さらに、筋力は筋肉量より速いペースで落ちることが報告されています。どこまで落ちると問題なのかも含めて一次資料で整理し、40代から始める「筋肉の貯金」を挙げます。
この記事は、六本木の完全個室パーソナルジム Disport World で、日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)の岡本隼人が、身体を実際に測ってきた経験から書いています。体験トレーニング(90分)の流れを見る→
・日本人4,003人の研究では、脚の筋肉量は20代から減り、減り方は脚>全身>腕>体幹の順。全身は男性40歳ごろ、女性50歳ごろまで横ばい
・45〜54歳の脚の筋肉量は、18〜24歳の約9割(男性約92%・女性約88%)。全身の合計はほぼ同じなので、合計だけ見ていると気づきにくい
・70〜79歳で始まった米国の研究では、脚の筋力の低下は年2.6〜4.1%で、脚の除脂肪量(年約1%)の約3倍の速さ
・50歳以上の筋トレ研究を統合すると、除脂肪量は平均1.1kg増え、筋力も増えていた。国の推奨は筋力トレーニング週2〜3日
・最初の一歩は、今の脚の筋肉と筋力を測ること
筋肉量は何歳から減る?——脚は20代から、全身は40〜50代から
部位によって違います。日本人を測った研究では、脚(下肢)の筋肉量は20代から減り始め、腕(上肢)は高齢期まであまり変わらず、全身の筋肉量は男性で40歳ごろ、女性で50歳ごろから減っていました。「40代から一斉に落ちる」のではなく、「脚は早くから少しずつ、全身の合計は40〜50代から」が実際の姿に近い見方です。
大阪医科大学の谷本らは、大都市近郊と農村に住む18歳以上の日本人4,003人(男性1,702人・女性2,301人)の筋肉量を、体組成計で測りました。方法は生体電気インピーダンス法(BIA法:体に微弱な電流を流して筋肉量を推定する方法)です。減る割合がいちばん大きいのは下肢で、次いで全身、上肢、体幹の順でした。回帰式から20歳時と80歳時を比べた推定値では、下肢の筋肉量は男性で30.9%、女性で28.5%少なく、全身では男性16.8%、女性11.0%少ない値でした。
18〜88歳の男女468人を全身MRIで測った研究(Janssen ら、2000)でも、体重に占める筋肉の割合は20代から下がり始め、筋肉量そのものの目立った減少は40代の終わりから見られ、その多くは下半身の筋肉の減少によるものでした。測り方も対象も違う2つの研究で、「脚から」「全身は40代後半ごろから」が重なっています。
40代・50代の筋肉量は20代と比べてどれくらい?——日本人4,003人の測定値
45〜54歳の脚の筋肉量は、18〜24歳の平均と比べて男性で約92%、女性で約88%でした。一方、全身の筋肉量はほぼ100%で、40代・50代前半では「全身の合計は変わらないのに、脚は減っている」という状態になりやすいことが分かります。
| 年代 | 男性 下肢(kg) | 男性 全身(kg) | 女性 下肢(kg) | 女性 全身(kg) |
|---|---|---|---|---|
| 18〜24歳 | 20.7(100) | 52.5(100) | 14.5(100) | 36.4(100) |
| 25〜34歳 | 19.8(96) | 52.6(100) | 13.7(94) | 36.4(100) |
| 35〜44歳 | 19.8(96) | 53.6(102) | 13.4(92) | 36.6(101) |
| 45〜54歳 | 19.0(92) | 52.7(100) | 12.8(88) | 36.4(100) |
| 55〜64歳 | 17.7(86) | 50.6(96) | 11.9(82) | 35.2(97) |
| 65〜74歳 | 16.1(78) | 47.5(90) | 11.2(77) | 33.9(93) |
( )は18〜24歳を100とした値で、論文の平均値から当店で計算しました。全身の合計が40代で減らないのは、全身の約半分を占める体幹の筋肉量が、男性は45歳ごろ、女性は50歳ごろまで緩やかに増えるためで、論文も全身の変化を「体幹の中年期までの増加」と「下肢の20代以降の減少」が合わさったものと説明しています。
