Recovery & Conditioning

骨折・手術後の回復
「治す」と「戻す」は、別の仕事です

骨や組織を治すのは、医師と身体の治癒力です。そこに近道はありません。しかし復帰までの時間は、もうひとつの要素で大きく変わります。固定と安静の間に落ちた筋力・可動域・動きを、いつ、どう戻すか。リハビリを卒業したあとに残る「空白」の埋め方を解説します。

公開 2026.08.04 / 更新 2026.08.04 / 読了目安 13分 / 岡本隼人(JSPO-AT × TPI Certified Fitness 2 / Power 2 × NASM-PES)

この記事で分かること

  • 「早く治したい」の答えは2つに分かれる。治癒そのものは医療の領域。並行してできるのは「治っていく間に、落とさない・戻す」こと
  • 固定・安静の間、身体は待っていてくれない。筋力と可動域は、使わなければ落ちていく
  • 「治った」と「動ける」は一致しない。骨がついても、筋力・可動域・動きの感覚は自動では戻らない
  • 病院のリハビリ卒業後に「空白」がある。日常生活レベルまでは医療、その先を担う専門領域がある
  • 温めるケアには適した時期がある。受傷直後・腫れているときは温めない。INDIBAは医療機器ではなく、時期の判断は医師に確認する
  • 戻し方には順番がある。可動域 → 筋力 → 動作。飛ばすと再受傷のリスクを持ち越す
数週〜数ヶ月
骨癒合にかかる
一般的な目安
部位・年齢・状態で大きく変わる
1–2
使わない筋肉の筋力低下が
始まるとされる目安
不動・固定に関する一般的知見
90%
復帰判断で使われる
左右対称性の目安(LSI)
スポーツ医学の一般的指標・合否線ではない
0.448MHz
INDIBA PRO MAXの
高周波
非医療機器のコンディショニング機器

「早く治したい」の正体を分解する

結論:「早く治したい」は、実は2つの願いが混ざっています。①組織が治ること(治癒)、②元の生活・スポーツに戻れること(復帰)。①を担うのは医療と身体の治癒力で、近道はありません。しかし②は、治癒と並行して何をするかで変わります。

治癒のスピードは、生物学が決めている

骨折した骨がつながるには、部位・年齢・状態によって数週間から数ヶ月かかります。これは炎症期 → 修復期 → リモデリング期という生物学的なプロセスで、外から手を加えて大幅に短縮できるものではありません。手術後の組織の治癒も同じです。

ですから、「これをやれば骨が早くつく」「この施術で治癒が加速する」といった話には、慎重になってください。治癒の管理は、担当医の領域です。通院の指示、固定の期間、負荷をかけてよい時期——これらの判断に代わるものはありません。

それでも「復帰までの時間」に差がつく理由

同じ骨折・同じ手術でも、元の生活やスポーツに戻るまでの時間には、人によってはっきり差が出ます。差を作っているのは治癒の速さではなく、治癒している間に身体の他の部分がどれだけ落ちたか、そして治癒後にどう戻したかです。

この記事の立場

当施設は医療機関ではありません。診断・治療は行わず、骨折や手術そのものを「治す」ことはできません。この記事で扱うのは、医師の管理と許可のもとで進める「落とさない・戻す」の部分——コンディショニングとトレーニングの領域です。

固定・安静の間に、身体で何が起きているか

結論:身体は「使わない」に素早く適応します。固定された部位の筋力低下は1〜2週間程度から始まるとされ、関節は動かさない期間が長いほど硬くなります。しかも影響は、固定された場所だけにとどまりません。

筋力は「貯金」できない

ギプスやシーネで固定された腕や脚を思い出してください。外したとき、細くなっていたはずです。筋肉は使われない状態が続くと萎縮します。これは意志の力では止められない、正常な適応です。

落ちるのは太さだけではありません。筋力、持久力、そして「思ったとおりに力を出す」神経の協調も一緒に落ちます。数週間の固定で失われたものを戻すには、多くの場合、固定期間より長い時間がかかります。

