2026年に発表された33研究・798名のメタ分析では、対照群を置いた26研究の平均で、トレーニングをした群は対照群より1.05m/s速くなり、キャリーは9.33m伸びました。ただしこれは群の平均で、上がり幅は人によって大きく違います。私たちの考えでは、分かれ目は、あなたに足りないもの——回る可動域か、筋力か、速く力を出す能力か、その力をスイングで使う順序か——に合った種目を選べているかどうかです。
この記事は、六本木の完全個室パーソナルジム Disport World で、TPI認定(Fitness 2/Power 2)と日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)の岡本隼人が、ゴルファーの身体を実際に測ってきた経験から書いています。扱うのはスイングの技術ではなく、身体の側の原因です。ゴルフの身体づくり(記事一覧・体験)→
・トレーニングでヘッドスピードは上がる。2026年のメタ分析(33研究・798名)で、対照群を置いた26研究の平均は+1.05m/s(95%信頼区間0.39〜1.71)、キャリー+9.33m。ただし証拠の確実性は「低い」
・上がり幅は人で違う。平均70.7歳の男性は8週間で約+1.75m/s(Thompson ら、2007)。筋トレ歴3年以上の上級者20名は、9週間でヘッドスピードが変わらなかった(Parker ら、2017)
・一般的な筋トレだけ(平均+1.6%)より、ゴルフに近い動きを速く行う種目を組み合わせたほうが伸びが大きかった(平均+4.1%、Uthoff ら、2021)
・オーバースピード用のスティック(SuperSpeed Golf)でのウォームアップは、直後に+2.6mph出ても2セット目以降はほぼ消えた(Hébert-Losier ら、2024)。筋力とパワーの代わりにはならない
・回れない人は可動域、筋力が足りない人は筋力、筋力があるのに遅い人は速く動く種目から。何から鍛えるかは、まず測って決める
トレーニングでヘッドスピードは何m/s上がるのか——33研究のメタ分析の答え
平均すると、およそ1m/sです。2026年8月にSports Medicine誌に掲載されたメタ分析(複数の研究の結果を統計的にまとめる方法。Johansen ら)は、4週間以上の身体トレーニングの効果を調べた33研究・798名をまとめました。対照群と比べる形の26研究を統合すると、トレーニングをした群は対照群より、ヘッドスピードが1.05m/s、ボール初速が2.20m/s速くなり、キャリーは9.33m(約10ヤード)伸びていました。
| 指標 | 対照群との差(平均) | 95%信頼区間 |
|---|---|---|
| ヘッドスピード | +1.05m/s | 0.39〜1.71m/s |
| ボール初速 | +2.20m/s | 1.16〜3.23m/s |
| キャリー | +9.33m | 5.12〜13.55m |
| トータル飛距離 | +10.55m | 6.30〜14.81m |
読むときの注意が3つあります。1つめに、これは「群の平均の差」です。0.39〜1.71m/sは平均の効果がどのあたりにあるかの幅で、「誰でもこの範囲に収まる」という意味ではありません。大きく伸びる人も、ほとんど変わらない人もいます。2つめに、証拠の確実性は「低い」と評価されています。1研究あたりの人数は平均24名ほどと少なく、研究が増えれば数字は動き得ます。3つめに、研究の多くは筋トレ・ジャンプ・ストレッチ・体幹を組み合わせたプログラムで(Ehlert、2020)、「この種目を何回で何m/s」という答えではありません。
2020年の系統的レビュー(決まった手順で研究を集めて評価したもの。Ehlert、25研究)も方向は同じで、有意差が出た結果だけを集めると、ヘッドスピード・ボール初速・飛距離の平均の増加は4〜6.4%でした。同じレビューは、群の平均だけでなく一人ひとりの反応も報告すべきだとしています。自分の伸びしろは、平均ではなく「自分に何が足りないか」から見るほうが正確だと、私たちは考えています。今のヘッドスピードの位置と飛距離の換算はヘッドスピードの平均(年齢別・男女別)にまとめています。