これは年代ごとに別の人を測った横断研究で、同じ人の変化を追ったものではありません。BIA法の値は機種や体の水分でも変わるため、家庭の体組成計の数字とそのままは比べられません。「筋肉は毎年◯%減る」という数字もよく見かけますが、研究ごとに年齢帯・部位・測り方が違い、1つの数字にはまとめられません。40代からの体の変化の全体像は、40代からの体づくり戦略にまとめています。
筋肉量と筋力は同じペースで落ちる?——筋力のほうが速い
同じではありません。高齢者を3年間追った研究では、脚の筋力は脚の除脂肪量の約3倍の速さで落ちていました。筋肉の「量」と、その筋肉が出せる「力」は別の物差しで、両方を見る必要があります。
ここでの筋肉量は筋肉の重さ(kg)、筋力は実際に出せる力(握力のkg、膝を伸ばす力など)のことです。米国のHealth ABC研究(開始時70〜79歳の男女が対象)の1,880人を3年間追った研究(Goodpaster ら、2006)では、膝を伸ばす筋力の低下は1年あたり白人男性3.4%、黒人男性4.1%、白人女性2.6%、黒人女性3.0%でした。これに対し、脚の除脂肪量(脂肪を除いた重さで、筋肉が主な中身)の低下は年約1%でした。
| 筋肉量 | 筋力 | |
|---|---|---|
| 何を見るか | 筋肉の重さ(kg) | 出せる力(kg、N・mなど) |
| 主な測り方 | 体組成計(BIA法)、DXA、MRI | 握力計、膝を伸ばす力の測定器、椅子立ち上がりの時間 |
| 高齢者の3年間の変化(Health ABC) | 脚の除脂肪量:年約1%低下 | 脚の筋力:年2.6〜4.1%低下 |
| 分かること | どの部位の筋肉が減っているか | 日常の動きや運動に使える力が保たれているか |
同じ研究では、3年間で除脂肪量が増えた人でも、筋力が保たれたり増えたりはしていませんでした。著者らは、筋肉の「質」が落ちていると考えています。70代の研究なので速さを40〜50代に当てはめることはできませんが、「筋肉量が変わっていないから大丈夫」とは言い切れない点は共通です。
カウンセリング・身体評価・トレーニングを90分で体験し、評価結果はその場で全て開示します。体験後にその場で入会を決めていただく必要はありません。
LINEで体験を予約するどこまで落ちると問題?——サルコペニアの基準(AWGS 2019)
筋肉量の低下に、筋力の低下か身体機能の低下が重なった状態を、サルコペニアと呼びます。アジアの診断基準(AWGS 2019)では、握力が男性28kg未満・女性18kg未満を「筋力の低下」としています。40〜50代にとっては、ここを将来も下回らないための「下の線」として知っておくと役立ちます。
サルコペニアは、加齢に伴って筋肉量が減り、筋力や身体機能も落ちた状態のことです。アジアのサルコペニアワーキンググループ(AWGS)は2019年の改訂で、定義を「加齢による筋肉量の低下に、筋力の低下、または身体機能の低下(あるいはその両方)が加わったもの」とし、次の基準を示しました。
| 見るもの | 項目 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|---|
| 筋力 | 握力 | 28kg未満 | 18kg未満 |
| 身体機能 | 6m歩行の速さ | 1.0m/秒未満 | |
| 身体機能 | 5回椅子立ち上がり | 12秒以上 | |
| 筋肉量(DXA) | 両腕両脚の筋肉量を身長の2乗で割った値 | 7.0kg/m²未満 | 5.4kg/m²未満 |
| 筋肉量(BIA法) | 両腕両脚の筋肉量を身長の2乗で割った値 | 7.0kg/m²未満 | 5.7kg/m²未満 |
| ふるい分け | ふくらはぎの周囲長 | 34cm未満 | 33cm未満 |
筋肉量の基準は、全身ではなく両腕両脚の筋肉量で見ます(骨格筋指数)。身体機能には、ほかに簡易身体機能バッテリー(SPPB)9点以下という基準もあります。2019年の改訂では、かかりつけ医などのプライマリケアで早めに手を打てるよう、「サルコペニアの可能性あり」という区分も新しく設けられました。対策の中心は、運動と栄養補給を柱にした生活習慣への介入とされています。
40〜50代では、この線を下回っていなければ安心ということではなく、「今の数値が線からどれくらい離れているか」を知る物差しとして使えます。
