Junior Golf Development

ジュニアゴルファーのトレーニング|何歳から・何をやるか

大人のアマチュアゴルファーの約67%に見られるスイングエラー(アーリーエクステンション)は、テストされたツアープロの99%には見られません。差は練習量だけではなく、身体の使い方の土台にあります。この記事は、日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)でTPI認定(Fitness 2/Power 2)を持つトレーナーが、小学生のジュニアゴルファーが「何歳から・何を」やるべきかを、成長期の体の事実に沿って説明します。

著者 岡本隼人(JSPO-AT/TPI Certified Fitness 2 / Power 2) | 読了 約13分

この記事で分かること

  • クラブを振り始めるのに「早すぎる」はほぼない。ただし「体づくり」はゴルフの練習量を増やすことではない。
  • ゴルフは片側だけの回旋スポーツ。同じ向きに振り続けるほど、体の偏りは練習量に比例して育つ。
  • 動きの土台は男子12歳・女子11歳までが勝負。この時期は「ゴルフだけ」より多様な動きが上達の近道になる。
  • 大人の直らないクセは、子どものうちの可動域で防げる可能性がある。アマチュアの約67%に見られるアーリーエクステンションは身体由来が多い。
  • ジュニアの腰は特別扱いする。2週間以上続く腰の痛みは、練習を続けながら様子を見てはいけない。
  • 硬くなる時期は部位ごとに決まっている。ふくらはぎは小6、太もも前ともも裏は中1、股関節の前は中2以降。
67
アーリーエクステンションが
見られるアマチュアの割合
TPI(mytpi.com)
99
同エラーが「見られない」
ツアープロの割合
TPI(mytpi.com)
12
動きの土台を育てる期限
(男子12歳・女子11歳)
Physical Literacy
48.5
腰痛が2週間以上続く18歳以下で
MRIに所見が出た割合
Kobayashi 2013

何歳から始めるべきか

結論:クラブを振り始める年齢に「早すぎる」はほぼありません。問題は始める年齢ではなく、「ゴルフしかしない」時間が早くから長くなることです。

ゴルフはぶつかり合いのないスポーツで、道具の重さも子ども用に調整できます。楽しんで振るだけなら、幼児期からでも大きな問題はありません。実際、トッププロには幼少期からクラブを握っていた選手が大勢います。

ただし、ここで生存者バイアスに注意が必要です。「幼少期からゴルフ漬けで成功した選手」は目立ちますが、同じ道を歩んで伸び悩んだり、体を痛めて辞めた子どもは表に出てきません。見えている成功例だけから「早くから専門化すべきだ」と結論するのは危険です。

体づくりの観点で大事なのは次の区別です。

  • クラブを振る・コースを楽しむ:何歳からでもよいゴルフそのものの経験は早くから積んで構いません。
  • 動きの土台づくり:男子12歳・女子11歳までが勝負走る・跳ぶ・投げる・登る・転がるといった基礎動作の多様性(Physical Literacy)は、この年齢までに育てるのが最も効率的です。ゴルフの練習「だけ」でこの多様性は育ちません。
  • 重さを使った本格的なトレーニング:成長段階を見てから年齢ではなく、成長のスピードと骨の状態で判断します。当ジムでは評価をしてから段階を決めます。

ゴルフというスポーツの「偏り」を理解する

ゴルフは「同じ向きにだけ、速く回る」ことを何百回も繰り返す片側性の回旋スポーツです。練習量が増えるほど、体の偏りも練習量に比例して育ちます。これはジュニア期に特に意識すべき点です。

右打ちの子は、常に左へ回り、常に同じ側の股関節に体重を移します。野球のように守備や走塁で別の動きが混ざる競技と比べても、ゴルフの練習は動きの種類が少なく、同じ回旋の反復に集中しがちです。

偏り自体は競技者なら誰にでも生じます。問題は、成長期に偏りを放置すると、体がその形で出来上がっていくことです。当サイトの小学生アスリートのトレーニングで解説したとおり、柔軟性が落ちる時期は部位ごとにおおよそ決まっています(ふくらはぎは小6ごろ、太もも前ともも裏は中1ごろ、股関節の前は中2以降)。硬くなる時期が来る前に、逆側への回旋と股関節の可動域を守る習慣を入れておくのが、ジュニアゴルファーの体づくりの基本方針です。

Principle

「上手くなるための練習」と「体を守る運動」は別物です。練習場に通う回数を増やしても、後者は増えません。逆に、体を守る運動はスイングの土台(回旋の可動域・分離・バランス)をつくるので、遠回りに見えて上達にも効きます。

