どちらが足りないのかは、よろけ方と簡単なテストである程度分けられます。フォームを直す前に、まず今の身体を測るのが近道です。
この記事は、六本木の完全個室パーソナルジム Disport World で、TPI認定(Fitness 2/Power 2)と日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)の岡本隼人が、ゴルファーの身体を実際に測ってきた経験から書いています。扱うのはスイングの技術ではなく、身体の側の原因です。ゴルフの身体づくり(記事一覧・体験)→
・フィニッシュでは体重の大半を左脚(右打ちのリード側)で受け、骨盤は左股関節の上で回りきる。止まれないのは、この「片脚で支える」か「股関節の上で回る」のどちらかが足りないことが多い
・TPIは、左股関節の内旋が足りないと体が股関節の上で回れず、横に流れる動きが主になると説明している
・研究では、ハンデの良いゴルファーほど片脚バランスが良いという関連が報告されている。ただし横断研究で、バランスを良くすれば上達するとまでは言えない
・TPIの片脚バランステストは、目を閉じて太ももを床と平行まで上げ、25秒を超えれば正常とされる
・よろけ方(後ろ・目標方向・右足に残る)で、見るべき身体の場所が変わる
フィニッシュで止まれないとき、身体では何が起きているのか
多くの場合、左脚一本で体重を受け止めきれていないか、左股関節の上で骨盤が回りきれず、回転の勢いが横や後ろへ逃げています。フィニッシュのよろけは、それまでのスイングで起きたことの「結果」として表に出ている、と考えるのが実用的です。
TPIのサイトに載ったトレーニングの記事は、スイングではバックスイングで後ろの脚に大半の負荷が入り、ダウンスイングで前の脚へ移ると説明しています。右打ちなら、振り終わりで体重を受けるのは左脚です。そこで支えきれないと、よろけ方に特徴が出ます。
| よろけ方(右打ち) | スイングで起きていそうなこと | まず見る身体の場所 |
|---|---|---|
| 目標方向(左)へ流れて、左足の外側に乗って一歩出る | ダウンスイングで下半身が目標方向へ横に動きすぎる(TPIの言う「スライド」) | 左股関節の内旋、お尻の横の筋肉(中殿筋)で骨盤を横に安定させる力 |
| 右足に体重が残り、後ろ(右)へ倒れる | 左へ乗り切れない(ハンギングバック) | 左脚で支える力、左股関節の内旋 |
| かかと側(背中側)へ倒れる | インパクト前後で上体が起き上がる | 体幹の安定、股関節を曲げたまま回る力 |
| 左脚では立てるが、ぐらついて数秒で右足をつく | 回りきってはいるが、片脚で止める安定が足りない | 片脚バランス(とくに目を閉じたとき)、足首 |
右足に残る形はハンギングバックの直し方で、切り返しで下半身から動けない問題は下半身リードの記事で扱っています。この記事は、振り終わりで止まれないことに絞ります。左打ちの方は左右を逆に読んでください。
フィニッシュでは、左脚と左股関節に何が求められるのか
求められるのは、左股関節の上で骨盤が左へ回りきる可動性(内旋)と、その間に骨盤が横へずれないように支える安定性です。TPIは、左股関節の内旋が足りず股関節の上で回れないと、横に流れる動きがスイングの主になると説明しています。
ダウンスイング——体重が左脚へ移る
後ろの脚で受けていた負荷が、左脚へ移っていきます。TPIは、ダウンスイングで左脚を横に安定させる力は、お尻の筋肉の強さと安定に正比例するとし、なかでも中殿筋が左の腰(リード側の股関節)が浮いて横へずれるのを防ぐと書いています。
インパクトからフォロー——左股関節の上で骨盤が回る
左の太ももはほぼ固定されたまま、骨盤が左へ回ります。太ももに対して骨盤が回るこの動きが、左股関節の「内旋」です。女子大学ゴルファー15名の3次元解析では、ドライバーのダウンスイングで、リード側股関節の内旋の最大速度がトレイル側の外旋の最大速度より有意に大きかったと報告されています(Gulgin ら、2009)。
