Junior Athlete Development

小学生アスリートのトレーニング|ジムで何をやり、なぜ今なのか

週3日以上運動する女子の割合は、親の世代の74.1%から39.8%へ落ちました。一方で、競技をする子は小学生のうちから身体づくりを始めています。この記事は、日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)とTPI認定(Fitness 2/Power 2)を持つトレーナーが、小学生アスリートのトレーニングで実際に何をやるのか、そしてなぜ小学生の時期なのかを、公的統計と研究の数値で説明します。

公開 2026年7月31日 | 読了 約14分 | 著者 岡本隼人(JSPO-AT/TPI Certified Fitness 2 / Power 2)

この記事で分かること

  • 小学生の時期にしかできないことがある。動きの土台(Physical Literacy)は男子12歳・女子11歳までに、骨量は12〜14歳に最も増える。
  • ジムでやるのは6つ。身体を測る/パフォーマンス/障害予防/股関節/ジャンプと着地/栄養。
  • 立ち幅跳びの「身長比100%が目安」は誤り。公的統計から計算すると、12歳男子の平均は身長比121%。
  • 年齢ごとに真っ先に疑うケガが違う。10代の腰痛の30〜40%は背骨の疲労骨折という報告がある。
  • 硬くなる時期は部位ごとに決まっている。ふくらはぎは小6、太もも前とももうらは中1、股関節の前は中2以降。
  • 「筋トレで背が伸びない」は生存者バイアス。国際的な3団体が根拠なしと明言。ただし本当のリスクは別にある。
  • 合計点で子どもを評価しない理由。ケガを予測できると証明されたスクリーニング検査は存在しない。
39.8%
週3日以上運動する女子の割合
(親世代は74.1%)
視覚システムの基礎と応用
12
動きの土台を育てる期限
(男子12歳・女子11歳)
パフォーマンス・トレーニング
35%
思春期に獲得する
腰椎の骨量の割合
Women's Health
48.5%
2週間以上腰が痛む18歳以下で
MRIに所見が出た割合
Kobayashi 2013

なぜ小学生からなのか

結論から言うと、小学生の時期にしかできないことが3つあるからです。動きの土台づくり、骨づくり、そして「伸びる時期の前に整えておくこと」。どれも中学生になってからでは取り返しにくくなります。

動きの土台には期限がある

走る、跳ぶ、投げる、止まる、方向を変える。こうした基本的な動きの引き出しをPhysical Literacy(フィジカル・リテラシー)と呼びます。

指導者向けの教材では、Physical Literacyは男子12歳・女子11歳まで、つまり成長期に入る前に鍛錬されている必要があるとされています。この時期を過ぎると、身体は大きく強くなっていくのに、動きの引き出しだけが小学生のまま止まってしまうことがあります。

実際に中学生を見ていると、体格も筋力も十分あるのに、切り返しで転ぶ、着地で膝が内に入る、片脚で立てない、という子がいます。多くの場合、筋力の問題ではなく引き出しの問題です。

専門家視点

「小学生に筋トレは早い」とよく言われますが、この時期にやるべきは重りを持つことではありません。自分の体重を思い通りに操る練習です。片脚で立つ、しゃがむ、跳んで静かに着地する。これらは重りを1グラムも使わずにできて、しかも12歳を過ぎると習得効率が落ちていきます。

骨をつくれる時期は決まっている

骨量は20歳ごろにピークを迎え、その後は増えません。そして増加率が最も大きいのは12〜14歳です。全身と腰椎の骨量の約35%、大腿骨頸部(脚の付け根)の約27%を、この思春期に獲得します。

つまり小学生の高学年は、骨を増やす最大の時期に入る直前です。ここで跳ぶ・着地する・走るといった骨に刺激が入る運動をしておくかどうかが、一生の骨の強さに関わります。

