ゴルフの腰の相談先とは、腰の痛みの診断と治療、痛めないための体づくり、スイングの修正を分担する4つの職種(整形外科医・理学療法士・日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー・レッスンプロ)のことです。どこへ先に行くかは、いまの腰の状態で決まります。
痛みやしびれがあるなら、最初は整形外科です。痛みがなく予防のためなら、体を測れるアスレティックトレーナーに相談し、スイングの形はレッスンプロと分担します。順番は「受診の目安を確かめる→体を測る→スイングに入れる→測り直す」です。
この記事は、六本木の完全個室パーソナルジム Disport World で、TPI認定(Fitness 2/Power 2)と日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)の岡本隼人が、ゴルファーの身体を実際に測ってきた経験から書いています。私たちは医療機関ではありません。診断や治療は行いません。ゴルフのパーソナルトレーニング(六本木・TPI測定)→
・痛み、脚のしびれ、排尿の異常などがあれば、先に整形外科へ(目安は『腰痛診療ガイドライン2019』と『腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン2021』をもとに整理)
・診断と治療は整形外科医、医師の指示の下での理学療法は理学療法士、けがの予防と体の準備はアスレティックトレーナー、スイングはレッスンプロ
・TPIのデータでは31,000人超の28.1%がラウンドのたびに腰痛。TPIは股関節や胸椎の動きの不足を重く見るが、研究のまとめでは股関節の可動域との関連ははっきりしない
・トレーナーやレッスンプロは「何を測るか・測り直すか・診断をしないと言えるか・受診の基準があるか」で選ぶ
ゴルフで腰を痛めないための体づくりは、誰に相談すればいい?
痛みやしびれがあるなら整形外科医、痛みがなく予防のためなら体を測れるアスレティックトレーナー、スイングの形はレッスンプロです。1人で全部を受け持つ職種はないので、順番に分担します。
ゴルファーの身体評価を指導者に教える TPI(Titleist Performance Institute)は、31,000人超のデータで28.1%がラウンドのたびに腰痛を抱えると書いています。オーストラリアのアマチュア588名を1年追った調査(McHardy ら、2007)でも、ケガの部位で最も多いのは腰(18.3%)でした。
受診の目安を確かめる
次の節の目安に当てはまれば整形外科へ。医師の判断で理学療法が加わることもあります。
体を測る
当てはまらない、または医師の許可が出たら、股関節・胸椎・骨盤の動きを左右別に測ってもらいます。
スイングに入れる
結果をレッスンプロと共有し、動けるようになった範囲をスイングに入れます。
測り直す
同じ項目を同じ手順で測り直します。私たちのTPI測定では6週後が目安です。
先に整形外科へ行くべきなのは、どんなとき?
次の表に1つでも当てはまるときは、体づくりの相談より先に、整形外科などの医療機関を受診してください。当てはまらなくても、痛みが強い、だんだん悪くなる、原因が分からないときは、まず医師に相談するのが先です。
表は、『腰痛診療ガイドライン2019』が重い背骨の病気(腫瘍・感染・骨折など)を疑う目安に挙げる red flags と、『腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン2021』が早い手術を考えるとする神経の症状(馬尾障害など)をもとにまとめました。診断ではありません。腰痛診療ガイドラインは、目安が複数あるときは特に注意するよう書いています。
| 当てはまる症状・状況 | どうするか |
|---|---|
| 脚がしびれる、脚に力が入らない | すみやかに受診 |
| 排尿や排便がいつもと違う。股の間やお尻のまわりの感覚が鈍い。両脚がしびれる、急に脚に力が入らない | 時間がたつほど回復しにくいとされるため、夜間や休日でもすぐに受診 |
| 熱がある。安静にしても軽くならない、時間や動きに関係なく痛む。理由のない体重減少。胸の痛みもある | すみやかに受診 |
| がん・ステロイド治療・HIV感染の既往。20歳未満か55歳を超えて始まった腰痛。転倒や事故など、強いけがのあとの痛み | すみやかに受診 |
| 上に当てはまらず、痛みもない(痛めないための体づくり) | 体を測る相談へ(次の節) |
私たちの腰痛・肩こりがある方の運動の始め方(受診の目安)と同じ基準です。首や腕の目安もそちらにあります。腰以外に痛めやすい部位と、左右で原因が違う理由は、ゴルフで痛めやすいのは体のどこ?にまとめています。
整形外科医・理学療法士・トレーナー・レッスンプロは、それぞれ何を受け持つ?
