先に結論を書きます。速い素振りは直後のヘッドスピードを小さく押し上げますが、ボール初速に十分つながらなかった研究もあります。素振りと打つスイングの一致度は人によって違います。ラウンド前は、身体を動かしてから振るほうが研究の裏づけがあります。素振りは「何のために振るか」を決めてから使う道具です。
この記事は、六本木の完全個室パーソナルジム Disport World で、TPI認定(Fitness 2/Power 2)と日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)の岡本隼人が、ゴルファーの身体を実際に測ってきた経験から書いています。扱うのはスイングの技術ではなく、身体の側の原因です。ゴルフのパーソナルトレーニング(六本木・TPI測定)→
・素振りの効果は「速さ」「動き」「準備」の3つで別々に考える。どれを狙うかで振り方が変わる
・速さ:軽いクラブを使ったウォームアップで、上級者13名のヘッドスピードは対照より上がったが、自体重のジャンプ系ウォームアップとの差はなかった(Bliss ら、2021)。重さ違いのクラブを使う素振りでは、上級者12名のヘッドスピードが約1.2m/s上がった一方、ボール初速は変わらず、効果は最初のセットでほぼ消えた(Hébert-Losier ら、2021)
・動き:コーチ3名とアマ6名の比較で、素振りとボールを打つスイングの動きの一致度は、人によっても、同じ人の中でもばらついた(Carson ら、2014)
・準備:23研究のまとめでは、動きを伴うウォームアップや負荷をかけるウォームアップは成績を高める傾向があり、静的ストレッチだけは劣っていた(Ehlert ら、2019)
・素振りで速く振れない、形が変わらないときは、技術の前に身体の可動域と片脚の安定性を測る
ゴルフの素振りに効果はあるのか——「何のための素振りか」で答えが変わる
素振りに効果があるかどうかは、「何を良くしたいか」で答えが変わります。速く振れるようになりたいのか、スイングの形を変えたいのか、ラウンドの1番ホールから動ける身体にしたいのか。この3つは、研究で確かめられていることも、適した振り方も違います。
この記事では、素振りを「速さ」「動き」「準備」に分け、それぞれ一次資料で確かめられた範囲だけを整理します。ヘッドスピードを上げるための筋力トレーニングの種目はヘッドスピードを上げるトレーニングに、年代別の平均値は年代別のヘッドスピード平均にまとめているので、ここでは繰り返しません。
| 目的 | 典型的な振り方 | 研究で確かめられていること | まだ分からないこと |
|---|---|---|---|
| 速さ | 軽いクラブ・重さ違いのクラブで全力で振る | 直後のヘッドスピードが小さく上がる例がある。ボール初速に十分つながらない例もある | 数週間続けたときの効果(今回、査読付きの研究では確かめられなかった) |
| 動き | ゆっくり、形を確かめながら振る | 素振りと打つスイングの一致度は人によって違う | どんな人なら素振りの形が本番に移りやすいか |
| 準備 | ラウンド前に身体を温めてから振る | 動きを伴うウォームアップは成績を高める傾向。静的ストレッチだけは劣る | ウォームアップがケガを減らすか(研究の結論が割れている) |
速さ:軽いクラブの素振りでヘッドスピードは上がるのか
軽いクラブを使った速い素振りは、直後のヘッドスピードを上げることが報告されています。ただし、その差は小さく、ほかのウォームアップと比べて上乗せがなかったり、ボール初速に結びつかなかったりした研究もあります。「普段のクラブより速く振る」ことを狙う練習は、オーバースピードトレーニングと呼ばれます。今回確かめられた査読付きの研究は、どちらも「ウォームアップとして振った直後」の効果を測ったものです。
| 研究 | 対象 | やったこと | 結果 |
|---|---|---|---|
