「立ち幅跳びは身長と同じくらい跳べれば普通」と言われます。公的統計から計算すると、これは正しくありません。12歳男子の平均は身長の121%です。この記事は、日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)が、ジュニア世代で実際に測るべき項目——立ち幅跳び、短距離走、切り返し——の測り方・年齢別の目安・伸ばし方を、公的統計から計算した数値でまとめたものです。
公開 2026年8月1日 | 読了 約15分 | 著者 岡本隼人(JSPO-AT/TPI Certified Fitness 2 / Golf 2 / Junior 2 / Power 2)
小学生から中学生にかけて、子どもの体は毎年大きく変わります。立ち幅跳びが去年より15cm伸びたとして、それはトレーニングが効いたのでしょうか。それとも背が7cm伸びて脚が長くなっただけでしょうか。記録(cm)だけを見ていると、この2つが混ざったまま「伸びている」と判断してしまいます。
逆のことも起きます。身長が一気に伸びる時期には、記録が同じでも身長比は下がります。このとき「去年より悪くなった」と読むと、本当は起きていない問題を探すことになります。
私たちは、ジュニアの測定で次の2つをセットで記録します。
身長比は合否ラインではありません。「同じ年齢・性別の平均がどのあたりか」を知るための参照値です。基準を下回ったからといって、その子に問題があるという意味にはなりません。とくに身長が急に伸びる時期は、身長比が下がるのが自然な現象です。
ネット上には「立ち幅跳びは身長と同じ距離(身長比100%)が目安」という説明が数多くあります。これは小学校低学年ならおおむね当てはまりますが、学年が上がるほど実態から離れていきます。
下の表は、令和6年度 学校保健統計調査(文部科学省)の平均身長と、令和6年度 体力・運動能力調査(スポーツ庁)の立ち幅とび平均値から、私たちが身長比を計算したものです。
| 年齢 | 立ち幅とび平均 | 平均身長 | 身長比(平均) | 身長比(平均+1SD) |
|---|---|---|---|---|
| 6歳 | 116.0 | 116.7 | 99% | 114% |
| 7歳 | 126.5 | 122.6 | 103% | 118% |
| 8歳 | 135.4 | 128.5 | 105% | 120% |
| 9歳 | 145.6 | 134.0 | 109% | 122% |
| 10歳 | 154.0 | 139.7 | 110% | 125% |
| 11歳 | 166.6 | 146.0 | 114% | 130% |
| 12歳 | 187.1 | 154.0 | 121% | 138% |
| 13歳 | 203.2 | 161.1 | 126% | 142% |
| 14歳 | 217.0 | 166.1 | 131% | 145% |
| 15歳 | 221.2 | 168.6 | 131% | 146% |
| 16歳 | 225.3 | 169.9 | 133% | 147% |
| 17歳 | 230.1 | 170.8 | 135% | 149% |
| 年齢 | 立ち幅とび平均 | 平均身長 | 身長比(平均) | 身長比(平均+1SD) |
|---|---|---|---|---|
| 6歳 | 108.2 | 115.8 | 93% | 108% |
| 7歳 | 117.9 | 121.8 | 97% | 110% |
| 8歳 | 128.0 | 127.7 | 100% | 114% |
| 9歳 | 136.0 | 134.1 | 101% | 115% |
| 10歳 | 145.4 | 141.1 | 103% | 117% |
| 11歳 | 155.6 | 147.8 | 105% | 120% |
| 12歳 | 166.4 | 152.3 | 109% | 124% |
| 13歳 | 172.4 | 155.0 | 111% | 127% |
| 14歳 | 176.8 | 156.4 | 113% | 128% |
| 15歳 | 170.9 | 157.1 | 109% | 123% |
| 16歳 | 172.9 | 157.7 | 110% | 125% |
| 17歳 | 173.3 | 158.0 | 110% | 124% |
立ち幅跳びの記録は「力の大きさ」だけでは決まりません。短い時間で力を出せるか(地面を弾けるか)が効きます。私たちがジュニアに最初に入れるのは次の3つです。
連続ジャンプは着地の衝撃が大きい種目です。試技は1日2〜3回までとし、試技の間に2分程度の休息を入れます。疲労でフォームが崩れたら、その日は終わりにしてください。すねや膝に痛みが出た日は行いません。
「足が速い」とひとことで言っても、スタートから一気に出られる子と、乗ってからのトップスピードが高い子は別のタイプです。野球の塁間、サッカーの寄せ、バスケットの速攻——多くの場面で効くのは、実は最高速度より最初の数歩の加速です。
