「体が硬い」は、太ももの裏、太ももの前、股関節の前、ふくらはぎ、肩など、いくつもの部位の話がひとまとめになった言葉です。保護者の方が家でできる部位ごとの測り方と記録の付け方、成長期の考え方を、研究と公的な資料をもとにまとめました。
この記事は、六本木の完全個室パーソナルジム Disport World で、日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)の岡本隼人が、成長期の子どもの身体を実際に測ってきた経験から書いています。ジュニアの身体評価(小学生・中学生)→
・「体が硬い」は1つの性質ではなく、部位ごとに別々に測るもの
・長座体前屈は太ももの裏の柔らかさとの関係が中くらいで、腰の柔らかさとの関係は弱いと、34研究のメタ分析がまとめている
・家では5つの部位を、左右別々に、同じやり方で測り、写真とメモで残す
・ストレッチは子どもでも中学生・高校生の年代でも可動域を広げると、28研究のメタ分析が報告している
・痛みがあるときは測らず、ストレッチもせず、整形外科を受診する
「体が硬い」とは、どこが硬いことなのか?
「体が硬い」は、ひとつの性質ではありません。太ももの裏は硬いのに肩は柔らかい、右の股関節だけ硬い、ということが普通にあります。何から始めるかを決めるには、まず部位を分けて考えます。
柔軟性は、関節がどこまで動くか(関節の可動域)で表します。可動域を決めるのは、筋肉や腱の伸びやすさ、関節そのものの形、そのときの痛みや緊張など、いくつかの要素です。同じ子でも、関節ごと、左右ごとに違います。
前屈で指が届かない理由も、太ももの裏かもしれないし、腰かもしれないし、腕と脚の長さのつり合いかもしれません。「硬いからストレッチ」の前に、「どこが硬いのか」を確かめるほうが近道です。
学校の健康診断でも、2016年度から運動器の検診(四肢の状態の検査)が必須の項目になり、家庭で記入する保健調査票では、片脚立ちが5秒以上できるか、しゃがみこみができるかなどを尋ねています。自治体の様式には、腰を痛みなく前に曲げたり反らしたりできるか、肩を痛みなく動かせるかを尋ねるものもあります。柔軟性を細かく測るものではありませんが、「部位ごとに、痛みなく動くか」を見る考え方は同じです。
長座体前屈の記録だけで判断していいのか?
長座体前屈の記録だけでは、どこが硬いのかはわかりません。研究をまとめると、この種のテストは太ももの裏の柔らかさとは中くらいの関係があり、腰の柔らかさとの関係は弱いとされています。記録は目安の1つとして使い、部位ごとのチェックで補います。
文部科学省の新体力テストの長座体前屈は、壁に背と尻をつけて脚を伸ばして座り、膝を曲げずに前へ倒れて、箱が動いた距離を測ります。2回行って、よいほうの記録をとります。経過を追うには便利です。年齢別の平均はジュニアの体力測定にまとめています。
一方で、Mayorga-Vega らは、前屈で届く距離を測るテスト(シットアンドリーチ)と、太ももの裏や腰の柔らかさを専用の方法で測った値との関係を調べた34の研究をまとめました。その結果は次のとおりです。
| 比べた相手 | 関係の強さ(補正後の相関) | 読み方 |
|---|---|---|
| 太ももの裏(ハムストリングス)の柔らかさ | 0.46〜0.67(中くらい) | 記録が伸びれば、太ももの裏も柔らかい傾向はある。ただし一致はしない |
| 腰(腰椎)の柔らかさ | 0.16〜0.35(弱い) | 記録から腰の柔らかさはほとんど読み取れない |
相関は「一緒に動く度合い」で、1に近いほど強く、0に近いほど弱い関係です。前屈の記録が伸び悩む原因が太ももの裏か腰か別の要素かは、記録だけでは決められません。また、両脚を同時に伸ばす種目なので、左右のどちらが硬いのかも出てきません。前屈は「全体の目安」、部位と左右は次のチェック、という使い分けをおすすめします。
家ではどう測ればいいのか?——5つの部位チェック