関節は、動かさないと硬くなる

関節を動かさない期間が続くと、関節の周囲の組織が硬くなり、可動域が狭くなります(拘縮)。硬くなった関節は、放っておいても元の柔らかさには戻りません。段階的に動かして取り戻す作業が必要になります。

影響は全身に広がる

場所何が起きるか
固定された部位筋萎縮・筋力低下・関節可動域の低下
反対側・周辺かばう動きで負担が偏る。片脚をかばえば反対の脚・腰に、腕を吊れば首・肩に
全身活動量の低下による体力・持久力の低下。体重の増減
動きの感覚バランス・反応・「身体の位置の感覚」が鈍る。ここが最も見落とされやすい
固定・安静の影響は「患部が細くなる」だけではありません。
見落とされやすい点

「患部以外は動かしてよい」ケースは珍しくありません。たとえば下肢の骨折で上半身のトレーニングが可能なことも、その逆もあります。ただし何をどこまで動かしてよいかは、必ず担当医に確認してください。自己判断で始めるのが、いちばん危険です。

「治った」のに動けない3つの理由

結論:骨がついた・傷が塞がった=元どおり、ではありません。①筋力が戻っていない、②可動域が戻っていない、③動きの感覚と自信が戻っていない。この3つが残ったまま復帰すると、パフォーマンスが出ないだけでなく、再受傷のリスクを持ち越します。

理由1:筋力の左右差が残っている

スポーツ復帰の判断では、左右対称性(LSI:患側が健側の何%まで戻ったか)という指標がよく使われます。目安として90%程度がひとつの基準とされますが、これは合否ラインではなく、「感覚ではなく数値で戻りを確認する」という考え方そのものに意味があります。見た目や感覚では、左右差は分かりません。

理由2:可動域の制限が動きを変える

足首の背屈が数度足りないだけで、しゃがみ方が変わり、着地の衝撃の逃がし方が変わります。制限された関節の分は、必ず別の関節が代償します。患部は治ったのに別の場所が痛くなる——という展開の多くは、この代償から始まります。

理由3:身体が動きを「忘れて」いる

痛みと固定の期間を経た身体は、無意識にかばう動きを覚えています。かばう動きは、治ったあとも自動では消えません。ジャンプの着地で患側に体重を乗せきれない、無意識に歩幅が変わっている——本人が気づかないレベルで残り続けます。これを戻すには、正しい動きを段階的に再学習する過程が必要です。

回復の全体像——誰が・どこまでを担うのか

結論:回復は「医療 → 医療のリハビリ → その先」という流れで進みます。病院のリハビリテーションは、多くの場合、日常生活レベルの回復を目標に組まれています。そこから元のスポーツ・元のパフォーマンスまでの間に「空白」があり、ここを担うのがアスレティックトレーナーとコンディショニングの領域です。
担い手資格の性質担う範囲
医師(整形外科)国家資格診断・治療・手術・投薬。復帰可否の最終判断。すべての起点
理学療法士(PT)国家資格(医師の指示のもと)医療としてのリハビリテーション。急性期〜日常生活レベルの回復
アスレティックトレーナー(JSPO-AT)公益財団法人日本スポーツ協会の公認資格(国家資格ではありません)医師の許可のもとで、日常生活レベルから元の生活・スポーツレベルへ「戻す」トレーニングとコンディショニング
それぞれに固有の領域があり、どれかが他の代わりになる関係ではありません。

なぜ「空白」が生まれるのか

医療保険で受けられるリハビリには期間や目標の枠組みがあり、多くの場合「日常生活に支障がないレベル」で一区切りになります。しかし、日常生活レベルと、ゴルフのラウンドに戻る・ランニングを再開する・重いものを持てるレベルの間には、大きな距離があります。

この距離を埋める作業——落ちた筋力を段階的に戻し、可動域を取り戻し、動きの感覚を再学習する——が、誰にも設計されないまま自己流になりやすい。ここが「治ったのに、前のように動けない」が生まれる構造です。