これは競技力の話だけではありません。将来の疲労骨折や骨粗鬆症のリスクにつながる話です。

「伸びる時期」の前に整えておく

身長が最も速く伸びる時期をPHV(最大身長発育速度)と呼びます。個人差はありますが、多くは中学生の前後に訪れます。

この時期に何が起きるかというと、骨が先に伸びて、筋肉が後から追いつくという現象です。ある指導者向けの教材では次のように説明されています。「筋の長さは起始と停止の骨の位置により決定されるため、骨格発育に依存する。骨格発育が著しい時期には筋の長さも著しく増加し、その際、筋の組織形成が追いつかず、一時的に筋は張力の高い状態になる」。

結果として、それまでできていた動きが一時的にできなくなることがあります。これを現場ではクラムジー(clumsy=ぎこちない)と呼びます。成長期のサッカー選手を調べた研究では、PHVの12か月前ごろから30mダッシュの記録が落ち始め、しかも元々スキルが高い選手ほど目立つと報告されています。

保護者の方へ

この時期に記録が落ちても、サボっているわけでも下手になったわけでもありません。一過性の成長現象で、抜本的な解決法はありません。むしろ性急に修正しようとすると悪化させる可能性があると指摘されています。教材では「現在の達成状態と獲得した質を維持することに大きな価値をおくべき」とされ、新しい技術を詰め込むより、今できることを守る時期だと考えられています。

だからこそ、この波が来る前の小学生のうちに、動きの土台を作っておく意味があります。

なぜ今、小学生がジムに来るのか

外で遊ぶ量が、親の世代とは比べものにならないほど減ったからです。かつて遊びの中で自然に身についていた動きを、意識的に作らないといけない時代になりました。

遊びで身につくものが、身につかなくなった

データを見ると変化がはっきりしています。92%が「屋外遊びが減った」と回答し、週3日以上運動する子の割合は親の世代と比べて男子78.8%→62.1%、女子74.1%→39.8%と落ちています。女子はほぼ半減です。

木登り、鬼ごっこ、缶蹴り。こうした遊びには、登る・ぶら下がる・急に止まる・方向を変える・転ぶ、といった動きが全部入っていました。誰も教えていないのに、遊んでいるだけで動きの引き出しが増えていたわけです。

それが無くなった今、「競技の練習」と「動きの土台」が分離してしまいました。チームの練習は競技の技術を教えますが、その土台になる身体の使い方を教える時間はありません。

チームは投げ方を見ている。でも身体は誰も診ていない

少年野球でもサッカーでも、監督やコーチは技術を熱心に見てくれます。フォーム、判断、戦術。ただし「その子の身体が今どうなっているか」を診る役割の人は、多くのチームにいません。

股関節がどれだけ動くか。左右で差はないか。かかとや膝のお皿の下に押して痛い場所はないか。腰の痛みは何週間続いているか。これらは技術指導とは別の専門領域です。

やる子とやらない子の差が開いている

もうひとつの現実として、二極化が進んでいます。運動をする子はチームと個人指導を掛け持ちして週の大半を運動に使い、しない子はほとんど動きません。

これはケガのリスクという意味では、両極端とも危ない状態です。やりすぎる子は使いすぎによる障害、動かない子は土台が弱いまま急に運動を始めることによる障害。どちらも小学生年代で実際に起きています。

ジムで実際に何をやるのか(6つの領域)

順番が決まっています。まず測る、次に安全を確認する、それから伸ばす。この順序を飛ばして「とりあえずトレーニング」から始めることはありません。

1. 身体を測る(評価)

最初にやるのは測定です。当ジムでは、成長期の身体を診るための評価システムを自社で構築しています。

内容
問診心臓に関する確認、からだ全体の注意サイン、腰の痛みの持続週数、これまでのケガ、練習量と投球数
成長身長・体重と、前回からの伸び(成長速度)
触診スクリーンすねの骨の出っぱり、膝のお皿の下、かかとの後ろ、背骨の突起に押して痛い場所がないか
運動器スクリーンしゃがみ込み・片脚立ち5秒・両腕を真上に挙げる・体幹の前後屈(学校健診と同じ4動作)
可動域スクリーン足首・股関節・もも裏・太もも前・胸の背骨など、部位別に左右を計測
パフォーマンス跳ぶ・投げる・握る・体幹・敏捷性・柔軟性
層の順序そのものが安全装置になっています。上の層で気になる所見が出た場合、下の層の該当項目は実施しません。

