「使えていない」の中身は、筋力が足りない、股関節が動かずお尻が働く位置に入れない、太もも裏や腰が先に働いてしまう、の大きく3つに分かれます。鍛える前に、左右を測って切り分けるのが近道です。
この記事は、六本木の完全個室パーソナルジム Disport World で、TPI認定(Fitness 2/Golf 2/Junior 2/Power 2)と日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)の岡本隼人が、ゴルファーの身体を実際に測ってきた経験から書いています。扱うのはスイングの技術ではなく、身体の側の原因です。ゴルフのパーソナルトレーニング(六本木・TPI測定)→
・競技ゴルファー16名の筋電図では、トレイル側(右打ちなら右)の股関節を伸ばす筋肉・外へ開く筋肉が、リード側の大内転筋と一緒にダウンスイングの骨盤の回転を始めていた(Bechler ら、1995)
・ハンデの良いゴルファーほど骨盤の回転が速く、大殿筋と中殿筋の筋力が強い傾向があった(Callaway ら、2012・56名)。ただし関連で、因果ではない
・使えていないサインは、骨盤が横に流れる、前傾が早くほどける、ラウンド後に太もも裏や腰が先に張る、など
・股関節が動かないと、お尻は働く位置に入れない。筋力と可動域の両方を左右で確かめる
ゴルフでお尻の筋肉は、スイングのどこで働いているのか?
記録がはっきりしているのは、ダウンスイングの始まりです。右打ちなら、右脚の股関節を伸ばす筋肉と外へ開く筋肉が、骨盤を目標方向へ回し始めます。左脚の側では、骨盤が横へ流れないように支える役を受け持ちます。
競技ゴルファー16名の股関節と膝の7つの筋肉に電極を入れ、高速度撮影と合わせて調べた研究では、トレイル側(右打ちなら右)の股関節を伸ばす筋肉と外へ開く筋肉が、リード側(左)の大内転筋と一緒に、ダウンスイングの骨盤の回転を始めていました(Bechler ら、1995)。股関節を伸ばす主な筋肉は大殿筋と太もも裏(ハムストリングス)、外へ開く主な筋肉は中殿筋です。以下は右打ちの場合です。左打ちの方は左右を逆に読んでください。
アドレス——前傾をお尻で支える
股関節を曲げた前傾は、お尻と太もも裏が後ろから骨盤を引いて保っています。背中を丸めたり反らしたりして前傾を作ると、腰が先に仕事を引き受けます。
バックスイング——右脚の上で骨盤を受け止める
骨盤が右へ回り、右の股関節は内旋の方向へ動きます。右のお尻の筋肉は、骨盤が右へ流れずにその場で回るように受け止めます。ここで受け止められないと、骨盤ごと右へずれる動き(スウェー)になります。
ダウンスイングの始まり——右のお尻が骨盤を押し回す
Bechler らの記録では、右の股関節を伸ばす・外へ開く筋肉と、左の大内転筋が骨盤の回転を始めます。右脚で地面を押し、骨盤を目標方向へ回す力の出どころの一つが右のお尻です。
インパクトからフィニッシュ——左のお尻が骨盤を支える
骨盤は左股関節の上で回り、左の股関節は内旋していきます。このとき左のお尻の横の筋肉(中殿筋)は、骨盤が目標方向へ横に流れないように支えます(解剖からの見立てです。上の研究はスイングを5つの局面に分けて記録していますが、主な結果として挙げているのはダウンスイングの始まりです)。
股関節そのものの動き(乗る・入れる・回す)はゴルフの股関節の使い方に、同じ研究で記録された内ももの筋肉の役割はゴルフで内転筋が張るのはなぜ?にまとめています。この記事では、お尻の筋肉の働きに絞ります。
お尻が「使えている」とは、どういう状態のことか?
