国の体力調査では、50〜54歳の男性の握力は20代前半とほぼ同じなのに、立ち幅とびは約15%低い。さらに胸椎や股関節が回らなければ、残っている力も回転に乗りません。最初に確かめる身体の5項目(ゴルファーの身体評価を教える TPI=Titleist Performance Institute の基準つき)と、ヘッドスピードを取り戻す順番をまとめました。50代に限らない飛距離の全体像(身体・スイング・クラブの分担)はゴルフの飛距離を伸ばす方法で解説しています。
この記事は、六本木の完全個室パーソナルジム Disport World で、TPI認定(Fitness 2/Power 2)と日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)の岡本隼人が、ゴルファーの身体を実際に測ってきた経験から書いています。扱うのはスイングの技術ではなく、身体の側の原因です。ゴルフのパーソナルトレーニング(六本木・TPI測定)→
・年齢で先に落ちるのは筋力より「パワー」。国の体力調査(令和6年度)では、50〜54歳男性の握力は20〜24歳の99.4%、立ち幅とびは84.9%
・ヘッドスピードと最も強く関係するのは、ジャンプで地面を押す力。柔軟性そのものは関係が見られない(20研究のメタ分析)。可動域は、その力を回転に乗せる前提条件
・股関節と膝の可動域の年齢差は小さい(米国の全国調査・1,683名)。大きく回らないなら、変えられる理由を疑う(股関節を内側にひねると足の付け根が痛むなら、先に整形外科へ)
・最初に確かめるのは、TPIの5テスト(座位体幹回旋45度超・下半身回旋60度以上ほか)と、立ち幅とび・握力
・平均年齢47〜71歳のゴルファーでも、8週間のトレーニングでヘッドスピードが上がった研究がある。順番は「測る→外す→作る→戻す」
年齢で飛距離が落ちる原因は?——50代で先に落ちるのは筋力より「パワー」
年齢の影響はあります。ただ、50代で目立って落ちているのは、重いものを握る・持ち上げる「筋力」より、短い時間で大きな力を出す「パワー」です。国の体力調査では、50〜54歳の男性の握力は20〜24歳とほぼ同じなのに、立ち幅とびはおよそ15%低くなっています。
スポーツ庁は毎年、20〜64歳に6項目の新体力テストを行い、年代別の平均を公表しています。報告書は、握力を「筋力」、立ち幅とびを「筋パワー及び跳能力」のテストと位置づけています。令和6年度の男性の平均を並べます。
| 年代(男性) | 握力(筋力) | 20〜24歳を100とすると | 立ち幅とび(筋パワー) | 20〜24歳を100とすると |
|---|---|---|---|---|
| 20〜24歳 | 44.68kg | 100 | 226.35cm | 100 |
| 30〜34歳 | 46.29kg | 103.6 | 215.99cm | 95.4 |
| 40〜44歳 | 45.47kg | 101.8 | 202.49cm | 89.5 |
| 45〜49歳 | 45.10kg | 100.9 | 196.27cm | 86.7 |
| 50〜54歳 | 44.39kg | 99.4 | 192.20cm | 84.9 |
| 55〜59歳 | 43.49kg | 97.3 | 182.79cm | 80.8 |
| 60〜64歳 | 41.91kg | 93.8 | 174.45cm | 77.1 |
握力は30〜34歳が最も高く、50代前半でも20代前半とほとんど変わりません。報告書も、握力は30〜40歳代でピークに達し、他の項目よりピークが遅いとしています。一方の立ち幅とびは年代を追うごとに下がり、50〜54歳で84.9です。女性も同じ形で、50〜54歳の握力は99.5、立ち幅とびは83.6でした。ただし年代ごとに別の人を測った結果で、「1人が何%落ちるか」ではありません。握力は手と前腕、立ち幅とびは脚の力で、測っている部位も違うため、この表だけで「筋力は落ちず、パワーだけが落ちる」とは言えません。
