「早く始める」ことと「早く一つにしぼる」ことは、別の話です。この記事では、早期専門化について学会の声明と研究でわかっていること、TPI(Titleist Performance Institute)の「Athletes First」の考え方、ほかに経験させたい運動、しぼりすぎのサインをまとめました。
この記事は、六本木の完全個室パーソナルジム Disport World で、日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)でTPI認定(Fitness 2/Golf 2/Junior 2/Power 2)の岡本隼人が、成長期の子どもの身体を実際に測ってきた経験から書いています。扱うのはスイングの技術ではなく、身体の側の話です。ジュニアゴルファーのトレーニング(何歳から・何をやるか)→
・「早く始める」と「早く一つにしぼる」は別。クラブを早く握ることより、ほかの運動をやめてしまうことのほうが問題になりやすい
・米国の小児科学会やスポーツ医学の学会は、思春期前に一つの競技だけにしぼることのリスクを指摘している
・ゴルフは、早くしぼらないと頂点に届かない競技の例には挙げられていない
・TPIは、先に幅広い運動を経験させる道を「Athletes First」と呼び、ジュニアゴルファーの育成の講座で扱っている
・しぼりすぎのサインは、痛み・楽しさの低下・自由に遊ぶ時間の減少。痛みがあるときは練習より受診を先に
ジュニアゴルファーは、早くゴルフだけにしぼったほうがいいのか?
多くの子にとって、早くゴルフだけにしぼる必要はありません。米国小児科学会の臨床報告は、専門化が早すぎると体と心に不利なことが起こりうると述べ、米国整形外科スポーツ医学会の合意声明は、子どもにはいろいろな競技を経験させることを勧めています。
ここで大事なのは、「ゴルフをやめる」話ではないことです。クラブを早く握ること、コースを楽しむことは、早くから始めて構いません。問題になりやすいのは、ゴルフの練習が増えるのと引きかえに、走る・跳ぶ・投げる・自由に遊ぶ時間がなくなっていくことです。
何歳から始めるか、年代ごとに何を優先するかはジュニアゴルファーのトレーニング|何歳から・何をやるかにまとめています。ここでは「しぼるか、続けるか」の一点を掘り下げます。
「早く一つにしぼる」とは、どんな状態を指すのか?
研究の世界では「早期専門化」と呼び、一年のほとんどを一つの競技の練習と試合に使い、ほかの競技をやめている状態を、思春期前の子どもについて言います。ゴルフを早く始めたかどうかではなく、ほかの運動が生活から消えているかどうかで見ます。
米国整形外科スポーツ医学会(AOSSM)が2015年に開いた専門家の会議は、早期専門化を次の3つで定義しました。
| 条件 | AOSSMの定義 | ジュニアゴルファーに置きかえると |
|---|---|---|
| 期間 | 組織された競技の集中的な練習や試合に、年8か月を超えて参加(ほぼ一年中) | オフの時期がなく、一年中ゴルフの練習と大会が続いている |
| 競技の数 | 一つの競技に参加し、ほかの競技をしていない(自由な遊びも少ない) | ゴルフのために、ほかの競技や外遊びをやめている |
| 年齢 | 思春期前(米国の7年生、およそ12歳まで)の子ども | 小学生のうちに、上の2つがそろっている |
ゴルフを週に何回かしていても、ほかにサッカーや水泳をしていて、外で走り回る時間もあるなら、早期専門化にはあたりません。
Jayanthi らの総説(2013)は、専門化は「している・していない」の二択ではなく、程度のある連続したものだと整理しています。わが子の位置を、表の3つで見てみてください。
早くしぼると、何が起きやすいのか?
