成長期の骨の端には、まだ骨になりきっていない成長軟骨があります。ここを傷めると心配だ、というのが「身長が止まる」説のもとです。研究と専門団体の声明が何と言っているか、ケガは何から起きているのか、何歳から何を始めればよいかを、順に整理します。
この記事は、六本木の完全個室パーソナルジム Disport World で、日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)の岡本隼人が、成長期の子どもの身体を実際に測ってきた経験から書いています。ジュニアの身体評価(小学生・中学生)→
・思春期前〜思春期はじめの子どもの筋力トレーニングの研究22件を見直したレビューでは、身長と体重の伸びに影響は見られなかった(Malina、2006)
・米国小児科学会は、よく設計されたプログラムで成長への悪い影響は示されていない、としている
・13歳ごろまでの子どもの筋トレのケガの多くは、重りを落とすなどの事故。指導と見守りで防げる可能性がある(年齢が上がると、捻挫や肉離れが増える)
・始めるなら、自分の体重で動きを覚えるところから。重さは、フォームが崩れない範囲で少しずつ
・関節の痛みが続く、身長の伸び方が急に変わったときは、筋トレの前に受診する
子どもが筋トレをすると、身長は止まるのか?
指導のもとで、年齢に合ったやり方で行う筋力トレーニングが、身長の伸びを止めるという根拠は確認できていません。研究を見直したレビューでも、小児科の専門団体の見解でも、成長への悪い影響は示されていない、という結論です。
ここでいう筋力トレーニングは、自分の体重、ゴムバンド、ダンベルやバーベルなどで筋肉に負荷をかける運動の全体を指します。重いバーベルを持ち上げる競技(重量挙げやパワーリフティング)だけのことではありません。腕立て伏せやスクワット、懸垂も、筋力トレーニングの一部です。
一方で、「何をしても大丈夫」という意味ではありません。研究の多くは、大人が見守り、フォームを教えたうえでのプログラムです。ひとりで重い重りを扱う、痛みを我慢して続ける、といった条件での安全は、この結論には含まれていません。どこまで言えて、どこから先は言えないのかを、次の章から分けて見ていきます。
なぜ「筋トレで背が伸びなくなる」と言われてきたのか?
心配のもとは、成長期の骨にある成長軟骨(骨端線)です。骨が長く伸びるのはこの部分で、周りの骨や靭帯よりも弱いため、強い力がかかると傷むことがあります。「重いものを持つと成長軟骨がつぶれ、背が伸びなくなる」というイメージが広まりました。
成長軟骨は、腕や脚の長い骨の両端近くにあり、成長が終わると骨に置きかわって閉じます。ここを骨折などで大きく傷めると、その骨の伸び方に影響することがあるのは事実です。ただし、筋トレの場面(頭の上に挙げる種目やベンチプレスなど)で報告されている成長軟骨のケガは、悪いフォーム、限界に近い重さ、資格のある大人の見守りがないこと、が原因のものがほとんどです。専門家が指導した筋トレの研究では、成長軟骨のケガは報告されていません。筋力トレーニングそのものが成長軟骨を少しずつ傷め、身長を止めるという筋道は、研究では示されていません。
成長期の痛みが出やすい場所は、骨と腱がつながる部分にもあります。膝のお皿の下が痛むオスグッドや、投げすぎで起きる野球肘がその例です。これらは筋トレの重さより、走る・跳ぶ・投げるの繰り返しの量と関係が深いものです。詳しくはオスグッドでも運動していい?と小学生の野球肘を防ぐには?で書いています。
研究と専門団体は、どう結論づけているのか?
