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Junior / Baseball

野球に必要な筋トレは何か
——小学生・中学生・高校生の年代別メニューと、ジムでやるときの注意

「野球が上手くなるには、どんな筋トレが必要?」「小学生に筋トレは早い?身長が止まらない?」「ジムでやるなら何をすればいい?」。結論から言うと、野球に必要な筋トレは、地面を押す下半身、回る力を受け止めて伝える体幹、肩甲骨まわりと肩の後ろ、全身を一気に使うパワーの4つです。

2026.09.30(更新) 読了 約23分

年代で変わるのは鍛える場所ではなく負荷のかけ方で、小学生は自分の体重とメディシンボール(投げて使う重さのあるボール)、中学生は身長の伸びに合わせて軽い負荷へ、高校生はフォームが安定し指導者が付くならバーベルへ進みます。米国のNSCA(全米ストレングス&コンディショニング協会)は、適切に設計・指導された筋トレは子どもにも比較的安全で、身長の伸びに悪影響を与えるという証拠はないとしています。年代別のメニューと回数の目安、ジムでのやり方、投球数と痛みのサイン、「クレアチンで身長は止まるか」まで、一次資料で確かめて整理しました。

この記事は、六本木の完全個室パーソナルジム Disport World で、日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)の岡本隼人が、世田谷区・船橋フェニックスで学年チームの監督を務めながら(2026年は6年生チームで全日本学童軟式野球大会 第3位)、成長期の選手の身体を実際に測ってきた経験から書いています。ジュニアの身体評価(小学生・中学生)→

この記事でお伝えすること

・野球に必要な筋トレは4つ:地面を押す下半身、回る力を受け止めて伝える体幹、肩甲骨まわりと肩の後ろ、全身を一気に使うパワー。重さより先に「片脚でしゃがむ・着地で止まる」ができるかを見る
・「筋トレで身長が止まる」証拠はない。NSCAは、適切に設計・指導された筋トレは比較的安全で、身長の伸びや発育への悪影響を示す証拠はないとする。成長軟骨のけがの報告の多くは、誤ったフォーム・最大重量への挑戦・大人の指導者がいない状況だった
・年代別:小学生は自分の体重とメディシンボールで動きを覚える/中学生は身長の急な伸びに合わせて自重中心から軽い負荷へ/高校生は指導者の下でバーベルも。頻度は週2〜3回・連続しない日から(NSCA)
・クレアチンで身長が止まることを示す研究は見当たらないが、10代の安全性の研究もまだ限られる。私たちは18歳未満にクレアチンなどのサプリメントをすすめず、食事と睡眠(小学生9〜12時間、中高生8〜10時間)を先に整える
・痛みがあるときは筋トレより受診が先。学童軟式の投球数は1日70球(4年生以下60球)、2026年から週210球(同180球)

野球に必要な筋トレは何か?——下半身・体幹・肩まわり・全身のパワーの4つ

結論から言うと、野球に必要なのは「腕を太くする筋トレ」ではなく、全身をつなげて使うための筋トレです。投球動作を運動の連鎖として整理した総説は、脚と体幹が力を生み出す主役で、肩甲骨がその力を手先へ受け渡す要になると説明しています(Seroyer ら、2010)。打つ動作も、地面を押した力を脚→股関節→体幹→腕へと受け渡す点は同じです。鍛える場所は、次の4つに分けると整理できます。

鍛える場所野球のどこで使うか代表的な種目最初に確かめること
①下半身(お尻・太もも・片脚の安定)軸足で地面を押す、踏み出した脚で止まる、一歩目のスタートスクワット、ランジ、ヒップヒンジ(お尻を後ろに引いて上体を倒す動き)、ジャンプ片脚でしゃがんで、膝が内側に入らずに立ち上がれるか
②体幹(お腹・背中・わき腹)下半身が生んだ回る力を受け止めて、上半身へ伝えるプランク、サイドプランク、デッドバグ、パロフプレス(横から引かれても体をひねらせない種目)腰を反らさずに姿勢を保てるか
③肩甲骨まわりと肩の後ろ力を腕へ受け渡す、投げたあとに腕を減速させるバンドプルアパート、YTW、ぶら下がり・懸垂、フェイスプル肩をすくめずに肩甲骨を寄せられるか
④全身のパワー下から上へ一気に力を伝えるメディシンボールの回旋投げ・後ろ投げ、ジャンプ投げたあと・着地したあとに姿勢が崩れないか