誰が、何週間、何をして、どれだけ速くなったか——研究別に見る
伸び幅は「誰が」「どんな状態から」始めたかで大きく変わります。対照群のある研究を中心に並べました。
| 研究 | 対象 | 期間 | 内容 | ヘッドスピードの結果 |
|---|---|---|---|---|
| Thompson ら、2007 | 男性18名(平均70.7歳)。無作為に2群 | 8週 | 柔軟性・体幹の安定・バランス・筋力の機能的トレーニング | 最大値が時速127.3→133.6km(秒速約35.4→37.1m)。対照群は変わらず |
| Oranchuk ら、2020 | 大学生12名(男女各6名)。無作為に2群 | 8週 | 高重量のバーベル中心の筋力・パワーと、自重・回旋中心を比較 | 平均値の伸びが自重・回旋の群を上回った。最大値は有意差なし |
| Alvarez ら、2012 | ハンディ5以下の男性10名。無作為に2群 | 18週 | 最大筋力6週→爆発的筋力6週→重いクラブ・加速チューブでの素振り6週 | 筋力は6週で、ドライバーの成績(ボール初速など)は12週以降に上昇。5週休んでも保たれた |
| Shaw ら、2024 | ジュニア18名。成熟度とハンディで2群 | 12週・週2 | 通常の練習に段階的な筋トレを追加 | ドライバーと6番アイアンのヘッドスピード・キャリーが対照群より伸びた |
| Hegedus ら、2016 | 女性29名(平均58.1歳)。無作為に2群 | 10週・週3 | 一般的な筋トレと、ゴルフの動きに近い筋トレを比較 | 両群ともドライバーのスピードと飛距離が上がり、群の差はなし |
| Doan ら、2006 | 大学生16名。前後比較 | 11週・週3 | 筋力・パワー・柔軟性 | +1.6%(飛距離で約4.9m相当)。ショットのばらつきは悪化せず |
| Parker ら、2017 | 上級の競技者20名(筋トレ歴3年以上)。群は本人が選択 | 9週 | 等速性マシン(動く速さが一定になる機械)での回旋パワーとスクワットを追加 | 両群とも変わらず。追加した群はボール初速とキャリーが比較群より伸びた可能性がある |
表から読めることは2つです(研究ごとに対象も測り方も違うので、横に並べた私たちの読みです)。1つめは伸びしろで、平均70.7歳の集団は8週間で約1.75m/s上がった一方、長く鍛えてきた上級者は9週間で変わりませんでした。すでに鍛えている人ほど、同じ期間での上がり幅は小さくなると考えられます。2つめに、ヘッドスピードが変わらなくてもボール初速やキャリーが伸びる場合があります(Parker ら)。ボール初速はヘッドスピードとミート率の掛け算なので、身体の変化が当たり方に出ることもあります。
ヘッドスピードは身体の何で決まるのか——力・距離・順序
身体の側から見ると、ヘッドスピードは「どれだけの力を」「どれだけ長い距離で」クラブにかけ、「どんな順序で」伝えるかで決まります。TPI(Titleist Performance Institute。ゴルファーの身体評価とトレーニングを体系化し、専門家に教えている米国の機関。TPIとは)は研究者の知見を引いて、主な道を「より大きな力をかける」「より長い距離にわたって力をかける」の2つと紹介し、そのうえで力の伝わる順序を評価しています。
| 要素 | 身体の何が決めるか | 根拠 | 鍛える方向 |
|---|---|---|---|
| 力 | 地面を押す力、上半身を速く押し出す力 | 20研究のメタ分析(Brennan ら、2024)で最も強く関係したのはジャンプの力積(地面を押す力×時間。相関係数に直して約0.68)、次いで上半身の爆発的な力(約0.58)。TPIはPGAツアー選手の垂直の床反力を平均で体重の198%と公表 | 筋力→パワー |
| 距離 | 胸椎・股関節の回旋の可動域 | 柔軟性の数値そのものは関係しなかった(約−0.04)。一方TPIは、回る能力が制限されると力をかけられる道のりも短くなると説明 | 速さの前提としての可動域 |
