分かっているのは、ゴルフのケガの多くが使いすぎによるものであること、初心者や練習量を急に増やした人で肋骨の疲労骨折が報告されていること、そして同じクラブを打ち続けるより、打ち方を変えながら練習したほうが身につきやすいという研究があることです。球数を決めるより、練習の区切り方と、やめる合図を決めるほうが身体にも上達にも役立ちます。
この記事は、六本木の完全個室パーソナルジム Disport World で、TPI認定(Fitness 2/Power 2)と日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)の岡本隼人が、ゴルファーの身体を実際に測ってきた経験から書いています。扱うのはスイングの技術ではなく、練習量と身体の側の話です。ゴルフの身体づくり(記事一覧・体験)→
・「1回◯球まで」という公的な基準や研究上の上限は見当たらない。アマチュアを追った研究でも、練習やプレーの頻度とケガの関連ははっきりしていない
・一方で、ゴルフのケガの大半は使いすぎによるもの。肋骨の疲労骨折は、初心者や練習量を急に増やした人で報告されている
・上達の面では、同じクラブ・同じ目標で打ち続ける「ブロック練習」より、変えながら打つ練習のほうが後に残りやすいという研究がある
・球数ではなく、①準備 ②ブロック ③変化 ④やめる合図 ⑤翌日の確認、で1回の練習を区切る
・肋骨・手首・肘・腰に痛みが出たら、球数を減らして続けるのではなく、打つのをやめて受診の目安を確認する
ゴルフの練習は、1回何球までが正解なのか
「1回◯球まで」という正解は、少なくとも公的な指針や研究の形では示されていません。ゴルファーのケガを調べた研究はありますが、打った球数ごとにケガの起こりやすさを比べ、上限を決めたものは見つかりませんでした。「100球まで」「300球は打ちすぎ」といった数字は、経験から出た目安と考えてください。
数字の手がかりとして、アマチュアが実際に何球打っているかは報告されています。アメリカの男性ゴルファー1,170名の調査では、練習場を使う981名が週に平均2.3日、195球を打っていました(Murray ら、2023)。アメリカとスイスのアマチュア910名を追った研究では、週の球数の中央値は100球でした(Robinson ら、2024)。ただしどちらも「これだけ打つとケガが増える」ことを示した研究ではありません。
同じ100球でも、ドライバーのフルスイングとアプローチでは負担が違い、身体がその量に慣れているかでも変わります。だからこの記事では、球数の代わりに「区切り方」と「やめる合図」を組み立てます。
研究では、練習量とケガの関係はどこまで分かっているか
分かっているのは、ゴルフのケガの多くが1回の衝撃ではなく使いすぎで起きていることです。一方で、「練習やプレーの量が多い人ほどケガが多い」という関係は、研究によって出たり出なかったりで、はっきりしていません。主な研究を並べます。
| 研究 | 対象 | 練習量・プレー量について分かったこと |
|---|---|---|
| Gosheger ら、2003 | ゴルファー703名(プロとアマチュア) | 報告されたケガ・障害637件のうち82.6%が使いすぎ、17.4%が1回の外傷。10分以上のウォームアップをする人でケガが少なかった |
| McHardy ら、2007 | オーストラリアのアマチュア588名を1年追跡 | 100人あたり年15.8件。ケガと関連したのはプレーの量など。練習の習慣、ウォームアップ、年齢、性別とは関連なし |
| Robinson ら、2024 | アメリカ・スイスのアマチュア910名を1シーズン(5か月)追跡 | 週に何日ゴルフをするかとケガに関連なし。関連したのは年齢、過去のケガ、変形性関節症。著者は、プレー量とケガの関係は専用の研究が必要としている |
| Minghelli ら、2024 | ポルトガルの競技会の選手140名 | ケガの66.7%は反復動作による。週4回以上の練習でケガが多い傾向(オッズ比3.46)は、統計的には有意に届いていない(p=0.056) |
