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朝の低い光と長い木の影が落ちるゴルフ場のフェアウェイ。スタート前の身体はまだ温まっていない時間帯
Golf Performance / Body

ゴルフのウォームアップは何をする?
——ラウンド前15分の準備運動。ストレッチは「伸ばす」より「動かす」、朝イチのドライバーまで段階的に

ゴルフのウォームアップはラウンド前に何をすればいいのか、ストレッチはしたほうがいいのか、朝イチのドライバーが振れない・曲がるのはなぜか。結論から言うと、ゴルフの準備運動は15分で組めます。

2026.09.30(更新) 読了 約20分

長く止めて伸ばす静的ストレッチを主役にせず、動きながら温める動的ウォームアップから、軽い負荷、段階的な素振りへと強度を上げる順番です。ゴルファーの研究でも、長い静的ストレッチのあとはヘッドスピードや方向性が下がり、動的ストレッチのほうが速く振れました。ただし差は数%で、飛距離が大きく伸びるものではなく、けがを防ぐ効果もまだ確かめられていません。

この記事は、六本木の完全個室パーソナルジム Disport World で、TPI認定(Fitness 2/Power 2)と日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)の岡本隼人が、ゴルファーの身体を実際に測ってきた経験から書いています。扱うのはスイングの技術ではなく、スイングの前の身体の準備です。ゴルフの身体づくり(記事一覧・体験)→

この記事でお伝えすること

・長く伸ばすより「動かす」。動的ウォームアップの前に20分の全身の静的ストレッチを足した日は、ドライバーのヘッドスピードが4.19%、飛距離が5.62%低く、方向性とミート率も落ちた(競技ゴルファー15名)
・動的ストレッチは、静的ストレッチやストレッチなしの場合より5番アイアンのヘッドスピードが1.7〜1.9m/s高い。練習場で20球打つだけより、動的・チューブの準備のほうがボール初速が高い(上級者23名)
・効果は数%。飛距離が大きく伸びるものではなく、けがを防ぐかは研究の結果がまだそろっていない
・15分の順番:体温を上げる2分→関節を動かす5分→筋肉を働かせる3分→段階的な素振り5分。1番ティーの直前に1〜2分の入れ直し
・片側だけ回らない・しゃがめない・ふらつくなら、準備不足ではなく身体の制限のサイン。測って確かめる

ゴルフのウォームアップは必要?——多くの人は「打つだけ」でスタートしている

必要です。目的は身体をやわらかくすることではなく、冷えた身体を、1番ティーで本来の速さで振れる状態まで段階的に上げることです。そして実際には、身体の準備をしないままスタートするゴルファーが少なくありません。

オーストラリアでアマチュア1,040名を観察した研究では、何らかのウォームアップをしていたのは54.3%で、最も多かったのはティーでの素振りでした(Fradkin ら、2001)。別の1,040名への聞き取りでは、70%を超える人が「しない、またはめったにしない」と答え、毎回するのは3.8%でした(Fradkin ら、2003)。23研究のレビューも、ウォームアップをしないか、しても短いゴルファーが多いとしています(Ehlert・Wilson、2019)。

練習場で何球か打って1番ティーへ、という流れは「クラブの準備」にはなっても「身体の準備」にはなりにくい。スポーツのウォームアップには、体温と心拍を上げる、筋肉を働かせて関節を動かす、本番の動きに向けて強度を上げる、という順で組む考え方(RAMPと呼ばれます)があり、ゴルファーの研究でも使われています(Bliss ら、2021)。この記事の準備運動も、この順で組んでいます。ゴルファーの身体の評価とトレーニングを指導者に教えている TPI(Titleist Performance Institute)も、準備はクラブからではなく身体から始める、という立場です(5章)。

