どこが足りないかで、やることは変わります。全身をまんべんなく伸ばす前に、関節ごとに左右を確かめ、足りない場所を1つに絞ってから手を打つのが近道です。
この記事は、六本木の完全個室パーソナルジム Disport World で、TPI認定(Fitness 2/Golf 2/Junior 2/Power 2)と日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)の岡本隼人が、ゴルファーの身体を実際に測ってきた経験から書いています。扱うのはスイングの技術ではなく、身体の側の原因です。ゴルフのパーソナルトレーニング(六本木・TPI測定)→
・右打ちのトップでは、胸椎は右回旋、右股関節は内旋、左股関節は外旋、右肩は外旋、左肩は胸の前で腕を横切る動き(水平内転)をしている
・TPIの記事は、浅いバックスイングのよくある原因に、胸椎の回旋不足、右股関節の内旋不足、左股関節の外旋不足を挙げている
・回りきらない身体は、上体を目標側へ傾ける、骨盤を横へ流す、腕だけを上げるといった動きで埋め合わせることがある
・研究で飛ばす力と結びついていたのは、トップの深さそのものより、胸と骨盤の回転の差だった(Myers ら、2008。100名)
・自分でできる確認は、座位体幹回旋、座位の股関節内旋、90/90の3つ。肩や腰に痛みがあれば先に受診する
バックスイングが浅いのは、身体のどこが足りないことが多いのか?
候補は大きく3つ、背中(胸椎)の回旋、右打ちなら右股関節の内旋と左股関節の外旋、そして右肩の外旋です。どれか1つでも足りないと、トップの手前で回転が止まり、浅く見えます。
TPI(Titleist Performance Institute)の記事でPaul Gozbekianは、バックスイングが制限されるよくある原因として、リード側(右打ちの左)股関節の外旋の不足、トレイル側(右)股関節の内旋の不足、胸椎の回旋の不足を挙げています。右打ちのバックスイングには、胸椎の右回旋が45〜50度要るとも書いています。TPIの別の記事は、胸椎や肩の動きが足りないと手の通り道が大きく短くなるとしています。
「体が硬いから」とひとまとめにされがちですが、問題になるのは全身の柔らかさではなく、回転に必要な関節のどれかです。全身のどこを柔らかくすべきかは体が硬い・回らない人が柔らかくすべき3か所にまとめているので、この記事では「トップが浅い」という1つの困りごとから、原因を絞る順番を扱います。左右は右打ちで書いています。左打ちの方は入れ替えて読んでください。
トップまでに、どの関節がどちら向きに動いているのか?
右打ちのバックスイングでは、骨盤と胸が右へ回り、右肩は腕を横に上げて後ろへひねる形、左肩は腕が胸の前を横切る形になります。関節ごとの向きを表にしました。
| 部位(右打ち) | トップでの動き | 足りないと出やすいこと | 確かめる方法 |
|---|---|---|---|
| 胸椎(背中) | 右回旋(TPIの記事の目安は45〜50度) | 肩が回らず腕だけが上がる。上体が目標側へ傾く | 座位体幹回旋テスト(TPIの基準は45度) |
| 右股関節(トレイル側) | 内旋(骨盤が右脚の上で右へ回る) | 骨盤が回る代わりに右へ流れる。腰で回そうとする | 座位の股関節内旋、下半身回旋テスト |
| 左股関節(リード側) | 外旋 | 骨盤の回転が途中で止まる | 下半身回旋テスト |
| 右肩(トレイル側) | 外旋(腕を横に上げ、手を後ろへ倒す向き) | 右ひじが体から離れて上がる。トップの位置が低い | 90/90テスト |
| 左肩(リード側) | 水平内転(腕が胸の前を横切る) | 左腕が胸に沿わず、腕の振り幅が小さい | 腕を胸の前で横切らせたときの左右差(目安) |
| 首 | 胸に対して左回旋(顔をボールに残す) | 顔が胸と一緒に右へ回る。胸の回転が浅くなる | 頸椎回旋テスト |
右股関節の「内旋」は、脚を動かすのではなく、右脚の上で骨盤が右へ回ることで起きる内旋です。左股関節は反対に外旋の方向へ動きます。股関節全体の使い方はゴルフの股関節の使い方、背中の回し方はゴルフの胸椎の回し方で詳しく扱っています。首の向きはヘッドアップの記事にあります。
回りきらない身体は、スイングでどう埋め合わせるのか?