研究のレビューと、複数の専門団体の声明が、同じ方向の結論を出しています。適切に設計し、指導者が見守るプログラムなら、子どもの筋力トレーニングは比較的安全で、成長を妨げるとは示されていない、というものです。主なものを表にしました。
| 資料 | 種類・対象 | 成長・安全について | 前提になっている条件 |
|---|---|---|---|
| Malina(2006) | 思春期前〜思春期はじめの子どもを対象にした、筋力トレーニングの実験の報告22件を見直したレビュー | 身長と体重の伸びに影響は見られなかった。けがを記録していた10件で、報告されたけがは3件 | 指導者1人あたりの人数が少ない、見守りのある練習。期間は8〜12週、週2〜3日が多い |
| 米国ストレングス&コンディショニング協会の声明(Faigenbaum ら、2009) | 専門家7名による立場表明 | 適切に設計し、見守りのある筋力トレーニングは比較的安全。運動の技能を高め、競技の力にもつながりうる | 適切な設計と、資格のある指導者の見守り |
| 国際合意声明(Lloyd ら、2014) | 英国の協会の声明をもとに、各国の小児科・スポーツ医学の団体が承認した合意 | 運動不足の子どもにも、競技をする子どもにも、健康面の価値がある | 資格のある専門家が設計すること |
| 米国小児科学会(臨床報告2020と、学会の解説ページ) | 小児科医の学会の見解 | よく設計されたプログラムで、成長への悪い影響は示されていない。骨を強くする助けにもなる | 正しいフォームと見守り。持病のある子は事前に医療者に相談 |
読み方の注意もあります。Malina のレビューに入った研究は、多くが数か月の短いプログラムでした。「大人になったときの最終的な身長」まで追いかけた研究ではありません。ですから、ここから言えるのは「指導のもとの筋力トレーニングで身長が止まるという根拠は見つかっていない」までで、「筋トレで背が伸びる」とも言えません。米国小児科学会の臨床報告は、2008年の方針を最新の研究で見直したもので、高血圧や発作の病気がうまく抑えられていない子、心臓の病気がある子、一部の抗がん剤(アントラサイクリン系)の治療を受けたことがある子などは、始める前に医療者に相談するよう勧めています。心臓や血管の病気の種類によっては、筋トレそのものを控えるよう勧めています。
姿勢、関節の可動域、筋力バランス、ジャンプとホップ、動作パターンを、左右を分けて測ります。野球をしている子は、投球動作と身体機能の照合も行います。担当は基本的に代表の岡本隼人(JSPO-AT)。結果はその場で保護者の方に口頭でご説明します。無理な勧誘はいたしません。
LINEで空き状況を確認する子どもの筋トレのケガは、何が原因で起きているのか?
記録に残っている子どもの筋トレのケガは、13歳ごろまでは、重りを足に落とす、器具を誤って使うといった事故が中心です。筋トレという運動そのものより、見守りのない環境、教わっていないフォーム、合わない重さが原因になっています。
米国の救急外来の記録(2002〜2005年)を年代別に比べた Myer らの研究(2009)では、8〜13歳の筋トレのケガの約77%が、重りを落とす、器具の使い方を誤るといった事故によるものでした。事故の割合は年齢が上がるほど下がり、14〜18歳では4割ほどで、捻挫や肉離れが増えます。著者らは、こうした事故は見守りを増やし、安全の決まりを厳しくすれば防げる可能性がある、と結論づけています。Faigenbaum と Myer のレビュー(2010)は、若い選手のケガの報告には事故に分類できるものが多く、指導の不足、悪いフォーム、合わない重さがその一部を説明する、としています。
つまり、気をつけることははっきりしています。大人が近くで見る、フォームを先に教える、重さを欲張らない、器具で遊ばない、の4つです。家にダンベルがあっても、子どもだけで扱わせないでください。また、痛みが出ているのに「鍛えれば痛みは消える」と続けるのは、筋トレでも競技でも避けてください。
何歳から、どんな筋トレを始めればいいのか?