ラウンド前のストレッチは逆効果?——静的ストレッチと動的ウォームアップの違い

長く止めて伸ばす静的ストレッチを、ラウンド直前の準備の主役にしない、というのがゴルファーの研究の一致した方向です。代わりに、関節を大きく動かしながら温める動的ストレッチ(ダイナミックストレッチ)を使います。ただし、短い静的ストレッチまで一切だめというわけではありません。

静的ストレッチは筋肉を伸ばした姿勢のまま数十秒止めるもの、動的ストレッチは脚を振る・胸を回すといった動きを反動をつけすぎずに繰り返し、動く範囲を少しずつ広げるものです。

研究対象比べた条件結果
Gergley、2009若い男性競技ゴルファー15名動的ウォームアップだけ/その前に20分の全身の静的ストレッチを足す足した日は、ドライバーのヘッドスピード4.19%、飛距離5.62%、方向性31.04%、ミート率16.34%の低下
Gergley、2010若い男性競技ゴルファー同じ比較で、0〜60分後に打つヘッドスピードは30分後、方向性は45分後、飛距離とミート率は60分後まで低下が続いた
Moran ら、2009ゴルファー(5番アイアン)動的/静的/ストレッチなし(全身のウォームアップの一部として)動的はヘッドスピードが静的より1.9m/s、なしより1.7m/s高く、軌道もまっすぐに近く、静的より芯寄りで当たった。静的となしの間に差はない
Behm ら、2016運動全般の系統的レビュー静的ストレッチの長さ1つの筋肉あたり60秒以上で平均4.6%、60秒未満で1.1%の低下。あとに動的な運動を入れた研究では、はっきりした影響は見られない

読み違えやすい点が2つあります。1つ目は、大きく下がった研究(Gergley)の静的ストレッチが「20分かけた全身のストレッチ」だったことです。1つの筋肉あたり60秒未満なら低下は小さいので、硬さが気になる1〜2か所を30秒ほど伸ばしてから動的な動きと素振りに進むのは、問題になりにくいと考えられます(Gergley では、20分伸ばしたあとに動的な準備をしても低下が出ました)。2つ目は、動的ストレッチが「ストレッチなし」よりも上だったこと。静的ストレッチをやめるだけでなく、動かす準備に置き換えるのが要点です。長く伸ばすストレッチは、Gergley も練習や試合の「あと」に行うよう述べています。ラウンドのあとや別の日にとってください。

ウォームアップでヘッドスピードは上がる?——研究で確かめられた効果の大きさ

上がります。ただし差は数%で、今回確認した研究のうち差が出たものでも、ヘッドスピードで0.7〜1.9m/sでした。「飛距離が大きく伸びる」ではなく「本来の速さで振り始められる」と考えるのが実態に近いところです。

研究対象比べた準備結果注意
Langdown ら、2019上級ゴルファー23名練習場で20球打つだけ/動的ストレッチ/チューブを使った準備動的とチューブは、20球打つだけよりドライバーのボール初速が高い。両者の間に差はない研究者が書いたTPIの記事では、キャリーの差は統計的に確かめられなかった
Tilley・Macfarlane、2012男性エリートゴルファー15名動的/+ダンベル/+チューブを使った動きチューブを足すと、最大飛距離・スマッシュファクター(ボール初速÷ヘッドスピード)・当たりの安定が上がったヘッドスピードと方向性は差がない。ダンベルの上積みもない
Bliss ら、2021男性ゴルファー13名(ハンデ1.0前後)同じ準備の最後に、垂直跳び10回×3と跳ねる腕立て伏せ10回×2、または重さの違う練習用スティックの素振りを足すヘッドスピード49.2→49.9m/s(約1.4%)、キャリー261.5→267〜268ヤードボール初速と総飛距離には差がない
Read ら、2013ゴルファー16名(平均20歳・ハンデ5.8)打つ前に反動をつけた垂直跳び3回1分後のヘッドスピードが2.25mph(約1.0m/s)上がった効果量(差の大きさの指標)は0.16と小さい

