・「骨盤を立てる」=腰を反らさず中立にする、「骨盤から前傾」=股関節を折って上体を倒す。同時に成立する。反り腰のまま前傾するのがSポスチャー
・スイング中の骨盤:トップで約45〜50度回り、インパクトで約30〜38度開く(アマ100名の実測)。骨盤の回転量そのものはボール初速と関係せず、上体との差(捻転差)と回転速度が関係する
・TPI:ダウンスイングでの骨盤の後傾は「パワーの動き」で、下半身から上半身へ順序よく動いている証拠。前傾で固まった骨盤は腰の怪我に弱い
・腰痛のあるプロは、アドレスで背骨をより曲げ、バックスイングで左への側屈が大きく、体幹の回旋可動域が少ない(プロ12名)
・Sポスチャーの原因は下位交差症候群(腸腰筋・腰背部が硬く、腹筋・殿筋が弱い)。Cポスチャーは上位交差症候群(胸・広背筋・僧帽筋上部が硬く、肩甲骨まわりが弱い)
・順序は「骨盤を単独で前後に動かせる → 股関節から前傾できる → 骨盤を止めて上体を回す分離 → スイング」
「立てる」「前傾」「後傾」は矛盾しない
結論から言うと、3つは別の局面・別の軸の話です。「骨盤を立てる」は、後ろから見て骨盤が直立している(反り腰でも丸まりでもない中立)こと。GDOのレッスン記事では、骨盤を立たせることで腹筋に力が入りボールに力を伝えやすくなる、多くのアマチュアは骨盤を前傾させて背中を反らせてしまう、と説明されています。「骨盤から前傾する」は、脚の付け根(股関節)から骨盤ごと背骨を倒すこと。膝を曲げてしまう人は注意、とゴルフダイジェストの記事にあります。この2つは同時に成立します。股関節を折って上体を倒しながら、腰は反らさない。
| レッスンの言葉 | 身体の動き | 局面 | できないときに起きること |
|---|---|---|---|
| 骨盤を立てる | 骨盤の前後傾を中立にする(腰を反らさない・丸めない) | アドレス | 反り腰(Sポスチャー)か、丸まり(Cポスチャー) |
| 骨盤から前傾する | 股関節を折って骨盤ごと上体を倒す(ヒップヒンジ) | アドレス | 膝で曲げる、背中を丸めて前傾したように見せる |
| 骨盤を回す | 股関節の内旋・外旋の上で骨盤が水平に回る | バックスイング〜フォロー | 横に流れる(スウェー・スライド)、腰椎で回す |
| 骨盤を後傾させる | ダウンスイングで骨盤の前傾がほどけ、やや起きてくる | ダウン〜インパクト | 前傾で固まったまま回す→腰への負担、ボール方向に突っ込む |
局面ごとの骨盤の動き(アドレス〜フォロー)
TPIの記事(Dr. Rose と Dave Phillips)は、骨盤の傾きを「ゴルフスイングで最も見過ごされ、過小評価されている動作の1つ」と呼んでいます。要点は、ダウンスイングでの骨盤の後傾は「パワーの動きであり、下半身から上半身へ順序よく動いている証拠」だということ。逆に前傾で固まった骨盤は、リバーススパインアングルと組み合わさると腰の怪我に弱くなる。骨盤の制御ができないことは、ロスオブポスチャー、アーリーエクステンション、リバーススパインアングル、スウェー、スライドと関係すると述べています。
| 局面 | 骨盤の傾き | 骨盤の回旋 | ポイント |
|---|---|---|---|
| アドレス | 股関節から前傾、腰は中立 | 0度 | 反り腰でも丸まりでもない |
| バックスイング〜トップ | 前傾を保つ | 約45〜50度(実測) | 右股関節に乗って回る。横に流れない |
| 切り返し〜ダウン | 後傾が始まる | 上体より先に回り始める | 骨盤が先に動くことで捻転差が一瞬広がる |
| インパクト | やや起きてくる(後傾) | 約30〜38度開く(実測) | 左股関節に乗って回る。ボール方向に突っ込まない |
| フォロー | 前傾に戻る | — | 左股関節の上で回り切る |
骨盤はどれだけ回るのか——実測値
アマチュアゴルファー100名をボール初速で3群に分けた研究(Myers ら、2008)では、トップの骨盤回旋は低初速群49.8度、中群47.5度、高初速群44.9度で、群間に差はありませんでした(p=0.660)。インパクトの骨盤は29.4度、35.3度、38.3度開いており、こちらも統計的な差はなし(p=0.163)。差があったのは、骨盤の最大回転速度(358、410、434度/秒、p=0.003)と、上体と骨盤の差(捻転差)です。
つまり「骨盤をたくさん回す」ことは飛距離と関係していません。関係するのは、骨盤を止めて上体を回せること(捻転差)と、切り返しで骨盤を速く回せること(回転速度)です。骨盤を回す量を増やそうとして腰を回すと、捻転差が消えて逆効果になります。詳しくは捻転差(X-Factor)は本当に必要かで解説しました。
SポスチャーとCポスチャー——骨盤が決めるアドレス
Sポスチャー——反り腰のアドレス
TPIの定義は「セットアップで尾骨を突き出しすぎて、腰に過度なアーチを作ってしまう姿勢」。原因は下位交差症候群で、腸腰筋と腰背部が硬く、腹筋と殿筋が弱いという予測可能なパターンです。腰の筋肉に異常に高いストレスがかかり、腹筋が緩むため、バックスイングでロスオブポスチャーやリバーススパインアングルが出やすくなります。「骨盤を立てて」という指導は、この姿勢の人に向けたものです。