決まった開始年齢はありません。大人の説明を聞いて、そのとおりに動けるようになれば始められます。最初は重りを使わず、自分の体重で正しい動きを覚えるところからです。重さを足すのは、フォームが安定してからです。
米国小児科学会の解説ページでは、自分の体重やゴムバンドを使う運動は筋力トレーニングのよい土台になり、週2回でも健康面の効果がある、としています。若い選手を対象にした Lesinski らのメタ分析(2016)でも、筋力トレーニングは6〜18歳の選手の運動の力を高めていました。年代別の野球の種目は野球に必要な筋トレ(年代別メニュー)に載せているので、ここでは進め方の順番だけを示します。
自分の体重で、動きの形を覚える
しゃがむ(スクワット)、片脚で立つ、押す(腕立て伏せ)、引く(ぶら下がり)、体幹を固める(プランク)など、基本の形をゆっくり練習します。回数より、1回目と最後の1回が同じ形でできるかを見ます。
ゴムバンドや軽い道具で、負荷に慣れる
形が安定したら、ゴムバンドや軽いダンベル、メディシンボールを使います。重さは、最後の1回までフォームが崩れない範囲にとどめます。
見守りのもとで、少しずつ重さを足す
指導者がフォームを確かめながら、少しずつ負荷を上げます。中学生の年代でバーベルを使う場合も、軽い重さでフォームを覚える期間を先にとります。
競技の練習量と合わせて、量を調整する
練習や試合が多い週、成長で身長が急に伸びている時期は、筋トレの量を減らす選択もあります。疲れや痛みの様子を見ながら決めます。
家で行うときも、大人が近くで見てください。重りを使う種目を子どもだけで行わせない、勢いや反動で回数を稼がない、息を止めて力まない、の3点を守ってください。関節に痛みが出たら、その時点でやめます。痛みがある状態で続けることはすすめません。持病がある、治療中のお子さんは、始める前に主治医に相談してください。
筋力と一緒に、関節がどこまで動くかも見ておくと、種目を選びやすくなります。部位ごとの柔軟性の測り方は体が硬い子どもは何から始める?で紹介しています。
身長の伸びが気になるときは、何を見ればいいのか?
見るのは、筋トレをしているかどうかではなく、身長の伸び方の記録です。学校の健康診断の身長を成長曲線に書き込み、線に沿って伸びているかを確かめます。曲線から大きく外れてきたときは、小児科に相談します。
文部科学省は2014年の通知で、学校の健康診断から座高の測定を外し、代わりに身長と体重の成長曲線を健康管理に使う方針を示しました。2016年度からの学校の健康診断のマニュアルにも、成長曲線の活用が入っています。成長曲線は、同じ年齢・性別の子どもの身長の分布を線で表したもので、1回の値より、伸び方の流れを見るための道具です。
身長がある時期から急に伸びなくなった、同じ学年の中で極端に低い・高い、伸び方が年ごとに大きく変わる、といった場合は、筋トレや運動の量のせいと決めつけず、まず小児科で相談してください。身長の伸びには、運動だけでなく、食事や睡眠、体質など多くのことが関わります。運動の側では、成長期に伸ばしたい力の全体像を小学生アスリートのトレーニングに、跳ぶ・走るの年齢別の目安をジュニアの体力測定にのせています。
現場で見えていること
私たちの90分の評価では、筋トレを始める前に、姿勢(前面・側面・背面)、関節の可動域と筋力バランス、ジャンプとホップ、動作パターンを、左右を分けて測ります。野球をしている子は、投球動作と身体機能の照合も行います。測る前には、痛む場所の有無、受診の状況、競技と練習の量を伺います。
「筋トレをさせてよいか」というご相談でも、まず見るのは重さに耐えられるかではなく、しゃがむ・片脚で立つ・跳んで着地する、といった基本の動きの形です。形が崩れている場合は、重りより先に動き方の練習をすることがあります。痛みがある場合は、先に医療機関の受診をおすすめします。
結果は、その場で保護者の方に口頭でご説明し、家で続けられる運動をお伝えします。何をどの順番で始めるかを、測った結果から決めていきます。
・膝、かかと、肘、肩、腰などに、運動のあとや翌朝の痛みが続く
・関節が腫れる、熱をもつ、動かすと鋭く痛む
・転んだり重りを落としたりしたあと、痛みや腫れが引かない(手足の形が変わって見える、動かせない・体重をかけられない、足を引きずるときは、様子を見ずにすぐ受診)
・手足にしびれが出る、力が入りにくい
・身長がある時期から急に伸びなくなった、成長曲線から大きく外れてきた
・高血圧、発作の病気、心臓の病気などの持病がある、治療中である
痛みがある状態で運動を続けることはすすめません。再開の時期と内容は主治医と相談してください。
よくある質問
子どもが筋トレをすると身長が止まるというのは本当ですか?
指導のもとで行う筋力トレーニングが身長を止めるという根拠は、確認できていません。研究22件を見直したレビューでは身長と体重の伸びに影響は見られず、米国小児科学会も成長への悪い影響は示されていないとしています。ただし、研究の多くは見守りのある短期間のプログラムです。
筋トレで成長軟骨(骨端線)が傷つくことはありますか?
