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グリーン上に伸びるゴルファーの長い影。前かがみの姿勢を長く続けるパター練習の負担を考える
Golf Fitness / Body

パター練習で腰が痛くなるのはなぜ?
——前傾を長く保つ負担と、練習の組み立て方

ほとんど動かないパター練習のあとに、なぜか腰が重い。原因は「動き」より「同じ前かがみを長く保つこと」と考えられます。腰にかかる負担の正体と、練習の組み立て方をまとめました。

2026.10.27 読了 約12分

パター練習の腰の痛みには、ボールを打つ衝撃よりも、前かがみの姿勢を数十分単位で保ち続けることで、背中の筋肉(体幹の伸筋)と背骨まわりの組織に負担がたまることが関わっていると考えられます。スイングの腰痛とは原因が違うので、対策も「振り方」ではなく「構え方と練習の区切り方」が中心になります。

上級ゴルファー29名に40分のパター練習をしてもらった研究では、練習のあとに背中の筋持久力のテストの成績が落ち、続けて打ったフルスイングの回旋も小さくなっていました。前傾は股関節から作り、時間で区切って姿勢を解き、そもそも前傾を楽に保てる体かどうかを測る。この3つが要になります。

この記事は、六本木の完全個室パーソナルジム Disport World で、TPI認定(Fitness 2/Golf 2/Junior 2/Power 2)と日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)の岡本隼人が、ゴルファーの身体を実際に測ってきた経験から書いています。私たちは医療機関ではなく、診断や治療は行いません。ゴルフのパーソナルトレーニング(六本木・TPI測定)→

この記事でお伝えすること

・パター練習の腰の負担は「動き」ではなく「同じ前かがみを長く保つこと」から来る
・上級男性ゴルファー29名の研究(Evans ら、2008):40分のパター練習のあと、背中の筋持久力テストの保持時間が平均25.7秒短くなり、フルスイングの骨盤と胸の回旋が約2度ずつ小さくなった
・前かがみを長く続けると、背骨まわりの組織が少しずつ伸び(クリープ)、背中の筋肉の反射が遅れるという実験もある(15名・1時間の前かがみ座位)
・対策は「股関節から前傾する」「時間で区切って姿勢を解く」「前傾を楽に保てる体かを測る」の3つ。痛みやしびれがあれば先に受診を

ほとんど動かないパター練習で、なぜ腰が痛くなるの?

理由は「動かないこと」そのものにあります。パッティングは、前かがみの姿勢をほぼ同じ形のまま保ち、肩と腕だけを小さく動かす動作です。その間、上半身の重さを支え続けているのは背中の筋肉(脊柱起立筋などの体幹の伸筋)で、休む瞬間がほとんどありません。

フルスイングは1球ごとに構えて、振って、立ち上がる。動いては戻るので、筋肉にも組織にも区切りがあります。ところがパター練習は、1球ずつの区切りが小さく、気がつくと前かがみのまま20分、30分と続けてしまいがちです。腰が重くなるのは、パターが「軽い練習」に見えて、姿勢の面では長く同じ負荷をかける練習だからです。

パター練習のあと、身体には何が起きている?

研究で確かめられているのは、「背中の筋肉の持久力が落ちる」ことと、「その後のスイングの回旋が小さくなる」ことです。パター練習が腰痛を起こすと証明した研究ではありませんが、腰に負担がたまっていく道筋は見えてきます。

研究対象やったことわかったこと
Evans ら、2008上級男性ゴルファー29名40分のパター練習の前後で、背中の筋持久力(ビーリング・ソレンセンテスト)とフルスイングの動きを3次元で計測保持時間が平均25.7秒短くなった。スイングは各部位の最大速度が下がり、時間が平均36ミリ秒延び、切り返し以降の骨盤と胸の回旋がそれぞれ約2度小さくなった。体格指数(BMI)が高い人ほど変化は小さかった
Horan ら、2014上級ゴルファー男性19名・女性17名40分のパター練習の前後でフルスイングの胸と骨盤の動きを計測パター練習のあと、胸と骨盤の向きと速度の変化は女性のほうが大きかった
Sánchez-Zuriaga ら、2010健康な成人15名1時間、前かがみで座る(クリープを起こす)/背筋を疲れさせる、の2条件を別の日に実施前かがみのあと、背中の筋肉の反射が始まるまでの時間が約60ミリ秒から約96ミリ秒に遅れた。背筋を疲れさせた条件では変化なし