読み方の注意です。これらは観察研究で、量を決めて比べた実験ではありません。また、たくさん練習する人は上手で身体も慣れている、ケガをした人は練習を減らす、といった事情が混ざるため、量の影響は見えにくくなります。「量は関係ない」とも言い切れません。
ゴルフ以外のスポーツも含めた総説では、急激で大きな練習量の増加が、筋肉や腱など軟部組織のケガの大きな部分を占めると考えられています(Gabbett、2016)。これはチームスポーツの研究をまとめたもので、ゴルフの球数で確かめたものではありません。それでも「普段の量から急に増やさない」という考え方は、次の章の肋骨の報告とも合います。
打ちすぎは、身体のどこに何を残すのか
打ちすぎの影響がもっともはっきり報告されているのは、肋骨の疲労骨折です。ほかに腰、肘・前腕、手首も、ゴルフでケガの多い場所として報告されています。どこに出るかは、その人のスイングと身体の制限によって変わります。
Lord らは、肋骨の疲労骨折を起こしたゴルファー19名(平均39歳)を報告しました。19名のうち18名が初心者で、残る1名の経験者は、ケガの前に練習場での練習時間を大きく増やしていました。骨折は第4〜6肋骨の背中寄りの側面に多く、16名はリード側(右打ちなら左)でした。著者は、肩甲骨を肋骨に引きつける前鋸筋(ぜんきょきん)の疲労を仕組みとして挙げています(Lord ら、1996)。ゴルフの疲労骨折44例をまとめたレビューでも、最も多いのは肋骨で、80%がリード側でした(Lee、2009)。肋骨の痛みの左右差や身体側の原因はゴルフで肋骨が痛いときの記事で詳しく扱っています。
| 場所 | 研究での位置づけ | 練習量の面での読み方 |
|---|---|---|
| 肋骨(リード側の脇腹・背中寄り) | ゴルフの疲労骨折で最も多い(Lee、2009) | 初心者、練習量を急に増やした時期に報告。痛みが出たら打つのをやめる |
| 腰 | アマチュアで最も多い部位(McHardy ら、2007:18.3%) | 回数だけでなく、腰で回る動きの癖が関わることがある |
| 肘・前腕 | 2番目に多い部位(同:17.2%) | マットを叩く、手で打つ打ち方の反復で負担が集まりやすい |
| 手首 | 競技選手で2番目に多い部位(Minghelli ら、2024:22.2%) | 同じ打ち方の反復。痛む側と場所を記録しておく |
翌日の筋肉痛がどこに出たかも、身体の使い方の手がかりになります。痛みの場所から読む方法はゴルフの筋肉痛が出る場所の記事で、腰の痛みが腰そのものより股関節や胸椎の制限から来る考え方はゴルフの腰痛の本当の原因で解説しています。この記事で扱うのは、その手前の「どれだけ・どう打つか」です。
骨盤回旋、座位体幹回旋、下半身回旋、90/90、片脚バランスを含む16項目を実測します。どの制限がどのスイング特性と結びつきやすいかを数値で整理し、評価レポートとプログラムのPDFにしてお渡しします。
TPIフィジカルアセスメントの詳細を見る上達のためには、同じクラブで打ち続けるのと変えながら打つのとどちらがよいか
運動学習の研究では、同じ打ち方を続ける「ブロック練習」は練習中の出来はよく見えても、日を置いたテストでは、打ち方を変えながら練習した人のほうが成績がよいことが多いと報告されています。これを「文脈干渉効果」と呼びます。ただし実際のスポーツでは差が小さくなります。
61研究をまとめたメタ分析では、効果量は全体で0.38、実験室の研究で0.57、スポーツなど応用場面の研究で0.19でした(Brady、2004)。ゴルフでは、初心者の女性40名がパットを1日120球・3日間練習した研究で、条件をランダムに変えながら打った群は、同じ条件で続けた群より、72時間後のテストの成績がよい結果でした(Mousavi ら、2024)。
初心者にいきなり毎球変える練習をさせるのがよいとも限りません。ゴルフのパットとバスケットボールのパスを使った2つの実験では、ブロック→順番に変える→ランダム、と段階的に変化を増やした群が、ブロックだけ・ランダムだけの群より、後のテストでよい成績でした(Porter と Magill、2010)。
ブロック——1つのことを確かめる
同じクラブ、同じ目標で、直したい1点だけを確かめる。ここは短く区切ります。