体のどこがバットスピードと関係するかを調べた研究もあります。大学野球選手78名(平均19.4歳)では、腕・脚・胴体の除脂肪量(脂肪以外の、筋肉を中心とした量)がバットスピードとr=0.49〜0.59、背筋力が0.40、握力が0.33前後、メディシンボールの後ろ投げが0.29の相関を示し、立ち幅跳びと30m走には有意な相関がありませんでした(Haruna ら、2023)。著者は、体格の指標との相関を「弱いが有意」と表現しています。相関なので、鍛えれば速くなると決まるわけではなく、対象も大学生です。それでも「上半身と下半身の筋力、全身を一気に使うパワーが関わる」という方向は、上の4つと重なります。スイングスピードの伸ばし方は野球のスイングスピードを上げる方法、年代別の平均はスイングスピード・打球速度の年代別平均にまとめています。

もう1つ大事なのは、筋トレの前に「その動きができる身体か」を見ることです。股関節や胸椎(背中)の回る範囲が足りない、片脚で立つとぐらつく状態で重さを乗せると、弱いところに負担が集まります。NSCAの指針も、左右対称に鍛えること、関節のまわりの筋肉のバランスをとることを求めています(Faigenbaum ら、2009)。

小学生・中学生に筋トレは早い?身長は止まる?——NSCAと日本学術会議の見解

結論として、「筋トレで身長が止まる」という心配に、科学的な裏付けはありません。問題になるのは筋トレそのものではなく、やり方です。米国のNSCAは、子どもの筋トレについてのポジションステートメント(立場の表明、2009年)で、次の点をはっきり述べています。

論点NSCAの見解(Faigenbaum ら、2009)
安全性適切に設計・指導された筋トレは、子どもにとって比較的安全
身長・発育筋トレが子どもの身長の伸びや、発育・成熟に悪影響を与えるという証拠はない。年齢に合った指針と栄養(十分なカルシウムなど)を守れば、成長期の骨密度を高めることにも役立ちうる
成長軟骨のけが1970〜80年代にいくつか報告があったが、多くは不適切なフォーム、最大重量への挑戦、大人の指導者がいない状況によるもの。事前に計画して追跡した研究では、成長軟骨のけがは報告されていない
始める年齢最低年齢の決まりはない。スポーツに参加する準備ができていれば(一般に7〜8歳)、何らかの筋トレを始める準備もできている。指導を聞いて従えることが前提
指導すべての回を、子どもの筋トレを理解した大人が指導・監督する
得られるもの筋力とパワー、運動スキル(スポーツの成績にもつながりうる)、スポーツでのけがへの抵抗力、心血管の健康にかかわる指標、心理面、運動習慣

日本でも、日本学術会議の健康・スポーツ科学分科会が2008年の提言で、思春期前であっても筋力トレーニング(レジスタンストレーニング)で筋力や筋量は増えること、特別な器具を使わなくても、自分の体重を負荷にした運動で発育に見合った筋量と筋力を得られることを述べています。同時に、安全に行うための指導・管理の体制が必要なこと、運動の強さ・時間・頻度には明確な結論が出ていないこと、大人向けの運動指針を子どもにそのまま当てはめることはできないことも指摘しています。国際的には2014年、英国ストレングス&コンディショニング協会の見解をもとに、スポーツ医学・運動科学・小児科の主要な団体の承認を得た国際合意声明も出ています(Lloyd ら、2014、BJSM)。

つまり、避けるべきは筋トレではなく、次のような状況です。重さや回数を友達と競う、最大重量に挑戦する、大人が見ていないところで器具を使う。この3つは、NSCAがけがの報告の背景として挙げている条件(重すぎる負荷、最大重量への挑戦、大人の指導者がいない状況)と重なります。痛みを抱えたまま続けることも避けてください。

年代別に何を優先するか——小学生・中学生・高校生の筋トレの考え方

結論として、学年で区切るより「その子の身体の成熟と、フォームの習熟」で段階を上げるのが基本です。同じ中学1年生でも、身長が急に伸びている子と、まだ伸びる前の子がいます。長い骨が急に伸びる時期は筋肉の長さが追いつかず、身体の構造や動きの調整、運動の成績が乱れうるため、学年(暦年齢)だけでなく成熟の段階を見てプログラムを組むことがすすめられています(Lloyd ら、2014、JSCR)。そのうえでの目安が次の表です。