| 順序 | 骨盤→胴体→腕→クラブの順に速度のピークが来るか、上下を分けて回せるか | TPIは、この4部位が前より速く、少し遅れてピークを迎える動きを正しい順序(キネマティックシーケンス)とする | 分離とタイミング |
とくに「力」は、ただの筋力ではなく「短い時間で出せる力」です。TPIの3Dデータでは、ツアー選手のドライバーのダウンスイングはおよそ0.23〜0.30秒。この間に地面を押し、胴体を回し、腕とクラブに速度を渡します。メタ分析でも、上半身の爆発的な力(約0.58)は上半身の最大筋力(約0.45)より強く関係していました。TPIは垂直に地面を押す動きを「ヘッドスピードと最も密接に関係する運動力学の変数の1つ」とし、遅いゴルファーほど押す力のピークがインパクト近くまで遅れると説明しています。地面の使い方はゴルフの地面反力、回旋パワーは体幹トレーニングが飛距離に直結しない理由、握る力はゴルフに握力は必要か、上下を分けて回す考え方はゴルフの捻転差(X-Factor)で扱っています。
筋トレでヘッドスピードは上がるのか——一般的な筋トレと、速く動く種目の違い
上がります。ただし一般的な筋トレだけより、ゴルフに近い動きを速く行う種目を組み合わせたほうが伸びが大きいと報告されています。筋トレの方法別に比べた系統的レビュー(Uthoff ら、2021、20研究)では、スクワットやベンチプレスのような一般的な筋トレ(13研究)の平均がヘッドスピード+1.6%・飛距離+4.8%、ゴルフに近い動きの種目を組み合わせたもの(7研究)は+4.1%・+5.2%でした。著者らは、ゴルフに近い動きを高い速度で行う種目を含めた8週間のプログラム(3〜4セット×5〜15回)が最も効果的だとまとめています。
| 種類 | 例 | 研究で起きたこと | 向いている人 |
|---|---|---|---|
| 一般的な筋トレ | スクワット、デッドリフト | 平均でヘッドスピード+1.6%(13研究) | 筋力が目安に届かない人 |
| 筋トレ+ゴルフに近い動きを速く | メディシンボール投げ、ケーブルの回旋、ジャンプ | 平均でヘッドスピード+4.1%(7研究) | 筋力の土台がある人 |
| 打つ直前の少量のパワー種目 | 練習前に行う下半身のパワー種目 | 直後にヘッドスピードが小さく上昇(Brennan ら、2026) | 練習・ラウンド前の準備 |
| オーバースピード | 重さを変えたスティックを全力で振る | ウォームアップ直後に+2.6mph、2セット目以降はほぼ消えた(Hébert-Losier ら、2024) | 筋力・パワーの割にスイングが遅い人 |
一般的な筋トレに意味がないわけではありません。大学ゴルファー12名の無作為化研究(Oranchuk ら、2020)では、高重量のバーベル種目中心の8週間で平均ヘッドスピードが対照の計画より伸び、ヘッドスピードとの相関はパワークリーン(床のバーベルを肩まで一気に引き上げる種目)r=0.70、バックスクワットr=0.64でした。女性アマ29名の研究(Hegedus ら、2016)では、一般的な筋トレとゴルフに近い筋トレに差はありませんでした。
TPIの考え方は、「筋力が要るのか、スピードが要るのか」を先に判定することです。TPIアドバイザリーボードのジェイソン・グラス氏は、数千人のプロとアマチュアを分析した結果として、下半身の筋力の目安を「スプリットスクワットで体重の150%(体重に加え、体重の50%ぶんのダンベルを持つ)を左右それぞれ8回」としています。届かなければまず筋力、届いているのにパワーが低ければスピードのトレーニングへ、という進め方です。
「筋トレでスイングが崩れる」「身体が硬くなる」という心配もよく聞きます。大学ゴルファー16名が11週間、筋力・パワー・柔軟性を鍛えた研究(Doan ら、2006)では、ヘッドスピードが上がり、ショットのばらつきやパットの距離感は悪くなりませんでした。ストレッチ、ゴムチューブの筋トレ、バランス練習を組み合わせた男性15名の8週間の研究(Lephart ら、2007)では、測った柔軟性の項目がすべて上がっています。相性の考え方はゴルフと筋トレは相性が悪い?で。