一つの競技にしぼって集中的に練習している子は、使いすぎのけが(オーバーユース障害)や、燃え尽き・やめてしまうことが起こりやすいと報告されています。ただし研究の多くは「関係がある」ことを示したもので、しぼった子がみなけがをする、という意味ではありません。
米国小児科学会(AAP)の臨床報告(2016)は、専門化が早すぎると体と心の両面で不利なことが起こりうる一方、時期と条件が正しければ目標に届くこともあると述べています。専門化の有無にかかわらず、集中的な練習そのものにも心身のリスクがあるとしています。
数字で示した研究もあります。Jayanthi らは、7〜18歳の子ども1,190名(スポーツ医療の外来でけがの診療を受けた子と、スポーツの健康診断に来たけがのない子)を比べました。
| 見た条件 | 関係していたもの | オッズ比 |
|---|---|---|
| 一つの競技に専門化している(年齢と練習時間を考慮したうえで) | けが全体 | 1.27 |
| 同上 | 重い使いすぎのけが | 1.36 |
| 1週間の競技の時間が、年齢の数より多い | 重い使いすぎのけが | 2.07 |
| 組織された競技の時間が、自由な遊びの時間の2倍を超える | 重い使いすぎのけが | 1.87 |
オッズ比は、けがをした子の側にその条件の子がどれくらい多かったかを表し、1より大きいほど関係が強いことを示します。この研究はけがをした子とけがのない子を後から比べたもので、専門化がけがの原因だと決めたものではありません。それでも、「練習時間を同じにそろえても、一つにしぼっている子のほうにけがが多かった」という点は、ゴルフだけになっていく生活を見直す材料になります。
AOSSMの合意声明も、早期専門化を使いすぎのけが・燃え尽き・競技をやめることと関係づけています。競技ごとに多いけがは成長期のスポーツ別けが一覧にまとめています。
代表の岡本隼人は、TPI(Titleist Performance Institute)のJunior Level 2の認定を受けています。早くゴルフにしぼるか、先に幅広い運動を経験させるか(Athletes First)、暦の年齢と発育の段階の違い——Junior 2で学んだことを、資格のページでお伝えしています。
Junior Level 2で学んだことを見る上を目指すなら、早くしぼらないと間に合わないのでは?
多くの競技では、思春期前にしぼらないと頂点に届かない、という証拠は見つかっていません。早くしぼる必要があるかもしれない例として挙げられているのは、体操やフィギュアスケートなど、10代から20代前半に競技の頂点が来る種目で、ゴルフはその例に入っていません。
AOSSMの合意声明は、大多数の競技で幼い子どもが早期専門化から得をするという証拠はないこと、早くから複数の競技をしても長い目で見た競技の成功の妨げにはならないことを、会議の主な結論にしています。
同じ声明は、競技参加の発達モデル(DMSP)の考え方として、小学校の終わりごろ(およそ13歳)に好きな競技にしぼるか楽しみとして続けるかを選び、16歳ごろに一つの競技に本格的に打ち込む準備が整う、という目安を紹介しています。Jayanthi らの総説(2013)も、多くの競技では一つに打ち込むのを思春期の後半まで遅らせることを勧めています。
ただ、ゴルフについて何歳でしぼるかを決めた数字はありません。その子の発育の段階と生活を見て決めることになります。
TPIの「Athletes First」とは、どんな考え方か?
TPIが、ゴルフに早くしぼる前に、まず幅広い競技・運動の土台をつくる道を呼ぶ名前です。TPI公式のJunior Level 2の講座ページによると、講座では早くしぼる道と遅くしぼる道の議論を扱い、それぞれの長所と短所を説明します。
講座ページは、ジュニアがあまりに多くの場合「小さな大人」のように教えられていると指摘し、体の成熟の度合いと発育の年齢の両方に配慮した育て方を軸にしています。暦の年齢と発育の年齢の違いも詳しく扱います。プログラムの長さを考える章では、いわゆる「1万時間の法則」や「10年の法則」と、早い専門化か遅い専門化かの議論を取り上げ、そのうえで「Athletes First」の考え方を紹介しています。
講座ページの年代別の流れでも、発育の年齢で5〜7歳は運動の力とゴルフの基本に重点を置き、8〜10歳で技術の比重が大きくなる順番です。運動の土台が先にある組み立てです。
この考え方は、米国ストレングス&コンディショニング協会(NSCA)の長期的な運動能力の育成の声明(2016)とも重なります。この声明は、すべての子どもを「アスリート」として見て、一人ひとりに合わせて運動の力を伸ばす機会を与えるべきだとしています。TPIそのものの説明はTPIとは?ゴルフの身体評価16項目と資格の取り方にあります。代表の岡本がJunior 2で学んだことの全体は資格のページ(Junior Level 2)をご覧ください。
ゴルフのほかに、どんな運動を経験させるといいのか?