Evansらは、パター練習のあとにスイングが変わった理由を「背中の筋肉の疲労による可能性がある」と考察しています。もう1つの手がかりがクリープです。クリープとは、靭帯などの組織が一定の力で引かれ続けると、時間とともに少しずつ伸びていく性質のことです。Sánchez-Zuriagaらの実験では、1時間の前かがみのあと、背中の筋肉が身体を守るために反射的に働き出すタイミングが遅れていました。パター練習の時間とは条件が違うので同じとは言えませんが、「同じ前かがみを長く続けると、背中を守る仕組みが一時的に鈍る」ことを示す結果です。

つまり、パター練習の直後は、背中の筋肉が疲れ、組織の伸びで守りの反応も遅れている可能性がある状態です。その状態でドライバーを打ちに行く、重いキャディバッグを持ち上げる。腰に負担が出やすいのは、パターを打っている最中より、むしろその直後かもしれません。

スイングの腰痛と、パター練習の腰痛はどう違う?

スイングの腰痛は「回す動きの代償」、パター練習の腰痛は「同じ姿勢を保つ持久力」が主な論点です。原因が違うので、見るべき体の場所と対策も変わります。

比べる点フルスイングパター練習
負担の形短い時間に大きな回旋と側屈が入る前かがみを長く保ち、ほとんど動かない
腰が受けるもの股関節や胸が回らない分を腰が肩代わりする回旋の力上半身の重さを支え続ける背中の筋肉の仕事と、組織の伸び
主に見る身体股関節の回旋、胸椎の回旋、片脚の安定股関節から前傾できるか、骨盤を前後に動かせるか、背中の筋持久力
対策の中心回るべき場所を回るようにする前傾の作り方、時間の区切り、姿勢を解く習慣

スイングで腰が痛む理由はゴルフの腰痛は「腰」が原因ではないで、股関節と胸椎の動きから詳しく解説しています。この記事では、そちらで扱っていないパッティングの姿勢に絞ります。両方に共通するのは、腰そのものより、腰の上下にある関節と筋肉の状態が負担を決めている、という点です。

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腰に負担をためやすいパターの構えとは?

負担をためやすいのは、前傾を股関節ではなく腰や背中を丸めて作っている構えです。同じ前傾の深さでも、どこで曲げているかで、背中の筋肉と組織にかかる負担は変わります。

パターはクラブの中でいちばん短く、ボールの真上に目を置こうとすると、前傾が深くなりがちです。このとき股関節を折りたたむ(股関節の屈曲)だけで前傾できればよいのですが、太ももの裏が硬い、骨盤を前に傾けられない人は、足りない分を背中を丸めて補います。背中が丸まった形(いわゆるCの字の姿勢)で長く止まると、背骨の後ろ側の組織が引かれ続ける状態になります。逆に、腰を反らせすぎた形(Sの字の姿勢)で固めると、今度は腰の筋肉が縮んだまま働き続けます。どちらも「楽に構えられない身体を、形でごまかしている」状態です。

頭の位置も見落とせません。ボールをのぞき込むように首を深く曲げると、頭の重さを支えるために首から背中の筋肉が働き続けます。前傾の深さ、背中の丸まり、首の角度。この3つがそろって深いほど、同じ時間でも負担は大きくなると考えられます。前傾そのものの考え方はゴルフの前傾キープで、股関節の折りたたみ方はゴルフの股関節の使い方で詳しく扱っています。

腰を守るパター練習は、どう組み立てればいい?