順番に変える——決まった順で回す
例:7番→ピッチングウェッジ→ドライバーを決まった順で1球ずつ。
ランダム——本番に近づける
クラブ・目標・球筋を毎球決め直し、ルーティンから打つ。コースで1球ずつ打つ状況に近い形です。
1球ごとの間をどれだけ空けるかについては、結論が出ていません。タイミングを合わせる実験では、ゴルフのように1回で完結する動きでは、間を空けずに続けたほうが習得と保持がよかったという報告もあります(Lee と Genovese、1989)。ですから、間を空ける理由は「上達のため」と言い切るより、1球ごとに狙いを決め直すこと、疲れや痛みに気づく時間をつくることにあると考えるのが妥当です。なお、ゴルフの精神的な疲労を扱った10研究の系統的レビューでは、疲労がスコアやショットの精度、特にパットに影響するとまとめられています(Pan ら、2025)。
1回の練習は、球数ではなくどう区切ればよいか
1回の練習を「準備・ブロック・変化・やめる合図・翌日の確認」の5つで区切るのがおすすめです。球数は結果として決まるものにし、数字は記録して「急に増やしていないか」を見るために使います。
準備(10分以上)
いきなりドライバーから打たない。10分以上のウォームアップをする人でケガが少なかった報告があります(Gosheger ら、2003)。別の研究では関連が出ておらず(McHardy ら、2007/Robinson ら、2024)、効果の大きさは分かっていません。手順はラウンド前のウォームアップ15分で。
ブロック(短く)
その日に確かめたい1点を決め、同じクラブで打つ。何球打つかより、確かめられたら次へ進む。
変化(練習の中心)
クラブと目標を変えながら、1球ずつルーティンから打つ。1球の価値が上がり、同じ時間でも球数は自然に減ります。
やめる合図を先に決める
痛みが出た、同じミスが続いて力みが増えた、狙いを決めずに打ち始めた——どれか1つが出たら、その日のフルスイングは終わりにする。
翌日に確かめる
翌朝、筋肉痛の場所と、深呼吸・寝返り・物を握る動作で痛む場所がないかを確かめ、球数と一緒に記録する。
記録には、日付・球数・主に使ったクラブ・翌日の痛みの有無を残してください。ゴルフで「何割まで増やしてよい」という数字は確かめられていませんが、オフ明け、コンペ前、レッスンを始めた直後など量が増える時期ほど、記録があると判断しやすくなります。
痛みがあるのに球数を減らして打ち続けたり、痛む側をかばった打ち方で練習を続けたりしないでください。肋骨の疲労骨折は、初めは筋肉痛や脇腹の張りと区別がつきにくいことがあります。深呼吸や咳、寝返りで同じ場所が痛む場合は打つのをやめ、下の「受診の目安」を確認してください。
現場で見えていること
当店のTPIフィジカルアセスメントでは、練習量そのものではなく、打ちすぎたときに負担が集まりやすい身体の制限を測ります。骨盤と体幹の回旋、股関節、片脚バランスを左右で実測し、痛みや張りが出やすい場所と照らし合わせて、どこに負担を集めているかの仮説を立てます。
練習の相談では、「何球打てばいいか」という質問をよく受けます。そのときは球数を答える代わりに、翌日にどこが張るか、張る場所が毎回同じか、左右どちらかに偏っていないかを聞くようにしています。同じ場所に毎回張りが出る方は、球数を減らすだけでは同じことをくり返しやすく、その場所に負担を集めている身体の制限から見直すほうが近道になることがあります。
【肋骨・脇腹】深呼吸・咳・くしゃみ・寝返りで同じ場所が痛む、肋骨の1点を押すと痛い、スイングのたびに脇腹や背中寄りが痛む、息苦しさがある(息苦しさや胸の圧迫感が強い場合は救急を含めて早めに受診)。
【手首】手のひら側の小指寄りや親指の付け根の奥を押すと痛い、握る力が入らない、腫れや内出血がある、インパクトで鋭く痛む。
【肘・前腕】肘の内側・外側の痛みが練習をやめても数日以上続く、物を持つ・ドアノブを回すだけで痛む、小指側のしびれがある。
【腰】足へ広がる痛みやしびれ、足に力が入らない、夜間や安静時にも痛む、排尿・排便の異常(すぐに受診)。
いずれも、痛みがある状態でのスイングや練習の継続はおすすめしません。
よくある質問
ゴルフの練習は1日何球までがいいですか?