年代別・何をやるか

小学生のうちは「ゴルフ+多様な運動」、中学生からは「評価にもとづく個別のトレーニング」へ。切り替えの目安は年齢ではなく、身長が急に伸び始めたかどうかです。
年代はあくまで目安。切り替えは暦年齢ではなく成長段階(身長の伸びの加速)で判断する。
時期体づくりの中心ゴルフとの関係
小学校低学年遊びの多様性。走る・跳ぶ・投げる・ぶら下がる・転がる。左右両方向への回旋遊びクラブは楽しく振る。フォームの矯正より「たくさんの動き」を優先
小学校高学年基礎動作の質を上げる。片脚バランス、着地、スキップ、逆振りなどの協調性スイングの再現性が出てくる時期。体の偏りのチェックを開始
身長が急に伸びる時期記録・飛距離を追わない。柔軟性の維持と着地・バランスの再学習一時的にスイングが乱れるのは正常。練習量を増やして取り返そうとしない
伸びが落ち着いてから評価にもとづく筋力・パワートレーニングを段階的に導入飛距離を伸ばす身体づくりの本番はここから
Important

身長が急に伸びている時期は、ジュニアゴルファーにとって最も注意が要る時期です。手足が急に長くなってスイングの感覚が狂い、本人は焦って練習量を増やしがちです。しかしこの時期は骨の成長に筋肉と腱が追いつかず、柔軟性が一時的に落ちています。ここで反復を増やすと、腰やひじ・手首の痛みにつながります。感覚のズレは成長が落ち着けば戻ります。

スイングの土台になる3つの身体機能

ジュニア期に守り育てたいのは、①胸と骨盤を別々に回せること(分離)、②股関節の回旋可動域、③片脚で立てるバランス。この3つはスイングのどの技術指導よりも先にある土台です。

1. 胸と骨盤の「分離」

スイングでは、骨盤→胸郭→腕→クラブの順に回転が伝わっていきます(キネマティックシーケンス)。この伝達には、胸と骨盤が「別々に」回れることが前提になります。下半身を止めて上半身だけ回す、上半身を止めて骨盤だけ回す——これができない体では、どんなスイング理論も実行できません。

2. 股関節の回旋可動域

回転の起点は股関節です。ここが硬いと、体は代わりに腰(腰椎)をひねって回転をつくろうとします。腰椎は本来ひねりの得意な関節ではないため、この代償が続くと腰への負担が蓄積します。ジュニア期から股関節の内外旋を守っておく意味はここにあります。

3. 片脚バランス

スイング中、体重は左右の脚の間を大きく移動します。片脚で安定して立てない体では、体重移動のたびに軸が崩れ、再現性が出ません。片脚バランスは地味ですが、ジュニア期に最も伸ばしやすい能力のひとつです。

Evidence

大人になってからこの土台を欠くと何が起きるかは、データがあります。TPI(Titleist Performance Institute)によれば、代表的なスイングエラーであるアーリーエクステンション(伸び上がり)はアマチュアの約67%に見られ、テストされたツアープロの99%には見られません。そして当サイトのアーリーエクステンションの解説記事で詳述したとおり、このエラーは技術ではなく身体機能(前屈・回旋・しゃがみ込みの制限)に由来することが多いのです。子どものうちに可動域と分離を守ることは、大人になってから直しにくいクセの予防でもあります。

家でできる3つのチェック

器具なしで、スイングの土台が育っているかを見る簡単なチェックを3つ紹介します。できない項目があっても異常ではありません。「今どこにあるか」を知るのが目的です。
  • ① 骨盤だけ回す(分離のチェック)腰幅で立ち、胸の前で腕を組み、上半身をなるべく動かさずに骨盤だけを左右に回します。胸ごと一緒に回ってしまう、膝が大きく動く場合は、分離がまだ育っていません。
  • ② あぐらでの股関節チェック床にあぐらで座り、左右の膝の高さを見ます。片方の膝だけが明らかに高い場合、股関節の可動域に左右差がある可能性があります。
  • ③ 目を閉じて片脚立ち手を腰に当て、目を閉じて片脚で立ちます。左右それぞれで秒数を測り、左右差を見ます。回数を重ねての最高記録更新と、左右差が縮まっていくことが成長のサインです。

より本格的な評価としては、TPIの16項目フィジカルスクリーニングの考え方をベースに、当ジムでは成長期向けの安全確認(痛みの確認・成長段階の判定)を加えたジュニアアスリート向けページを行っています。跳ぶ・走る・切り返すの測定はジュニアアスリートの体力測定で解説したとおり、身長比で追いかけます。

ジュニアゴルファーの腰を守る

ジュニアの腰の痛みは、大人の腰痛と同じ扱いをしてはいけません。2週間以上続く腰の痛みは、練習を続けながら様子を見ず、整形外科(できればスポーツ整形)を受診してください。

ゴルフスイングは、回旋と伸展(反り)が組み合わさった動きを高速で繰り返します。成長期の背骨には、大人にはない弱点(成長軟骨)があり、繰り返しのひねり・反りのストレスが集中すると、疲労骨折(腰椎分離症)につながることが知られています。

数字を1つだけ挙げます。腰の痛みが2週間以上続いていて、レントゲンでは異常なしとされた18歳以下のスポーツ選手200名をMRIで調べた研究では、48.5%に所見が見つかりました(Kobayashi 2013)。同じ研究は、押しても痛くない・動けている、といった診察所見からは早期発見できなかったとも結論しています。

Stop

次のどれかに当てはまるなら、練習より受診を優先してください。

  • 腰の痛みが2週間以上続いている(強さは問わない)
  • スイングやフィニッシュで反ると痛い
  • 痛みが出る→休むと消える→練習すると戻る、を繰り返している