診断と治療は医師、医師の指示の下での理学療法は理学療法士、けがの予防と体の準備はアスレティックトレーナー、スイングの技術はレッスンプロ、という分担です。境目は「診断をするかどうか」と「スイングを直すかどうか」の2つです。
| 職種 | 受け持つこと | 受け持たないこと | こんなときに |
|---|---|---|---|
| 整形外科医 | 診察・検査(画像など)、診断、治療(薬・注射・手術など)。運動してよいかの判断 | スイングの指導 | 痛み・しびれがある。前の節の目安に当てはまる |
| 理学療法士 | 医師の指示の下で、運動や物理的な手段を使う理学療法 | 診断。薬・注射・手術 | 医師から理学療法を受けるよう言われた |
| アスレティックトレーナー(日本スポーツ協会公認・JSPO-AT) | スポーツ活動中のけがの予防、コンディショニング、安全と健康の管理、医療資格者へ引き継ぐまでの救急対応(日本スポーツ協会の定義) | 診断と治療。医師の指示と違う運動 | 痛みはないが腰が不安。医師の許可が出たあと |
| レッスンプロ | スイングの形・技術・タイミング、球筋。体の制限に合わせたスイングづくり | 痛みの診断と治療。制限を広げる運動は、トレーナーや医療職と分担するのが一般的(TPI認定などで体の動きを測るレッスンプロもいます) | 体に大きな制限がないのに同じ癖が出る |
TPIも、ゴルファーは専門家のチームで関わるときに最も伸びる、としています。境目は法律と資格の定義にあります。医師法は「医師でなければ、医業をなしてはならない」と定めます。整形外科は骨・関節・筋肉・神経などの「運動器」の病気を扱う診療科です(日本整形外科学会)。理学療法士は厚生労働大臣の免許を受け、医師の指示の下で理学療法を行う職種です(理学療法士及び作業療法士法)。
JSPO-ATは日本スポーツ協会の公認資格で、医師や理学療法士のような免許ではありません。スポーツドクターやコーチと協力して、表の4つの役割を担う資格です。診断はせず、受診の目安に当てはまれば医療機関の受診をすすめます。代表の岡本はこれに加え、TPI認定(Fitness 2/Power 2)を持ちます。私たちは、この立場で動きを左右別に測って運動を組み、同じ手順で測り直します。
痛みはないが腰が不安なとき、何を測ってもらえばいい?
腰そのものより、股関節・胸椎(胸の背骨)・骨盤の動きを、左右別に測ってもらうのが目安です。TPIは、スイングで腰椎は回る場所ではなく安定させる場所で、股関節・胸椎・肩が動かないと、腰がその動きを肩代わりすると説明しています。
TPIは、腰痛を訴えて評価したゴルファーのおよそ60%に股関節の大きな制限があった、とも書いています。私たちのTPI測定(16項目)で腰との関わりを見るのは、骨盤だけを前後に傾けられるか(骨盤前後傾テスト)、上体を止めて骨盤だけを回せるか(骨盤回旋テスト)、下半身を止めて胸だけを回せるか(胸郭回旋テスト)、片脚に乗ってその上で骨盤を回せるか(下半身回旋テスト)などです(股関節の痛みは左右で原因が違う・胸椎の回し方も参照)。
ただし、測った結果で腰痛を予言することはできません。19研究の系統的レビュー(Smith ら、2018)では、股関節の内旋の可動域と腰痛の関連は、4研究を合わせた解析ではっきりしませんでした(2研究は、腰痛のある群でリード側=右打ちの左の内旋が少ないと報告)。関連が見られたのは年齢と体重で、1つの前向き研究では過去の腰痛がその後1年の腰痛を予測していました。測る目的は、腰が肩代わりしているかもしれない動きを見つけて、運動を選ぶことです。
リンク先のテストを試すときは、反動で押し込まないでください。腰や股関節、脚に痛み・しびれが出たら、その場でやめて医療機関にご相談ください。
骨盤・股関節・胸郭の回旋を含む16項目を、左右に分かれる項目は両側とも測り、評価レポートとプログラムをその日のうちにPDFでお送りします。痛みがある方には、先に医療機関の受診をおすすめしています。
TPIフィジカルアセスメントの詳細を見る腰の負担は、スイングの問題か体の問題か、どう分ける?