| Bliss ら、20211 | 上級の成人男性ゴルファー13名(ハンディキャップ平均1.0) | 通常のウォームアップ、自体重のジャンプ系ウォームアップ、軽いクラブ(ドライバーより約20%・10%軽いもの等)での素振りを、7日あけて比較 | ジャンプ系と軽いクラブの素振りは、どちらも対照よりヘッドスピードとキャリーが伸びた。両者の間に差はなかった |
| Hébert-Losier ら、20212 | 競技ゴルファー12名(ハンディキャップ3未満) | 重さの違う練習用クラブを使う市販のウォームアップ法と通常のウォームアップを無作為の順で比較し、自分のドライバーで5球×5セットを打つ | 最初のセットでヘッドスピードが約1.2m/s(2.6mph)速くなったが、ボール初速は有意に変わらず、ミート率は下がった。2セット目以降は差がほぼ消えた |
2つの研究から言えるのは、ヘッドが速くなっても、そのままボールに伝わるとは限らないということです。Bliss らの研究では、軽いクラブの素振りの上乗せは、自体重のジャンプ系の運動と同じ程度でした。研究者は、軽いクラブを使う方法に、ジャンプ系の運動を上回る利点はないようだとまとめています。
数週間続けたときの効果は、今回の調べでは査読付きの研究として確かめられなかったため、数字を載せません。どちらの研究も対象は上級者12〜13名で、平均的なアマチュアに当てはまるかは分かっていません。
動き:素振りとボールを打つスイングは同じ動きなのか
素振りとボールを打つスイングは、同じ動きになるとは限りません。どのくらい一致するかは人によって違い、同じ人の中でも測る部位や方向で違いました。素振りで作った形が、そのまま本番に移る人もいれば、移りにくい人もいるということです。
Carson らは、PGAのプロコーチ3名とアマチュア6名に、ボールを打つスイングと打たない素振りを10回ずつ行ってもらい、動きのばらつき方を比べました(2014)3。結果は、素振りと打つスイングの動きの制御が「同等」と言える人と言えない人に分かれ、同じ人の中でも、手の位置のばらつきが、左右・上下方向と前後方向とで逆の傾向になることがありました。研究者は、素振りの効果はすべてのゴルファーに同じではないと認識すべきだとしています。
素振りでは右足に乗れるのに、打つと乗れない。こうしたずれは技術だけでなく、可動域や片脚で支える力が足りず、「当てる」課題が加わった瞬間に代わりの動きが出る、という身体の問題であることもあります。体重移動が素振りどおりにいかない方は、体重移動ができない身体の原因も参考にしてください。
股関節や胸椎の回旋、片脚バランスなど16項目を実測し、左右に分かれる項目は両側とも測ります。素振りでは出せる動きが本番で出ないとき、身体の側にどの制限があるかを特定し、レポートPDFにしてお渡しします。
TPIフィジカルアセスメントの詳細を見る準備:ラウンド前の素振りはウォームアップになるのか
素振りはウォームアップの一部にはなりますが、素振りだけより、身体を動かしてから振るウォームアップのほうが研究の裏づけがあります。動きを伴うウォームアップや、負荷をかけるウォームアップは成績を高める傾向があり、静的ストレッチだけのウォームアップは劣っていました。
Ehlert らは、ゴルフ前のウォームアップを扱った23本の研究(観察研究9本・介入研究14本)をまとめました(2019)4。多くのゴルファーはウォームアップを習慣にしていないか、しても短く、介入研究では静的ストレッチは他の方法より劣り、成績を下げる可能性もあるとされています。一方で、ウォームアップの習慣とケガの関係は、研究によって結果が割れていて結論が出ていません。
ウォームアップを続けた効果を見た研究もあります。Fradkin らは、男性ゴルファー20名を年齢とハンディキャップでそろえて2群に分け、一方にウォームアップを兼ねた運動プログラムを5週間続けてもらいました(2004)5。運動群のヘッドスピードは1週目から7週目で24.0%増え、対照群はほとんど変わりませんでした。ただし、これは素振りだけの効果ではなく運動プログラム全体の効果で、ヘッドスピードは2次元の動画解析で測ったものです。人数も少なく、この数字をそのまま一般のゴルファーの期待値にはできません。
