ラウンド後のケアでいちばん役に立つのは、軽く動いて身体を落ち着かせ、入浴と睡眠を安全に整えたうえで、翌朝に「ただの筋肉痛か、痛めたのか」を見分けることです。
この記事は、六本木の完全個室パーソナルジム Disport World で、TPI認定(Fitness 2/Power 2)と日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)の岡本隼人が、ゴルファーの身体を実際に測ってきた経験から書いています。扱うのはスイングの技術ではなく、身体の側のことです。ゴルフの身体づくり(記事一覧・体験)→
・ゴルフラウンド後ストレッチやクールダウンは、翌日の筋肉痛を防ぐ手段としては裏付けが弱い。12研究のレビューでは、運動後のストレッチ(4研究の統合)で翌日の筋肉痛は100点中平均1点しか減らなかった
・軽い運動のクールダウンは、血中の乳酸や心拍・呼吸を早く落ち着かせるが、ケガ・翌日の成績にはおおむね差がなく、筋肉痛は研究で結論が分かれる
・ラウンド後の入浴は、飲酒後を避け、湯温41度以下・10分までを目安に(消費者庁の注意喚起)
・筋肉痛は運動の24〜72時間後に出ることが多い。翌朝は「どこが、どちら側が、どう痛いか」を確かめ、痛めたサインがあれば練習より受診を先に
ラウンド後のケアで、本当にやるべきことは何か
やるべきことは3つです。身体を急に止めずに落ち着かせること、入浴と睡眠を安全に整えること、そして翌朝に身体の状態を確かめることです。「これをすれば翌日に疲れが残らない」という特効薬は、今のところ研究では見つかっていません。
ラウンドの前にやるべきことは、ラウンド前のウォームアップ15分で紹介しています。ウォームアップと違い、ラウンド後のケアは目的があいまいになりがちです。筋肉痛を防ぎたいのか、張りを楽にしたいのか、ケガを早く見つけたいのかで、期待してよいことが変わります。
ラウンドの後半に崩れる・翌日だるいという「体力」の側の話はラウンド後半に崩れる人のゴルフ体力で、筋肉痛が出る場所から身体の使い方を読む話はゴルフの筋肉痛はどこに出るかで扱っています。この記事は、ホールアウトしてから翌朝までの過ごし方に絞ります。
18ホールで、身体にはどれくらいの負荷がかかっているか
競技ゴルファーの研究では、歩いて回ると平均で約1万7千歩、カートを使っても約6千歩を歩いていました。そのうえで、全身を回すスイングを半日かけてくり返します。軽いスポーツに見えても、「長く歩く」と「何度も回る」が重なった1日です。
若いゴルファー16名(平均21歳、平均ハンデ2.3)が同じ競技コースを、キャディ付きで歩いて1回、カートで1回回った研究では、歩数は歩きで平均17,007歩、カートで平均6,274歩、活動で使ったエネルギーは平均880kcalと456kcalでした。ラウンド後の「きつさ」の感じ方も、歩いたほうが高くなっています。一方、飛距離やヘッドスピード、ボール初速には差がありませんでした(O'Donnell ら、2026)。
対象は若くハンデの少ない男性で、バッグはキャディが運んでいます。日本でよくある、乗用カートと歩きを組み合わせた回り方の数字ではありません。それでも、カートを使っても身体は1日動き続けていることは読み取れます。
スイングの側では、右打ちなら右(トレイル側)の股関節に乗ってから左(リード側)の股関節の上で回る動きをくり返します。左打ちの方は左右を逆に読んでください。TPIの評価は、ある場所の動きが足りないと別の場所が代わりに動く(代償)という考え方に立っています。股関節や胸の回旋が足りない分を腰や前腕が受け持つと、翌日に張りが出る場所が偏ることがあります。腰に出るケースはゴルフの腰痛でまとめています。
クールダウン・ストレッチ・フォームローラーは、研究でどこまで分かっているか
まとめると、翌日の筋肉痛を大きく減らすものは少ない、です。軽い運動のクールダウンは心拍・呼吸を早く落ち着かせますが、ケガの予防には差がなく、筋肉痛への効果は研究で結論が分かれます。ストレッチの効果はごく小さく、フォームローラーは小さい効果、もみほぐし(手で筋肉をもんだり、さすったりする方法)は比較の中では効果が大きめでした。