「使えている」とは、お尻の筋肉が強いことだけではありません。股関節が必要な位置まで動き、その位置でお尻が働き、太もも裏や腰に仕事を肩代わりさせていない状態のことです。どれか1つが欠けても、スイングの中では「使えていない」ように見えます。
| 筋肉 | 位置 | 主な働き | ゴルフでの役割(右打ち) |
|---|---|---|---|
| 大殿筋 | お尻のいちばん大きく、表面にある筋肉 | 股関節を伸ばす。外へ回す | 前傾を後ろから支える。ダウンスイングで右脚から骨盤を押し回す |
| 中殿筋 | お尻の横、骨盤の外側の上寄り | 脚を外へ開く。片脚で立ったときに骨盤を水平に保つ | バックスイングで右へ、フォローで左へ骨盤が流れないように支える |
| 小殿筋 | 中殿筋の奥 | 中殿筋を助けて骨盤を支える | 片脚に乗ったときの骨盤の安定 |
お尻の筋力とゴルフの関係では、56名のゴルファーをハンデで分けて比べた研究があります。ハンデの良い群は、骨盤の回転が速く、手で持つ筋力計で測った大殿筋と中殿筋の筋力も強い傾向がありました(Callaway ら、2012)。ただし一時点の比較で、お尻を鍛えればハンデが良くなる、とまでは言えません。上手な人ほど練習量が多く、その結果として筋力がついている可能性もあります。
ブリッジ脚伸展、片脚立ち、下半身回旋、骨盤回旋を含む16項目を実測します。左右に分かれる項目は両側とも測り、どちらのお尻が、どの場面で働きにくいのかの仮説を、数値とともに評価レポートPDFにしてお渡しします。
TPIフィジカルアセスメントの詳細を見るお尻が使えていないと、スイングにどんなサインが出るのか?
出やすいのは、骨盤が横に流れる、前傾が早くほどける、ラウンド後にお尻より先に太もも裏や腰が張る、といった形です。ただし、どれもスイングの技術で起きることもあり、サインだけで「お尻が原因」とは決められません。
| サイン(右打ち) | スイングで起きていそうなこと | 関わりやすいお尻の筋肉 | あわせて見るもの |
|---|---|---|---|
| バックスイングで右へ体重が流れ、右足の外側に乗る | 右脚の上で骨盤を受け止められない(スウェー) | 右の中殿筋・大殿筋 | 右股関節の内旋 |
| ダウンスイングで腰が目標方向へ突っ込む | 左脚の上で骨盤を支えきれない(スライド) | 左の中殿筋 | 左股関節の内旋、上半身と下半身を分けて回す力 |
| インパクト前に腰がボール側へ出て、前傾がほどける | 股関節を曲げたまま回れない(アーリーエクステンション) | 大殿筋(前傾を後ろから支える) | 股関節の可動域、足首、体幹 |
| ラウンド後、お尻より太もも裏や腰が先に張る | お尻の仕事を太もも裏や腰が肩代わりしている可能性 | 大殿筋 | ブリッジ脚伸展テストの左右 |
右脚の上で骨盤が流れる動きはスウェー・スライドの直し方、前傾がほどける動きはアーリーエクステンションの記事、振り終わりで止まれない問題はフィニッシュでバランスが取れない原因で、身体の側の原因を広く扱っています。
お尻が使えているかは、自分でどう確かめればいいか?