| 距離 | 主に測る能力 | 全国基準 | 読み方 |
|---|---|---|---|
| 10m走 | 加速局面のスピード(スタート直後) | なし(私たちの追加種目) | 自己ベストの更新で見る |
| 20〜30m走 | 加速+トップスピードへの移行 | なし | 自己ベストの更新で見る |
| 50m走 | 加速+最高速度(疾走能力の総合) | あり(新体力テストの公式種目) | 全国平均と比べられる |
50m走はスポーツ庁の体力・運動能力調査で全国の平均値が毎年公表されています。年代別の数値は同調査の公表資料をご確認ください。当記事では、検証した数値を持っていない項目に具体的な平均秒数を書きません。出どころの分からない数字で子どもを評価しないためです。
野球の守備や盗塁、サッカーやバスケットの切り返しで効くのは、直線の速さより方向転換です。ここを測らずに「足が遅い」と判断すると、本当の課題を見落とします。
床に5m間隔で3本のラインを引き、中央から片側へ5m→反対側へ10m→中央へ5m戻る、合計20mを走ってタイムを測ります。減速・切り返し・再加速が1本の中に3回入る種目です。
床に引いた1本のラインを、両足そろえて前後(またはサイド)に10秒間跳び越し続け、越えた回数を数えます。反復横跳びが「大きく移動する敏捷性」を見るのに対し、この種目はその場で速く切り返す力を見ます。
たとえばスイングスピードが上がらない選手がいるとします。原因が「回旋の力そのもの」なのか、「地面を押す力(下半身)」なのか、「肩や胸郭の可動域」なのかで、やるべきことは変わります。土台の測定があると、この切り分けができます。
| 競技の測定 | 関係が深い土台 | 詳しくは |
|---|---|---|
| スイングスピード・打球速度 | 回旋パワー、地面反力、下肢の伸展 | 年代別スイングスピードの平均と伸ばし方 |
| 球速 | 下肢の伸展、体幹の連動、肩甲帯の可動域 | 小学生アスリートのトレーニング |
| 遠投 | 全身の連動、片脚での支持、胸郭の回旋 | ジュニアアスリート向けページ |
| 打球方向の安定(ポップフライ等) | 体幹の安定、バットの軌道 | 少年野球のポップフライ問題 |
プロ野球ジュニアチームのセレクションでは、走・投・打の実技に加えて体力測定が課されることがあります。選考の全体像と球団別の傾向は、NPBジュニアトーナメント完全ガイドにまとめています。この記事は「そこで測られる土台をどう伸ばすか」の側を担当しています。
1年で身長が7〜9cm以上伸びるような時期には、記録が横ばいでも身長比は下がります。これは正常な現象です。この時期に「調子が落ちた」と判断して練習量を増やすと、成長期特有のケガ(膝の下の痛み、かかとの痛み、腰の痛み)につながります。
身長が急に伸びている時期は、記録の更新を狙う時期ではなく、柔軟性と着地の技術を守る時期だと考えてください。
測定値は保護者と指導者だけのものにしないでください。「前回より接地が速くなったから、この数字が上がった」と行動と数字を結びつけて本人に返すと、練習の意味が変わります。私たちは測定の結果を、数字の意味が本人にも分かる言葉で、その場でお伝えしています。
姿勢・可動域・片脚の安定性・左右差・成長期の負担(痛みの部位と練習量)・ジャンプの着地を90分で見て、結果はその場で保護者の方にご説明します。
野球のお子さまは、スイングスピードも測ります。
税込|先着などの条件はありません|小学1年生〜中学3年生対象|保護者の同席をお願いしています
複数の測定値を足して「総合力」を出したくなりますが、ケガを予測できると証明された合計点方式のスクリーニングは存在しません。項目ごとに見て、低い項目に個別に対応するほうが確実です。
10m走、プロアジリティ、10秒クイックステップに全国平均はありません。出どころ不明の数字を基準にすると、子どもを誤って評価します。基準がない種目は、自己ベストの更新で見る。これで十分に機能します。
身長がないと、あとから身長比を計算できません。過去のデータが半分使えなくなります。測定シートの一番上に身長の欄を作ってください。
痛みがある状態での全力測定は、記録が下がるだけでなく、成長期のケガを進行させます。とくに次の場合は測定より先に医療機関の受診をおすすめします。
日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)/ TPI Certified Fitness 2・Golf 2・Junior 2・Power 2 / NASM-PES / FMS / SFMA
株式会社Disport代表。東京・六本木のパーソナルトレーニングジム Disport World にて、ジュニアアスリートから成人まで、測定にもとづく身体づくりを行っています。ジュニアの評価では、公的統計から算出した参照値と、成長段階に応じた安全確認を組み合わせています。
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