専門家視点

アスレティックトレーナー(JSPO-AT)は、まさにこの「空白」を担うために体系化された資格です。当施設では担当医の許可と制限の範囲を必ず確認してからプログラムを設計します。医療の代わりではなく、医療の続きを担当する、という位置づけです。

温めるケアの位置づけ——INDIBAという選択肢

結論:温めるケアには「適した時期」があります。受傷直後・腫れや熱感がある時期は温めません。回復が進んだ段階でのコンディショニングとして、当施設では高周波温熱機器 INDIBA PRO MAX を使っています。INDIBAは医療機器ではなく、治療を目的とするものではありません。

まず、温めてはいけない時期を知る

受傷直後の腫れ・熱感・強い痛みがある時期(急性期)は、炎症が組織の修復を始めている段階です。この時期に温めると、腫れや痛みを悪化させることがあります。受傷直後の対応は保護と適切な安静が基本で、まず医療機関を受診してください。

回復期のコンディショニングとして

腫れが引き、医師から動かしてよい許可が出た段階では、身体を温めることは、動かすための準備として意味を持ちます。温まった組織は動かしやすく、トレーニング前のウォームアップやトレーニング後のケアと組み合わせやすくなります。

INDIBA PRO MAXは、0.448MHzの高周波を用いて身体を深部から温めるコンディショニング機器です。表面から温めるカイロや入浴と違い、身体の内側の組織に熱を作るという仕組み上の特徴があります(詳しい仕組みはこちらの解説)。

必ずお読みください

INDIBA PRO MAXは医療機器ではありません。骨折や手術後の組織を治すもの・治癒を早めるものではなく、治療を目的とするものでもありません。効果の感じ方には個人差があります。術後・骨折後の方は、温めてよい時期かどうかを必ず担当医にご確認ください。ペースメーカーをご使用の方はご利用いただけません。体内に金属(プレート・ボルト等)が入っている方は、事前に必ずお申し出のうえ、医師にご確認ください。

当施設での使い方

INDIBA単体でも利用できますが、術後・怪我後の方には「戻す」トレーニングとの組み合わせを基本にしています。温める(動かす準備)→ 可動域と筋力のトレーニング → クールダウン、という流れの中の一部として使う。機器が主役なのではなく、戻すプログラムの道具のひとつという位置づけです。アスリートの事例は競技復帰としてのインディバで紹介しています。

自分でできること・やってはいけないこと

担当医の指示が最優先です。そのうえで、回復を妨げないために自分で管理できることを整理します。
  1. 医師の指示・通院を最後まで守る/痛みが引くと通院をやめてしまう方が多いのですが、痛みの消失と治癒の完了は別です
  2. 「動かしてよい範囲」を具体的に聞く/「安静に」だけでなく、患部以外のトレーニングの可否、荷重の程度、いつから何ができるかを確認する
  3. 睡眠と食事を整える/組織の修復は身体の回復力が担います。タンパク質を含む規則的な食事と睡眠は、地味ですが土台です
  4. 患部以外を動かす(許可の範囲で)/全身の体力低下を最小限にすることが、あとの「戻し」を短くします
  5. 左右差を記録しておく/片脚立ちの秒数、握力など、簡単なものでかまいません。戻りの進み方が見えるようになります
やってはいけないこと理由
痛みを我慢して動かす治癒中の組織への負荷は、担当医が管理するもの。「痛いけど動ける」は判断基準になりません
受傷直後に温める・揉む急性期の炎症を悪化させることがあります
固定が外れた日から一気に戻す落ちた筋力・硬くなった関節に急な負荷をかけると、別の怪我につながります。段階設計が必要です
SNSの「早く治る方法」を自己判断で試す治癒の管理は担当医の領域です。試してよいかは受診時に確認を
迷ったら、次の通院時に聞く。これがいちばん確実です。

六本木で「戻す」を設計する

Disport Worldは六本木駅徒歩4分の完全個室パーソナルジムです。日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)の岡本隼人が、医師の許可の範囲内で「戻す」プログラムを設計します。