それでも、研究のまとめ(Reid・Fielding、2012)は、パワーは筋力より早く、急に落ちるとしています。米国のボルチモア縦断研究で腕の筋力とパワーを最長25年追った分析(Metter ら、1997)では、どちらも40歳ごろまでに落ち始め、男性ではその後、パワーが筋力より約10%多く落ちました(女性では差は有意でなし)。理由の1つは筋線維です。若い男性25名(平均23歳)と高齢の男性26名(平均71歳)の比較(Nilwik ら、2013)では、太もも前の筋肉の断面積の差は、速く強い収縮を担うタイプII線維(速筋線維)が29%細いことで説明できました。同じ研究で、高齢の男性が6か月の筋力トレーニングを行うと、タイプII線維は24%太くなっています。
ゴルフに置きかえると、「握る力はあるのに、ヘッドが走らない」状態です。50代の飛距離の低下は、「速く出せなくなった」ことと、次に述べる「出した力を回転に乗せられなくなった」ことの組み合わせで起きている、と私たちは考えています。
50代のヘッドスピードは何で決まる?——地面を押すパワーと可動域
ヘッドスピードと最も強く関係するのは、ジャンプで地面を押す力です。柔軟性そのものには関係が見られていません。ただし可動域は「速さの源」ではなく、「出した力をスイングの回転に乗せる通り道」として必要です。
複数の研究をまとめて解析した2024年のメタ分析(Brennan ら、20研究。ツアーや大学などの競技ゴルファーを多く含み、50代に絞った分析ではありません)では、ドライバーのヘッドスピードとの関係は、ジャンプのインパルス(地面をどれだけの力で、どれだけの時間押せるか)が最も強く、上半身の爆発的な力(メディシンボールを胸から投げる力など)は、上半身の最大筋力より明らかに強い関係を示しました。一方、柔軟性とバランスには有意な関係がありませんでした。前の見出しの「先に落ちるのはパワー」と重なります。
では可動域は関係ないのか。TPIは、胸椎の回旋が足りないと「腰椎に過剰な回旋の力を生むか、胸椎の不足を補うために肩関節を使いすぎる可能性がある」とし、下半身に制限があると「スイングに過剰な横の動き(スウェーとスライド)が出る可能性がある」と説明しています。可動域が足りなければ、パワーがあっても回転には乗らず、腰や肩の代償に逃げやすくなります。速さの源はパワー、その通り道が可動域です。
50代のヘッドスピードの平均値と飛距離への換算は、ヘッドスピードの平均|年齢別・男女別データと飛距離の換算にまとめています。地面を押す力の使い方はゴルフの地面反力とはで。
身体が硬くなったのは年齢のせい?——股関節と膝の可動域の年齢差は小さい
股関節や膝の可動域は年齢とともに少しずつ狭くなりますが、その差は小さいとする大規模な調査があります。ゴルフで困るほど回らないなら、年齢だけで片づけず、姿勢や動かしていない期間など、変えられる理由を疑ってください。ただし、股関節を内側にひねると足の付け根が痛む場合は、変形性股関節症など関節そのものの問題のこともあるので、先に整形外科で確かめてください。
米国の全国健康栄養調査(NHANES I)で股関節と膝の可動域を測った1,683名のデータ(Roach・Miles、1991)では、最も若い年代と最も高い年代の平均の差は、多くの動きで3〜5度でした。可動域の20%を超えて減っていたのは股関節の伸展だけです。著者らは、少なくとも74歳までは「大きな可動域の低下は異常とみなすべきで、加齢によるものとせず、若い人と同じように対処すべき」と結論しています。
胸椎(背中の中ほど)については、姿勢の影響がはっきりしています。18〜43歳の52名で胸椎の回旋を測った研究(Edmondston ら、2007)では、背中を丸めた姿勢から回したときの回旋は、まっすぐな姿勢や反らした姿勢から回したときより有意に小さくなりました。アドレスで背中が丸まっている人は、同じ理由で胸椎が回りにくくなっている可能性があります(研究の結果ではなく私たちの見立て)。後のテストを背すじを伸ばして行うのは、このためです。
つまり50代の「硬くなった」は、年齢で避けにくい部分と、変えられる部分が混ざっています。どちらが大きいかは、測らないと分かりません。胸椎の動かし方はゴルフの胸椎の回し方に、柔らかくすべき場所の見分け方は体が硬い・回らない人が柔らかくすべき3か所にまとめています。
50代で飛距離が落ちる4つのパターン——どこで失っているかを分ける
身体の側から見ると、50代の飛距離の低下は「パワー」「胸椎の回旋」「下半身の回旋」「分離と安定」の4か所に分けて考えると整理できます。スイングの見た目が似ていても、失っている場所が違えば、やることが変わります。
| パターン | 身体で起きていること | スイングで起きやすいこと | 確かめる方法 |