成長軟骨は周りより弱く、強い力がかかると傷むことがあります。筋トレの場面で報告されている成長軟骨のケガは、悪いフォーム、限界に近い重さ、資格のある大人の見守りがないこと、が原因のものがほとんどで、専門家が指導した筋トレの研究では報告されていません。大人が見守り、フォームを先に教え、重さを欲張らないことで、防げる可能性があるケガです。
筋トレは何歳から始めていいですか?
決まった開始年齢はありません。大人の説明を聞いて、そのとおりに動けるようになれば始められます。最初は自分の体重で動きの形を覚え、重さはフォームが安定してから少しずつ足します。
小学生がダンベルやバーベルを使ってもいいですか?
指導者が見守り、フォームが崩れない重さであれば、使うこと自体は問題とされていません。ただし、子どもだけで扱わせるのは避けてください。自分の体重での動きが安定する前に、重さを足す必要はありません。
筋トレをすると背が伸びやすくなりますか?
そうとは言えません。今回確認した研究は「身長の伸びを妨げなかった」という結果で、「背が伸びた」という結果ではありません。身長の伸び方が気になるときは、学校の健康診断の記録を成長曲線で確かめ、小児科に相談してください。
まずは90分、身体を測ることから
筋トレをするか迷ったときに最初にすることは、重さを決めることではなく、今の身体で基本の動きがどこまでできるかを知ることです。しゃがむ、片脚で立つ、跳んで着地する、の形と左右差がわかれば、何から始めればよいかが決まります。料金と内容はジュニアプログラム、場所はアクセスをご覧ください。
Body Assessment
筋トレを始める前に、
成長期の「今の身体」を90分で測る
担当は基本的に代表の岡本隼人。日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)として、姿勢、関節の可動域と筋力バランス、ジャンプとホップ、動作パターンを左右別々に測ります。結果はその場で保護者の方に口頭でご説明します。体験後に入会を決めていただく必要はなく、無理な勧誘はいたしません。
先着などの条件はありません。
完全個室 | 六本木駅5番出口徒歩4分 | 初回は保護者の方の同席をお願いしています | ジュニアプログラムの詳細
主な参考(タップで開く)
- Malina RM. Weight training in youth-growth, maturation, and safety: an evidence-based review. Clin J Sport Med. 2006;16(6):478-487.(思春期前〜思春期はじめの子どもの実験的な筋力トレーニングの報告22件のレビュー)PubMed 17119361
- Faigenbaum AD, Kraemer WJ, Blimkie CJR, Jeffreys I, Micheli LJ, Nitka M, Rowland TW. Youth resistance training: updated position statement paper from the National Strength and Conditioning Association. J Strength Cond Res. 2009;23(5 Suppl):S60-S79.(立場表明)PubMed 19620931
- Lloyd RS, Faigenbaum AD, Stone MH, et al. Position statement on youth resistance training: the 2014 International Consensus. Br J Sports Med. 2014;48(7):498-505.(国際合意声明)doi:10.1136/bjsports-2013-092952
- Stricker PR, Faigenbaum AD, McCambridge TM; Council on Sports Medicine and Fitness. Resistance training for children and adolescents. Pediatrics. 2020;145(6):e20201011.(米国小児科学会 臨床報告)doi:10.1542/peds.2020-1011
- American Academy of Pediatrics. Resistance Training in Youth: Myth vs. Fact.(学会の解説ページ)
- Myer GD, Quatman CE, Khoury J, Wall EJ, Hewett TE. Youth versus adult "weightlifting" injuries presenting to United States emergency rooms: accidental versus nonaccidental injury mechanisms. J Strength Cond Res. 2009;23(7):2054-2060.(米国の救急外来の記録 2002〜2005年)PubMed 19855330
- Faigenbaum AD, Myer GD. Resistance training among young athletes: safety, efficacy and injury prevention effects. Br J Sports Med. 2010;44(1):56-63.(レビュー)PubMed 19945973
- Lesinski M, Prieske O, Granacher U. Effects and dose-response relationships of resistance training on physical performance in youth athletes: a systematic review and meta-analysis. Br J Sports Med. 2016;50(13):781-795.(6〜18歳の選手・対照群のある研究のメタ分析)
- 文部科学省 スポーツ・青少年局長通知「学校保健安全法施行規則の一部改正等について」(2014年4月。座高の削除と成長曲線の活用)。日本学校保健会『児童生徒等の健康診断マニュアル』(2016年度からの健康診断の改正を反映した版)。