年代優先すること中心になる種目避けること
小学生(6〜12歳)走る・跳ぶ・投げる・登るなど、いろいろな動きを覚える。自分の体重を正しく扱う。楽しく続ける自重(スクワット、ランジ、プランク、ぶら下がり)、軽いメディシンボール(1〜2kg)、バランスバーベルなどの重い負荷、最大重量への挑戦、投げ込み過多、痛みを我慢しての反復
中学生(12〜15歳)正しいフォーム、体幹の安定、身長の伸びに合わせた負荷の調整、柔軟性の維持自重が中心(スクワット、腕立て伏せ、補助付きの懸垂)、体幹(デッドバグ、バードドッグ)、メディシンボール(2〜3kg)。フォームが安定したら軽いダンベル指導者なしのバーベル、高重量、身長が急に伸びている時期の急な負荷の増加、痛みがある状態での練習
高校生(15〜18歳)筋力とパワーを伸ばし、野球の動きにつなげる。一人ひとりに合わせたプログラム指導者の下でバーベル(スクワット、デッドリフト、ベンチプレス、軽い重さからのハングクリーンなど)、パワー系(ジャンプ、メディシンボール投げ)、肩まわり筋肉を大きくすることだけを目的にする、チーム練習を削ってまで行う筋トレ、試合直前の高負荷

小学生で大事なのは、筋トレを「種目」としてこなすより、走る・跳ぶ・投げるの中で身体の使い方を覚えることです。跳ぶ・走るの練習の考え方は小学生の足が速くなる方法、小学生のトレーニング全体は小学生アスリートのトレーニング|何をやるか・なぜ今かにまとめています。中学生は、身長を数か月ごとに測って記録しておくと、急に伸びている時期に負荷を上げすぎないための目安になります。

野球の筋トレメニュー——体幹・下半身・肩まわり・メディシンボールの年代別の目安

結論として、メニューは「体幹・下半身・肩まわり・メディシンボール」の4つを、週2〜3回・連続しない日に行うのが出発点です。NSCAの指針は、5〜10分の動きのある準備運動から始め、軽い負荷で正しいフォームを優先し、筋力の種目は1〜3セット×6〜15回、パワーの種目は1〜3セット×3〜6回、負荷は筋力がついたら5〜10%ずつ上げる、としています(Faigenbaum ら、2009)。下の回数は私たちが使っている目安で、その日の動きの質で調整します。フォームが崩れたら、回数の途中でもその日は終わりにします。

体幹(全年代の土台)

メニュー小学生中学生高校生
プランク20〜30秒×2〜340〜60秒×360〜90秒×3
サイドプランク(左右)15〜20秒×230〜45秒×2〜345〜60秒×3
バードドッグ(四つばいで対角の手足を伸ばす・左右)5回×28〜10回×310〜12回×3
デッドバグ(仰向けで腰を浮かせずに対角の手足を伸ばす・左右)5回×28〜10回×310〜12回×3
パロフプレス(左右)—(ほかの種目を優先)8回×2〜310〜12回×3

下半身(地面を押す力の土台)

メニュー小学生中学生高校生
スクワット自重 10〜15回×2自重 15〜20回×3バーベル 6〜8回×2〜3(指導者の下で)
ランジ(左右)5回×28〜10回×3ダンベル 8〜10回×3
ヒップヒンジフォームの練習ルーマニアンデッドリフト(膝を軽く曲げたまま、お尻を後ろに引いて上体を倒す)自重〜軽負荷デッドリフト 6〜8回×2〜3(指導者の下で)
ジャンプ系スキップ・ケンケンジャンプスクワット 5回×3ボックスジャンプ 5回×3
ブリッジ(お尻上げ)10〜15回×215〜20回×3片脚ブリッジ 10回×3

肩甲骨まわりと肩の後ろ

メニュー小学生中学生高校生
腕立て伏せ膝つき 8〜10回×2通常 10〜15回×315〜20回×3
懸垂ぶら下がり 30秒補助付き 3〜5回×35〜10回×3
バンドプルアパート(胸の前でチューブを左右に引き離す)10回×215回×320回×3
YTW(腕をY・T・Wの形に上げて肩甲骨を寄せる)各10回各12〜15回軽いダンベルで各15回
フェイスプル(ロープやチューブを顔の高さに引く)—(不要)チューブ 12〜15回×3ケーブル 12〜15回×3