可動域は31項目、受診をおすすめする目安は10種類設定してあります。合計点や5段階評価は出しません。理由は後述します(よくある4つの誤解(筋トレと身長の話を含む))。

2. パフォーマンスアップ

跳ぶ・投げる・走るといった能力を、記録として残します。ここで大事なのが身長比という見方です。

小学生は身長差が大きいため、記録(cm)だけで比べると背の高い子が有利になります。そこで「跳んだ距離 ÷ 身長」で見ます。

Did You Know?

「立ち幅跳びは身長比100%が目安」という言い方が広く使われていますが、公的統計から計算すると実態とかなりずれています。下の表は、令和6年度の学校保健統計調査(文部科学省)の平均身長と、令和6年度の体力・運動能力調査(スポーツ庁)の立ち幅とび平均値から、当ジムが年齢・性別ごとに計算したものです。

年齢男子 平均男子 上位16%目安女子 平均女子 上位16%目安
9歳(小4)109%122%101%115%
10歳(小5)110%125%103%117%
11歳(小6)114%130%105%120%
12歳(中1)121%138%109%124%
身長比=立ち幅とび÷身長×100。平均身長は令和6年度学校保健統計調査、立ち幅とびは令和6年度体力・運動能力調査(各年齢1,000〜1,400名程度)から当ジムが算出。2つは別の調査で対象者が違うため、これは「平均値どうしの比」であり、合否ラインではありません。位置の見当をつけるための参照値としてお使いください。

ご覧のとおり、男子は小4ですでに平均109%、中1で121%です。100%を目安にすると低すぎます。

もうひとつ大事なことがあります。身長が急に伸びる時期は、記録が同じでも身長比は下がります。身長比が下がったことを「悪くなった」と読まないでください。当ジムの評価システムでは、身長を入力した時点でその子の身長に換算した目安の距離(cm)が自動で表示され、成長速度と並べて読めるようにしています。

3. 障害予防

成長期のケガには、年齢と性別によって「真っ先に疑うもの」が変わるという特徴があります。

年齢・性別症状知っておきたいこと
10代腰の痛み若いアスリートの腰痛の原因として最も多いのが背骨の疲労骨折。腰痛を訴える若年アスリートの30.0%、日本の報告では39.7%という数字があります
5〜11歳かかとの痛みかかとの成長軟骨の障害が典型的です
4〜8歳の男児足を引きずる股関節の病気が隠れていることがあります
10〜14歳の男児膝や太ももの痛み・足を引きずる股関節が原因のことがあります。膝が痛いと訴えていても股関節を診る必要があります
11〜14歳膝の前の痛みすねの骨の出っぱりやお皿の下の成長軟骨の障害が多い年代です
いずれも整形外科での診断が必要な内容です。当ジムは診断を行わず、受診の目安をお伝えするまでを担当します。
最も伝えたいこと

腰の痛みが2週間以上続いている場合は、すぐに整形外科を受診してください。腰の痛みでレントゲンが陰性だった18歳以下のスポーツ選手200名をMRIで調べた研究では、48.5%に所見が見つかりました(Kobayashi 2013)。同じ研究は「早期発見に寄与する有意な理学所見因子は見つからなかった」とも結論しています。つまり押して痛くなくても、動けていても、否定できません。早く見つかるほど治りやすいことが分かっている一方、進行すると治りにくくなります。