|---|---|---|---|
| ①パワーの低下 | 速く大きな力を出す力が落ちる。握力は保たれても跳ぶ力が落ちる | 振っているのにヘッドが走らない。ヘッドスピードと最も強く関係するのは地面を押す力(メタ分析) | 立ち幅とびと握力を年代の平均と比べる(見出し6) |
| ②胸椎の回旋制限 | 背中の中ほどが回らない。背中を丸めた姿勢では回旋が小さくなる | 腰椎を過剰に回す、肩を使いすぎるといった代償(TPIの説明) | 座位体幹回旋:左右とも45度を超えるか |
| ③下半身の回旋制限 | 股関節・すね・足の回旋が足りない | スウェーとスライド=過剰な横の動き(TPIの説明) | 下半身回旋:左右とも60度以上か |
| ④分離と安定の低下 | 上半身を止めて骨盤だけを回せない。お尻で骨盤を支えられない。片脚で立てない | ダウンスイングの順序と、上半身と下半身の分離が作りにくい(骨盤回旋についてのTPIの説明) | 骨盤回旋/ブリッジ+脚伸ばし10秒/閉眼片脚立ち25秒 |
①は「エンジン」、②〜④は「力の通り道と土台」です。①だけを鍛えても②〜④に制限があれば回転に乗らず、②〜④だけを整えても①が落ちていればヘッドは速くなりません。TPIは骨盤回旋を「ダウンスイングの順序を正しく作り、上半身と下半身の分離を生むために重要な技能」と説明しています。体幹を固める種目だけでは④の「分けて回す」は作りにくい、というのが私たちの考え方です(体幹トレーニングが飛距離に直結しない理由)。
下半身回旋(基準60度)、座位体幹回旋(45度)、90/90、片脚バランス、骨盤回旋を含む16項目を実測します。左右に分かれる項目は両側とも測り、基準を満たさない項目と、そこから出やすいスイング特性、最初に取り組む3項目を、評価レポートとプログラムのPDFにまとめてお渡しします。
TPIフィジカルアセスメントの詳細を見る自宅で確かめる5つのテスト——TPIの基準で「回る・分ける・支える」
次の5つは、TPIの身体評価(スクリーン)に含まれるテストです。どれも左右で行い、「基準に届くか」と「左右差」を見ます。基準に届かない項目、片側だけ届かない項目があれば、そこが最初に手をつける場所です。右打ちを前提に書いています(左打ちは左右が逆)。
座位体幹回旋(胸椎が回るか)
椅子に膝と足をそろえて座り、背すじを伸ばす。クラブを両肩にかつぎ、腕を「W」の形にして支える。骨盤を動かさずに、胸を右へ、左へ、できるところまで回す。TPIの基準は「左右とも45度を超える」。床にクラブ2本で45度の目印を作ると分かりやすい。肩甲骨だけを動かすと回ったように見えるので、胸の向きで判断します。
下半身回旋(股関節から下が回るか)
片脚に全体重を乗せ、反対の脚は膝を曲げてつま先だけを床に添える。両手を腰に置き、乗っている足のつま先を正面に向けたまま、骨盤を左右にできるだけ回す。反対の脚でも行う。TPIの基準は「左右とも60度以上」。右脚で立って右へ回す動きはバックスイングの右股関節、左脚で立って左へ回す動きはダウンスイングの左股関節の動き(どちらも股関節の内旋)に近い。片側だけ回らないときは、椅子に座って膝を動かさずに足先を外へ開く動き(股関節の内旋)を左右で比べると手がかりになります。
骨盤回旋(上半身を止めて骨盤だけ回せるか)
5番アイアンを構えるときの前傾姿勢をとり、両腕を胸の前で交差させて、手をそれぞれ反対の肩の前に置く。上半身を動かさないまま、ベルトから下だけを左右に回す。肩が一緒に動く、骨盤が横へずれる場合は、上下の分離ができていないサイン。上半身を押さえてもらうと回せるなら「安定」、押さえても回せないなら「可動性」の問題、とTPIは見分けています。
ブリッジ+脚伸ばし(お尻で骨盤を支えられるか)
あお向けで膝を立て、膝と足をそろえ、両腕を胸の上へまっすぐ伸ばす。お尻を持ち上げ、ベルトの線を床と平行に保ったまま、片方の膝を伸ばして10秒保つ。伸ばした側の骨盤が落ちる、床側の脚が震える場合は、床側のお尻の安定が足りないサイン。床側の太もも裏や腰がつりそうになるなら、お尻の代わりに太もも裏や腰が働いているサインとTPIは説明しています。反対側も行います。
閉眼片脚立ち(片脚で身体を支えられるか)
背すじを伸ばして立ち、腕は体の横に下ろして体に触れないようにする。片脚を、太ももが床と平行になるまで上げる。安定したら目を閉じ、足の位置がずれるまでの時間を測る。TPIは25秒を超えれば正常とし、25秒で止めます。バランスそのものはヘッドスピードとの関係が見られていないので(メタ分析)、「乗った脚の上で回るため」の確認です。