公的な基準や研究で確かめられた上限は見当たりません。アマチュアの練習場の球数は、週に中央値100球とする調査と、平均195球とする別の調査がありますが、ケガとの関係を示したものではありません。球数を決めるより、準備・ブロック・変化・やめる合図で区切り、球数は記録して急に増やさないことをおすすめします。
打ちっぱなしで300球打つのは打ちすぎですか?
300球だから危ない、という研究上の線引きはありません。ただ、普段より大きく増やした日なら注意が必要です。肋骨の疲労骨折の報告では、初心者や練習時間を大きく増やした人が中心でした。翌日に脇腹・手首・肘・腰に痛みが出ていないかを確かめてください。
同じクラブで何球も打つ練習は意味がないですか?
意味はありますが、中心に置かないほうがよいとされます。運動学習の研究では、同じ打ち方を続ける練習は練習中の出来はよく見えても、日を置いたテストでは変えながら打った人のほうがよい結果が多く報告されています。1点を確かめるブロックは短くし、クラブや目標を変える練習につなげてください。
練習の翌日に脇腹が痛いのは筋肉痛ですか?
筋肉痛のこともありますが、自分では区別できません。深呼吸・咳・寝返りで同じ場所が痛む、肋骨の1点を押すと痛い場合は、肋骨の疲労骨折のこともあるため、打つのをやめて整形外科を受診してください。
ケガを防ぐために練習前のウォームアップは必要ですか?
おすすめします。10分以上のウォームアップをする人でケガが少なかったという報告がある一方、関連が見られなかった研究もあり、どれだけ防げるかは分かっていません。いきなりドライバーのフルスイングから始めないことが、最初の区切りになります。
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主な参考(タップで開く)
- Gosheger G, Liem D, Ludwig K, Greshake O, Winkelmann W. Injuries and overuse syndromes in golf. Am J Sports Med. 2003;31(3):438-443.(ゴルファー703名、ケガ・障害637件)
- McHardy A, Pollard H, Luo K. One-year follow-up study on golf injuries in Australian amateur golfers. Am J Sports Med. 2007;35(8):1354-1360.(アマチュア588名・1年追跡)
- Robinson PG, Clarsen B, Murray A, et al. A prospective study of injuries and illnesses among 910 amateur golfers during one season. BMJ Open Sport Exerc Med. 2024;10(3):e001844.(アマチュア910名・5か月追跡)
- Murray A, Junge A, Robinson PG, et al. Cross-sectional study of characteristics and prevalence of musculoskeletal complaints in 1170 male golfers. BMJ Open Sport Exerc Med. 2023;9(1):e001504.(男性ゴルファー1,170名)
- Minghelli B, Soares ASP, Cabrita CD, Martins CC. Epidemiology of musculoskeletal injuries in golf athletes: a championship in Portugal. Int J Environ Res Public Health. 2024;21(5):542.(競技会の選手140名)
- Lord MJ, Ha KI, Song KS. Stress fractures of the ribs in golfers. Am J Sports Med. 1996;24(1):118-122.(肋骨疲労骨折のゴルファー19名)
- Lee AD. Golf-related stress fractures: a structured review of the literature. J Can Chiropr Assoc. 2009;53(4):290-299.(13論文・44例)
- Gabbett TJ. The training-injury prevention paradox: should athletes be training smarter and harder? Br J Sports Med. 2016;50(5):273-280.(チームスポーツの研究の総説)
- Brady F. Contextual interference: a meta-analytic study. Percept Mot Skills. 2004;99(1):116-126.(61研究・139の効果量)
- Porter JM, Magill RA. Systematically increasing contextual interference is beneficial for learning sport skills. J Sports Sci. 2010;28(12):1277-1285.(初心者を対象にした2実験。人数は抄録に記載なし)
- Mousavi SH, Saberi Kakhki A, Fazeli D, et al. Effects of contextual interference and differential learning on performance and mental representations in a golf putting task. Eur J Sport Sci. 2024;24(3):289-301.(初心者の女性40名)
- Lee TD, Genovese ED. Distribution of practice in motor skill acquisition: different effects for discrete and continuous tasks. Res Q Exerc Sport. 1989;60(1):59-65.(タイミング課題の実験。人数は抄録に記載なし)
- Pan X, Soh KG, Jaafar WMW, et al. Mental fatigue in golf: a systematic review. PLoS One. 2025;20(2):e0310403.(10研究の系統的レビュー)