「その形を、クラブなしでゆっくり作れるか」で見当がつきます。作れないなら体(動く範囲や支える力)、作れるのにスイングで崩れるなら、まず技術とタイミングの問題です。前者はトレーナー、後者はレッスンプロの受け持ちです。
TPIは、トップで上体が目標側へ傾く「リバーススパインアングル」を、自分たちの経験では腰痛と最も結びつきやすいスイング特性としています。一方、Smith らのレビューは、スイングの特性が腰痛の発生につながる関係は今の研究では支持されないと結論しています。経験と研究はまだ一致していないので、体を測った結果とレッスンで見えている癖を突き合わせます。
分担の決め方はゴルフスクールとパーソナルトレーニングの分担に詳しく書きました。動く範囲と支える力は、飛距離の体づくりでも土台になります(ゴルフの飛距離を伸ばす方法)。
トレーナーやレッスンプロを選ぶとき、何を確かめればいい?
確かめるのは4つです。何をどう測るか、同じ手順で測り直すか、医療職でなければ「診断や治療はしない」と言えるか、受診をすすめる基準を持っているか。資格の名前に加えて、この4つを確かめると中身が分かります。
何を、左右別に測るか
股関節・胸椎・骨盤の動きを、項目の名前と基準で、左右とも測るか。
同じ手順で測り直すか
変化を、同じ項目・同じ手順の測り直しで確かめるか。結果を約束しないか。
診断をしないと言えるか
病名をつけたり痛みの原因を言い切ったりせず、医師の指示を優先すると言えるか。
受診をすすめる基準があるか
どんな症状なら運動より先に受診か、具体的に説明できるか。
腰を守るために、今日からできることは?
いきなりドライバーを振らず、体を動かして温めてから打つこと。痛みが出たらその日はやめることです。腰痛を防げると言い切れる段階ではありませんが、損の少ない習慣です。
ゴルファー703名に質問票で聞いた観察研究(Gosheger ら、2003)では、10分以上のウォームアップにはよい影響が見られ、キャディーバッグを担いで運ぶことは腰・肩・足首の負担と結びついていました。観察研究なので因果関係は示せず、McHardy らの調査ではウォームアップの習慣とケガに有意な関連はありませんでした。準備の手順はラウンド前のウォームアップ15分に、練習の区切り方は練習は1回何球まで?にまとめています。
『腰痛診療ガイドライン2019』は、腰痛の予防に運動療法を強く推奨しています(推奨度1・エビデンスの強さB)。ただし運動療法は専門医が診察して組むもので、どんな運動でもよいという意味ではありません。私たちの運動は医療の運動療法ではありません。
現場で見えていること
私たちは最初に、ゴルフ歴・ラウンドの頻度・練習の内容と、痛みや違和感の有無、受診や治療の状況を伺います。受診の目安に当てはまるときは、測るより先に受診をおすすめします。測定中に痛みが出た項目は「痛みあり」と記録し、その部位に負担のかかる種目は外します。
骨盤だけを回せないときは、肩を軽く支えてもう一度回してもらいます。支えると回せるなら上と下を分ける使い方の課題、支えても回らないなら動く範囲の課題として、入口の運動を分けます。レッスンで「腰で回っている」と言われた方でも、測ると骨盤や胸の回旋に制限が見つかることもあれば、見つからないこともあります。見つからなければ、まずレッスンで技術として扱うほうが早いとお伝えします。評価レポートは、ぜひ普段のレッスンプロにも見せてください。
よくある質問
ゴルフで腰が痛いとき、最初はどこに相談すればいいですか?
痛みがあるなら、最初は整形外科です。脚のしびれや力の入りにくさ、発熱などがあれば運動より先に受診し、排尿・排便の異常があれば夜間や休日でもすぐに受診してください。体づくりの相談は、医師の許可が出てからにします。
痛みはないけれど、ゴルフで腰を痛めないか心配です。何をすればいいですか?
受診の目安に当てはまらなければ、体を測れるアスレティックトレーナーに股関節・胸椎・骨盤の動きを左右別に測ってもらうのが近道です。ただし測った結果で腰痛は予言できないので、運動を選ぶ材料として使います。
理学療法士とアスレティックトレーナーは何が違いますか?