40代・50代からでも筋肉は増やせる?——筋トレの研究と国の推奨
増やせます。50歳以上の筋力トレーニングの研究を統合した分析では除脂肪量が平均1.1kg増え、別の統合分析では筋力もすべての測定項目で増えていました。国のガイドは、成人に筋力トレーニングを週2〜3日行うことを推奨しています。
Peterson らは、50歳以上を対象にした49研究・1,328人のデータを統合し、筋力トレーニングによる除脂肪量の変化を平均1.1kg(95%信頼区間0.9〜1.2kg)と推定しました。量の多いプログラムほど増え方が大きく、年齢が高いほど小さかったため、著者らは早く始めるほうが効果的だと考えられるとしています。別の統合研究(47研究・1,079人)では、筋力もすべての測定項目で増え、強度が高いほど増え方が大きくなっていました。
除脂肪量は脂肪以外の重さの合計で、筋肉だけでなく水分なども含みます。「1.1kg増えた」は筋肉だけの増加分ではない点に注意が必要です。それでも、50代以降でも筋トレで体が変わる余地があることは、この結果から読み取れます。研究の対象は50歳以上ですが、年齢が低いほど増え方が大きかったという傾向は、40代で先延ばしにしない理由の1つになります。
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」は、成人に次の3つを推奨しています。
- 筋力トレーニングを週2〜3日
- 息が弾み汗をかく程度の運動を週60分以上
- 歩行かそれと同等以上の強さの身体活動を1日60分以上(1日約8,000歩以上に相当)
減量中に筋肉を落とさないために筋力トレーニングを組み合わせる考え方は、大人のダイエット(筋力トレーニング)で説明しています。
筋トレで血圧が上がるのが心配な方は、筋トレで血圧が上がるは本当か?も参考にしてください。
筋肉の貯金は何から始める?——測る・脚を鍛える・たんぱく質
まず今の脚の筋肉と筋力を測り、脚を中心に週2〜3日の筋力トレーニングを続け、食事のたんぱく質を推奨量に届かせることです。そして1年後に同じ方法で測り直し、減り方がゆるやかになっているかを確かめます。
今を測る
握力、5回椅子立ち上がりの時間、ふだんの歩く速さなど、筋力と身体機能の数字を残します。体組成計を使うなら、全身の合計より脚の値を見て、同じ機種・同じ時間帯で測ります。道具なしで今の身体をひととおり確かめるなら、無料の身体年齢セルフチェックも使えます。
脚から鍛える
最も早く減る下肢から優先します。スクワット、椅子からの立ち上がり、ランジなど、太もも・お尻を使う種目を中心に、週2〜3日。痛みの出ない範囲とフォームで、少しずつ回数や重さを増やします。
たんぱく質を推奨量に
日本人の食事摂取基準(2025年版)の推奨量は、30〜64歳で男性1日65g、女性1日50gです。目標量は総エネルギーに占める割合で、30〜49歳は13〜20%、50〜64歳は14〜20%です。
1年後に測り直す
同じ項目を同じ方法で測ります。年代の平均より、自分の去年との差のほうが手応えを判断しやすくなります。
見た目の変化まで狙う組み立ては40代からの体づくり戦略で解説しています。
5回椅子立ち上がりを自宅で測るときは、肘掛けのない安定した椅子を壁につけて置き、座った姿勢から5回立ち座りするのにかかる時間を測ります。ふらつきやすい方は、そばに人がいる状態で行ってください。膝・腰・股関節に痛みが出る方は測らず、トレーニングでも痛む動作は行わないでください。
現場で見えていること
40〜50代の方から「体重はあまり変わらないのに、脚やお尻が細くなった」「階段や立ち上がりで脚が重い」という話を伺うことがあります。全身の合計が変わらなくても脚は減っていることがあり、体重や体組成計の合計だけではつかみにくい変化だと感じます。また筋トレの経験がない方ほど、上半身より、しゃがむ・立ち上がる・片脚で支えるといった脚の動きで、ご本人の想像との差が出やすい印象があります。
当店の体験では、カウンセリング(20分)で目的と生活を伺い、身体機能チェック(15分)で目的に応じた主要項目を確認して、その場で口頭でご説明します(書面のお渡しはありません)。筋肉の貯金は、何をするかより先に、今どこがどれくらい落ちているかを知ることから始まる、というのが私の考えです。
よくある質問
筋肉量は何歳から減りますか?