早く見つかるほど治りやすく、進行すると治りにくくなります。「押して痛くないから大丈夫」は成立しません。

練習場・スクールとジムの役割分担

スクールは「スイングを教える」場所、ジムは「そのスイングを実行できる体をつくり、守る」場所です。役割が違うので、どちらかで代用はできません。
同じ「ゴルフのため」でも見ているものが違う。両方そろって初めて機能する。
ゴルフスクール・練習場ジム(身体づくり)
目的技術・スコア技術を実行できる身体機能と、ケガの予防
見るものボールとスイング可動域・分離・バランス・成長段階
成長期の急伸期スイングが乱れる時期柔軟性と着地を守り、乱れの原因を説明できる
偏りへの対応練習するほど偏りは深まる逆回旋・股関節・体幹で偏りを整える

当ジムでは、ジュニアゴルファーには最初に評価(測定と可動域チェック)を行い、スイング練習と並行して土台をつくるメニューを組みます。野球やサッカーの子と同じく、測って、数字を本人に返し、3ヶ月ごとに更新する運用です。

ジュニア身体評価(90分)

問診・成長段階の確認・可動域・パフォーマンス測定までを90分で行い、その場で数字と次の3ヶ月にやることをお渡しします。
ゴルフの場合は、胸と骨盤の分離・股関節の回旋・片脚バランスを重点的に評価します。

¥15,000¥7,500

毎月先着3名|小学生〜高校生対象|保護者の同席をお願いしています

よくあるご質問

ゴルフは何歳から始めさせてよいですか。
クラブを振って楽しむだけなら、幼児期からでも大きな問題はありません。注意すべきは開始年齢ではなく、早くから「ゴルフしかしない」状態になることです。男子12歳・女子11歳ごろまでは、走る・跳ぶ・投げるなど多様な動きの経験が動きの土台をつくります。この土台はゴルフの練習だけでは育たず、後からは育てにくくなります。
小学生に筋トレをさせても大丈夫ですか。
「筋トレで背が伸びなくなる」という通説に科学的根拠はなく、国際的な専門団体も否定しています(詳しくは小学生アスリートのトレーニングの記事で解説しています)。ただし、重さを使う本格的なトレーニングは、正しいフォームの習得と、成長段階の確認が先です。当ジムでは評価をしてから段階を決め、身長が急に伸びている時期は負荷より柔軟性と着地を優先します。
スイングが急に乱れました。フォームを直すべきですか。
身長が急に伸びている時期であれば、手足が長くなったことで感覚がズレている可能性が高く、これは正常な経過です。この時期にフォーム矯正や練習量の増加で取り返そうとすると、腰やひじの痛みにつながりやすくなります。成長の落ち着きとともに感覚は戻るので、その間は柔軟性の維持とバランスの再学習を優先してください。
子どもの腰が痛いと言います。練習を休ませるべきですか。
腰の痛みが2週間以上続いている場合は、様子を見ずに整形外科(できればスポーツ整形)を受診してください。成長期の腰痛は、レントゲンで異常なしでもMRIで所見が見つかった割合が48.5%という報告があり(Kobayashi 2013)、押して痛くない・動けることは安全の証明になりません。早期発見ほど治りやすいことが分かっています。
逆振り(反対側のスイング)はやったほうがいいですか。
ゴルフは常に同じ向きに回る片側性のスポーツなので、逆方向への回旋運動を日常に入れること自体は理にかなっています。ただし「逆振りを何回」といった一律の処方より、その子の偏り(回旋の左右差・股関節の左右差)を測ってから量を決めるほうが安全で効率的です。まず現状を測ることをおすすめします。
ジュニア向けのゴルフレッスンはやっていますか。
当ジムはスイング技術のレッスンを行う施設ではありません。行うのは、スイングの土台になる身体(可動域・分離・バランス・パワー)の評価とトレーニング、そして成長期のケガ予防です。技術指導はスクールやプロのレッスンと並行していただく前提で、身体の側から上達を支えます。

岡本隼人

日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)/ TPI Certified Fitness 2・Power 2 / NASM-PES / FMS / SFMA

株式会社Disport代表。東京・六本木のパーソナルトレーニングジム Disport World にて、ジュニアからシニアまでゴルファーの身体づくりを行っています。ジュニアの評価では、TPIのスクリーニングの考え方に成長段階に応じた安全確認を組み合わせています。

関連記事

  • TPI(Titleist Performance Institute)「Early Extension Swing Characteristic」(mytpi.com)——アマチュア約67%・ツアープロ99%非該当
  • Kobayashi et al. 2013——腰痛が2週間以上続く18歳以下のスポーツ選手200名のMRI所見(48.5%)
  • 文部科学省・スポーツ庁の各調査にもとづく成長期の参照値は、リンク先の各記事に出典を記載
本記事は一般的な情報提供を目的としています。痛みや不調がある場合は、運動を中止し医師の診察を受けてください。トレーニングの開始時期・内容は、個々の成長段階により異なります。