進め方

段階内容
1. ご相談(LINE)受傷・手術の経緯、現在の通院状況、医師からの許可・制限の内容をうかがいます。この段階では費用はかかりません
2. 医師の許可の確認運動の許可が出ていない場合は、お受けせず受診をご案内します。許可の範囲が不明確な場合は、確認していただきたい項目をお渡しします
3. 評価(90分)可動域・筋力・バランス・動作を左右差を含めて測定し、現在地を数値化します
4. プログラム可動域 → 筋力 → 動作の順で段階設計。INDIBAは準備とケアとして組み込みます(任意)
トレーニングの各回は完全個室・担当制です。

まず、状況をお聞かせください

受傷や手術の経緯、医師の許可の内容によって、できること・できないことが変わります。LINEで状況をうかがってから、進め方をご提案します。運動の許可が出ていない段階では、受診を優先していただきます。

¥15,000¥7,500

体験セッション90分(医師の運動許可が出ている方)/税込/毎月先着3名さま半額/完全個室/無理な勧誘はありません

よくあるご質問

骨折は早く治せますか?

骨の治癒そのものを外から早める方法を、当施設は提供していません。治癒の管理は担当医の領域です。当施設が担当するのは、治癒と並行して落ちていく筋力・可動域・動きの感覚を、医師の許可の範囲で「落とさない・戻す」ことです。復帰までの時間は、ここで差がつきます。

いつから始められますか?

担当医から運動の許可が出てからです。許可が出ていない段階ではお受けせず、受診をご案内します。「患部以外なら動かしてよい」という段階から始められるケースもありますので、通院時に運動の可否を具体的に確認されることをおすすめします。

ギプスが外れたばかりでも大丈夫ですか?

医師の許可があれば可能です。固定明けは筋力・可動域がもっとも落ちている時期なので、いきなり負荷をかけず、可動域の回復から段階的に進めます。最初の評価で左右差を測定し、現在地を数値で確認してから始めます。

INDIBAで治りが早くなりますか?

INDIBA PRO MAXは医療機器ではなく、治癒を早める機器でもありません。身体を深部から温めるコンディショニング機器で、動かす準備やトレーニング後のケアとして使っています。効果の感じ方には個人差があります。術後・骨折後の方は、温めてよい時期かを必ず担当医にご確認ください。

病院のリハビリと何が違いますか?

病院のリハビリテーションは医療であり、理学療法士が医師の指示のもとで行います。当施設は医療機関ではなく、リハビリの「代わり」ではありません。担当するのは、医療のリハビリが一区切りしたあと——日常生活レベルから、元の生活・スポーツのレベルへ戻す段階です。並行する場合も、必ず医師の方針を優先します。

体内にプレートやボルトが入っていますが、INDIBAは受けられますか?

体内金属がある方は、事前に必ずお申し出いただき、担当医にご確認をお願いしています。ペースメーカーをご使用の方はご利用いただけません。確認が取れるまでは、INDIBAを使わないプログラムで進めることもできます。

岡本 隼人

Disport World 代表トレーナー/JSPO-AT × TPI Certified Fitness 2 / Power 2 × NASM-PES

日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー。競技現場で外傷対応から競技復帰までを一貫して担当してきました。2016年に六本木でDisport Worldを開設し、累計20,000セッション以上。怪我からの復帰は「医師の許可の範囲で、段階的に」を原則としています。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療・特定の効果を示すものではありません。骨折・手術後の治癒の管理、運動の可否の判断は、必ず担当医の指示に従ってください。INDIBA PRO MAXは医療機器ではなく、治療を目的とするものではありません。効果の感じ方には個人差があります。Disport Worldは医療機関ではなく、診断および治療は行いません。
  • 骨癒合の期間、不動による筋力低下・拘縮、急性期対応(保護と適切な安静)に関する記述は、整形外科学・スポーツ医学で広く共有されている一般的知見に基づいています。
  • LSI(左右対称性指標)は、スポーツ復帰の判断で用いられる一般的な指標としての紹介であり、合否基準ではありません。
  • INDIBA PRO MAXに関する記述は、非医療機器のコンディショニング機器としての自社の運用情報です。