の誤解に置き換えるだけになるので、正確に書きます。AAPは無条件の安全宣言をしていません。
同じ2020年の声明で、骨の成熟に近づくまでの時期は、成長軟骨のある腱の付着部に爆発的な収縮が加わると、裂離骨折(けんが骨を引きはがす形のケガ)のリスクを高めうると警告しています。
つまり問題なのは「筋トレをすること」ではなく、管理されていない高負荷と、爆発的な動作の量です。この2つは、やり方で完全にコントロールできます。
当ジムでは次のようにしています。
「小学生に筋トレは危ない」でも「筋トレは安全だから何でもやってよい」でもありません。危ないのは特定のやり方であり、それは避けられる——これが正確な理解だと考えています。
これが最も危険な誤解です。前述のとおり、腰痛でレントゲンが陰性だった18歳以下の48.5%にMRIで所見が見つかり、同じ研究は理学所見では早期発見できなかったと結論しています。押して痛くないことは、何もないことの証明にはなりません。
やわらかさ自体は良し悪しではありません。関節がやわらかい子は珍しくなく、それが問題という意味でもありません。見るべきは「左右で差がないか」と「その子の中で前回から変わっていないか」です。当ジムが左右差と経時変化を判定の主軸にしているのはこのためです。
当ジムは合計点も5段階評価も出しません。理由は明確で、ケガを予測できると証明されたスクリーニング検査は現在のところ存在しないからです(Bahr 2016, British Journal of Sports Medicine)。よく使われる動作スクリーンの合計点も、複数のメタ解析で予測能が低いと結論されています。
点数を出せば分かりやすくはなります。しかし分かりやすさのために、根拠のない順位を子どもにつけることになります。代わりに出すのは、部位ごとのプロフィール、独立して表示される受診の目安、今回の重点3つの3つだけです。
| 項目 | 技術スクール・教室 | 一般的なジム | Disport World |
|---|---|---|---|
| 主な目的 | 競技技術の習得 | 体力・筋力向上 | 身体の評価と、それに基づく個別設計 |
| 身体の評価 | 基本的に行わない | 簡易的な場合が多い | 可動域31項目・受診の目安10種 |
| 成長段階の考慮 | 年齢・学年で区切ることが多い | 限定的 | 身長の伸びから成長段階を判断し、時期に応じて内容を変える |
| 医療機関との連携 | ― | 限定的 | 受診の目安に該当した場合、記録をお渡しして受診をおすすめする |
| 保護者へのレポート | ― | 簡易的な場合が多い | 測定結果・重点項目・自宅でできることを書面でお渡し |
プロアスリートから成長期のジュニアまで、身体の評価とコンディショニングを担当。ジュニア世代については、成長段階に応じた評価の枠組みを自社で構築し、可動域31項目のスクリーンと受診の目安10種を運用しています。競技力の向上と、ケガをさせないことは、切り離せないと考えています。
本記事は運動指導の観点から一般的な情報を提供するものであり、診断・治療を目的としたものではありません。痛みや不調がある場合は、医療機関を受診してください。記載した数値は出典に基づく参照値であり、個人の判定基準ではありません。
主な出典
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