部位によって違います。日本人4,003人の研究では、脚の筋肉量は20代から減り、全身の筋肉量は男性で40歳ごろ、女性で50歳ごろまで横ばいのあと減っていました。減り方がいちばん大きいのは脚です。
体重が変わらなければ、筋肉も減っていないと考えてよいですか?
そうとは限りません。同じ研究で、45〜54歳の全身の筋肉量は18〜24歳とほぼ同じでしたが、脚の筋肉量は男性で約92%、女性で約88%でした。体重には脂肪も含まれるので、脚の筋肉量や筋力を分けて見る必要があります。
40代・50代から筋トレをしても筋肉は増えますか?
増えることが報告されています。50歳以上を対象にした49研究・1,328人の統合では、筋力トレーニングで除脂肪量が平均1.1kg増え、年齢が高いほど増え方は小さくなっていました。早く始めるほど有利と考えられます。
筋力が落ちているかどうかは、何で分かりますか?
握力や5回椅子立ち上がりの時間が手がかりです。アジアのサルコペニア基準(AWGS 2019)では、握力が男性28kg未満・女性18kg未満、5回椅子立ち上がりが12秒以上を低下の目安にしています。40〜50代は、この線からどれくらい離れているかを毎年同じ方法で確かめます。
40代・50代のたんぱく質は1日どれくらい必要ですか?
日本人の食事摂取基準(2025年版)の推奨量は、30〜64歳で男性65g、女性50gです。腎臓の病気などで食事の指示を受けている方は、主治医の指示を優先してください。
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体験トレーニングでは、目的と生活を伺ったうえで身体機能をチェックし、結果とこれからのプランをその場でご説明します。流れと料金は体験トレーニングのページに、場所はアクセスにまとめています。
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主な参考(タップで開く)
- 谷本芳美,渡辺美鈴,河野令,広田千賀,高崎恭輔,河野公一.日本人筋肉量の加齢による特徴.日本老年医学会雑誌.2010;47(1):52-57.(18歳以上の日本人4,003人:男性1,702人・女性2,301人。多周波数BIA法。表1・表2)
- Janssen I, Heymsfield SB, Wang ZM, Ross R. Skeletal muscle mass and distribution in 468 men and women aged 18-88 yr. J Appl Physiol. 2000;89(1):81-88.(18〜88歳の468人・全身MRI)
- Goodpaster BH, Park SW, Harris TB, et al. The loss of skeletal muscle strength, mass, and quality in older adults: the Health, Aging and Body Composition Study. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2006;61(10):1059-1064.(1,880人・3年間)
- Newman AB, et al. Strength and muscle quality in a well-functioning cohort of older adults: the Health, Aging and Body Composition Study. J Am Geriatr Soc. 2003;51(3):323-330.(Health ABC研究の対象が開始時70〜79歳であることの確認)
- Chen LK, Woo J, Assantachai P, et al. Asian Working Group for Sarcopenia: 2019 Consensus Update on Sarcopenia Diagnosis and Treatment. J Am Med Dir Assoc. 2020;21(3):300-307.e2.
- Peterson MD, Sen A, Gordon PM. Influence of resistance exercise on lean body mass in aging adults: a meta-analysis. Med Sci Sports Exerc. 2011;43(2):249-258.(50歳以上の49研究・1,328人。非ランダム化の研究を含む)
- Peterson MD, Rhea MR, Sen A, Gordon PM. Resistance exercise for muscular strength in older adults: a meta-analysis. Ageing Res Rev. 2010;9(3):226-237.(50歳以上の47研究・1,079人。非ランダム化の研究を含む)
- 厚生労働省.「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 たんぱく質(たんぱく質の食事摂取基準の表).2024年。
- 厚生労働省.健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023 推奨事項(成人版).2024年1月。