フィニッシュ——左脚一本で止まる
回転が終わったところで、左脚一本で体重を受け止めて静止します。ここで必要なのは、片脚で立つバランスと、足首・膝・股関節・体幹の協調です。①②で横に流れていれば、③では止まりきれません。
内旋の目安として、TPIはPGAツアー選手の平均で左右とも45度を超える股関節の内旋があるとし、スウェーやスライドがある人はまず内旋を確認するようすすめています。股関節の「乗る・入れる・回す」の全体像はゴルフの股関節の使い方で解説しています。
研究では、片脚バランスとゴルフの何が結びついているか
ハンデの良いゴルファーほど片脚バランスが良い、片脚バランスができない人はスイングの特定の動きが多い、という関連が報告されています。ただし多くは一時点の比較で、バランスが原因で上達や動きが変わると確かめた研究ではありません。
| 研究 | 対象 | 分かったこと | 読むときの注意 |
|---|---|---|---|
| Sell ら、2007 | 健康な男性ゴルファー257名(ハンデ0未満・1〜9・10〜20の3群) | ハンデ0未満の群は10〜20の群より、目を開けた片脚バランスが有意に良かった。股関節・体幹・肩の筋力と柔軟性も上回った | 一時点の比較。バランスだけの違いではない |
| Gulgin ら、2014 | 男女のゴルファー36名(平均ハンデ14.2) | オーバーヘッドディープスクワットか左の片脚バランスができない人は、アーリーエクステンション、前傾の崩れ、スライドが2〜3倍(オッズ比) | 関連の報告。少人数 |
| Marshall ら、2017 | 大学ゴルファー10名(男女5名ずつ) | 男性5名では、バランステストのエラーが少ない人ほど平均飛距離が長かった(相関 r=-0.85) | 各群5名と非常に少ない。相関のみ |
| Tsang ら、2010 | 高齢の男性。ゴルファー11名(平均66歳)と非ゴルファー12名(平均71歳) | ゴルファーの方が片脚立ちの持続時間が有意に長かった | ゴルフを続けた結果かは分からない |
| Lephart ら、2007 | 練習熱心な男性ゴルファー15名 | 8週間のゴルフ向けトレーニング後、バランスは12項目中3項目で有意に向上。飛距離やクラブの速度も向上 | 比較する対照群がない |
まとめると、片脚バランスはゴルフの上手さやスイングの動きと「一緒に見られることが多い」身体の要素です。原因とまでは言えませんが、測る価値のある項目だと考えています。数字の大小より、左右差と、自分の前回からの変化を見るのが実用的です。左右差の考え方はゴルファーの左右差の記事で詳しく書いています。
片脚バランス(閉眼)、下半身回旋、骨盤回旋、オーバーヘッドディープスクワットを含む16項目を実測します。左右に分かれる項目は両側とも測り、フィニッシュで止まれない理由の候補を、数値とともに評価レポートPDFにしてお渡しします。
TPIフィジカルアセスメントの詳細を見る自分で確かめるには——3つのチェック
自宅でできるのは、フィニッシュの静止を動画で見る、目を閉じた片脚立ちの秒数を左右で測る、左右の股関節の内旋を比べる、の3つです。どれも左右を同じやり方で行い、数字や動画で残してください。
フィニッシュの静止を動画で見る
7番アイアンくらいの短めのクラブで、ゆっくり振ってフィニッシュで3秒止まる。正面と後方から撮り、止まれたか、どの方向へよろけたか、右足に体重が残っていないかを見ます。3秒は当店で観察しやすいように決めている目安で、公式の基準ではありません。
片脚バランステスト(TPI)
腕は体の横に下ろし、体に触れないようにして真っすぐ立つ。片脚を太ももが床と平行になるまで上げ、安定したら目を閉じて何秒保てるかを測る。立っている足の位置が動いたら終了です。TPIは25秒を超えれば正常とし、25秒で止めます。反対の脚も同じように。
座って股関節の内旋を比べる