家では、太ももの裏・太ももの前・股関節の前・ふくらはぎ・肩の5つを、左右別々に見ます。目的は合否をつけることではなく、左右の差と、1か月前からの変化を残すことです。同じ時間帯、同じ床、同じやり方で行い、スマートフォンで横から写真を撮っておくと比べやすくなります。
太ももの裏:仰向けで脚上げ(左右)
仰向けに寝て、片脚の膝を伸ばしたまま、保護者の方がかかとを持ってゆっくり持ち上げます。反対の脚は床に伸ばしたまま、膝が浮かないように軽く押さえます。膝が曲がり始めるところ、またはお子さんが「つっぱる」と言うところで止め、横から写真を撮ります。
太ももの前:うつ伏せでかかとをお尻へ(左右)
うつ伏せに寝て、片方の膝を曲げ、かかとをお尻に近づけます。かかととお尻の間に指が何本入るかを記録します。腰が反る、お尻が浮くときは、その手前で止めます。
股関節の前:片膝抱え(左右)
仰向けで、片方の膝を両手で胸に抱えます。このとき、伸ばしているほうの脚の太ももが床から浮くか、膝が曲がってくるかを見ます。浮いてくるのは、伸ばしている脚の側の股関節の前(脚の付け根)が硬いときに出やすい形です。
ふくらはぎ・足首:壁に膝タッチ(左右)
壁に向かって立ち、片足のつま先を壁から少し離して置きます。かかとを床につけたまま膝を前に曲げ、膝が壁に届くかを見ます。届いたら足を少し後ろへずらし、届く一番遠い位置のつま先と壁の距離を記録します。
肩:仰向けでバンザイ(左右)
仰向けで膝を立て、腰を床につけたまま、両腕を伸ばして頭の上へ下ろしていきます。腕が床に届くか、左右で届き方が違うか、腰が床から浮いてこないかを見ます。
書き残すのは、日付、左右それぞれの結果、「どこがつっぱったか」のお子さんの言葉の3つで足ります。どれか1つで左右がはっきり違う、1か月前より明らかに動かなくなった、という変化が、次に何をするかを決める材料になります。
チェックは痛みのない日に、滑らない床で行ってください。保護者の方が押したり引いたりして、可動域を無理に広げようとしないでください。つっぱり感が出たところで止めるのが測り方です。膝・かかと・腰・肩などに痛みがある、しびれが出る、動かすと痛む場合は、チェックを中止して整形外科を受診してください。チェックの結果は病気の診断ではありません。
姿勢、関節の可動域と筋力バランス、ジャンプとホップ、動作パターンを、左右差も含めて測ります。担当は基本的に代表の岡本隼人(JSPO-AT)。結果はその場で保護者の方に口頭でご説明します。無理な勧誘はいたしません。
LINEで空き状況を確認する成長期に体が硬くなるのは本当か?
「成長期に骨が先に伸びて、筋肉が追いつかずに硬くなる」とよく言われますが、研究の結果は一様ではありません。柔軟性が伸び悩む時期があるという整理がある一方で、身長の伸びと柔軟性の変化に関係が見られなかった研究(Feldman ら、1999)もあります。大切なのは、一般論で決めつけず、その子の変化を記録で追うことです。
Donti らのレビュー(2022)は、背景の整理として、柔軟性は思春期の急な成長の時期から大人にかけて横ばい、あるいは下がる傾向があり、とくに男子で目立つと述べています。一方、カナダ・モントリオールの中学生の年代502名を1年間追った Shrier らの研究(2001)では、太ももの裏・前の柔らかさ、長座体前屈、身長の急な伸びのいずれも、その後の脚の痛みの出現とは関係が見られませんでした。
この2つから言えるのは、「成長期だから硬くなるのは当たり前」とも、「硬いから痛くなる」とも、決めつけられないということです。そのうえで、急に身長が伸びている時期に、半年前より明らかに動かなくなった部位がある、片側だけ硬くなってきた、という変化は、練習の量や中身を見直すきっかけになります。成長期の運動全体の考え方は小学生アスリートのトレーニングにまとめています。
また、膝のお皿の下やかかとが痛むときは、硬さの問題として扱う前に、成長期に特有の障害がないかを整形外科で確かめます。膝の痛みについてはオスグッドでも運動していい?で詳しく書いています。
ストレッチは子どもにも効果があるのか?