決まった正解の競技はありません。目安は、ゴルフでは使わない動きを足すことです。次の4つを、生活のどこかに残しておきます。
走る・跳ぶ・着地する
ゴルフの練習には、全力で走る・跳ぶ・着地して止まる動きがほとんどありません。かけっこ、なわとび、鬼ごっこ、サッカーやバスケットボールなどが入口になります。
投げる・打つ(左右両方)
ゴルフは同じ向きにだけ回る競技です。野球やテニス、ボール投げなど、全身を使って投げたり打ったりする動きを、利き手と反対の側でも遊びとして経験させます。
相手やボールに合わせて動く
動くボールや相手に反応する競技は、判断して体を動かす経験になります。Jayanthi らの総説(2013)は、競技の中でパターンを読み取る力が、ほかの競技からも移る(転移する)ことを紹介しています。
自由に遊ぶ時間
公園で遊ぶ、木や遊具に登る、ぶら下がる、転がる。大人が教えない時間です。AOSSMの合意声明は、およそ13歳より前の時期には、コーチが絶えず口を出さない遊びの中での運動も、よい技能を育てるのに必要だと述べています。
1週間の組み立てを見直すときは、Jayanthi らの研究で重い使いすぎのけがと関係していた2つの条件、つまり「1週間の競技の時間が年齢の数を超えていないか」「組織された練習の時間が自由な遊びの時間の2倍を超えていないか」を、目安として見てみてください。原因と決まったものではありませんが、配分を見直すきっかけになります。
走る力や動きの基礎は小学生アスリートのトレーニングと小学生の足が速くなる方法で詳しく書いています。
新しい競技や遊びを足すときは、ゴルフの練習量をそのままにして上乗せすると、1週間の合計の負担が増えます。足した分、どこかを減らす配分で考えてください。また、ほかの競技を始めたあとに、膝・かかと・腰・肘などの痛みが続く場合は、その運動を中止して整形外科を受診してください。
ゴルフにしぼりすぎているサインは、何か?
見たいのは、体のサインと気持ちのサインの両方です。同じ場所の痛みがくり返す、練習を楽しめなくなった、ゴルフ以外の遊びや友だちとの時間がなくなった、という変化が重なってきたら、配分を見直す合図です。
AOSSMの合意声明は、燃え尽きた子の特徴として、やる気、とくに自分の内側から出るやる気の低下、楽しさの欠如、強いストレスや不安、気分の落ち込みを挙げています。練習の多さや睡眠不足だけでなく、コーチ・保護者からの成績への圧力も要因になる、としています。
ゴルフは同じ向きの回転をくり返す競技です。成長期の腰の痛みは大人と同じ扱いをせず、反ると痛む、2週間以上続くといった場合は練習より受診を先にしてください。詳しくは子どもの腰椎分離症に書いています。
・腰・肘・手首・膝・かかとなど、同じ場所の痛みが続く、練習するとまた痛む
・スイングやフィニッシュで反ると腰が痛む
・痛みのために、練習や遊びの動きを変えてかばっている
・眠れない、食欲が落ちた、気分の落ち込みが続く
痛みがある状態で練習を続けることはすすめません。再開の時期と内容は主治医と相談してください。
現場で見えていること
私たちのジュニアのトレーニング(小学1年生〜中学3年生)では、学年ではなく、その子の発育の段階を見て、内容と負荷を決めます。同じ学年でも、身長の伸び方には差があるためです。
ゴルフをしている子の場合も、見るのはスイングの形ではなく、それを支える体の側です。私たちはスイングの技術指導はしておらず、ジムでボールを打つこともありません。
測る前には、痛む場所の有無、受診の状況、ゴルフやほかの競技をどれくらいしているかを伺います。痛みがあるときは、先に医療機関の受診をおすすめします。測った結果と、その日に見たことは、トレーニングのたびに保護者の方へ口頭でお伝えしています。しぼるかどうかを決めるのはご家庭とお子さん本人で、私たちはその材料として体の状態をお伝えします。
よくある質問
ジュニアゴルファーは、ほかのスポーツもしたほうがいいですか?