ラウンド前の準備で大切なのは、素振りの回数より順番です。身体を動かして関節を回せる状態にしてから、短いクラブ、長いクラブの順に振っていく。具体的な手順はラウンド前ウォームアップ15分にまとめています。
目的別に、素振りをどう組み立てればいいか
素振りは、目的を1つ決めてから振ると効果を確かめやすくなります。速さを狙う日はボールを打つ前の数セットだけ、動きを狙う日はゆっくり、準備の日は身体を動かしてから。3つを同じ素振りで済ませようとしないことが出発点です。
速さを狙う素振り
身体を温めてから、全力で数回振ります。研究で効果が見られたのは「振った直後」で、セットを重ねると差が薄れた例もあります。速く振ったあとは、実際にボールを打ってヘッドスピードとボール初速の両方を見てください。ヘッドだけ速くなってボールが速くならないなら、芯で捉えられていない可能性があります。
動きを確かめる素振り
ゆっくり、1つのことだけを確かめます。たとえば右打ちなら「バックスイングで右股関節に乗れているか」。素振りでできたら、同じことを、ボールを置いて小さい振り幅で確かめます。素振りと打つスイングの一致度は人によって違うため、素振りだけで形が変わったと判断しないことが大切です。
準備としての素振り
いきなり全力で振らず、股関節・胸椎・肩を動かしてから振り始めます。静的ストレッチだけで済ませず、動きを伴う運動を入れてから、振り幅を少しずつ大きくしていきます。
左打ちの方は、文中の左右(リード側・トレイル側)を逆にして読んでください。右打ちのリード側は左、トレイル側は右です。
軽いクラブ・重いクラブでの全力の素振りは、身体が温まる前に行わないでください。振っている途中や振ったあとに、腰・肘・手首・肩に鋭い痛みが出たら、その日の速く振る練習は中止してください。痛みをかばって振り続けると、別の部位で代わりに回す動きが出やすくなります。周りに人や物がないことも確かめてください。
素振りで速く振れない・形が変わらないのはなぜか——身体の3つの原因
素振りを重ねても速く振れない、形が変わらないときは、技術の前に身体を疑ってください。制限があると、いくら振ってもその中で振るしかありません。代表的なのは次の3つです。
胸椎が回らない
バックスイングで右へ、フォローで左へ胸椎(背骨の胸の部分)が回らないと、腕だけで振る、または腰で回す形になります7。速く振ろうとするほど、足りない分を別の場所で補う動きが大きくなります。
片脚で支えられない
バックスイングでは右脚、ダウンスイングからフォローでは左脚に乗ります。乗った脚で身体を支えられないと、身体が横に流れ、速く振るほどバランスを崩します8。素振りでは速くても、ボールを打つと減速する方は、ここを確かめてください。飛距離を伸ばすための身体づくり全体はゴルフの飛距離を伸ばす方法にまとめています。
現場で見えていること
私たちのTPIフィジカルアセスメントでは、16項目を実測し、左右に分かれる項目は両側とも測ります。その中で、「素振りではきれいに回れるのに、打つと回れない」と相談される方を見ると、股関節や胸椎の回旋が片側だけ足りない、片脚で立つと身体が揺れる、といった身体の制限が見つかることがよくあります。素振りの形が良いことは、身体に余裕があることの証明にはなりません。
もう1つよく見かけるのが、速く振る練習をたくさん重ねているのに、身体が温まる前から全力で振り始めている方です。研究で効果が見られたのは「身体を温めてから振った直後」で、量を増やすほど良いという結果ではありません。私たちは、まず今の身体を測り、足りない可動域と片脚の安定性を作ってから、速く振る練習を足す順番をすすめています。TPIの考え方と実例はTPIトレーニングについてで紹介しています。
よくある質問
ゴルフの素振りに効果はありますか?
目的によります。軽いクラブなどでの速い素振りは直後のヘッドスピードを小さく上げた研究がありますが、ボール初速に十分つながらなかった例もあります。形を確かめる素振りは、打つスイングとの一致度が人によって違います。速さ・動き・準備のどれを狙うかを決めて振ってください。
軽いクラブで素振りするとヘッドスピードは上がりますか?