「打つだけ」や「全身のウォームアップだけでストレッチなし」より、動的ストレッチなどの動かす準備を入れたほうが速く振れ、チューブの軽い抵抗や強く跳ぶジャンプを足すと、わずかに上積みがあることもある。23研究のレビューも、動的ウォームアップと抵抗運動を含むウォームアップは成績を高める傾向があり、静的ストレッチはほかの方法に劣るとまとめています(Ehlert・Wilson、2019)。ただし対象の多くは上級者や若い競技ゴルファーで、平均的なアマチュアで同じ差が出るかは確かめられていません。研究者自身が書いたTPIの記事も、大きなキャリーの伸びは期待しすぎないよう断ったうえで、準備ができた感覚で少し速く振れることはある、とまとめています。飛距離を身体から伸ばす考え方は50代で飛距離が落ちた原因で。

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ウォームアップでけがは防げる?——分かっていることと、まだ分からないこと

「ウォームアップをすればけがが減る」と言い切れる研究は、ゴルフではまだありません。関連を示す報告はありますが、結果はそろっておらず、因果関係は確かめられていません。

23研究のレビューは、ウォームアップの習慣とけがの関係について、結果は「まちまちで結論が出ていない」としています(Ehlert・Wilson、2019)。よく引かれるのはオーストラリアの女性ゴルファー522名の調査で、過去12か月にゴルフでけがをした人は35.2%、最も多い部位は腰でした(Fradkin ら、2005)。ふだんウォームアップをしない人は、よくする人よりけがを報告する割合が高かった(オッズ比45.2、95%信頼区間13.5〜151.7)ものの、同じ時点で本人に尋ねた調査で信頼区間も非常に広く、「しなかったからけがをした」とは言えません(Fradkin ら、2007)。運動全般のレビューでも、静的ストレッチでけが全体や使いすぎのけがが減るというはっきりした効果は見られず、動的ストレッチはデータがありませんでした(Behm ら、2016)。

それでも私たちがウォームアップをすすめるのは、けがを防ぐと約束できるからではなく、冷えた身体でいきなり最大の力を出す場面を避けられるからです。とくに朝は、前かがみの動きで腰の椎間板と靱帯にかかる曲げの負担が、その日の遅い時間より大きいと推定されています(Adams ら、1987。生体21名の測定と摘出した腰椎の実験を組み合わせた推定)。朝イチに深い前屈で長く伸ばさない理由の1つです。腰の痛みを身体全体から見る考え方はゴルフの腰痛で。

TPIはラウンド前の準備をどう考えているか

TPIの公式サイト(mytpi.com)の記事から読み取れるラウンド前の準備の考え方は、3つです(TPIの成り立ちと評価の中身はTPIとはで)。1つ目は、準備はクラブからではなく身体から始めること。ツアー選手の準備を扱う記事は、ウォームアップはウェッジからではなく身体から始まる、と書いています。2つ目は、ラウンド前の静的ストレッチを避け、チューブのような軽い抵抗を組み合わせた動的な動きで準備すること(ゴルフフィットネスの誤解を扱う記事)。3つ目は、効果を大きく見積もりすぎないこと(前章の Langdown らの研究を紹介した記事)。

その記事で紹介されている種目は、オーバーヘッドスクワット、股関節を開いて閉じる「オープン・アンド・クローズ・ザ・ゲート」、チューブを使ったカニ歩き、スピードスケーター、脚を後ろへ引いて前脚側へ胸を回す「ランジ・アンド・ローテート」などです。次の章の15分メニューは、これらと研究の準備の順番を下敷きに、ゴルフ場で道具が少なくてもできる形に組み直しています。ツアー選手とTPIの関わりはTPIトレーニングとPGA選手の実例に。

ラウンド前15分のウォームアップ・メニュー——順番と回数

15分を「体温を上げる2分→関節を動かす5分→筋肉を働かせる3分→段階的な素振り5分」に分けます。研究で決まった最適値ではなく、研究の準備の順番を、スタート前の時間に収めるための私たちの目安です。クラブ1本と、あればミニバンド(輪になったゴムバンド)を使います。右打ちで説明しているので、左打ちの方は左右を逆にしてください。