足りない回転は、別の関節や別の方向の動きで埋め合わせられます。見た目のトップの形は似ていても、埋め合わせ方によって疑う場所が変わります。代表的な4つを、起きやすい順ではなく、身体の下から順に並べます。
骨盤が右へ流れる
右股関節の内旋が足りないと、骨盤がその場で回る代わりに、目標と反対側へ横に動くことがあります。TPIのリバーススパインアングルの説明でも、股関節の制限が横への流れを生むことに触れています。流れる動きそのものはスウェー・スライドの直し方で。
上体が目標側へ傾く
TPIはリバーススパインアングルを、バックスイングで上体が後ろへ反りすぎる、または右打ちで左へ傾きすぎる動きとしています。主な身体の原因に右股関節の内旋の不足と胸椎の回旋の不足を挙げ、足りない回転を腰で補うと腰に負担がかかるとしています。
骨盤だけが大きく回る
胸椎が回らない分を骨盤の回転で補うと、胸と骨盤の回転の差が小さくなります。ゴルファー15名の3D計測では、ハンデの多いグループはトップで骨盤(腰)の回転が大きく、胸と骨盤の差の最大値が小さい傾向がありました(Cole と Grimshaw、2009)。
腕だけが上がる・右ひじが離れる
胸が回らないまま腕を上げてトップを作ると、肩が無理な位置で止まります。TPIは、胸椎の制限は肩甲骨の安定の低下と重なりやすく、それが右肩の外旋を制限して右ひじが離れる(フライングエルボー)原因になりうるとしています。ただしTPIは、フライングエルボー自体が欠点とは限らないとも書いています。
ここで大事なのは、どれも「結果」として出ている動きだということです。上体の傾きを意識で止めても、足りない回転が残っていれば、別の埋め合わせが出てきます。スイングに出る特性の全体像はスイングエラー14種の完全ガイドで。
座位体幹回旋(基準45度)、下半身回旋(基準60度)、90/90、骨盤回旋を含む16項目を実測します。左右に分かれる項目は両側とも測り、回転を止めている場所と、出ている埋め合わせの動きを、数値とともに評価レポートPDFにしてお渡しします。
TPIフィジカルアセスメントの詳細を見る胸椎・股関節・肩のどれが原因か、自分で見当をつけるには?
胸椎は座位体幹回旋、右股関節は座ったままの内旋、右肩は90/90で、左右を比べます。どれも診断ではなく、測る場所の見当をつけるための確認です。痛みが出たら、その時点で止めてください。
座位体幹回旋(胸椎・左右)
膝と足をそろえて椅子に座り、背筋を伸ばします。クラブを肩に担いで腕をWの形にし、骨盤を動かさずに胸だけを右と左へ回します。TPIの基準は左右とも45度を超えることです。右へ回りにくければ、胸椎がトップを止めている候補です。
座位の股関節内旋(左右)
椅子に座り、膝を90度に曲げたまま、膝の位置を動かさずに足先を外側へ開きます。これが股関節の内旋です。右の足先がほとんど開かない、左右の差がはっきりある場合は、右股関節の内旋が足りない候補です。股関節の前に鋭い詰まりが出る手前で止めてください。
90/90(右肩・立位と構え)
まっすぐ立ち、右腕を横に90度上げ、ひじも90度に曲げます。そこから手を後ろへ倒すように肩を外へひねり、どこまで回るかを見ます。次に構えの前傾で同じ動きを行い、立ったときより回らないかを比べます。TPIは、構えで回りにくくなる人の多くは肩甲骨の安定が足りないとしています。左腕でも行い、左右を比べます。
①で右へ回らなければ胸椎、②で右の内旋が小さければ右股関節、③で右肩が構えの中だけ回らなければ肩甲骨の安定、という見当がつきます。2つ以上が重なることもあります。左股関節の外旋も含めたTPIでの見方は下半身回旋テストの見方と運動に。
どの確認も反動をつけず、ゆっくり行ってください。肩の前や奥に痛み、腕のしびれが出る、背中や腰に鋭い痛みが出る、股関節の奥が詰まる場合は、その場で中止し、下の「受診の目安」を先に確認してください。角度を稼ぐために腰を反らす、骨盤ごと回す、手で押し込むといった方法は避けてください。
トップは深ければ深いほどよいのか?