上級者13名の研究では、軽いクラブでの素振りのあと、ヘッドスピードとキャリーが対照より伸びました。ただし、自体重のジャンプ系ウォームアップとの差はありませんでした。数週間続けたときの効果は、今回、査読付きの研究では確かめられませんでした。
素振りとボールを打つスイングは同じですか?
同じになるとは限りません。コーチ3名とアマ6名を比べた研究では、素振りと打つスイングの動きの一致度が人によって違い、同じ人の中でも方向によって違いました。素振りでできた形は、ボールを置いて小さい振り幅で確かめてください。
ラウンド前は素振りだけで準備になりますか?
素振りだけより、身体を動かしてから振るほうが研究の裏づけがあります。23研究のまとめでは、動きを伴うウォームアップや負荷をかけるウォームアップは成績を高める傾向があり、静的ストレッチだけは劣っていました。
素振りを毎日何回すればいいですか?
回数の目安を示した一次資料は、今回確かめられませんでした。速く振る素振りの研究では、効果は振った直後に見られ、セットを重ねると薄れた例もあります。回数より、目的を1つ決めて振り、打って結果を確かめることをすすめます。
TPI測定のご案内
素振りの効果を上げたいなら、先に「今の身体で、どこまで回れて、どこまで支えられるか」を測ってください。股関節や胸椎の回旋、片脚の安定性に制限があれば、素振りの回数を増やすより、その制限を作るほうが先です。TPIフィジカルアセスメントでは、16項目を実測して、どの身体の制限がスイングのどの特徴と結びつきやすいかをお伝えします。まず動いて確かめたい方は、トレーニング体験のご案内もご覧ください。
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主な参考(タップで開く)
- Bliss A, Livingstone H, Tallent J. Field-based and overspeed potentiated warm-ups increase clubhead speed and drive carry distance in skilled collegiate golfers. J Sport Exerc Sci. 2021;5(2):107-113.(上級の成人男性ゴルファー13名)doi:10.36905/jses.2021.02.03/掲載誌のページ(jses.net)
- Hébert-Losier K, Wardell GL. Acute and persistence of the effects of the SuperSpeed Golf weighted-club warm-up on golf driving performance and kinematics. Sports Biomech. 2024;23(6):709-727(2021年オンライン公開).(競技ゴルファー12名)doi:10.1080/14763141.2021.1887344/PubMed 36112940
- Carson HJ, Collins D, Richards J. "To hit, or not to hit?" Examining the similarity between practice and real swings in golf. Int J Golf Sci. 2014;3(2):103-118.(PGAプロコーチ3名・アマチュア6名)doi:10.1123/ijgs.2014-0003
- Ehlert A, Wilson PB. A systematic review of golf warm-ups: behaviors, injury, and performance. J Strength Cond Res. 2019;33(12):3444-3462.(23研究のシステマティックレビュー)doi:10.1519/JSC.0000000000003329/PubMed 31469762
- Fradkin AJ, Sherman CA, Finch CF. Improving golf performance with a warm up conditioning programme. Br J Sports Med. 2004;38(6):762-765.(男性ゴルファー20名)doi:10.1136/bjsm.2003.009399/PubMed 15562177
- Gulgin H, Armstrong C, Gribble P. Weight-bearing hip rotation range of motion in female golfers. N Am J Sports Phys Ther. 2010;5(2):55-62.(右打ちの女子大学ゴルファー15名)PubMed 21589662/PMC2953391(全文)
- Titleist Performance Institute. The Seated Trunk Rotation Test(mytpi.com・2026年10月21日閲覧、公開日の表示なし)。https://www.mytpi.com/articles/screening/the-seated-trunk-rotation-test
- Titleist Performance Institute. Sway/Slide(Swing Characteristics。mytpi.com・2026年10月21日閲覧、公開日の表示なし)。https://www.mytpi.com/improve-my-game/swing-characteristics/sway/https://www.mytpi.com/improve-my-game/swing-characteristics/slide