肩甲骨まわりと肩の後ろの種目は、投手・野手を問わず入れたい種目です。投球の運動連鎖の総説では、肩甲骨は下半身と体幹で生んだ力を手先へ受け渡す要とされ、ボールを離したあとの減速の局面は投球でもっとも激しい局面で、肩の回旋筋腱板(ローテーターカフ:肩の奥にある4つの小さな筋肉)が、腕を引き離す力に耐えるように強く働くと説明されています(Seroyer ら、2010)。種目の順番は、大きい筋肉・複数の関節を使う種目を先に、難しい種目は疲れる前に行います(NSCA)。

メディシンボール(全身をつなげる)

①

回旋投げ(横投げ)

壁に対して横向きに立ち、後ろ脚から前脚へ体重を移しながら、腰と体幹を回して壁に投げます。打つ側と反対側の両方向を同じ回数で。重さの目安は小学生1〜2kg、中学生2〜3kg、高校生3〜5kg。

②

後ろ投げ(オーバーヘッドの後方投げ)

後ろ向きに立ち、軽くしゃがんだ姿勢から全身を伸ばして、ボールを頭越しに後ろへ投げます。大学野球選手の研究でバットスピードとの相関が見られた種目です(Haruna ら、2023)。

③

スラム(たたきつけ)

頭上に持ち上げたボールを、お腹を締めながら床にたたきつけます。腰を反らせて持ち上げない。弾みすぎないボールを使います。

④

チェストパス

胸の前から両手でボールを押し出します。脚で床を押してから腕を伸ばす順番を覚える種目です。

Body Assessment
どのメニューから始めるかは、身体を測ってから決める

姿勢、関節の可動域と筋力のバランス、ジャンプとホップ、動作パターン、そして投球動作と身体機能の照合。担当は基本的に代表の岡本隼人(JSPO-AT)。結果はその場で保護者の方に直接ご説明します。無理な勧誘はいたしません。

LINEで空き状況を確認する
90分 ¥7,500(税込)・単発・六本木駅5番出口徒歩4分・完全個室・保護者の方の同席歓迎

野球の筋トレをジムでやるなら——器具の使い分けと、ジム選びで確かめること

結論として、ジムで大事なのは器具の種類より「誰が見ているか」と「どう段階を上げるか」です。NSCAがまとめた子どもの筋トレの研究では、大人用・子ども用のマシン、フリーウェイト、メディシンボール、ゴムチューブ、自分の体重のいずれを使っても効果が確認されていて、どれか1つが正解というわけではありません(Faigenbaum ら、2009)。そのうえで、年代ごとの使い分けの目安は次のとおりです。

年代ジムで使うもの(例)やり方の目安気をつけること
小学生自分の体重、メディシンボール(1〜2kg)、ゴムチューブ、ぶら下がれるバー動きを覚えることが目的。週2回・30〜45分から重さや回数を競わせない。子どもの筋トレを理解した大人が付く
中学生自重+軽いダンベル・ケトルベル、ケーブルやチューブ、メディシンボール(2〜3kg)始めは軽い負荷で1〜2セット×10〜15回(NSCA)。フォームが安定してからセット数と負荷を足す身長が急に伸びている時期は負荷を急に上げない。指導者なしでバーベルを使わない
高校生バーベル(スクワット・デッドリフトなど)、懸垂、ケーブルでの回旋、メディシンボール(3〜5kg)、ボックスジャンプ指導者の下で、負荷は5〜10%ずつ上げる。パワー系は3〜6回最大重量への挑戦を競わない。試合期は量を落とし、チーム練習の疲れと合わせて調整する

ジムを選ぶときは、次の5つを確かめてください。①子どもの筋トレを理解した指導者が毎回付くか(NSCAはすべての回に大人の指導・監督を求めています)、②最初に身体の状態(可動域・片脚の安定・左右差)を測るか、③チームの練習量と投球数を聞いたうえでメニューを組むか、④痛みがあるときは筋トレより受診をすすめるか、⑤保護者が見学・同席できるか。筋トレはチーム練習に上乗せされる負荷です。NSCAも、遊びや競技を含めた運動の合計量を考えるよう注意しています。