4. 股関節の使い方

股関節は、走る・跳ぶ・投げる・打つのすべてで力の出どころになります。そして成長期に硬くなりやすい場所でもあります。

とくに見るのは「股関節がどれだけ後ろに伸びるか」です。中学生サッカー選手37名を調べた研究では、腰の治療歴がある群8名のうち6名(75%)が股関節伸展15度未満だったのに対し、治療歴のない群29名では2名(7%)でした。

股関節が後ろに伸びないと、その分を腰の反りで補うことになります。腰に負担が集まる、という機序が一般に想定されています。

そして重要なのが、硬くなる時期が部位ごとに決まっていることです。

部位最も硬くなる時期関係する動き
ふくらはぎ(腓腹筋)小学6年しゃがむ・走る・着地する
太ももの前・もも裏中学1年跳ぶ・蹴る・スプリント
股関節の前(腸腰筋)中学2年以降腰を反らさずに脚を後ろへ送る
時期に該当する部位が硬くなるのは予想される変化であり、悪化ではありません。当ジムの評価システムでは、該当学年の選手にこの旨が自動表示されます。

5. ジャンプと着地

跳ぶ練習より、着地の練習のほうが優先度が高いと考えています。ケガは跳ぶ瞬間ではなく、着地と切り返しで起きるからです。

見るポイントは3つ。

  • 着地で膝が内側に入っていないか。つま先より膝が内へ倒れる着地は、膝への負担が大きくなります
  • 音が大きくないか。ドンという音は、衝撃を吸収できていないサインです
  • 片脚で着地して静止できるか。ふらつく場合は、跳ぶ高さを上げる段階ではありません
Did You Know?

跳躍系のトレーニング(プライオメトリクス)には量の上限があります。指導者向けの教材では、1回のセッションで30〜50回の接地、週の合計で120回以下、セッションの間隔は72時間とされています。10秒間の連続ジャンプは1種目で20〜35回の接地になるため、種目を増やしすぎると1日で週の上限に届いてしまいます。当ジムでは測定日の接地数も記録しています。

6. 栄養の取り方

トレーニングより先に効くことがあります。成長期は「何を食べるか」以前に量が足りていないことが多いためです。

項目目安
たんぱく質6歳以上15歳未満は体重1kgあたり1.2〜1.5g(体重35kgなら42〜52.5g)
食事回数1日3食+補食1〜3回。練習前後の補食は必須
歩数の目安男子13,000歩/女子10,000歩
数値はいずれも目安です。持病や食物アレルギーがある場合は、医師・管理栄養士にご相談ください。当ジムは治療目的の栄養指導は行いません。

サプリメントより先に、3食と補食を整えることを優先します。小学生年代でサプリメントが必要になる場面は多くありません。

まず、お子さまの身体の現在地を知ることから

Body Assessment(初回身体評価)は90分。可動域31項目のスクリーン、成長段階の確認、パフォーマンス測定、そして保護者の方向けのレポートまでお渡しします。

¥15,000¥7,500

毎月先着3名 | 税込 | 単発でご利用いただけます | 90分 | 無理な勧誘はいたしません

家でできる5項目セルフチェック

道具は要りません。1つでも当てはまったら、一度診てもらう価値があります。ただしこれは診断ではなく、気づくためのきっかけです。
  1. 腰の痛みが2週間以上続いていないか「たまに痛い」でも、始まった日から2週間経っていれば受診の目安です。これが最も重要な1問です。
  2. かかと・すねの骨の出っぱり・膝のお皿の下を押して痛がらないか指で軽く押すだけで確認できます。痛がる場合、その部位に負担が集まっているサインです。
  3. 片脚で5秒立てるか(左右とも)浮かせた膝を90度に曲げて5秒。片側だけできない場合は、左右で条件が違うということです。膝が痛いと言っている子ほど確認してください。
  4. かかとを床につけたまま、深くしゃがめるか踵が浮く、後ろに転がる場合は足首か股関節に制限があります。
  5. 両腕を耳につけて真上まで挙がるか腰を反らせて挙げていないかも一緒に見てください。