自宅でできるのは、あお向けのブリッジで片脚を伸ばす、鏡の前で片脚立ちをして骨盤の高さを見る、ラウンド後にどこが張るかを書き留める、の3つです。どれも診断ではなく、測る場所の見当をつけるための確認です。左右を同じやり方で行い、差を記録してください。
ブリッジで片脚を伸ばす(左右)
あお向けで膝を曲げ、足裏を床につけ、両膝と両足をそろえます。腕は胸の上へ伸ばし、お尻を持ち上げます。そこから片方の膝を伸ばして脚を浮かせ、骨盤が水平のまま保てるかを見ます。TPIはこのテストを、骨盤と腰の安定、とくにお尻の筋肉を見るものと説明し、大殿筋の代わりに太もも裏や腰が働いてしまう状態を浮かび上がらせるとしています。床についている側の太もも裏がつりそうになる、腰ばかりがきつい、伸ばした脚の側へ骨盤が下がる、といった差を左右で比べます。
鏡の前の片脚立ち(左右)
鏡の正面に立ち、ベルトの高さが見えるようにして片脚で立ちます。中殿筋は、片脚で立ったときに骨盤を水平に保つ筋肉です。浮かせた脚の側の骨盤が下がる、上体が立っている脚の側へ大きく傾く、といった形が出たときに、立っていた脚が左右どちらかを記録します。目を閉じて行うTPIのテストの見方は片脚立ちテストの見方と運動にまとめています。
ラウンド後の張りの場所を書く
ラウンドや練習の翌日に、お尻・太もも裏・腰・内もものどこが、左右どちら側で張るかを書き留めます。太もも裏や腰ばかり張る日が続くなら、①の結果と重ねて見ます。
①で床についている側の太もも裏がつりそうになる、②でその脚で立ったときに反対側(浮かせた脚の側)の骨盤が下がる、③でもその脚の太もも裏が張る、というように同じ脚の側に左右差が重なっていれば、その側のお尻が働きにくい可能性があります。理由が筋力か股関節の動きかは、ここまででは分けきれません。
ブリッジは腰を反らせて高く上げるものではありません。腰に痛みが出る、お尻や太ももの裏にしびれが走る、股関節の付け根が詰まる場合は、その時点で中止してください。片脚立ちは、壁や椅子のそばなど、すぐ手をつける場所で行います。腰や股関節に痛みがある状態で確認や練習を続けることはおすすめしません。下の「受診の目安」を先に確認してください。
お尻が使えないのは、筋力不足だけが原因なのか?
筋力不足だけではありません。股関節が回らなければ、お尻の筋肉は働く位置に入れず、ほかの場所が動きを代わりに作ります。お尻を鍛える前に、股関節の内旋・外旋が左右で足りているかを確かめる必要があります。
たとえば右打ちで左股関節の内旋が足りないと、フォローで骨盤が左股関節の上で回りきれず、腰を横へずらしたり、腰をひねったりして回転を補います。プロの男性ゴルファー42名を調べた研究では、腰痛の経験がある群で、リード側の股関節の内旋が少ないことが報告されています(Vad ら、2004)。お尻の筋肉を直接調べた研究ではありませんが、股関節の動きの不足がほかの場所の負担と結びつきうることを示しています。
| 型 | 確認で出やすい形 | やることの順番 |
|---|---|---|
| 筋力が足りない | 股関節は左右とも動くが、ブリッジや片脚立ちで骨盤を保てない | 段階をつけてお尻を鍛える |
| 股関節が動かない | 片側の内旋・外旋が明らかに少ない。その側でスイングが横に流れる | 先に可動域を作り、動く範囲でお尻を使う |
| ほかの筋肉が先に働く | ブリッジで太もも裏や腰ばかりきつい。お尻の筋肉の手応えが薄い | 軽い負荷でお尻が働く感覚を作ってから、負荷を上げる |
実際には、この3つが重なっていることも少なくありません。股関節の動きの左右差の見方は下半身回旋テストの見方と運動で解説しています。
お尻の筋肉と、ゴルファーの腰の痛みは関係があるのか?
慢性の腰痛がある人は、中殿筋が弱い傾向があるという報告があります。ただし、ゴルファーを対象にした研究ではなく、お尻が弱いから腰痛になると確かめたものでもありません。腰に痛みがあるなら、先に受診して原因を確かめてください。
慢性の腰痛がある150名と、腰痛のない75名を比べた研究では、腰痛のある群で中殿筋の筋力が弱く、お尻、太ももの付け根の外側の骨の出っ張り(大転子)、背骨の脇を押したときの痛みも多く見られました(Cooper ら、2016)。筋力は手による筋力テストで判定しており、腰痛のために動かなくなって弱くなった、という逆の向きも考えられます。お尻の筋力、股関節の動き、腰の負担は、別々に測って重ね合わせるのが現実的です。リード側とトレイル側で股関節の痛みの原因が違う話はゴルフで股関節が痛い|左右で原因が違うで扱っています。
現場で見えていること
私たちのTPIフィジカルアセスメントでは、「お尻が使えていない気がする」と相談された場合も、お尻の筋力だけを測ることはしません。ブリッジ脚伸展、片脚立ち、下半身回旋、骨盤回旋などを左右で測り、働きにくい側と、股関節が回りにくい側が重なっているかを確かめます。その見立てを、スイングのお悩みと照らしてお話しします。
「お尻を鍛えているのに、スイングで使えている感じがしない」という方でも、測ると股関節の回旋に左右差が見つかることがあります。反対に、股関節はよく動くのに、ブリッジで太もも裏ばかりきつくなる方もいます。感覚と測定は食い違うことがあるので、種目を選ぶ前に左右を測ることをすすめています。
よくある質問
ゴルフでお尻の筋肉はどんな役割をしていますか?