座位体幹回旋、股関節の内旋・外旋、骨盤の前後傾と回旋、体幹回旋分離(上下を分けて回す力)、片脚立ちを含む16項目を実測します。基準に届かない項目と、そこから出やすいスイング特性を特定して、数値でレポートPDFにしてお渡しします。
TPIフィジカルアセスメントの詳細を見るヘッドスピードを速くするトレーニング8種目——足りないものから選ぶ
種目は「可動域」「筋力」「パワー」「スピード」の目的で分けて選びます。全部を同時にやる必要はなく、後半の見分け方で足りないと分かった目的から始めてください。回数は私たちが最初に組むときの目安です。右打ちで説明しているので、左打ちの方は左右を逆に読んでください。
可動域|オープンブック(胸椎の回旋)
横向きに寝て膝を90度に曲げて重ね、両腕を前に伸ばす。上の腕を反対側の床へ開き、胸を開いて2秒止める。膝は離さない。左右10回×2セット。回し方はゴルフの胸椎の回し方で。
可動域|90/90ヒップローテーション(股関節の内旋・外旋)
床に座り、前後の脚の膝をそれぞれ90度に曲げる(前の脚が外旋、後ろの脚が内旋の形)。両膝を左右に倒して前後を入れ替える。左右10回×2セット。乗り方はゴルフの股関節の使い方で。
筋力|トラップバーデッドリフト
六角形のバーの中に立ち、股関節から身体を折りたたんで持ち、足で床を押して立ち上がる。地面を押す力の土台。背中が丸まらない重さで5回×3〜4セット、間は2〜3分休む。
筋力|スプリットスクワット
脚を前後に開き、後ろの膝を床に近づけて戻る。前の膝を内側に入れない。自重で左右8回×3セットから始め、ダンベルで負荷を上げてTPIアドバイザリーボードの目安(体重+体重の50%で左右8回)を目指す。
パワー|反動をつけた垂直跳び
素早くしゃがみ、真上へ最大の高さで跳ぶ。静かに着地し、1回ずつ止まってから次へ。5回×3セット。地面を短い時間で強く押す練習で、ヘッドスピードと関係の強い「跳ぶ力」を鍛える。
パワー|メディシンボール回旋投げ
壁に左肩を向けて立ち、2〜3kgのボールを右腰の横に引く。右脚から左脚へ乗り換えながら、脚→骨盤→胸の順に回して壁へ投げる。腕で投げない。反対向きも行い、左右各5〜8回×3セット。男性48名の研究(Read ら、2013)で、回旋投げとヘッドスピードの相関はr=0.67。
分離|ハーフニーリング・ケーブルリフト
ケーブルに近い側の膝を床につけた片膝立ちで、低い位置の取っ手を、身体の前を通して反対側の斜め上へ引き上げる。骨盤は正面のまま、胸だけを回す。左右8〜10回×3セット。
スピード|軽いクラブ・棒でのスピードスイング(条件つき)
可動域・筋力・パワーの土台がある人だけ。軽い棒やクラブを全力で振り、1本ごとに十分休む。本数は少なく、スピードが落ちたらその日はやめる。向き不向きは次の章で。
ジャンプ、メディシンボール投げ、全力の素振りは、関節に速い負荷がかかります。痛みのある部位があるとき、動作の途中で腰を反らせたり膝が内側に入ったりするときは中止してください。反動をつけて可動域を押し込むストレッチも避けてください。メディシンボールは周囲に人や割れ物がない場所で、跳ね返りに注意して投げてください。重さを扱う種目は、はじめは指導者のもとで行うことをすすめます。
オーバースピード(軽い棒で速く振る練習)は効くのか
「その場で速く振れる」ことは確かめられていますが、オーバースピードの素振りだけを続けた効果を対照群つきで確かめた研究は、今回確認した範囲では見つかりませんでした。土台がある人が、仕上げに少ない本数で使うのが妥当です。