1

体温と心拍を上げる(2分)

早歩きか、その場で腿を上げる足踏みを1〜2分、少し息が弾むくらいまで。朝は午後より跳躍のパワーが2〜6%低く、20分の自転車こぎで体温を上げると差が目立たなくなったという研究があります(Taylor ら、2011。ゴルフではなく跳躍の研究)。朝の早いスタートや寒い日、車で長く座ってきた日は、駐車場から歩く時間も使ってここを長めにとってください。

2

関節を大きく動かす(5分)

①レッグスイング:カートやクラブで身体を支え、片脚を前後に10回、身体の前を横切るように左右に10回振る。反対の脚も同じ。②オープン・アンド・クローズ・ザ・ゲート:片脚で立ち、反対の膝を腰の高さまで上げてから外へ開いて下ろす。次は外側から膝を上げ、前へ回して下ろす。左右各5回。③ランジ・アンド・ローテート:右脚を大きく踏み出して腰を落とし、クラブを胸の前で横に持ったまま、胸を右(前脚の側)へ回して戻る。左右交互に各5回。手をつける場所なら、踏み出した脚の内側へ同じ側の肘を近づけてから、その腕を天井へ伸ばして胸を開く形(ワールドグレイテストストレッチ)でもかまいません。④クラブを担いだ前傾回旋:アドレスの前傾でクラブを両肩に担ぎ、バックスイングの向き(右)とフォローの向き(左)へ交互に回す。左右各8回、少しずつ大きく。⑤オーバーヘッドスクワット:クラブを両手で頭上に持ち、かかとを床につけたまま、無理のない深さまでしゃがんで戻る。8〜10回。

3

筋肉を働かせる(3分)

⑥カニ歩き:ミニバンドを膝の上か足首に巻き、軽く腰を落として横へ10〜20歩、戻りも同じ歩数(バンドがなければ腰を落とした横歩き)。⑦スピードスケーター:横へ跳んで反対の脚で静かに着地し、止まってから逆へ。左右各6回。⑧肩甲骨を寄せる:ゴムバンドを肩の高さで前に持ち、左右に引き離しながら肩甲骨を寄せる動きを30秒(バンドがなければ腕だけで)。⑨軽い垂直跳び(任意):軽くしゃがんでから真上に跳ぶ動きを3回。高さより、静かに着地することを優先します。

4

段階的な素振り(5分)

⑩いつものクラブで、腰から腰の振り幅をゆっくり5回、肩から肩の振り幅を中くらいの速さで5回、フルスイングを速さを上げながら3〜5回。練習場があれば、この15分を終えてから、ウェッジの小さなアプローチ→ウェッジのフルショット→7番アイアン→ドライバーの順に打ちます(Bliss らの研究の準備も、この順で打っていました)。最初の1球からドライバーを全力で振るのは避けてください。

Caution

どの種目も痛みが出ない範囲で行い、痛みが出る種目は飛ばしてください。反動をつけて可動域を押し込まないこと。⑦スピードスケーターと⑨垂直跳びは、膝・足首・腰に痛みがある方、骨粗しょう症と言われている方、ふだん運動をしていない方は行わず、横へ大きく踏み出す動きや足踏みに置き換えます。ぬれた芝や傾斜地は避けてください。

時間がない日は5分でも構いません。早歩き1分→③ランジ・アンド・ローテートを左右各3回→④クラブを担いだ前傾回旋を左右各5回→⑩段階的な素振り。関節を動かすことと、素振りを小さく遅くから始めることの2つは省かないでください。胸の回旋をふだんから広げるストレッチは胸椎の回し方に、股関節の動かし方は股関節の使い方にまとめています。