①②で基準に届かない、または左右差がはっきりある場合は「回る」側、③〜⑤で崩れる場合は「分ける・支える」側の問題です。5つとも基準を満たしているのに飛ばないなら、次の見出しの「パワー」を確かめてください。TPIの16項目の全体はTPI 16項目の全解説に、股関節への乗り方はゴルフの股関節の使い方に、横に流れる動きはスウェーの直し方にまとめています。
テストは反動をつけずに、痛みのない範囲で行ってください。回す途中で腰や股関節の前側に鋭い痛み・詰まりが出たら、そこで止めます。閉眼片脚立ちは転倒に備えて壁や椅子のそばで行い、ブリッジで腰や太もも裏がつりそうになったら、無理に保たずに下ろしてください。基準に届かない項目を、その日のうちに押し込んで届かせようとしないこと。足りない分を腰で補う代償が増えるだけです。
パワーは落ちているか?——立ち幅とびと握力を年代の平均と比べる
パワーの目安は、国の体力テストと同じ方法で立ち幅とびを測り、年代の平均と比べることです。握力も測れるなら並べてください。握力は平均並みなのに立ち幅とびが平均を大きく下回るなら、脚で大きな力を速く出すパワーが落ちていることが疑われます。握力は手と前腕の力なので、脚の筋力が保たれているかまでは分かりません。
研究でヘッドスピードとの関係が示されているのはジャンプの力です。国が年代別の平均を公表している「跳ぶ力」は立ち幅とびなので、同年代の中での位置を見る物差しとして使います。測り方はスポーツ庁の新体力テスト実施要項(20〜64歳)に沿っています。
立ち幅とび(2回のよい方)
滑りにくいマットを壁につけて敷き、着地でずれないようにテープで固定する。両足を軽く開いて、つま先を線にそろえて立ち、両足で同時に踏み切って前へ跳ぶ。線から、着地で身体がマットに触れた位置のうち最も線に近いところまでを測る。先に足首・アキレス腱・膝の柔軟運動を十分に行います。
握力(左右2回ずつ)
人差し指の第2関節がほぼ直角になるように握りの幅を合わせる。まっすぐ立って腕を自然に下げ、握力計が身体や服に触れないようにして、力いっぱい握る。右左交互に2回ずつ行い、左右それぞれのよい方を平均します。
| 項目 | 男性 50〜54歳 | 男性 55〜59歳 | 女性 50〜54歳 | 女性 55〜59歳 |
|---|---|---|---|---|
| 握力(平均/標準偏差) | 44.39kg/6.69 | 43.49kg/6.37 | 27.09kg/4.54 | 26.49kg/4.19 |
| 立ち幅とび(平均/標準偏差) | 192.20cm/22.26 | 182.79cm/21.53 | 140.23cm/22.81 | 136.72cm/22.93 |
標準偏差は「ばらつきの目安」です。たとえば50〜54歳の男性で立ち幅とびが170cmを下回る(平均から標準偏差1つ分以上低い)なら、同年代の中でも低い側です。握力は平均並みで立ち幅とびだけが低い人は、見出し4の①「パワーの低下」が考えられ、脚の筋力そのものが落ちていることもあります。どちらも平均以上なのに飛ばない人は、②〜④の通り道か、スイングの技術の側を疑います。握力とヘッドスピードの関係はゴルフに握力は必要かで。
しばらく運動していない方、膝・腰・足首やアキレス腱に痛みや不安がある方、医師から運動を禁止・制限されている方は、立ち幅とびを行わないでください。国の実施要項も、40歳以上では自覚症状・血圧・心拍数のチェックを必ず行い、胸痛などの胸の症状を注意深く確かめるとしています。全力のジャンプは準備運動のあと2回までに。
50代からでもヘッドスピードは上がる?——平均47〜71歳のゴルファーの8週間
上がりうる、というのが研究の答えです。平均年齢47〜71歳のゴルファーが8週間のトレーニングを行った研究で、ヘッドスピードが上がったという報告が複数あります。ただし何ヤード伸びるかは人によって違い、約束できる数字はありません。
| 研究 | 対象 | 内容 | ヘッドスピードの結果 |
|---|---|---|---|
| Hetu ら、1998 | 一般ゴルファー17名(男性12・女性5、平均52.4歳) | 8週間・週2回。筋力トレーニング・柔軟性・プライオメトリクス(跳ぶ・弾む運動) | 筋力・柔軟性とともに有意に上がった(対照群のない研究) |