いちばんの違いは、理学療法士が厚生労働大臣の免許を受けて医師の指示の下で理学療法を行う職種であるのに対し、JSPO-ATは日本スポーツ協会の公認資格で、けがの予防やコンディショニングを担う点です。どちらも診断はしません。
腰に痛みがあってもTPI測定は受けられますか?
痛みがあるときは、先に整形外科などを受診してください。医師から運動の許可が出ていれば、許可の範囲で受けられます。測定中に痛みが出た項目は記録し、その部位に負担のかかる種目は外します。
レッスンプロに腰の不安を相談してもいいですか?
スイングの面では相談する価値があります。痛みの判断は医師、体の制限を広げる運動はトレーナーの受け持ちです。TPI認定などで体を測れるレッスンプロもいるので、測った結果を共有して進めてください。
TPI測定のご案内
受診の目安に当てはまらず、腰を痛めないための体づくりを始めたい方は、まず今の体を測ってください。TPI測定では16項目を測り、まず取り組む3項目をお伝えします。ボールは打ちません。
TPI Physical Assessment
腰を痛めないための体づくりは
16項目を測ることから
TPIの16項目を実測し、評価レポート+プログラムPDFにまとめてお渡しします。単発で完結し、入会は不要です(6週後の再評価は任意で、会員の方は追加料金なし、会員以外の方は¥19,800・税込)。
まず動いて確かめたい方は、体験トレーニング(90分・¥15,000/毎月先着3名さま¥7,500)もお選びいただけます(先着枠は毎月1日起算、定員後は通常¥15,000)。
ウェア・タオル無料 | 完全個室 | 六本木駅徒歩4分
主な参考(タップで開く)
- 日本整形外科学会・日本腰痛学会(監修)『腰痛診療ガイドライン2019 改訂第2版』南江堂, 2019(Background Question 7 表1「重篤な脊椎疾患の合併を疑うべき red flags」、Clinical Question 9 腰痛予防。Mindsガイドラインライブラリ掲載) https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00498/
- 日本整形外科学会・日本脊椎脊髄病学会(監修)『腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン2021 改訂第3版』南江堂, 2021(Background Question 16(緊急)手術の適応。Mindsガイドラインライブラリ掲載) https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00645/
- Rose G. The Golfer's Guide to Lower Back Pain – Part 1. Titleist Performance Institute(mytpi.com).(31,000人超のデータ) https://www.mytpi.com/articles/health/the-golfer's-guide-to-lower-back-pain-part-1
- Titleist Performance Institute. Why the Lower Back Is Often the Victim, Not the Culprit(mytpi.com). https://www.mytpi.com/articles/swing/why-the-lower-back-is-often-the-victim-not-the-culprit
- Titleist Performance Institute. About(Our Philosophy)(mytpi.com). https://www.mytpi.com/about
- Titleist Performance Institute. TPI Certified Level 1(mytpi.com). https://www.mytpi.com/certification/tpi-certified-level-1
- Smith JA, Hawkins A, Grant-Beuttler M, Beuttler R, Lee SP. Risk Factors Associated With Low Back Pain in Golfers: A Systematic Review and Meta-analysis. Sports Health. 2018;10(6):538-546.(19研究) https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30130164/(doi: 10.1177/1941738118795425・全文 PMC6204638)
- McHardy A, Pollard H, Luo K. One-year follow-up study on golf injuries in Australian amateur golfers. Am J Sports Med. 2007;35(8):1354-1360.(588名・1年の前向き調査) https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17387218/(doi: 10.1177/0363546507300188)
- Gosheger G, Liem D, Ludwig K, Greshake O, Winkelmann W. Injuries and overuse syndromes in golf. Am J Sports Med. 2003;31(3):438-443.(703名・質問票による後ろ向きの観察研究) https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12750140/(doi: 10.1177/03635465030310031901)
- 日本スポーツ協会「公認スポーツ指導者制度」メディカル・コンディショニング資格(アスレティックトレーナー) https://www.japan-sports.or.jp/coach/tabid58.html
- 理学療法士及び作業療法士法(昭和40年法律第137号)第2条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000137
- 医師法(昭和23年法律第201号)第17条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000201
- 日本整形外科学会「よくある質問」(一般の方へ) https://www.joa.or.jp/public/about/index.html