Cポスチャー——丸まったアドレス
TPIの定義は「アドレスで肩が前に落ち、胸椎がはっきり丸まった姿勢」。原因は上位交差症候群で、胸・広背筋・僧帽筋上部・肩甲挙筋が硬く、肩甲骨まわりと深層頸部屈筋が弱い。骨盤というより胸椎の伸展不足が主因で、「骨盤から前傾して」と言われても背中を丸めて前傾したように見せてしまいます。
どちらの姿勢も、意識で直そうとすると別の場所に負担が移ります。SとCの見分け方と直し方はCポスチャーとSポスチャーで、Cポスチャーの主因である胸椎は胸椎の回し方で扱っています。
骨盤傾斜テスト、骨盤回旋テスト、下半身回旋テスト(基準60度)、ブリッジを含む16項目を実測し、SポスチャーかCポスチャーか、その原因がどこにあるかをレポートPDFにしてお渡しします。
TPIフィジカルアセスメントの詳細を見る骨盤と腰痛
腰痛のある男子プロ6名と無い6名を比べた研究(Lindsay と Horton、2002)では、腰痛のあるゴルファーはアドレスで背骨をより曲げて構え、バックスイングで左への側屈が有意に大きく、体幹の回旋可動域が少ないため、スイング中に「相対的に上限を超えた回旋」を背骨に強いていました。痛みのないゴルファーはダウンスイングでの体幹屈曲速度が2倍以上ありました。
骨盤の視点で言うと、アドレスで骨盤が中立に置けず(反り腰か丸まり)、スイング中に骨盤を後傾させられない人は、その分を腰椎の側屈と回旋で埋めています。TPIが「前傾で固まった骨盤は腰の怪我に弱い」とする理由です。腰痛の全体像はゴルフの腰痛は「腰」が原因ではない、リバーススパインアングルはリバーススパインアングルの直し方で扱っています。
自宅で確かめる2つのテスト
骨盤傾斜テスト——骨盤を単独で前後に動かせるか
5番アイアンのアドレス姿勢を取り、腕を胸の前で組む。脚と上体を動かさずに、骨盤だけを前傾・後傾させる。TPIの合格像は「膝と脚の動きが最小で、上体の前後の動きも限られたまま、骨盤が前後に傾く」こと。前傾しようとすると腰が反って上体が起きる、後傾しようとすると膝が曲がる、動かすと震える(TPIが言う shake and bake)人は、股関節と腰椎の可動性か、骨盤を制御する能力が足りていません。TPIはこのテストを「股関節と腰椎の総合的な可動性と、骨盤の位置を制御する能力を見る優れたテスト」としています。
骨盤回旋テスト——上体を止めて骨盤だけ回せるか
同じアドレス姿勢で、上体を動かさずに骨盤だけを左右に回す。合格は「ウエストより上がまったく動かず、骨盤だけが回る」こと。肩が一緒に動く、骨盤が横に流れる人は不合格です。手で上体を固定して改善するなら安定性、固定しても改善しないなら可動性の問題です。
2つとも合格なら、骨盤の課題は技術と感覚の側にあり、レッスンで直ります。1つでも不合格なら、「骨盤を立てて」「骨盤から前傾して」と言われても、身体がその動きを実行できません。16項目全体はTPI 16項目の全解説にまとめています。
練習の順序——傾ける、折る、分離する
骨盤を単独で傾ける
仰向けで膝を立て、腰を床に押しつける(後傾)・腰と床の隙間を作る(前傾)を交互に10回。次に四つ這い、最後にアドレス姿勢で同じことをやる。骨盤傾斜テストそのものが練習になります。Sポスチャーの人は後傾側、Cポスチャーの人は前傾側が苦手です。
股関節から折る(ヒップヒンジ)
クラブを背中に当てて後頭部・背中・お尻の3点を離さず、お尻を後ろに引きながら上体を倒す。腰が反ればSポスチャー、背中がクラブから離れればCポスチャーの動きが出ています。腸腰筋のストレッチ(ハーフニーリング)と、腹筋・殿筋の種目(デッドバグ、ブリッジ)を併用。
骨盤を止めて上体を回す・上体を止めて骨盤を回す
骨盤回旋テストと上体回旋テストをそのまま練習にする。ここで初めて、骨盤を先に動かす切り返し(捻転差が広がる動き)と、インパクトに向かう後傾が成立します。
現場で見えていること
「骨盤を立てて」と言われて直らない方を測ると、骨盤傾斜テストで骨盤だけを動かせず、前傾しようとすると上体ごと起き、後傾しようとすると膝が曲がる方が大半です。骨盤を単独で制御する動きを、そもそもやったことがない。仰向けで腰を床に押しつける練習から始めると、数回のセッションでアドレスの骨盤が変わります。
もう1つ多いのが、デスクワークで腸腰筋が硬く、立つと反り腰、構えるとさらに反るSポスチャーの方。この方に「骨盤を立てて」と言うと、腹筋で無理に丸めて今度はCポスチャーになります。必要なのは意識ではなく、腸腰筋の長さと殿筋・腹筋の働きです。同じ「骨盤を立てられない」でも、可動性が原因か、制御が原因か、筋のバランスが原因かで手当てが違う。測ってから始める理由です。レッスンコーチとの連携も可能で、役割の分担はゴルフのパーソナルトレーニングにまとめました。
よくある質問
「骨盤を立てる」と「骨盤から前傾する」は矛盾していませんか?