Disport Worldでは、初回に90分の身体評価(Body Assessment)を単発で受けていただけます。担当は基本的に代表の岡本隼人で、完全個室なので保護者の方に同席いただけます。結果はその場で保護者の方に口頭でご説明し、継続するかどうかは評価のあとで決めていただけます。ジュニアプログラムの対象は小学1年生〜中学3年生です(ジュニアアスリートプログラム)。高校生の方は、LINEでご相談ください。

投げ過ぎと筋トレの関係は?——投球数の目安と、身体の準備を両方見る

結論として、肘や肩を守るには「投げる量の管理」と「投げる身体の準備」の両方が必要で、筋トレは後者を担います。全日本野球協会・日本整形外科学会などが小学生の539チーム・10,228人(選手の調査票は保護者の記入を含む)を調べた少年野球の実態調査(2015年公表)では、肩・肘の痛みを経験したのは投手で49.3%、捕手で39.9%、投手と捕手の兼任で56.4%、それ以外の野手で26.1%でした。日本臨床スポーツ医学会の提言も、野球肘の発生は11〜12歳、野球肩は15〜16歳がピークで、投手と捕手に圧倒的に多いとしています。

区分1日1週間出典
学童軟式(小学生)の規程70球以内(4年生以下は60球以内)210球以内(4年生以下は180球以内)。2026年シーズンから全日本軟式野球連盟
小学生(全力投球)50球以内200球以内(試合を含む)日本臨床スポーツ医学会の提言
中学生(全力投球)70球以内350球以内同上
高校生(全力投球)100球以内500球以内同上

同じ提言は、1日2試合の登板は禁止すべきとし、練習は小学生で週3日以内・1日2時間以内、中学生・高校生は週1日以上の休養日をとること、シーズンオフを設けて野球以外のスポーツを楽しむ機会をつくることもすすめています。硬式のチームは団体ごとに規程が違うので、所属する連盟の決まりを確認してください。

では、筋トレは何を担うのか。NSCAは、適切に設計・指導された筋トレが、スポーツでのけがへの抵抗力を高めうるとしています(Faigenbaum ら、2009)。投球の総説も、脚と体幹が力の主な発生源で、肩甲骨の働きが悪いと手先へ力をうまく受け渡せないと説明しています(Seroyer ら、2010)。下半身と体幹で力を作れず、受け止められないと、腕だけで投げる形になりやすい、というのが現場での考え方です。ただし、筋トレで投げ過ぎの負担を打ち消せるわけではありません。球数の上限以内でも、痛みがあれば投げない。これが先です。

成長期に注意したい痛みは?——野球肘・野球肩・腰椎分離症・オスグッド病・シーバー病

結論として、成長期の痛みは「筋肉痛だろう」で済ませず、場所で見分けて早めに受診につなげることが大切です。骨の端には成長軟骨があり、NSCAも、成長軟骨は周りの組織より弱く、繰り返しの小さな負担で傷みやすいとしています。野球の選手が知っておきたいものを、学会・論文で確認できた範囲でまとめます。

部位名前確認できた特徴家で気づけるサイン
肘野球肘繰り返し投げることで肘への負担が過剰になり、外側では骨・軟骨が、内側では靱帯・腱・軟骨が傷む(日本整形外科学会)。発生のピークは11〜12歳(日本臨床スポーツ医学会)投げたあとに肘を気にする、肘の伸び・曲がりが悪い
肩野球肩発生のピークは15〜16歳。肩の痛みと投球フォームの変化に注意(日本臨床スポーツ医学会)肩を痛がる、投げ方が前と変わった
腰腰椎分離症10代に起こる。多くは体が柔らかい中学生頃に、腰をそらす・回す動作の繰り返しで、腰椎の後ろの部分に亀裂が入る(日本整形外科学会)腰の痛みを訴える、スイングや送球のあとに腰を押さえる
膝の下オスグッド病小学校高学年〜中学の発育期に、お皿の下の骨(脛骨粗面)が出てきて痛む。跳ぶ・蹴る動作の繰り返しで起こり、休むと痛みが引き、運動を始めると再発する(日本スポーツ整形外科学会)膝の下を触っている、運動を始めると膝の下を痛がる
かかとシーバー病(踵骨骨端症)子どものかかとの痛みのよくある原因(Wiegerinck ら、2014)かかとを痛がる、練習後に脚を引きずる