「時間で区切る」「区切りごとに姿勢を解く」「パター練習の直後にいきなり強く振らない」の3つです。どれも、前かがみが続く時間を短くし、疲れた状態で大きな負荷をかけないための工夫です。

①

構える前に、股関節から前傾を作る

クラブを背中に当て、後頭部・背中・お尻の3点を付けたまま、お尻を後ろへ引いて前に傾く。この形を覚えてから構えると、背中を丸めて前傾を作る癖を減らせます。膝は軽くゆるめ、首は背中の延長線上に置きます。

②

時間か球数で区切る

どのくらいで区切ればよいかを示した研究は、今回確認した範囲では見つかりませんでした。研究で変化が確かめられたのは40分の練習です。私たちは、区切りなしで続けず、数分ごと、またはカップインのたびに一度身体を起こすことをおすすめしています。

③

区切りごとに、反対の動きで姿勢を解く

立ち上がって、手を腰に当ててゆっくり胸を起こす、その場で足踏みする、軽く胸を左右に回す。前かがみと反対の方向へ、痛みの出ない範囲で小さく動かします。反動をつけて大きく反らす必要はありません。

④

パターのあとは、短い番手からスイングに戻る

長いパター練習のあとは、背中の筋肉が疲れ、スイングの回旋も小さくなっていた、という研究があります。そのままドライバーを全力で振らず、素振りや短い番手から段階を踏んで戻してください。ラウンド前の準備はラウンド前ウォームアップ15分にまとめています。

ラウンド前の練習グリーンで長くパターを転がし、そのまま1番ホールのティーショットに向かう。この流れは、研究の条件にかなり近い順番です。練習グリーンの最後に一度身体を起こして動かしてからティーに向かうだけでも、負担のかかり方は変わると考えられます。練習量全体の考え方はゴルフの練習は1回何球まで?で扱っています。

前傾を楽に保てる身体かどうか、自分で確かめるには?

「股関節から前に倒れられるか」と「骨盤を前後に動かせるか」を見れば、大まかな見当がつきます。どちらも、パターの前傾を背中で作っていないかに直結する項目です。

①

棒を当てた前傾チェック

クラブを背中に縦に当て、後頭部・背中・お尻の3点を付けたまま、お尻を引いてパターの構えの深さまで前傾する。途中で背中かお尻が棒から離れる、腰に張りが出る場合は、股関節だけで前傾できず、背中で補っている可能性があります。

②

骨盤の前後傾チェック

パターの構えで腕を胸の前で組み、胸と膝を止めたまま、骨盤だけを前に傾ける・後ろに傾けるを交互に行う。骨盤が動かず、膝の曲げ伸ばしや胸の上下で動いたように見える場合は、TPIの骨盤の前後傾テストでつまずく形です。

③

構えの保ちやすさ

パターの構えのまま、ストロークせずにしばらく止まってみる。早いうちに腰や背中が張ってくる、つい膝を伸ばしたり背中を丸めたりして楽な形を探してしまう場合は、前傾を保つ持久力か、前傾の作り方のどちらかに課題があると考えられます。

Caution

チェックや姿勢を解く動きの途中で、腰や脚に鋭い痛み、しびれが出たら中止してください。痛みを我慢して前傾を深くする、反動をつけて腰を大きく反らす、といったやり方は避けてください。ここで紹介した内容は身体の状態の大まかな見当をつけるためのもので、腰の状態を判断するものではありません。

①と②がうまくいかない方は、前傾を背中で作っている可能性があります。その場合、構えの形だけを直しても長続きしにくく、股関節の動きや骨盤のコントロールそのものを作る必要があります。TPIの16項目のうち、どれがパターの前傾と関係するかはTPI 16項目の全解説で確認できます。

現場で見えていること

「パターをやったあとに腰が重い」という相談で身体を測ると、前傾を股関節ではなく背中を丸めて作っている方、骨盤を前後に動かすのが苦手な方が少なくありません。こうした方は、構えを指摘されて形を直しても、時間がたつと元の丸まった形に戻りやすい印象です。形の問題に見えて、実際には形を保てる身体が足りていない、という見方をしています。

そのため私たちは、パターの構えを直す前に、骨盤の前後傾、前屈、股関節の動きを測り、前傾を股関節で作れる状態かどうかを確かめるところから始めます。足りない動きがあれば、まずそこを作り、構えに入れる。練習の区切り方と、パターのあとの戻り方も一緒にお伝えします。スイングの指導はレッスンプロの領域なので、私たちは身体の側を受け持ちます。腰について誰に何を相談するかの全体像はゴルフの腰痛予防は誰に相談する?に整理しています。

※本記事のチェックと体操は運動機能の簡易確認であり、医学的診断ではありません。腰に、安静にしていても続く痛み、夜間の痛み、脚のしびれや力の入りにくさがある方は、先に整形外科を受診してください。とくに、両脚のしびれ、排尿・排便の異常、股の周りの感覚の鈍さ、発熱を伴う痛み、転倒など外傷のあとの痛みがある場合は、本記事のチェックと体操は行わず、速やかに医療機関を受診してください。治療中の方は、主治医の許可の範囲で行ってください。受診の目安は腰痛・肩こりのページにもまとめています。

よくある質問

パター練習で腰が痛くなるのはなぜですか?