思春期までは、ゴルフを続けながらほかの運動も経験させる考え方が、米国の整形外科スポーツ医学会の合意声明などと合っています。ゴルフをやめる必要はなく、走る・跳ぶ・投げる・自由に遊ぶ時間を残すことが目安です。
プロを目指すなら、小学生からゴルフだけに集中すべきですか?
多くの競技で、思春期前にしぼらないと頂点に届かないという証拠は見つかっていません。早くしぼる必要がある例として挙げられているのは体操やフィギュアスケートなどで、ゴルフは入っていません。
TPIの「Athletes First」とは何ですか?
TPI(Titleist Performance Institute)が、ゴルフに早くしぼる前に、まず幅広い競技・運動の土台をつくる道を呼ぶ名前です。TPIのジュニアゴルファーの育成の講座(Junior Level 2)で、早くしぼる道との長所と短所を比べて扱っています。
ゴルフの練習時間は、1週間にどれくらいが目安ですか?
ゴルフに限った決まった数字はありません。7〜18歳の1,190名を比べた研究では、1週間の競技の時間が年齢の数を超える子や、組織された練習が自由な遊びの2倍を超える子に、重い使いすぎのけがが多く見られました。原因と決まったものではありませんが、配分を見直す目安になります。
Disport Worldでは、ジュニアのゴルフレッスンをしていますか?
していません。私たちはスイングの技術指導をしておらず、ジムでボールを打つこともありません。行うのは、発育の段階を見たうえでの体の評価とトレーニングで、結果はトレーニングのたびに保護者の方へ口頭でお伝えしています。
ジュニアゴルフのご相談のご案内
しぼるかどうかは、年齢だけでは決められません。いまどれくらいゴルフをしていて、ほかにどんな運動をしているか、痛みはないか。まずはそこを整理するところから始めましょう。代表の岡本がTPIのJunior Level 2で学んだことは資格のページにまとめています。お子さんの状況に合わせたご相談は、LINEでお受けしています。
TPI Junior 2
ゴルフにしぼる前に、
いまの体と生活を見る
担当は基本的に代表の岡本隼人。日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)で、TPI(Titleist Performance Institute)のJunior Level 2の認定を受けています。学年や暦の年齢ではなく、その子の発育の段階を見て、何をどの順番で育てるかを考えます。スイングの技術指導はしていません。
完全個室 | 六本木駅5番出口徒歩4分 | 初回は保護者の方の同席をお願いしています
主な参考(タップで開く)
- Titleist Performance Institute. Junior Level 2 Certification(講座ページ). https://www.mytpi.com/certification/junior-level-2(2026年10月27日閲覧)
- Brenner JS; Council on Sports Medicine and Fitness. Sports Specialization and Intensive Training in Young Athletes. Pediatrics. 2016;138(3):e20162148. doi:10.1542/peds.2016-2148(米国小児科学会の臨床報告。要旨を確認・2026年10月27日閲覧)
- LaPrade RF, Agel J, Baker J, et al. AOSSM Early Sport Specialization Consensus Statement. Orthop J Sports Med. 2016;4(4):2325967116644241. doi:10.1177/2325967116644241(米国整形外科スポーツ医学会の専門家会議・2015年10月。本文を確認・2026年10月27日閲覧)
- Jayanthi NA, LaBella CR, Fischer D, Pasulka J, Dugas LR. Sports-specialized intensive training and the risk of injury in young athletes: a clinical case-control study. Am J Sports Med. 2015;43(4):794-801. doi:10.1177/0363546514567298(7〜18歳・解析1,190名の症例対照研究。要旨を確認・2026年10月27日閲覧)
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- Lloyd RS, Cronin JB, Faigenbaum AD, et al. National Strength and Conditioning Association Position Statement on Long-Term Athletic Development. J Strength Cond Res. 2016;30(6):1491-1509. doi:10.1519/JSC.0000000000001387(要旨を確認・2026年10月27日閲覧)