子どもは「痛い」と言わないことがあります。痛む場所を触っている、かばって動く、投げ方や走り方が変わった、は保護者の方が気づけるサインです。当てはまるときは、筋トレもチーム練習もいったん止めて、整形外科を受診してください。腰の痛みは子どもの腰椎分離症、ほかの競技も含めた部位ごとの痛みは成長期のスポーツ別けが一覧にまとめています。

※本記事の内容は運動の一般的な目安であり、医学的診断ではありません。次のような場合は、筋トレや投球をやめて、整形外科(できればスポーツ整形外科)を速やかに受診してください:関節が腫れている・熱をもっている、肘や膝が伸びきらない・曲がりきらない、安静にしていても痛い、夜に痛みで目が覚める、しびれや力の入りにくさがある、関節が急に動かなくなる・引っかかる、見た目に変形がある、同じ場所の痛みが続く・くり返す。Disport Worldでは診断や治療は行わず、必要と判断したときは受診をおすすめしています。

12週間の組み立て例——基礎期→発展期→出力期(中学生以上のオフシーズン)

結論として、オフシーズンは「フォームを固める→量と負荷を少しずつ増やす→パワーに変えて野球の動きにつなげる」の順で進めます。頻度はNSCAの指針どおり週2〜3回・連続しない日から始め、チーム練習の量に合わせて調整します。小学生は、基礎期の内容を遊びや練習の中で続けることを優先します。

①

1〜4週 基礎期:フォームを覚える

自重を中心に、プランク、スクワット、ランジ、ヒップヒンジ、腕立て伏せを正しい形で行います。1〜2セット×10〜15回、週2回。毎回5〜10分の動きのある準備運動から始めます。

②

5〜8週 発展期:量と負荷を少しずつ

フォームが崩れなければセット数を増やし、中学生はメディシンボール(2〜3kg)と軽いダンベル、高校生は指導者の下でバーベルを軽い重さから加えます。負荷は5〜10%ずつ、週2〜3回・連続しない日に。

③

9〜12週 出力期:パワーに変えて野球につなげる

筋力の種目の回数を減らし、ジャンプとメディシンボール投げ(3〜6回×1〜3セット)を増やします。シーズンが近づいたら全体の量を落とし、チーム練習の疲れを残さないようにします。

④

12週後:同じやり方で測り直す

片脚でしゃがめるか、着地で止まれるか、左右の差はどうかを、始める前と同じやり方で確かめます。家庭でも、回数と痛みの有無をノートに書いておくと、変化と負担の両方が見えます。

「12週間で何kg・何km/h伸びる」という数字は、年齢・成長の段階・練習量で大きく変わるため、ここでは示しません。比べる相手は、12週間前のその子自身です。

Caution

痛みがある日は筋トレをしないでください。フォームが崩れたらその日は終わりにし、重さや回数を友達やきょうだいと競わせないこと。着地で膝が内側に入る、腰を反らして持ち上げる、といった形が出るうちは負荷を上げません。身長が急に伸びている時期は動きの調整が乱れやすいので、負荷を下げて様子を見ます。

食事・睡眠・プロテイン——筋トレの前に整えたいこと

結論として、成長期の身体づくりは、筋トレより先に「食べる量」と「眠る時間」を整えることから始まる、と私たちは考えています。Disport Worldでは、ジュニアの選手に厳しい食事制限の指導は行わず、「しっかり食べて、しっかり動く」を基本にしています。睡眠時間の目安は、厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」が次のように示しています。

年代睡眠時間の目安寝る時刻の決め方
小学生9〜12時間起きる時刻から逆算して決める(6時半に起きて9時間なら、21時半)
中学生・高校生8〜10時間部活や塾のある日も、起きる時刻から逆算して寝る時刻を決める

同じガイドは、朝は太陽の光を浴びて朝食をしっかりとり、日中は運動をして、夜ふかしの習慣化を避けることもすすめています。たんぱく質は、国の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」の推奨量(1日あたり)が目安になります。