何分前に始める?——スタートまでの時間と待ち時間の過ごし方

スタートの45分前ごろから身体の準備15分、そのあと練習場とパター、1番ティーの直前に1〜2分の入れ直し、というのが私たちの目安です。動的な準備はスタートに近い時間に置き、長い静的ストレッチは当日の朝にしない、というのが研究から言える組み立て方です。

根拠は3つあります。動的ストレッチの効果は、直後から30分後まで測って時間による差が出ず(Moran ら、2009)、ストレッチで広がった可動域はたいてい30分もたずに戻り(Behm ら、2016)、長い静的ストレッチの悪影響は項目によって30〜60分残りました(Gergley、2010)。準備を終えてからスタートまで30分近くあくなら、直前の入れ直しは省かないでください。なお、英国のPGAで研修中のプロ430名は、ウォームアップに試合の前で平均約38分、練習ラウンドの前で約26分をかけていました(Wells・Langdown、2020)。15分は「最低限の身体の準備」と考えてください。

①

スタート60〜45分前:到着・着替え

車で長く座ってきた日は、駐車場からクラブハウスまでを早歩きにして、体温を上げる時間に使います。着替えの前後に、深い前屈で長く伸ばすことは避けます。

②

スタート45〜30分前:身体の準備15分

前章の15分メニュー。練習場の打席に入る前に済ませます。

③

スタート30〜10分前:練習場とパター

短いクラブから打ち、ドライバーは最後に数球。そのあとパターで距離感を合わせます。練習場がない日は、⑩の素振りを丁寧に。

④

スタート直前:1〜2分の入れ直し

足踏み、クラブを担いだ前傾回旋、小さい素振りから大きい素振りへ(次の章)。

朝イチのドライバーを振る前に——1番ティーまでにやること

朝イチのドライバーが振れない・曲がるとき、スイングより先に疑いたいのは準備の中身です。ここまでの研究を朝イチの場面に当てはめると、次のようになります。

朝イチに起きやすいこと研究で分かっていること1番ティーまでの対策
身体が温まっていない朝は午後より跳躍のパワーが2〜6%低く、長めのウォームアップで差が目立たなくなった(8名)体温を上げる時間を長めに。駐車場からの移動も早歩きで
駐車場で長く伸ばしてから打つ20分の静的ストレッチを足すと、ドライバーの方向性とミート率が下がった(15名)。同じ条件の別の研究では、60分後まで残る項目もあった当日の朝は長い静的ストレッチをしない。伸ばすならラウンドのあとに
練習場で打つだけ20球打つだけより、動的・チューブの準備のほうがボール初速が高かった(23名)打席に入る前に身体の準備を済ませる
1球目から全力で振るGergley は段階的な動的ウォームアップをすすめ、Bliss らの準備もウェッジから打ち始めている素振りは小さく遅く→大きく速く。練習は短いクラブから
待ち時間で冷えるストレッチで広がった可動域は、たいてい30分もたずに戻るティーの前に1〜2分の入れ直し

1番ティーの直前の1〜2分は、①その場で足踏み20秒、②クラブを担いだ前傾回旋を左右各3〜5回、③素振りを小さく1〜2回、大きく速く1〜2回。膝・足首・腰に痛みがなく、骨粗しょう症と言われておらず、ふだん運動をしている方なら、打つ1〜2分前に軽い垂直跳びを3回入れる方法もあります(ゴルファー16名で、反動をつけた垂直跳び3回の1分後にヘッドスピードが約1.0m/s上がった研究があります。Read ら、2013。軽く跳んだときに同じ効果が出るかは確かめられていません)。ティーでの素振りだけで身体の準備を済ませるのは足りません。

起きてから間もない朝は、腰を丸めて深く前屈するより、股関節から前傾する④の動きで身体を起こしていくほうが、腰への負担を考えると無難です。寒い季節の準備は冬に体が回らない・飛ばない理由で扱っています。