ハンディキャップ3未満の競技ゴルファー12名が、SuperSpeed Golfの重さを変えたスティックでのウォームアップと通常のウォームアップを無作為の順で行った研究(Hébert-Losier ら、2024)では、最初のセットでヘッドスピードが2.6mph(約1.2m/s)上がりました。しかしボール初速は変わらず、ミート率は大きく下がり、2セット目以降はほぼすべての変化が消えています。著者らのまとめは「1番ホールのティーショットでは速くなるが、2番ホール以降の効果はごく小さい」です。一方、上級アマ男性18名の研究(Brennan ら、2026)では、打つ前に下半身のパワー種目を少量行うと、ヘッドスピード・ボール初速・キャリーがそろって小さく上がりました。ラウンド前の準備はラウンド前ウォームアップ15分で。
TPIの公式サイトに載った理学療法士クリス・フィン氏の寄稿記事は、オーバースピードは「パワートレーニングでも筋力トレーニングでもなく、単独の解決策でもない」とし、スイングの速さがパワーテストの水準を上回っている人や、回旋のテストを通らない人には向かないとしています。Alvarez らの18週の研究でも、重いクラブや加速チューブでの素振りの6週間は、それまでに上がったドライバーの成績を保ったものの、上積みはありませんでした。素振りの本数を増やす前に、力と可動域の土台を確かめてください。
何週間で上がるのか——週2〜3回・8〜12週と、遅れて出る伸び
研究の多くは週2〜3回・8〜12週で変化を確かめています。ただし筋力が先に上がり、スイングの速さに出るまでには時間差があります。8週で途中経過を見て、12週前後で判断するのが現実的な目安です。
Uthoff らのレビューは8週間のプログラムが最も効果的だったとしています。Alvarez らの研究では最大筋力と爆発的筋力が6週で上がった一方、ドライバーの成績が上がったのは12週以降で、著者らは「筋力の伸びをスイングに移すには時間が要る」と結論しています。研究の組み立てを参考にすると、12週は次のように分けられます。
0週:測る
胸椎と股関節の回旋、上下の分離、下半身の筋力、跳ぶ力・投げる力、今のヘッドスピードを記録し、足りないものを1〜2つに絞る。
1〜6週:可動域と筋力
足りない可動域を作りながら、デッドリフトやスプリットスクワットで筋力を上げる(週2〜3回)。
7〜12週:パワーへ比重を移す
ジャンプ、メディシンボール投げ、ケーブルの回旋を速く行い、筋力の種目は量を減らして保つ。大学ゴルファーの10週研究(Bishop ら、2026)も筋力6週→パワー4週の組み立て。
12週:測り直す
筋力とパワーが足りているのにスイングが遅ければ、スピードの練習(少ない本数)とレッスンを足す。足りなければ②③を続ける。
これは研究の組み立てを参考にした一例で、期間や伸び幅を約束するものではありません。年齢、トレーニング経験、痛みの有無で進み方は変わります。
50代・60代・女性でもヘッドスピードは上がるのか
上がります。平均70.7歳、52.4歳、47.2歳の集団や、平均58.1歳の女性の研究で、トレーニングのあとにヘッドスピードが上がっています(対照群のない研究を含みます)。
最も確かなのは、平均70.7歳の男性18名を無作為に分けた研究(Thompson ら、2007)で、8週間の機能的トレーニングで最大ヘッドスピードが約35.4m/sから37.1m/sに上がり、対照群は変わりませんでした。平均52.4歳の17名(Hetu ら、1998)と平均47.2歳の男性15名(Lephart ら、2007)の8週間の研究でも上がっています(どちらも前後比較)。TPIは公式記事で、年齢が上がるほど、筋力の不足と同じくらい可動域の低下も不利になると書いています。
女性だけを対象にした研究は9本(うちトレーニングの研究は6本)と少ないものの、系統的レビュー(Robinson ら、2024)は、トレーニングの前後でヘッドスピードが上がったと報告しています(対照群との比較ではありません)。大学ゴルファーの10週研究(Bishop ら、2026)は、女性では上半身の力と、それを素早く出す力がとくに重要だとしています。60代は60代のゴルフは「身体管理」で決まる、女性は女性ゴルファーの飛距離アップも参考に。持病や関節の痛みがある方は、下の受診の目安を先に確認してください。
自分に足りないものの見分け方——何から鍛えるかは測って決める