椅子に座り、両膝の間に握りこぶしを2つ挟んで膝を寄せたまま、すねを外側へ開く。すねが外へ開くとき、股関節は内側へ回っています(内旋)。TPIが紹介している確かめ方です。左(リード側)だけ開きにくい、左右差がはっきりある、を見ます。
TPIのサイトに載った片脚トレーニングの記事は、TPIの数字として、アマチュアゴルファーの60%以上が、TPIのバランス評価で片脚で10秒を超えて立てないと紹介しています。片脚で止まることは、思っているより難しい動作です。②で左右に差がある、または25秒に届かない側がある場合は、その側がフィニッシュで止まれない理由の候補になります。回旋の左右差まで測りたい方は、片脚で骨盤を回す下半身回旋テストをTPI 16項目の全解説で確認してください。
片脚バランステストは、壁や椅子のそばなど、転んでもすぐ手をつける場所で行ってください。目を閉じると急にぐらつくことがあります。股関節や脚の付け根に痛み、引っかかり、しびれが出る場合は中止します。フィニッシュの静止チェックも、痛みがあるときは行わず、下の「受診の目安」を先に確認してください。
止まれない原因は、どう切り分けるか
3つのチェックの組み合わせで、見る場所を絞れます。片脚立ちは保てるのにフィニッシュで流れるなら「回る」側、片脚立ちそのものが短いなら「支える」側、両方なら両方です。ただし自宅のチェックは目安で、切り分けの確定には測定が必要です。
| チェックの結果 | 考えられること | 次に見るもの |
|---|---|---|
| 片脚立ちは左右とも保てるが、フィニッシュで目標方向へ流れる | 左股関節の上で回れず、横の動きで代わりにしている | 左股関節の内旋、中殿筋、胸郭と骨盤の分離 |
| 左の片脚立ちだけ短い | 左脚で止める安定の不足。足首の古いケガが関わることもある | 左の足首・股関節・体幹の安定 |
| 左右とも片脚立ちが短い | 片脚で立つバランス全体の不足 | 足首・体幹を含めた全身 |
| 左の股関節だけ内旋が小さい | フィニッシュで骨盤が回りきれない候補 | 股関節の可動域(痛みがあれば受診) |
| チェックはどれも問題ないのに止まれない | 身体より、スイングの技術やリズムの側の可能性 | レッスンで技術を確認 |
TPIはスライドの身体的な原因として、左股関節の内旋、上半身と下半身を分けて動かす力(胸郭と骨盤の分離)、お尻の筋肉による横の安定の3つを挙げています。フィニッシュで目標方向へ流れる人は、この3つのどれかを疑うのが順当です。体重の移し方そのものはゴルフの体重移動の記事で扱っています。
もう1つ大事なのは、「バランスが悪いから片脚立ちの練習をする」だけでは、足りないのが股関節の内旋だった場合に届かないことです。反対に、股関節は十分に動くのに片脚で止まれない人は、ストレッチより安定の練習が先になります。どちらが足りないかで、やることの順番が逆になります。
現場で見えていること
当店のTPIフィジカルアセスメントでは、片脚バランス(閉眼)を、下半身回旋や骨盤回旋、オーバーヘッドディープスクワットの結果と重ねて読みます。片脚バランスが短い、という結果だけで「バランスを鍛えましょう」とは決めず、股関節の回旋や体幹の安定と組み合わせて、制限の場所の仮説を立ててから、当日その場でスイングと照らし合わせます。
フィニッシュで止まれないと感じている方でも、測ると片脚立ちは左右とも保てていて、左股関節の回旋のほうに左右差が出ていることがあります。反対に、スイングの見た目は整っているのに、目を閉じた片脚立ちで片側だけ極端に短い方もいます。本人の感覚と測定は食い違うことがあるので、練習を選ぶ前に左右を測ることをすすめています。
よくある質問
ゴルフのフィニッシュでバランスが取れないのはなぜですか?
左脚一本で体重を受け止める片脚の安定か、左股関節の上で骨盤が回りきる動き(内旋)のどちらかが足りないことが多いです。スイングの技術やリズムが原因のこともあるので、まず片脚立ちと股関節の回旋を左右で測って、身体の側に原因があるかを確かめてください。
フィニッシュで右足に体重が残るのは、バランスの問題ですか?