年齢男子女子
8〜9歳40g40g
10〜11歳45g50g
12〜14歳60g55g
15〜17歳65g55g

これは健康な人を対象にした目安で、スポーツをする子の上限ではありません。まず3食で主食・主菜・副菜と乳製品をそろえ、練習の前後はおにぎりや牛乳などの補食で足りない分を補います。プロテインは、食事で足りないときの補助という位置づけです。小中学生は、まず3食と補食を見直してください。練習後の過ごし方は野球少年・サッカー少年の自宅リカバリー法にまとめています。

クレアチンで身長は止まる?——確かめられた事実と、私たちがすすめない理由

結論として、「クレアチンを飲むと身長が止まる」ことを示した研究は、今回確認した範囲では見つかりませんでした。一方で、「10代でも安全」と言い切れるだけの研究もまだありません。止まるとも、安全とも断定できないのが現状です。

クレアチンは体内でも作られ、肉からもとる物質で、大人では安全性の報告が多くあります。しかし、10代のスポーツ選手を対象にした安全性と効果の研究は「極めて限られている」とされ(Jagim ら、2018)、クレアチンをめぐる疑問を検証した総説でも、大人での安全性が子ども・10代にも当てはまるかは「比較的はっきりしない」と書かれています(Antonio ら、2021)。同じ総説は、病気の子どもを対象にした臨床試験で検査値の悪化が見られなかったことなどから「おそらく安全」という仮説を支持し、「限られた証拠からは、子ども・10代でも安全で、役に立つ可能性がある」とまとめています。一方で、競技力を調べた研究では健康状態の指標が測られていないこと、安全かどうかをより確かにするには研究が必要なことも指摘しています。この総説の著者には、クレアチンを製造する企業の科学顧問を務める研究者も含まれます。

米国小児科学会の臨床の手引き(2016年)は、競技力を高める目的で使われるサプリメントについて、市販の合法なものでも製品の汚染(表示にない成分の混入)の割合が高いことなどを懸念としてあげ、多くの若い選手では、思春期の発育と適切な栄養・トレーニングで得られる以上の効果は出ないとしています(LaBotz ら、2016)。私たちは18歳未満にクレアチンなどのサプリメントをすすめず、先に食事・睡眠・練習量を整えることをおすすめしています。高校生で使うか迷うときは、先に食事と睡眠を見直し、そのうえで医師や管理栄養士に相談してください。

現場で見えていること

世田谷区・船橋フェニックスで学年チームの監督として毎週グラウンドに立っていると、「技術の問題に見えて、実は身体の問題」という子が一定数いることが分かります。「筋トレをすれば球が速くなる」と考えて、重さに早く進みたがる子もいます。ただ、先に見たいのは、自分の体重を正しく扱えるかです。片脚でしゃがめるか、着地でぐらつかないか、しゃがんでかかとが浮かないか。ここができないまま重さを乗せると、弱いところに負担が集まります。

私たちの初回90分では、姿勢(前面・側面・背面)、関節の可動域と筋力のバランス、ジャンプとホップ、動作パターンを測り、投げる動きを観察して、測った身体の状態と照らし合わせます。左右は両側とも測り、差を確認します。お話を伺うときは、ポジション、週に何日・何時間練習しているか、いま痛いところと過去に痛めたところを、保護者の方とお子さまの両方からお聞きします。痛みが続いている場合は、測定より先に医療機関の受診をおすすめしています。

筋トレのメニューは、この結果から「いま足りないところ」を優先して組みます。同じ中学生でも、股関節が硬い子、片脚が不安定な子、体幹で回る力を受け止められない子では、最初にやる種目が違います。結果はその場で保護者の方に口頭でご説明し、ご家庭とチームの練習で続けられる形でお伝えします。技術の指導はチームや教室の方針を尊重し、私たちは身体の側を担当します。評価の考え方は少年野球のトレーニングを東京で探す前に、跳ぶ力の測り方はジュニアの体力測定にまとめています。

よくある質問

野球に必要な筋トレは何ですか?

地面を押す下半身、回る力を受け止めて伝える体幹、肩甲骨まわりと肩の後ろ、全身を一気に使うパワーの4つです。投球の総説は、脚と体幹が力を生み出す主役で、肩甲骨がその力を手先へ受け渡す要になると説明しています。重さを増やす前に、片脚でしゃがむ・着地で止まるができるかを確かめてください。

小学生が筋トレをすると身長が止まりますか?