あります。28の研究、合わせて1,936名をまとめたメタ分析では、ストレッチは小学生の年代(6〜11歳)でも、中学生・高校生の年代(12〜18歳)でも、関節の可動域を中くらいの大きさで広げていました。年代による差ははっきりしませんでした。
Donti らのメタ分析(2022)では、ストレッチをしない群と比べた伸びの差(効果量)は、6〜11歳で1.09、12〜18歳で0.90で、2つの年代の間に統計的な差はありませんでした。6〜11歳では、合計時間が1時間以上の研究のほうが短い研究より差が大きく(1.21と0.62)、12〜18歳では量による差がはっきりしませんでした。研究の質については、偏りのリスクが低いと判断された項目が全体の56.9%、結論への確信度は「中程度」とされています。
ここから言えるのは、「小学生のうちしか柔らかくならない」「中学生からでは遅い」とは言えない、ということです。そのうえで、小学生では量を積み重ねるほど変化が出やすい可能性があるので、短くても日々続けられる形にしておく意味があります。
注意したいのは、運動の直前のやり方です。平均11.3歳の60名が3種類の準備運動を日を変えて行った Faigenbaum らの研究(2005)では、歩行と止まって伸ばすストレッチ(各5分)のあとは、10分間の動きのある準備運動のあとより、垂直跳びとシャトルランの成績が低く、柔軟性には差がありませんでした。止まって伸ばすストレッチは練習後やお風呂上がりに、練習前は動きのある準備運動に、と時間帯を分けるのが一つの考え方です(練習のあとの自宅でのケア)。
何から始めればいいのか?——測る・選ぶ・続ける・測り直す
始める順番は、測る、硬い部位を1〜2か所に絞る、短く続ける、同じやり方で測り直す、の4段階です。全身のストレッチを一度に始めるより、続けやすく、変化も確かめやすくなります。
測る:5つの部位を左右別々に記録する
前の章のチェックを、痛みのない日に行います。写真と、お子さんの「ここがつっぱる」という言葉を残します。
選ぶ:硬い部位を1〜2か所に絞る
左右差が大きい部位、または1か月前より動かなくなった部位を優先します。競技でよく使う部位かどうかも参考にします。
続ける:短く、決まった時間に
お風呂上がりや寝る前など、毎日の流れに組み込みます。痛みのない範囲で、呼吸を止めずに行い、反動はつけません。
測り直す:月に1回、同じやり方で
同じ時間帯・同じ床・同じ撮り方で測り直します。変わらない、左右差が広がる、痛みが出る、といったときは、やり方そのものを見直します。
柔らかいほどよい、というわけでもありません。関節がとても柔らかい子では、可動域を広げることより、その範囲を自分の力で支えられるかのほうが大切になることがあります。柔軟性と筋力は、セットで見ます。成長期の筋力づくりの進め方は野球に必要な筋トレ(年代別メニュー)、走る・跳ぶ動きとの関係は小学生の足が速くなる方法で書いています。
現場で見えていること
私たちの90分の評価では、姿勢(前面・側面・背面)、関節の可動域と筋力バランス、ジャンプ・ホップ、動作パターンを、左右を分けて測ります。「体が硬い」というご相談で来られた子でも、測ってみると、硬いのは一部の部位で、ほかは年齢相応に動く、ということがよくあります。反対に、前屈は届くのに、片側の股関節の前だけが硬い、ということもあります。
また、可動域は十分あるのに、しゃがむ・跳ぶ・投げる動きの中では使えていない形もあるため、動きの中での使い方も見ます。この場合は、ストレッチより動き方の練習を先にすることがあります。
測る前には、痛む場所の有無、受診の状況、競技と練習の量を伺います。痛みがあるときは、先に医療機関の受診をおすすめします。結果は、その場で保護者の方に口頭でご説明し、家でできる運動をお伝えします。
・伸ばすと鋭く痛む、伸ばしたあとに痛みが残る
・膝のお皿の下、かかと、腰、肘、肩などに、運動のあとや翌朝の痛みが続く
・手足にしびれが出る、力が入りにくい
・関節が腫れる、熱をもつ、ひっかかって動かない
・ある時期から急に、片側だけ動かなくなった
・前かがみになったときに背中の左右の高さが違う(学校の検診で指摘された場合を含む)
痛みがある状態で運動やストレッチを続けることはすすめません。再開の時期と内容は主治医と相談してください。
よくある質問
子どもの体が硬いのは、何が原因ですか?
1つの原因には決められません。筋肉や腱の伸びやすさ、関節の形、成長の時期、普段の動き方などが関わり、部位や左右によっても違います。まずは太ももの裏・前、股関節の前、ふくらはぎ、肩を左右別々に測り、どこが硬いのかを確かめるところから始めます。
長座体前屈の記録が低いと、体が硬いということですか?