何から鍛えるかは、「回れるか」「筋力は足りるか」「速く力を出せるか」「スイングで使えているか」の4段階の、どこで詰まっているかで決まります。TPIも、パワーと筋力のテストで「筋力が要るのか、スピードが要るのか」を先に判定する考え方を取っています。
| 段階 | 確かめ方(自宅でできる目安) | 足りないときに優先すること |
|---|---|---|
| 1. 回れるか・上下を分けられるか | 膝と足をそろえて座り、クラブを肩に担いで胸を左右に回す(TPIの座位体幹回旋:両側で45度を超えるか)。5番アイアンの構えで上半身を止めて骨盤だけ回す/下半身を止めて胸だけ回す | 可動域と分離(①②⑦) |
| 2. 筋力は足りるか | スプリットスクワットで、体重+体重の50%ぶんのダンベルを持って左右8回できるか | 筋力(③④) |
| 3. 速く力を出せるか | 垂直跳び、座ってのメディシンボール胸投げ、回旋投げの記録(男性48名の研究でヘッドスピードとの相関は回旋投げr=0.67、胸投げr=0.63) | パワー(⑤⑥) |
| 4. スイングで使えているか | 1〜3が十分なのにヘッドスピードが低い | 地面を押すタイミングと順序。スピードの練習(⑧)とレッスン |
TPIの骨盤回旋テストでは、骨盤だけを回せないとき、補助者が上半身を押さえると回せるかを見ます。押さえると回せるなら安定性の問題、押さえても回せないなら可動域の問題です。同じ「回らない」でも、やることが変わります。ただし自宅での確認は目安で、記録は測り方と道具で変わり、角度も目測では誤差が出ます。正確に知りたいときは同じ手順で測れる場所で測り、数字で残してください。16項目の全体はTPI 16項目の全解説にまとめています。
現場で見えていること
ヘッドスピードの相談を受けたとき、私たちが最初にするのは種目の提案ではなく測定です。TPIフィジカルアセスメントでは、回旋の可動域、上下の分離、片脚の安定性など16項目を実測し、P/L/Fの3段階で判定します。スイング解析ではないので、この測定ではヘッドスピードは測りません(スイングスピードは、トレーニング体験や継続のトレーニングの中で測れます)。身体の結果は、練習場や弾道計測器の数字と突き合わせていただくと確かめやすくなります。
測ってみると、よく見る形は2つです。1つは、筋トレや素振りを熱心に続けているのに、胸椎の回旋や上下の分離で基準に届かない項目が残っている方。力をかける道のりが短く、下から順に伝わりにくい状態なので、重さやスピードを足す前に可動域と分離から手をつけます。もう1つは、可動域は基準に届いているのにスイングの速さが伸びない方で、こちらは下半身の筋力と速く力を出す種目が優先です。室内にはKeiserの空気圧式マシンとメディシンボールがあり、筋力からパワーまで同じ部屋で進められます(フロアと設備)。
研究の数字は群の平均で、あなたの伸び幅は測ってみないと分かりません。だから測り直すことをすすめています。私たちは、6週後に同じ16項目を測り直す再評価(任意。会員の方は追加料金なし、会員以外の方は¥19,800・税込)を用意しており、何が変わり何が変わらなかったかを見て、次に比重を置くものを決め直します。
よくある質問
トレーニングでヘッドスピードはどれくらい上がりますか?
研究の平均では、およそ1m/sです。2026年のメタ分析では、対照群を置いた26研究の平均で+1.05m/s(95%信頼区間0.39〜1.71)、キャリーは+9.33mでした。これは群の平均で、個人では大きく伸びる人もほとんど変わらない人もいます。
ヘッドスピードを上げるには、筋トレと素振りのどちらが効きますか?
土台は筋トレで、素振りは仕上げです。一般的な筋トレにゴルフに近い動きを速く行う種目を組み合わせると、筋トレだけより伸びが大きいと報告されています(平均+4.1%対+1.6%)。オーバースピード用のスティックでのウォームアップは、最初のセットでは速くなっても、2セット目以降はその差がほぼ消えたという研究があります。
何週間でヘッドスピードは上がりますか?