バランスというより、ダウンスイングで左へ乗り切れていないことが多い形です。TPIはこの体重移動の不足をハンギングバックと呼び、インパクトでも右足に体重が残っていることが多いとしています。左脚で支える力や左股関節の動きが関わることがあります。詳しくはハンギングバックの記事で扱っています。
片脚立ちは何秒できればいいですか?
TPIの片脚バランステストは、目を閉じて太ももを床と平行まで上げて行い、25秒を超えれば正常とされています。目を開けたままの片脚立ちとは条件が違うので、同じ条件で左右を比べてください。
片脚バランスを鍛えると飛距離は伸びますか?
そう言い切れる研究はありません。ハンデの良い人ほどバランスが良いという関連や、8週間のトレーニングでバランスと飛距離が向上した報告はありますが、後者は対照群のない15名の研究です。足りないのがバランスか股関節の動きかを測ってから取り組むのが効率的です。
フィニッシュで目標方向によろけて一歩出てしまいます。
ダウンスイングで下半身が目標方向へ横に動きすぎる形(TPIの言うスライド)が考えられます。TPIは原因として左股関節の内旋、胸郭と骨盤の分離、お尻の筋肉による横の安定を挙げています。股関節や脚の付け根に痛みがあれば、先に医療機関を受診してください。
TPI測定のご案内
片脚で支える力か、左股関節の上で回る動きか。練習を選ぶ前に、一度測って切り分けてください。TPIフィジカルアセスメントでは、片脚バランスや下半身回旋を含む16項目を実測し、どの制限がどのスイング特性と結びつきやすいかを評価レポートとプログラムのPDFにまとめます。TPIの考え方とツアー選手での実例はTPIトレーニングのページで紹介しています。
TPI Physical Assessment
フィニッシュでよろけるのは片脚か、股関節か
両側を測って切り分ける90分
TPIの16項目を実測し、どの身体の制限がどのスイング特性と結びつきやすいかを評価レポート+プログラムPDFにまとめてお渡しします。単発で完結し、入会は不要です(6週後の再評価は¥15,000・税込)。
まず動いて確かめたい方は、体験トレーニング(90分・¥15,000/毎月先着3名さま¥7,500)もお選びいただけます(先着枠は毎月1日起算、定員後は通常¥15,000)。
ウェア・タオル無料 | 完全個室 | 六本木駅徒歩4分
主な参考(タップで開く)
- Sell TC, Tsai YS, Smoliga JM, Myers JB, Lephart SM. Strength, flexibility, and balance characteristics of highly proficient golfers. J Strength Cond Res. 2007;21(4):1166-1171.(健康な男性ゴルファー257名)
- Gulgin HR, Schulte BC, Crawley AA. Correlation of Titleist Performance Institute (TPI) level 1 movement screens and golf swing faults. J Strength Cond Res. 2014;28(2):534-539.(男女のゴルファー36名)
- Gulgin H, Armstrong C, Gribble P. Hip rotational velocities during the full golf swing. J Sports Sci Med. 2009;8(2):296-299.(女子大学ゴルファー15名)
- Marshall KJ, Llewellyn TL. Effects of flexibility and balance on driving distance and club head speed in collegiate golfers. Int J Exerc Sci. 2017;10(7):954-963.(大学ゴルファー10名)
- Tsang WW, Hui-Chan CW. Static and dynamic balance control in older golfers. J Aging Phys Act. 2010;18(1):1-13.(男性ゴルファー11名・非ゴルファー12名)
- Lephart SM, Smoliga JM, Myers JB, Sell TC, Tsai YS. An eight-week golf-specific exercise program improves physical characteristics, swing mechanics, and golf performance in recreational golfers. J Strength Cond Res. 2007;21(3):860-869.(男性ゴルファー15名)
- Titleist Performance Institute(mytpi.com). The Single Leg Balance Test/Slide(Swing Characteristics)/Your Hips and the Golf Swing/Benefits of Single Leg Training for Golfers。