全体の目安にはなりますが、どこが硬いのかまではわかりません。34研究のメタ分析では、前屈で届く距離のテストは太ももの裏の柔らかさとは中くらいの関係、腰の柔らかさとは弱い関係でした。左右の差も出ないので、部位ごとのチェックと組み合わせて見てください。
体が硬いとケガをしやすいですか?
硬さだけでケガをすると言い切ることはできません。中学生の年代502名を1年間追った研究では、太ももの柔らかさや長座体前屈、身長の急な伸びは、その後の脚の痛みとの関係が見られませんでした。ただし、急に片側だけ硬くなった、痛みを伴う、という変化は、練習量の見直しや受診のきっかけにしてください。
ストレッチは何歳から始めても効果がありますか?
28研究・1,936名のメタ分析では、6〜11歳でも12〜18歳でも、ストレッチで関節の可動域が広がり、年代の間にはっきりした差はありませんでした。「中学生からでは遅い」とは言えません。痛みのない範囲で、短く続けられる形で始めてください。
練習の前にストレッチをしたほうがいいですか?
練習の直前は、止まって伸ばすストレッチより、動きのある準備運動が向いています。平均11.3歳の60名を対象にした研究では、止まって伸ばすストレッチのあとは、動きのある準備運動のあとより、跳ぶ・走る成績が低くなりました。止まって伸ばすストレッチは、練習後やお風呂上がりに回すとよいでしょう。
まずは90分、身体を測ることから
体が硬い子が最初にすることは、ストレッチの種類を増やすことではなく、どこが・左右のどちらが硬いのかを知ることです。家での5つのチェックで見当をつけ、左右差がはっきりしている、競技の動きとの関係を知りたい、という場合は、一度まとめて測ってみてください。料金と内容はジュニアプログラム、場所はアクセスをご覧ください。
Body Assessment
成長期の「今の身体」を
90分かけて測る
担当は基本的に代表の岡本隼人。日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)として、姿勢、関節の可動域と筋力バランス、ジャンプとホップ、動作パターンを左右別々に測ります。結果はその場で保護者の方に口頭でご説明します。体験後に入会を決めていただく必要はなく、無理な勧誘はいたしません。
先着などの条件はありません。
完全個室 | 六本木駅5番出口徒歩4分 | 初回は保護者の方の同席をお願いしています | ジュニアプログラムの詳細
主な参考(タップで開く)
- Mayorga-Vega D, Merino-Marban R, Viciana J. Criterion-related validity of sit-and-reach tests for estimating hamstring and lumbar extensibility: a meta-analysis. J Sports Sci Med. 2014;13(1):1-14.(34研究のメタ分析)
- Donti O, Konrad A, Panidi I, Dinas PC, Bogdanis GC. Is there a "window of opportunity" for flexibility development in youth? A systematic review with meta-analysis. Sports Med Open. 2022;8(1):88.(28研究・1,936名)
- Feldman D, Shrier I, Rossignol M, Abenhaim L. Adolescent growth is not associated with changes in flexibility. Clin J Sport Med. 1999;9(1):24-29.(モントリオールの生徒の縦断研究)
- Shrier I, Ehrmann-Feldman D, Rossignol M, Abenhaim L. Risk factors for development of lower limb pain in adolescents. J Rheumatol. 2001;28(3):604-609.(モントリオールの7〜9年生、参加810名のうち1年間追えた502名を解析・前向きコホート)
- Faigenbaum AD, Bellucci M, Bernieri A, Bakker B, Hoorens K. Acute effects of different warm-up protocols on fitness performance in children. J Strength Cond Res. 2005;19(2):376-381.(平均11.3歳の60名)
- 文部科学省「新体力テスト実施要項(6歳〜11歳対象)」長座体前屈。
- 文部科学省 スポーツ・青少年局長通知「学校保健安全法施行規則の一部改正等について」(26文科ス第96号、2014年4月30日。児童生徒等の健康診断に係る改正は2016年4月1日施行)。
- 運動器の健康・日本協会「運動器(脊柱・胸郭,四肢)についての保健調査票」(例)。大阪府教育庁「保健調査票」様式。群馬県教育委員会・群馬県医師会「学校における運動器検診マニュアル」。