| 手段 | 研究で分かっていること | 資料 |
|---|---|---|
| 軽い運動のクールダウン(歩く・軽く動く) | 血中の乳酸と心拍・呼吸は早く落ち着く。一方、このレビューでは筋肉痛はおおむね減らず、ケガの予防にもならないとみられる。同じ日・翌日の成績への効果もおおむねない(翌日に良い結果の報告も一部ある) | Van Hooren・Peake、2018(ナラティブレビュー) |
| ストレッチ | 運動後のストレッチで、翌日の筋肉痛は100点満点で平均1点の減少。運動前のストレッチは平均0.5点。2,377名の大規模試験では、運動前後のストレッチで1週間の最大の痛みが平均4点減。著者は「臨床的に意味のある減少ではない」と結論 | Herbert ら、2011(12研究のレビュー) |
| フォームローラー(運動後) | 筋肉の痛みの感じ方が平均6.0%下がった(効果量0.47)。運動によるスプリントと筋力の低下を3.1%・3.9%和らげたが効果量は小さく、ジャンプはほぼ変化なし。著者は回復の道具よりウォームアップ向きとまとめている | Wiewelhove ら、2019(メタ分析、運動後の研究は7本) |
| もみほぐし・着圧ウェア・水に浸かる方法など | 軽い運動・もみほぐし・着圧ウェア・水に浸かる方法・冷却で、遅れて出る筋肉痛が小さく〜大きく減った。もみほぐしが筋肉痛と疲労感に最も効果的。ストレッチと電気刺激では変化なし | Dupuy ら、2018(99研究のメタ分析) |
| 睡眠 | 一晩以上眠らないと運動の成績は下がる。必要な睡眠時間は人によって違い、「7〜9時間」の一律の目安が誰にでも合うとは限らない | Walsh ら、2021(専門家の合意声明) |
読むときの注意が2つあります。1つ目は、これらの研究の多くが、ランニングやジャンプ、筋力トレーニングなど、筋肉痛が出やすい運動のあとを調べていることです。ゴルフのラウンド後に限った研究は、今回確かめた範囲では見つかりませんでした。2つ目は、「効果が小さい」は「やってはいけない」ではないことです。気持ちよく感じるなら、痛みのない範囲で続けてかまいません。
ウォームアップの記事のよくある質問では「ラウンド後のクールダウンには静的ストレッチ」と書いています。これも、筋肉痛を消すための手段ではなく、身体を落ち着かせる1日の区切りとして読んでください。
下半身の回旋、座位での体幹の回旋、90/90、片脚バランス、骨盤の回旋を含む16項目を実測します。左右に分かれる項目は両側とも測り、動きが足りない場所と、その分を代わりに受け持っている場所を特定して、数値とともに評価レポートPDFにしてお渡しします。
TPIフィジカルアセスメントの詳細を見るホールアウトから寝るまで、何をどの順でやるか
順番は「急に止まらない → 気持ちよい範囲で伸ばす → 食事と水分 → 飲酒と入浴の順番に気をつける → 眠る」です。どれも特別な道具はいりません。大事なのは、どれかをがんばることより、入浴や飲酒で事故を起こさないことです。
ホールアウト直後——5〜10分、ゆっくり歩く
最終ホールのあと、すぐに車やクラブハウスの椅子に座り込まず、パッティンググリーンの周りや駐車場までをゆっくり歩きます。軽い運動のクールダウンで血中の乳酸は早く下がり、心拍・呼吸の回復も早まる可能性があるとされています。時間の長さに決まりはないので、息が整うまでを目安にしてください。
着替えの前後——使った場所を、痛みのない範囲で伸ばす
お尻と股関節、太ももの裏、胸と背中の回旋、前腕を、それぞれ20〜30秒ほど、反動をつけずにゆっくり伸ばします。左右で伸び方の違いを感じたら、それが翌朝のチェックの手がかりになります。痛みが出る方向には伸ばさないでください。
食事と水分——のどが渇く前に
水分と食事をとってから次の行動に移ります。ラウンド中の補給はゴルフ体力の記事で。
入浴——飲酒の後は入らない、湯温41度以下・10分まで