ウォームアップで回らない・ふらつくなら——身体の制限のサイン

ストレッチで広がった可動域は長く続かず(Behm ら、2016)、15分のウォームアップで変わるのは「今日の動き出し」までです。ウォームアップの途中で「片側だけ回らない」「深くしゃがめない」「片脚でぐらつく」と感じたら、準備不足ではなく、身体の制限のサインかもしれません。TPIの評価項目と対応させると次のとおりです。

ウォームアップで気づくこと対応するTPIのテストと基準考えられること詳しい記事
④クラブを担いだ前傾回旋で、片側だけ回りにくい座位体幹回旋:膝と足をそろえて座り、左右とも45度を超えて回る胸椎の回旋不足。TPIは、腰椎に過剰な回旋の力が生じるか、肩を使いすぎて補う可能性があるとしている胸椎の回し方
②オープン・アンド・クローズ・ザ・ゲートで、片側だけ股関節が回りにくい・ぐらつく下半身回旋:片脚に体重を乗せ、骨盤を左右とも60度以上回す下半身の回旋不足。TPIは、スイングで過剰な横の動き(スウェー・スライド)が出る可能性があるとしているスウェーの直し方
⑤オーバーヘッドスクワットで、かかとが浮く・深くしゃがめないオーバーヘッドディープスクワット:かかとを床につけたまま、太ももが水平より下までTPIは、かかとをつけたまま深くしゃがめないと、ダウンスイングで前傾を保つことはほぼできないとしている前傾キープ
⑦のあと片脚で止まれない、左右で安定が違う片脚バランス(左右)片脚の安定性の左右差。可動域の左右差と合わせて見るゴルフの左右差

これらはTPIの16項目の一部です。やり方はTPI 16項目の全解説に、回らない身体で柔らかくすべき場所は体が硬い・回らない人へにまとめています。ウォームアップを毎回同じ動き・同じ順番で行えば、その日の身体を比べる物差しにもなります。前半は振れていたのに後半に崩れるなら、準備ではなく体力の問題かもしれません(ラウンド後半に崩れる原因)。

現場で見えていること

私たちが行うTPIフィジカルアセスメントでは、座位体幹回旋、下半身回旋、オーバーヘッドディープスクワット、片脚バランスを含む16項目を実測します。「朝イチだけ振れない」「前半の数ホールは身体が回らない」という相談を受けたとき、最初に分けて考えるのは2つです。1つは、測れば基準を満たしているのに、スタート前に身体を動かしていないケース。もう1つは、そもそも可動域や片脚の安定性が基準に届いていないケースです。前者はウォームアップの順番と中身を見直すのが先ですが、後者は当日の準備で一時的に良くなっても長くは続かず、ふだんのトレーニングが要ります。

ラウンド前の過ごし方を伺うと、駐車場で前屈や開脚を長めに伸ばしてから、練習場でいきなりドライバーを打ち始めるという方も見かけます。この記事で紹介した研究とは逆の組み立てです。また、ウォームアップの動きで片側だけ回りにくさを感じている方を測ると、座位体幹回旋や下半身回旋で、同じ側が基準に届いていないことがあります。制限が分かれば、ウォームアップで優先して動かす部位も決まります。たとえば座位体幹回旋が片側だけ足りない方なら、クラブを担いだ前傾回旋をその向きだけ回数を増やす、といった形です。ジムでの役割の分担はゴルフのパーソナルトレーニングにまとめました。

※本記事のウォームアップとチェックは運動前の準備と簡易な確認であり、医学的な診断ではありません。腰・股関節・肩・肘・手首・膝に、安静時や夜間も続く痛み、腫れや熱感、しびれ、力の入りにくさがある方は、ウォームアップやラウンドの前に整形外科を受診してください。両脚のしびれ、排尿・排便の異常、股の周りの感覚の鈍さを伴う腰痛は、速やかに医療機関を受診してください。ウォームアップ中やラウンド中に、胸の痛みや締めつけ感、強い息切れ、動悸、めまいやふらつきが出たら、ただちに運動を中止して周りに助けを求め、医療機関を受診してください。心臓や血圧の持病で治療中の方は、早朝や寒い日のラウンドと運動の強さについて、主治医に相談してください。

よくある質問

ラウンド前にストレッチはしないほうがいいですか?