3〜5番目は、学校の健康診断で行われる運動器の検査と同じ動作です。指導者向けの教材でも「子どもロコモ4検査」として同じ4つが挙げられています。

最初の6ヶ月のロードマップ

最初から追い込みません。測る→整える→伸ばすの順で進めます。
時期やることこの段階のゴール
0ヶ月目Body Assessment(90分)。問診・成長・触診・運動器スクリーン・可動域31項目・パフォーマンス測定現在地を数値で把握する。受診が必要なものがあれば、まずそちらを優先
1〜2ヶ月目評価で出た制限に絞った改善。片脚立ち、しゃがみ込み、着地の3つを軸に。自宅でできる種目を2〜3個基本の動作が痛みなくできる
3〜4ヶ月目跳ぶ・切り返す・投げるの土台づくり。接地数を管理しながら跳躍系を導入着地で膝が内に入らない。音が小さくなる
5〜6ヶ月目競技特性に合わせた動きへ。ゴルフならスイングの土台、野球なら投球と打撃の土台競技の場面で使える動きになる
6ヶ月目再評価。同じ31項目を測り直し、前回と比較数値で変化を確認し、次の6ヶ月を決める
成長スパート中は3ヶ月ごと、落ち着いてからは6ヶ月ごとの再評価を目安にしています。

よくある4つの誤解

とくに多いのが「筋トレをすると背が伸びなくなる」という話です。これは生存者バイアスから生まれた誤解で、国際的な3つの団体が根拠なしと明言しています。ただし本当のリスクは別のところにあります。

「小学生の筋トレは背が伸びなくなる」

これは生存者バイアスから生まれた誤解です。国際的な3つの団体が、いずれも「根拠がない」と明確に否定しています。ただし、まったく別のところに本当のリスクはあります。

まず、専門機関の見解を並べます。

団体・年見解
NSCA(米国ストレングス&コンディショニング協会)2009「これまでのところ、若年者のレジスタンストレーニングを扱った前向き研究において、成長軟骨の損傷が報告された例はない」「レジスタンストレーニングが小児期・青年期の成長と成熟に悪影響を及ぼすことを示す根拠はない」
AAP(米国小児科学会)2020「レジスタンストレーニングは成長を妨げるかもしれない」という誤解に対し、「適切に設計されたレジスタンストレーニングのプログラムが、成長板の健康・身長の伸び・心血管の健康に悪影響を及ぼすことは示されていない」と明記
UKSCA(英国ストレングス&コンディショニング協会)2012「レジスタンストレーニングが小児期・青年期の身長の伸びに悪影響を与える、あるいは成人後の最終身長を低くすることを示す科学的根拠はない」
いずれも各団体のポジションステートメント原文より。「適切に設計された」「管理された」という条件が付いている点に注意してください。

では、なぜこの話が広まったのか

元になった観察はこうです。「重量挙げや体操の選手は、背が低い人が多い」。ここから「筋トレをすると背が伸びなくなる」という因果が推測されました。

しかし、実際に起きているのは逆向きのことです。

生存者バイアス

重量挙げや体操では、背が低いほうが構造的に有利です。てこが短いぶん力を出しやすく、回転もしやすい。つまり背が低い子がその競技で勝ち残ります。

背が高い子は勝てずに、途中で別の競技へ移ります。だから私たちの目に入る選手=残った人(生存者)は、背が低い人ばかりに見えるのです。

見えているのは「トレーニングがもたらした結果」ではなく、「誰が残ったか」です。バスケットボール選手に背が高い人が多いのを見て「バスケをやると背が伸びる」とは言わないはずですが、それとまったく同じ構造の錯覚です。

因果が逆になっている、と言い換えてもいいでしょう。トレーニングが身長を決めたのではなく、身長がその競技への残りやすさを決めたのです。

ただし、本当のリスクは別にあります

ここを省略すると誤解を別の誤解に置き換えるだけになるので、正確に書きます。AAPは無条件の安全宣言をしていません。

同じ2020年の声明で、骨の成熟に近づくまでの時期は、成長軟骨のある腱の付着部に爆発的な収縮が加わると、裂離骨折(けんが骨を引きはがす形のケガ)のリスクを高めうると警告しています。