前かがみの姿勢をほとんど動かずに長く保つため、上半身を支える背中の筋肉が休めず、背骨まわりの組織も引かれ続けるためと考えられます。上級男性ゴルファー29名の研究では、40分のパター練習のあとに背中の筋持久力テストの保持時間が平均25.7秒短くなっていました。

パター練習は何分くらいで休めばいいですか?

何分で区切ればよいかを示した研究は、今回確認した範囲では見つかりませんでした。研究で変化が確かめられたのは40分の練習です。私たちは、区切りなしで続けず、数分ごと、またはカップインのたびに一度身体を起こし、反対の方向へ小さく動かすことをおすすめしています。

腰に負担の少ないパターの構えはありますか?

前傾を背中を丸めて作らず、お尻を後ろに引いて股関節から作る構えが基本です。首は背中の延長線上に置き、ボールをのぞき込みすぎないようにします。ただし、股関節や骨盤が動かない身体では形を保てないので、先に動きを確かめることをすすめています。

パター練習のあとにドライバーを打っても大丈夫ですか?

長いパター練習のあとは、背中の筋肉が疲れ、スイングの骨盤と胸の回旋が小さくなっていたという研究があります。いきなり全力で振らず、身体を起こして動かしてから、素振りや短い番手で段階を踏んで戻してください。

パター練習で腰が痛いときは、病院に行くべきですか?

安静にしていても続く痛み、夜間の痛み、脚のしびれや力の入りにくさ、排尿・排便の異常がある場合は、先に整形外科を受診してください。練習のあとだけ張る程度で、休むと引く場合は、構えと練習の区切り方、前傾を保てる身体かどうかを見直す段階です。

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パター練習で腰が重くなるなら、構えの形を直す前に、前傾を股関節で作れる身体かどうかを測ってください。TPIフィジカルアセスメントでは、骨盤の前後傾や前屈を含む16項目を実測し、腰が肩代わりしている動きを数値で確かめます。測定の中身はTPIフィジカルアセスメントのページで確認できます。

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主な参考(タップで開く)
  1. Evans K, Refshauge KM, Adams R, Barrett R. Swing kinematics in skilled male golfers following putting practice. J Orthop Sports Phys Ther. 2008;38(7):425-433. doi:10.2519/jospt.2008.2617(上級男性ゴルファー29名・40分のパター練習の前後比較)
  2. Horan SA, Evans K, Morris NR, Kavanagh JJ. Swing kinematics of male and female skilled golfers following prolonged putting practice. J Sports Sci. 2014;32(9):810-816. doi:10.1080/02640414.2013.848999(上級ゴルファー男性19名・女性17名・40分のパター練習の前後比較)
  3. Sánchez-Zuriaga D, Adams MA, Dolan P. Is activation of the back muscles impaired by creep or muscle fatigue? Spine. 2010;35(5):517-525. doi:10.1097/BRS.0b013e3181b967ea(健康な成人15名・1時間の前かがみ座位と背筋の疲労の2条件)
岡本隼人
Disport World 代表トレーナー
JSPO-AT TPI Certified NASM-PES FMS SFMA

日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)。TPIのFitness 2/Golf 2/Junior 2/Power 2プログラムを修了・認定(TPI Certified Fitness 2 / Golf 2 / Junior 2 / Power 2)。NASM-PES。FMS(2015年認定)・SFMA(2016年認定)。INDIBA®ベーシックコース修了(INDIBA Japan)。2002年から指導、のべ指導実績40,000人以上。自身のゴルフはヘッドスピード54m/s・ボール初速78m/s(FlightScope計測・自己最速)。2022年から世田谷区の少年野球チーム「船橋フェニックス」で学年チームの監督を務め、2026年は6年生チームで全日本学童軟式野球大会(マクドナルド・トーナメント)第3位。Disport World(六本木3-15-21 鶯ビルB1)代表。