長く止めて伸ばす静的ストレッチを、直前の準備の主役にしないほうがよいです。動的ウォームアップの前に20分の全身の静的ストレッチを足した日は、ドライバーのヘッドスピード・飛距離・方向性・ミート率がそろって下がりました(競技ゴルファー15名)。1つの筋肉あたり60秒未満の短いストレッチなら影響は小さく、あとに動的な動きと素振りを入れれば問題になりにくいと考えられます。

ゴルフのウォームアップは何分前から、何分やればいいですか?

私たちの目安は、スタートの45分前ごろから身体の準備に15分、そのあと練習場とパター、1番ティーの直前に1〜2分の入れ直しです。ストレッチで広がった可動域はたいてい30分もたずに戻るため、待ち時間が長いときは直前にもう一度動かします。

時間がないときの最低限のウォームアップは?

5分なら、早歩き1分、ランジ・アンド・ローテートを左右各3回、クラブを担いだ前傾回旋を左右各5回、小さく遅くから大きく速くへの段階的な素振り、の順に行います。関節を動かすことと、素振りを小さく始めることの2つは省かないでください。

練習場で打つだけではウォームアップになりませんか?

打つことも準備の一部ですが、それだけでは足りません。上級ゴルファー23名の研究では、練習場で20球打つだけの準備より、動的ストレッチやチューブを使った準備のほうが、ドライバーのボール初速が高くなりました。打席に入る前に身体の準備を済ませ、短いクラブから打ち始めてください。

朝イチのドライバーが曲がる・振れないのはなぜですか?

スイングの前に、準備の中身を疑ってください。朝は午後より身体の出力が低い(跳躍のパワーで2〜6%)という研究があり、長く伸ばす静的ストレッチはドライバーの方向性とミート率を下げました。身体を温めてから素振りと練習を小さく遅くから始め、ドライバーは最後に打ちます。それでも毎回振れないなら、身体の制限を測って確かめてください。

ウォームアップで飛距離は伸びますか?

伸びるとしても、わずかです。今回確認した研究では、差が出たものでもヘッドスピードで0.7〜1.9m/s(数%)で、ヘッドスピードに差が出なかった研究や、キャリーの差が統計的に確かめられなかった研究もあります。飛距離そのものは、可動域・筋力・パワーをふだんのトレーニングで作って伸ばします。

腰痛があってもこのウォームアップをしていいですか?

痛みが出ない範囲の種目だけにしてください。痛みが出る種目と、ジャンプ・スピードスケーターは行わず、足踏みや小さな素振りに置き換えます。安静時や夜間も続く痛み、脚のしびれ、力の入りにくさがある場合は、ウォームアップの前に整形外科を受診してください。

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主な参考(タップで開く)
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岡本隼人
岡本 隼人
Disport World 代表トレーナー
JSPO-AT TPI Certified NASM-PES FMS SFMA

日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)。TPIのFitness 2/Power 2プログラムを修了・認定(TPI Certified Fitness 2 / Power 2)。NASM-PES。FMS(2015年認定)・SFMA(2016年認定)。INDIBA®ベーシックコース修了(INDIBA Japan)。2002年から指導、のべ指導実績40,000人以上。自身のゴルフはヘッドスピード54m/s・ボール初速78m/s(FlightScope計測・自己最速)。2022年から世田谷区の少年野球チーム「船橋フェニックス」で学年チームの監督を務め、2026年は6年生チームで全日本学童軟式野球大会(マクドナルド・トーナメント)第3位。Disport World(六本木3-15-21 鶯ビルB1)代表。