つまり問題なのは「筋トレをすること」ではなく、管理されていない高負荷と、爆発的な動作の量です。この2つは、やり方で完全にコントロールできます。

当ジムでは次のようにしています。

  • 1回だけ挙げられる限界の重さ(1RM)は測りません。骨の成長線が閉じていない年代に、限界の負荷をかける理由がないためです
  • パワーの測定機器を使う場合は、満15歳以上かつ高校進学後に限定しています(機器メーカーの年齢条項と、日本スポーツ協会のガイドの両方を満たす線)
  • 跳躍系は接地数を管理します。1回のセッションで30〜50回、週の合計で120回以下という目安を使っています
  • 身長が最も速く伸びる時期の前後1年は、爆発的な最大負荷の測定を行いません

「小学生に筋トレは危ない」でも「筋トレは安全だから何でもやってよい」でもありません。危ないのは特定のやり方であり、それは避けられる——これが正確な理解だと考えています。

「痛くなければ大丈夫」

これが最も危険な誤解です。前述のとおり、腰痛でレントゲンが陰性だった18歳以下の48.5%にMRIで所見が見つかり、同じ研究は理学所見では早期発見できなかったと結論しています。押して痛くないことは、何もないことの証明にはなりません。

「柔らかいほど良い」

やわらかさ自体は良し悪しではありません。関節がやわらかい子は珍しくなく、それが問題という意味でもありません。見るべきは「左右で差がないか」「その子の中で前回から変わっていないか」です。当ジムが左右差と経時変化を判定の主軸にしているのはこのためです。

「点数をつけてもらえば強くなる場所が分かる」

当ジムは合計点も5段階評価も出しません。理由は明確で、ケガを予測できると証明されたスクリーニング検査は現在のところ存在しないからです(Bahr 2016, British Journal of Sports Medicine)。よく使われる動作スクリーンの合計点も、複数のメタ解析で予測能が低いと結論されています。

点数を出せば分かりやすくはなります。しかし分かりやすさのために、根拠のない順位を子どもにつけることになります。代わりに出すのは、部位ごとのプロフィール独立して表示される受診の目安今回の重点3つの3つだけです。

スクールや教室との違い

項目技術スクール・教室一般的なジムDisport World
主な目的競技技術の習得体力・筋力向上身体の評価と、それに基づく個別設計
身体の評価基本的に行わない簡易的な場合が多い可動域31項目・受診の目安10種
成長段階の考慮年齢・学年で区切ることが多い限定的身長の伸びから成長段階を判断し、時期に応じて内容を変える
医療機関との連携限定的受診の目安に該当した場合、記録をお渡しして受診をおすすめする
保護者へのレポート簡易的な場合が多い測定結果・重点項目・自宅でできることを書面でお渡し
技術指導そのものはチームやスクールの領域です。当ジムはその土台になる身体を担当します。どちらが上ということではなく、役割が違います。

岡本 隼人

日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)/TPI Certified Fitness 2 / Power 2/NASM-PES/船橋フェニックス監督

プロアスリートから成長期のジュニアまで、身体の評価とコンディショニングを担当。ジュニア世代については、成長段階に応じた評価の枠組みを自社で構築し、可動域31項目のスクリーンと受診の目安10種を運用しています。競技力の向上と、ケガをさせないことは、切り離せないと考えています。