右打ちなら、右のお尻は右脚の上で骨盤を受け止め、ダウンスイングで骨盤を押し回します。左のお尻はフォローで骨盤が横に流れないように支えます。競技ゴルファー16名の筋電図では、右の股関節を伸ばす・外へ開く筋肉が、ダウンスイングの骨盤の回転を始めていました。
お尻を鍛えれば飛距離は伸びますか?
そう言い切れる研究はありません。ハンデの良いゴルファーほど骨盤の回転が速く、お尻の筋力が強い傾向は報告されていますが、一時点の比較です。足りないのが筋力か股関節の動きかを測ってから取り組むのが効率的です。
お尻のトレーニングをしても、スイングで使える感じがしません。
股関節の回旋が足りず、スイングの中でお尻が働く位置まで動いていない可能性があります。ブリッジや片脚立ちで骨盤を保てるか、股関節の内旋・外旋に左右差がないかを確かめてください。どちらが足りないかで、やることの順番が変わります。
ブリッジで太ももの裏がつりそうになるのはなぜですか?
お尻の代わりに太もも裏が働いている可能性があります。TPIはブリッジ脚伸展テストを、大殿筋の代わりに太もも裏や腰が働いてしまう状態を見るテストと説明しています。痛みやしびれを伴う場合は中止し、先に受診してください。
TPI測定のご案内
お尻が使えていないのは、筋力の問題か、股関節の動きの問題か、ほかの筋肉が先に働いているのか。鍛える前に、一度左右を測って切り分けてください。TPIフィジカルアセスメントでは、ブリッジ脚伸展や片脚立ちを含む16項目を実測し、どの制限がどのスイング特性と結びつきやすいかを評価レポートとプログラムのPDFにまとめます。項目の中身はTPI 16項目の全解説で、TPIの考え方とツアー選手での実例はTPIトレーニングのページで紹介しています。
TPI Physical Assessment
お尻が使えないのは、筋力か、股関節か
左右を測って切り分ける90分
ゴルファーのフィジカルトレーニング(ゴルフフィットネス)は、体を測ることから始めます。TPIの16項目を実測し、どの身体の制限がどのスイング特性と結びつきやすいかを評価レポート+プログラムPDFにまとめてお渡しします。単発で完結し、入会は不要です(6週後の再評価は任意で、会員の方は追加料金なし、会員以外の方は¥19,800・税込)。
まず動いて確かめたい方は、トレーニング体験(90分)もお選びいただけます。体験は通常¥15,000(毎月1日から数えて先着3名さまは¥7,500)です。
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主な参考(タップで開く)
- Bechler JR, Jobe FW, Pink M, Perry J, Ruwe PA. Electromyographic analysis of the hip and knee during the golf swing. Clin J Sport Med. 1995;5(3):162-166.(競技ゴルファー16名・筋内電極と高速度撮影)PubMed 7670971
- Callaway S, Glaws K, Mitchell M, Scerbo H, Voight M, Sells P. An analysis of peak pelvis rotation speed, gluteus maximus and medius strength in high versus low handicap golfers during the golf swing. Int J Sports Phys Ther. 2012;7(3):288-295.(健康なゴルファー56名・手で持つ筋力計)PMC3362989
- Vad VB, Bhat AL, Basrai D, et al. Low back pain in professional golfers: the role of associated hip and low back range-of-motion deficits. Am J Sports Med. 2004;32(2):494-497.(プロの男性ゴルファー42名)PubMed 14977679
- Cooper NA, Scavo KM, Strickland KJ, et al. Prevalence of gluteus medius weakness in people with chronic low back pain compared to healthy controls. Eur Spine J. 2016;25(4):1258-1265.(慢性腰痛150名・対照75名)PubMed 26006705
- Titleist Performance Institute(mytpi.com). The Bridge with Leg Extension Test。