していません。「立てる」は骨盤の前後傾を中立にすること(反り腰にしない)、「前傾する」は股関節を折って骨盤ごと上体を倒すことです。股関節を折りながら腰は反らさない、が正しいアドレスで、反り腰のまま前傾するのがSポスチャーです。
骨盤はスイングで何度回りますか?
アマチュア100名の実測で、トップで約45〜50度、インパクトで約30〜38度開いていました。ただし骨盤の回転量そのものはボール初速と関係がなく、関係するのは上体との差(捻転差)と骨盤の回転速度です。回す量を増やすことは目標になりません。
ダウンスイングで骨盤を後傾させるのはなぜですか?
TPIは骨盤の後傾を「パワーの動きであり、下半身から上半身へ順序よく動いている証拠」と説明しています。前傾で固まった骨盤はリバーススパインアングルと組み合わさると腰の怪我に弱くなります。意識して後傾させるものではなく、骨盤を単独で動かせる身体なら自然に起きます。
反り腰(Sポスチャー)は何が原因ですか?
下位交差症候群と呼ばれるパターンで、腸腰筋と腰背部が硬く、腹筋と殿筋が弱い状態です。デスクワークで座り続けると起きやすく、意識で骨盤を立てようとしても、腸腰筋が短いままでは戻ります。腸腰筋のストレッチと殿筋・腹筋の種目が必要です。
骨盤を使おうとすると腰が痛くなります。
骨盤を単独で動かせず、腰椎の側屈や回旋で代償している可能性があります。腰痛のあるプロはアドレスで背骨をより曲げ、バックスイングで左への側屈が大きいという研究があります。痛みがある間は無理に動かさず、医療機関で確認したうえで、骨盤傾斜テストから始めてください。
体験のご案内
「骨盤を立てて」と言われ続けて直らないなら、骨盤を単独で動かせる身体になっているかを一度確かめてください。体験セッションでは、骨盤の前後傾と回旋、股関節から折れるか、腸腰筋と殿筋の状態を測り、何から手を付けるべきかをその場でお伝えします。
First Trial
骨盤を「立てられない」理由を
身体から見つける90分
カウンセリング・身体評価・トレーニング体験まで。体験後に入会を決めていただく必要はありません。基本的に代表の岡本隼人が担当します。
ウェア・タオル無料 | 完全個室 | 六本木駅徒歩4分
- Titleist Performance Institute. Understanding and Assessing Pelvic Tilt in the Golf Swing(Dr. Rose & Dave Phillips)/The Pelvic Tilt Test/The Pelvic Rotation Test/S-Posture/C-Posture/Anterior Tilt and Pelvic Control(mytpi.com)。
- Myers J, et al. The role of upper torso and pelvis rotation in driving performance during the golf swing. J Sports Sci. 2008;26(2):181-188.(n=100。トップの骨盤回旋49.8/47.5/44.9度、インパクト29.4/35.3/38.3度、最大回転速度358/410/434度/秒)
- Lindsay D, Horton J. Comparison of spine motion in elite golfers with and without low back pain. J Sports Sci. 2002;20(8):599-605.(腰痛あり6名・なし6名のプロ)
- Chu Y, Sell TC, Lephart SM. The relationship between biomechanical variables and driving performance during the golf swing. J Sports Sci. 2010;28(11):1251-1259.(n=308)
- GDO「アドレスの基本 骨盤を立てるって何!?」/みんなのゴルフダイジェスト(前傾姿勢の作り方)。