消費者庁は、湯温は41度以下、湯につかる時間は10分までを目安とし、食後すぐや飲酒後、薬を飲んだ後の入浴は避けるよう呼びかけています(冬の高齢者の入浴事故への注意喚起)。クラブハウスの大浴場で温まってから打ち上げで飲む、という順番なら問題は起きにくく、逆の順番は避けます。浴槽から急に立ち上がらないことも同じ資料に書かれています。
睡眠——いつもどおりの時間に眠る
早朝スタートのラウンドは、前夜の睡眠が短くなりがちです。必要な睡眠時間には個人差があり、一律の時間を守るより、自分がすっきり起きられる長さを確保することが専門家の合意声明でもすすめられています。
ストレッチで痛みが強くなる、しびれが出る、関節の奥が引っかかる感じがある場合は中止してください。ラウンド中に「ピキッ」「ブチッ」と感じた場所は、その日は伸ばさず、下の「受診の目安」を先に確認してください。飲酒後の入浴・サウナは避けます。
翌朝、何を確かめればいいか——筋肉痛と「痛めた」の見分け方
確かめるのは「どこが」「どちら側が」「どう痛いか」の3つです。筋肉痛(遅発性筋痛)は、慣れない運動や強い運動の24〜72時間後に出ることが多く、自然に引いていくものです。これに対し、ラウンド中のある一打から痛い、1点を押すと痛い、腫れや内出血がある場合は、筋肉痛ではなく痛めたサインの可能性があります。
| 見るところ | 筋肉痛に多い | 痛めたサインの可能性 |
|---|---|---|
| 始まり | ラウンドの翌日以降にじわじわ出てくる | 特定の一打・動作のときから痛い |
| 範囲 | 筋肉全体がぼんやり張る・だるい | 1点を押すとはっきり痛い、関節の中が痛い |
| 見た目 | 変わらない | 腫れ、内出血、熱をもっている |
| 動かすと | 動き始めが痛く、動くうちに少し楽になる | 動かすほど痛い、力が入らない、しびれる |
| 経過 | 数日で引いていく | 日がたっても引かない、悪化する |
この表はあくまで目安で、診断の代わりにはなりません。筋肉痛の出やすい場所と、その場所から読める身体の使い方は筋肉痛の場所の記事で詳しく扱っています。痛みがなければ、次の3つで「昨日の自分」との違いを見ておくと、張りの偏りに気づきやすくなります。
椅子に座って胸を左右に回す
椅子に深く座り、腕を胸の前で組んで、骨盤を動かさずに胸だけを左右に回します。回りにくい側、腰に張りを感じる側をメモします。
立って前屈する
膝を伸ばしたまま、ゆっくり前にかがみます。手の届く位置と、太ももの裏・腰のどこが張るかを確かめます。反動はつけません。
片脚で立つ
壁の近くで、片脚ずつ30秒ほど立ちます。ふらつきやすい側、足首や膝・股関節に違和感が出る側を確かめます。
自宅のチェックで分かるのは「左右のどちらか」「どこか」までで、原因まではわかりません。
現場で見えていること
当店のTPIフィジカルアセスメントでは、ラウンド後の張りや痛みそのものを診ることはしません。痛みがある方には、先に医療機関の受診をおすすめしています。そのうえで、下半身の回旋、座位での体幹の回旋、片脚バランス、骨盤の回旋などの16項目を実測し(左右がある項目は両側)、どこの動きが足りず、どこが代わりに働いているかの仮説を、その場でスイングと照らし合わせます。
翌日に張る場所を「ストレッチ不足」と考えて、さらに伸ばしている方がいます。ところが測ってみると、張っている場所と、実際に動きが足りない場所が別のことがあります。たとえば腰が張る方で、腰ではなく股関節や胸の回旋に左右差が見つかることがあります。ラウンド後のケアを考える前に、一度、左右を測って張りの理由を確かめることをすすめています。
よくある質問
ゴルフのラウンド後にストレッチはしたほうがいいですか?
痛みのない範囲で、気持ちよく終えるために行うのはかまいません。ただ、翌日の筋肉痛を防ぐ効果は小さく、12研究のレビューでは運動後のストレッチ(4研究の統合)で翌日の筋肉痛が100点中平均1点減っただけでした。筋肉痛を消すためではなく、1日の区切りとして考えてください。
ラウンド後にお風呂に入っても大丈夫ですか?