止まるという証拠はありません。NSCAは、適切に設計・指導された筋トレは子どもにも比較的安全で、身長の伸びや発育に悪影響を与える証拠はないとしています。成長軟骨のけがの報告の多くは、誤ったフォーム、最大重量への挑戦、大人の指導者がいない状況によるものでした。小学生は自分の体重とメディシンボールが中心です。

筋トレは何歳から始められますか?

NSCAは最低年齢の決まりはないとし、スポーツに参加する準備ができていれば(一般に7〜8歳)、何らかの筋トレを始める準備もできているとしています。前提は、指導を聞いて従えることと、子どもの筋トレを理解した大人が毎回指導することです。

中学生の野球の筋トレメニューは?

自重のスクワット・ランジ・腕立て伏せ・補助付きの懸垂、体幹のプランク・デッドバグ・バードドッグ、肩まわりのバンドプルアパートとYTW、メディシンボール(2〜3kg)の回旋投げが中心です。週2〜3回・連続しない日に、軽い負荷の1〜2セット×10〜15回から始め、フォームが安定したらセット数を増やします(NSCA)。種目ごとの回数は本文の表が目安です。身長が急に伸びている時期は負荷を上げすぎないでください。

野球の筋トレをジムでやるなら、何に気をつければいいですか?

器具の種類より、子どもの筋トレを理解した指導者が毎回付くか、最初に身体を測るか、チームの練習量と投球数を聞いてメニューを組むかを確かめてください。重さや回数を競わせない、痛みがあればやらない、が基本です。高校生のバーベルは指導者の下で、負荷を5〜10%ずつ上げます。

クレアチンを飲むと身長が止まりますか?

止まることを示した研究は、今回確認した範囲では見つかりませんでした。ただし、10代の安全性と効果の研究は極めて限られており、安全と言い切ることもできません。私たちは18歳未満にクレアチンなどのサプリメントをすすめず、食事と睡眠を先に整えることをおすすめしています。

プロテインは子どもに必要ですか?

基本は食事からです。日本人の食事摂取基準(2025年版)のたんぱく質の推奨量は、たとえば12〜14歳で男子60g・女子55g(1日あたり)です。3食で主食・主菜・副菜と乳製品をそろえ、足りない分は補食で補います。プロテインは食事で足りないときの補助です。

痛みがあるときも筋トレをしていいですか?

痛みがあるときは、筋トレもチーム練習も止めて、整形外科を受診してください。「痛いけど投げられる」は、投げていい理由にはなりません。受診のうえで運動が許可されてから、痛みが出た背景(可動域・左右差・練習量)を身体の側から見直します。

まずは90分、身体を測ることから

筋トレを始める前に、いまの身体で何ができて、何が足りないかを測ってください。Disport Worldの初回90分では、姿勢、関節の可動域と筋力のバランス、ジャンプとホップ、動作パターン、投げる動きと身体の照合を行い、結果と優先して取り組む点を、その場で保護者の方にご説明します。

Body Assessment

野球の筋トレを始める前に
今の身体を90分かけて測る

担当は基本的に代表の岡本隼人。世田谷区・船橋フェニックスで学年チームの監督を務め、日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)として、成長期の身体機能を評価します。体験後に入会を決めていただく必要はなく、無理な勧誘はいたしません。

¥7,50090分・税込・単発

先着などの条件はありません。

完全個室 | 六本木駅5番出口徒歩4分 | 保護者の方の同席歓迎 | ジュニアプログラムの詳細

主な参考(タップで開く)
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岡本隼人
岡本 隼人
Disport World 代表トレーナー/世田谷区・船橋フェニックス監督(2026年 全日本学童 第3位チーム)
JSPO-AT TPI Certified NASM-PES FMS SFMA

日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)。TPI認定(TPI Certified Fitness 2 / Power 2)。NASM-PES。FMS(2015年認定)・SFMA(2016年認定)。2022年から世田谷区・船橋フェニックスで学年チームの監督を務め、2026年は6年生チームで全日本学童軟式野球大会(マクドナルド・トーナメント)第3位。プロ野球選手(赤羽由紘・東京ヤクルト、渡邊佳明・東北楽天)の指導実績。Disport World(六本木3-15-21 鶯ビルB1)代表。