よくあるご質問

何歳から通えますか
小学校中学年(3〜4年生)ごろからをおすすめしています。この時期は動きの引き出しを増やすのに適しており、Physical Literacy(動きの土台)を育てる期限とされる男子12歳・女子11歳より前だからです。ただし年齢よりも、本人が「やってみたい」と思えるかどうかを重視しています。低学年のお子さまについては、一度ご相談ください。
チームの練習があるので、週に何回も通えません
むしろ通いすぎないほうがよい場合が多いです。小学生年代は練習量そのものがケガの要因になりやすく、週の練習時間が年齢(歳)を超えるとケガの報告が増えるという研究があります。当ジムでは月2回から始めていただくコースもあり、ご自宅でできる内容をお渡しして、チームの練習と重ならないよう調整します。
いま痛いところがあるのですが、行っても大丈夫ですか
痛みがある場合は、まず整形外科の受診をおすすめします。とくに腰の痛みが2週間以上続いている、夜寝ているときに痛みで目が覚める、じっとしていても痛い、といった場合は必ず受診してください。当ジムでは初回の問診でこれらを確認し、該当する場合はその日の測定を行わず受診をご案内しています。医療機関で診ていただいたあとであれば、主治医の指示の範囲で対応いたします。
筋トレをすると背が伸びなくなりませんか
その根拠はありません。NSCA(2009)は「若年者のレジスタンストレーニングを扱った前向き研究で、成長軟骨の損傷が報告された例はない」とし、AAP(米国小児科学会・2020)も「適切に設計されたプログラムが成長板の健康・身長の伸びに悪影響を及ぼすことは示されていない」と明記、UKSCA(2012)も「成人後の最終身長を低くする科学的根拠はない」としています。この俗説は、重量挙げや体操の選手に背の低い人が多いという観察から生まれたものですが、実際は背が低いほうがそれらの競技で有利なため勝ち残っているだけで、因果が逆です(生存者バイアス)。ただし本当のリスクは別にあり、骨の成熟に近づくまでの時期は、成長軟骨のある腱の付着部に爆発的な収縮が加わると裂離骨折のリスクが高まりうるとAAPは警告しています。当ジムでは1回だけ挙げられる限界の重さ(1RM)は測らず、パワー測定機器は満15歳以上かつ高校進学後に限定し、跳躍系は接地数を管理しています。
ゴルフをやっている子でも見てもらえますか
はい。当ジムはTPI認定(Fitness 2/Power 2)を保有しており、ゴルフの身体評価を専門としています。ジュニアゴルファーの場合、回旋動作の反復が腰に負担をかけやすいため、股関節と胸の背骨の可動域を特に丁寧に確認します。野球・サッカーのお子さまも通われています。
友達と一緒に受けることはできますか
ペアでのトレーニングについては、ご相談ください。お子さまの状態や時間帯によって対応できる場合があります。なお初回の身体評価(Body Assessment)は、一人ひとり丁寧に測定するため個別で実施しています。
評価だけ受けることはできますか
できます。Body Assessment(90分)は単発でご利用いただけます。測定結果と、ご自宅やチームでできることをまとめたレポートをお渡ししますので、そのまま普段の練習に活かしていただけます。継続の勧誘は行いません。

関連記事

本記事は運動指導の観点から一般的な情報を提供するものであり、診断・治療を目的としたものではありません。痛みや不調がある場合は、医療機関を受診してください。記載した数値は出典に基づく参照値であり、個人の判定基準ではありません。

主な出典

  • 令和6年度 学校保健統計調査(文部科学省)/令和6年度 体力・運動能力調査(スポーツ庁)年齢別テストの結果
  • Kobayashi A, et al. 2013(18歳以下のスポーツ選手200名・MRI)
  • Bahr R. 2016. British Journal of Sports Medicine 50(13):776-80
  • 片岡ら, J Spine Res 15:979-984, 2024(中学生サッカー選手37名)
  • NSCA Youth Resistance Training Position Statement 2009(J Strength Cond Res 23(Suppl 5):S60-S79)/AAP Resistance Training for Children and Adolescents 2020(Pediatrics 145(6):e20201011)/UKSCA Position Statement 2012
  • AZCARE ACADEMY 教材(育成論/パフォーマンス・トレーニング/Women's Health:基礎と応用/視覚システムの基礎と応用/スポーツ障害の評価/栄養コンサルティング)