深さそのものより、胸と骨盤が回る量の差(いわゆるXファクター)と、その差をダウンスイングで使えるかのほうが大事だと考えられます。骨盤まで大きく回して作った深いトップは、見た目ほど役に立たないことがあります。
アマチュアのゴルファー100名を3Dで測った研究では、ボールの初速が速い人ほど、トップからダウンスイングの始まりにかけての胸と骨盤の回転の差が大きく、ダウンスイングで胸も速く回る傾向がありました。一方、トップで胸が回った量そのものは、初速とはっきりした関係がありませんでした(Myers ら、2008)。差と初速の結びつきは相関で、差を大きくすれば初速が上がると確かめたものではありません。先の Cole と Grimshaw の15名の研究では、ハンデの多いグループは骨盤が多く回り、胸と骨盤の差の最大値が小さい傾向がありました。
また、ゴルファー257名をハンデで3つに分けた研究では、ハンデ0以下のグループは10〜20のグループより、体幹・肩・股関節の柔軟性と筋力、目を開けた片脚立ちの成績が上回っていました(Sell ら、2007)。柔らかさだけでなく、回る範囲を支える筋力と安定も、うまさと一緒に見つかっていたということです。トップを深くする目標は「胸が回る余裕を作り、骨盤は右脚の上で支える」と置き換えると、やることがはっきりします。
浅いトップを変えるには、何から手をつけるのか?
順番は、測る、足りない1か所の可動域を作る、その範囲を構えの中で支える、スイングで使う、の4段階です。いきなりトップの形を真似しても、足りない回転は別の埋め合わせで出てきます。
胸椎が足りないなら、背中を丸めた姿勢では回りにくいので、構えの猫背も一緒に見ます(猫背・反り腰の構え)。右股関節の内旋が足りないなら、右脚の上で骨盤を回す動きを、片脚で支えながら練習します。右肩が構えの中だけ回らないなら、肩そのものより肩甲骨を安定させる運動が先になります。
可動域が出たら、ハーフスイングの素振りで、骨盤が流れず胸が回るかを確かめます。変化は同じやり方で測り直して確かめてください。感覚では「深くなった」と思っても、骨盤が多く回っただけということがあるからです。項目ごとの運動はTPI 16項目の全解説にもまとめています。
現場で見えていること
私たちのTPIフィジカルアセスメントでは、「トップが浅い」というご相談でも、1つの項目だけで原因を決めません。座位体幹回旋、下半身回旋、90/90、骨盤回旋などを左右で測り、回りにくい側と、スイングに出ている埋め合わせの動きが重なっているかを確かめます。その見立てを、ゴルフのお悩みと照らしてお話しします。
「肩が回らない」と感じている方でも、測ると肩は動いていて、止めているのは胸椎や右股関節のほうだった、ということがあります。反対に、股関節は十分に回るのに、背中が回らず骨盤を大きく回して深さを作っている方もいます。感覚と測定は食い違うことがあるので、ストレッチを選ぶ前に左右を測ることをすすめています。
よくある質問
バックスイングが浅くなる身体の原因は何ですか?
右打ちなら、胸椎の右回旋、右股関節の内旋、左股関節の外旋、右肩の外旋のどれかが足りないことが多いです。TPIの記事も、胸椎と両股関節の回旋の不足をよくある原因に挙げています。左右を測って、どこが止めているかを絞ってください。
トップを深くすれば飛距離は伸びますか?