入浴そのものは問題ありませんが、順番と温度に注意してください。消費者庁は、湯温41度以下・10分までを目安とし、飲酒後や食後すぐの入浴を避けるよう呼びかけています。打ち上げで飲むなら、入浴を先に済ませてください。
ゴルフの翌日や2日後に筋肉痛が出るのはなぜですか?
遅れて出る筋肉痛は、慣れない運動や強い運動の24〜72時間後に出ることが多いためです。多くは自然に引いていきます。特定の一打から痛い、1点を押すと痛い、腫れがある場合は筋肉痛ではない可能性があるので、医療機関を受診してください。
フォームローラーやもみほぐしは効果がありますか?
効果は小さいながら報告があります。運動後のフォームローラーでは筋肉の痛みの感じ方が平均6.0%下がり、99研究のメタ分析では、比べた方法の中でもみほぐしが筋肉痛と疲労感に最も効果的でした。ただしゴルフのラウンド後に限った研究ではありません。
ラウンドのたびに同じ場所が張るのはなぜですか?
その場所が、スイングで別の場所の動きを代わりに受け持っている可能性があります。たとえば股関節や胸の回旋が足りないと、腰や前腕の負担が増えることがあります。張る場所と原因の場所が違うことがあるので、左右を測って確かめるのが近道です。
TPI測定のご案内
ラウンド後のケアで翌日の張りを消すのは、研究を見る限り限界があります。毎回同じ場所が張るなら、ケアの方法を増やす前に、張りの理由を測って確かめてください。TPIフィジカルアセスメントでは16項目を実測し(左右がある項目は両側)、どの身体の制限がどのスイング特性と結びつきやすいかを、評価レポートとプログラムのPDFにまとめます。項目の中身はTPI 16項目の全解説で。
TPI Physical Assessment
翌日に張るのは、そこが働きすぎているから?
16項目で理由を確かめる90分
TPIの16項目を実測し、どの身体の制限がどのスイング特性と結びつきやすいかを評価レポート+プログラムPDFにまとめてお渡しします。単発で完結し、入会は不要です(6週後の再評価は¥15,000・税込)。
まず動いて確かめたい方は、体験トレーニング(90分・¥15,000/毎月先着3名さま¥7,500)もお選びいただけます(先着枠は毎月1日起算、定員後は通常¥15,000)。
ウェア・タオル無料 | 完全個室 | 六本木駅徒歩4分
主な参考(タップで開く)
- Van Hooren B, Peake JM. Do we need a cool-down after exercise? A narrative review of the psychophysiological effects and the effects on performance, injuries and the long-term adaptive response. Sports Med. 2018;48(7):1575-1595.(ナラティブレビュー)
- Herbert RD, de Noronha M, Kamper SJ. Stretching to prevent or reduce muscle soreness after exercise. Cochrane Database Syst Rev. 2011;(7):CD004577.(12研究。うち1試験は2,377名、他の11研究はストレッチ群が各10〜30名)
- Wiewelhove T, Döweling A, Schneider C, et al. A meta-analysis of the effects of foam rolling on performance and recovery. Front Physiol. 2019;10:376.(メタ分析。運動後のフォームローラーの研究は7本)
- Dupuy O, Douzi W, Theurot D, Bosquet L, Dugué B. An evidence-based approach for choosing post-exercise recovery techniques to reduce markers of muscle damage, soreness, fatigue, and inflammation: a systematic review with meta-analysis. Front Physiol. 2018;9:403.(99研究)
- Walsh NP, Halson SL, Sargent C, et al. Sleep and the athlete: narrative review and 2021 expert consensus recommendations. Br J Sports Med. 2021;55(7):356.(専門家の合意声明)
- O'Donnell A, Murray A, Jones A, et al. Riding a golf cart versus walking: a study on the physiological and performance differences in tournament golf. Eur J Sport Sci. 2026;26(1):e70099.(男性ゴルファー16名、歩きとカートで各1ラウンド)
- Mágero NRL, Helito PVP, Bordalo M. Imaging characterization and differential diagnosis of delayed-onset muscle soreness (DOMS) in athletes. Skeletal Radiol. 2026. doi:10.1007/s00256-026-05292-2.(レビュー)
- 消費者庁「冬季に多発する高齢者の入浴中の事故に御注意ください!-自宅の浴槽内での不慮の溺水事故が増えています-」2020年11月19日.
- 厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアル 横紋筋融解症」2006年11月.(症状の記載を参照)