研究の多くは週2〜3回・8〜12週で変化を確かめています。筋力は6週で上がり、ドライバーの成績が上がったのは12週以降だった研究もあります。8週で途中経過を見て、12週前後で判断するのが現実的です。
50代・60代からでもヘッドスピードは上がりますか?
上がります。平均70.7歳の男性を無作為に分けた研究では、8週間の機能的トレーニングで最大ヘッドスピードが約35.4m/sから37.1m/sに上がり、対照群は変わりませんでした。年齢が上がるほど、筋力と並行して胸椎と股関節の回旋を作ることが大切です。
筋トレをするとスイングが崩れたり、身体が硬くなったりしませんか?
確認した研究では、そうした悪影響は見られていません。大学ゴルファーの11週間の研究ではヘッドスピードが上がり、ショットのばらつきやパットの距離感は悪くなりませんでした。ストレッチを含む8週間のプログラムで柔軟性の項目がすべて上がった研究もあります。
SuperSpeedなどのオーバースピード練習は効果がありますか?
その場では速くなりますが、素振りだけを続けた効果を対照群つきで確かめた研究は、今回確認した範囲では見つかりませんでした。競技ゴルファー12名の研究では、ウォームアップ直後に+2.6mph上がってもボール初速は変わらず、2セット目以降はほぼ消えました。土台がある人が少ない本数で使うのが妥当です。
自宅でできるヘッドスピードのトレーニングはありますか?
あります。オープンブックや90/90などの可動域の種目、自重のスプリットスクワット、垂直跳びは自宅でできます。ただし筋力を上げるには負荷を段階的に増やす必要があり、自重だけでは足りなくなる時期が来ます。
TPI測定のご案内
ヘッドスピードを上げるトレーニングは、何が足りないかで中身が変わります。種目を選ぶ前に、回旋の可動域・上下の分離・片脚の安定性のどこが基準に届いていないかを測ってください。体験の流れは体験トレーニングのご案内で。
TPI Physical Assessment
ヘッドスピードを止めているのは可動域か、分離か
16項目で身体の側を仕分ける90分
TPIの16項目を実測し、どの身体の制限がどのスイング特性と結びつきやすいかを評価レポート+プログラムPDFにまとめてお渡しします。単発で完結し、入会は不要です(6週後の再評価は、会員の方は追加料金なし、会員以外の方は¥19,800・税込)。
まず動いて確かめたい方は、体験トレーニング(90分・¥15,000/毎月先着3名さま¥7,500)もお選びいただけます(先着枠は毎月1日起算、定員後は通常¥15,000)。
ウェア・タオル無料 | 完全個室 | 六本木駅徒歩4分
主な参考(タップで開く)
- Johansen MJ, Bishop C, Murray A, Coughlan D, Gejl KD, Aagaard P, Bojsen-Møller J. Effects of Physical Training Interventions on Golf Shot Performance: A Systematic Review with Meta-analysis. Sports Med. 2026(2026年8月27日オンライン先行公開). doi:10.1007/s40279-026-02531-3.(33研究・798名。対照群あり26研究、前後比較7研究。4週間以上の介入)
- Uthoff A, Sommerfield LM, Pichardo AW. Effects of Resistance Training Methods on Golf Clubhead Speed and Hitting Distance: A Systematic Review. J Strength Cond Res. 2021;35(9):2651-2660.(20研究:一般的な筋トレ13・ゴルフ特異的1・組み合わせ7)
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- Brennan A, Murray A, Mountjoy M, et al. Associations Between Physical Characteristics and Golf Clubhead Speed: A Systematic Review with Meta-Analysis. Sports Med. 2024;54(6):1553-1577.(20研究。統合値はzr:ジャンプの力積0.82、上半身の爆発的な力0.67、上半身の筋力0.48、柔軟性−0.04。本文は相関係数に換算)
- Thompson CJ, Cobb KM, Blackwell J. Functional training improves club head speed and functional fitness in older golfers. J Strength Cond Res. 2007;21(1):131-137.(男性18名・平均70.7歳。無作為化)
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