深さそのものより、胸と骨盤の回転の差のほうが関係していると考えられます。アマチュア100名の研究では、その差が大きい人ほどボールの初速が速い傾向があり、トップで胸が回った量そのものは初速とはっきりした関係がありませんでした。ただし相関で、差を大きくすれば伸びると確かめたものではありません。
ストレッチだけでトップは深くなりますか?
足りない場所に合っていれば役に立ちますが、それだけでは足りないことがあります。ハンデの少ないゴルファーは柔軟性に加えて筋力と片脚の安定も上回っていました。可動域を作ったら、その範囲を構えの中で支える練習まで進めてください。
トップで右ひじが離れる(フライングエルボー)のは直すべきですか?
TPIは、フライングエルボーそのものが欠点とは限らないとしています。気にすべきなのは、右肩の外旋や胸椎の回旋が足りず、そうするしかない場合です。90/90と座位体幹回旋で、身体の側に理由があるかを確かめてください。
肩や腰が痛くてトップまで上がらないときは?
痛みで上がらない場合は、可動域の問題ではなく痛みの問題として扱います。ストレッチや確認は行わず、先に整形外科を受診し、練習を再開してよい範囲を確かめてください。
TPI測定のご案内
トップが浅いのは、胸椎か、股関節か、肩か。形を真似する前に、一度左右を測って切り分けてください。TPIフィジカルアセスメントでは、座位体幹回旋や下半身回旋、90/90を含む16項目を実測し、どの制限がどのスイング特性と結びつきやすいかを評価レポートとプログラムのPDFにまとめます。まず動いて確かめたい方は、体験トレーニングからでも構いません。
TPI Physical Assessment
トップを止めているのはどこか
左右を測って絞る90分
ゴルファーのフィジカルトレーニング(ゴルフフィットネス)は、体を測ることから始めます。TPIの16項目を実測し、胸椎・股関節・肩のどの制限がどのスイング特性と結びつきやすいかを評価レポート+プログラムPDFにまとめてお渡しします。単発で完結し、入会は不要です(6週後の再評価は任意で、会員の方は追加料金なし、会員以外の方は¥19,800・税込)。
まず動いて確かめたい方は、体験トレーニング(90分・¥15,000/毎月先着3名さま¥7,500)もお選びいただけます(先着枠は毎月1日起算、定員後は通常¥15,000)。
ウェア・タオル無料 | 完全個室 | 六本木駅徒歩4分
主な参考(タップで開く)
- Myers J, Lephart S, Tsai YS, Sell T, Smoliga J, Jolly J. The role of upper torso and pelvis rotation in driving performance during the golf swing. J Sports Sci. 2008;26(2):181-188.(アマチュアゴルファー100名・3D計測)doi:10.1080/02640410701373543
- Cole MH, Grimshaw PN. The X-Factor and its relationship to golfing performance. J Quant Anal Sports. 2009;5(1).(男性ゴルファー15名・ハンデ0〜10の7名と11〜20の8名・ドライバー20球の3D計測)doi:10.2202/1559-0410.1134
- Sell TC, Tsai YS, Smoliga JM, Myers JB, Lephart SM. Strength, flexibility, and balance characteristics of highly proficient golfers. J Strength Cond Res. 2007;21(4):1166-1171.(健康な男性ゴルファー257名・ハンデで3群)doi:10.1519/R-21826.1
- Gozbekian P. Why Neck Mobility May Be Limiting Your Backswing. Titleist Performance Institute(mytpi.com、掲載日の記載なし、2026年10月閲覧)。
- Titleist Performance Institute. The 90/90 Test/The Seated Trunk Rotation Test/Reverse Spine Angle/Flying Elbow(mytpi.com、2026年10月閲覧)。
- Titleist Performance Institute. When Mobility Disappears: An Elite Amateur's Assessment Highlights How Restrictions Affect Performance(mytpi.com、掲載日の記載なし、2026年10月閲覧)。