| Lephart ら、2007 | 男性ゴルファー15名(平均47.2歳) | 8週間・週3〜4回。ゴルフに特化した運動(オフシーズン) | クラブ速度・ボール速度・キャリー・総飛距離が有意に伸びた(前後比較) |
| Thompson・Osness、2004 | 男性ゴルファー31名(平均65.1歳、55〜79歳) | 8週間の筋力+柔軟性。対照群と比較 | 時速85.0→87.1マイル(約38.0→38.9m/s)。対照群と有意差 |
| Thompson ら、2007 | 男性ゴルファー18名(平均70.7歳) | 8週間。柔軟性・体幹の安定・バランス・筋力を段階的に組んだ機能的トレーニング | 時速127.3→133.6km(約35.4→37.1m/s)。対照群は134.5→133.3km |
20研究をまとめたシステマティックレビュー(Uthoff ら、2021)では、一般的な筋力トレーニングとゴルフに近い動きのトレーニングを組み合わせたプログラムで、ヘッドスピードが平均4.1%、飛距離が平均5.2%伸び、一般的な筋力トレーニングだけ(ヘッドスピード1.6%、飛距離4.8%)より大きい傾向でした。著者らは、ゴルフに近い動きを速く行う種目を含む8週間のプログラム(3〜4セット×5〜15回)が最も効果的だったとまとめています。
平均65歳・71歳の研究は50代より年上で、どれも8週間の短い研究です(表のm/sは私たちの換算)。それでも「年齢が上がっても、トレーニングでヘッドスピードは変わりうる」ことは一貫しています。国の指針も、成人に筋力トレーニングを週2〜3日すすめています(厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」。自重のスクワットなども含む)。種目の選び方はヘッドスピードを上げるトレーニングにまとめています。
50代から飛距離アップする順番は?——測る、外す、作る、戻す
順番は「測る→制限を外す→パワーを作る→スイングに戻す」です。可動域の制限とパワーの低下が重なっていることもあるので、先にどこで失っているかを測り、力の通り道を開けてからエンジンを大きくします。
測る
見出し5の5つのテストで「回る・分ける・支える」を、見出し6で「パワー」を、左右で確かめます。どれが基準に届かないかで、次にやることが決まります。
外す
基準に届かない可動域(胸椎・股関節)と、崩れる安定(骨盤回旋・お尻・片脚)を先に整えます。胸椎なら横向きに寝て胸を開くオープンブック、お尻ならブリッジのように、反動をつけない種目を短い時間で毎日。ここを飛ばすと、力は腰や肩の代償に逃げやすくなります。
作る
スクワットやお尻を使う種目で筋力の土台を作り(週2〜3日)、ジャンプやメディシンボールを投げる種目で「速く出す力」を、少ない回数で速く行います。疲れてから回数をこなすと速さの練習になりません。
戻す
作った動きをスイングで使います。技術と道具はレッスンプロ、身体はトレーナーと役割を分け、同じ手順で測り直して変化を確かめます。
逆に、次のやり方は遠回りになりやすいと私たちは考えています。
| 遠回りになりやすいこと | 理由 |
|---|---|
| ストレッチだけで飛距離を戻そうとする | 柔軟性そのものはヘッドスピードとの関係が見られていない(メタ分析)。可動域は前提条件で、速さの源はパワー |
| 重い重量をゆっくり挙げる筋トレだけを続ける | 上半身では、最大筋力より爆発的な力のほうがヘッドスピードとの関係が明らかに強い(同じメタ分析) |
| 可動域の制限があるまま球数を増やす | 足りない回旋を腰や肩が補う動き(TPIの説明する代償)を、そのまま繰り返すことになる |
切り返しで下半身から動く順序はゴルフの下半身リードとはで解説しています。
スイングの問題か、身体の問題か?——レッスンとトレーニングの分け方
両方です。ただ、身体に制限があるうちは、レッスンで正しい形を教わっても、身体がその形を取れません。TPIは「スイングの型は無数にあるが、その人が身体的にできることに基づいた効率的な振り方が1つある」と考え、そのためにゴルファーは「まず評価(スクリーニング)を受ける必要がある」としています。
ヘッドスピードは出ているのにボール初速や飛距離が伸びない(芯に当たらない、打ち出しが合わない)なら、技術と道具の側が中心で、レッスンプロの領域です。ヘッドスピードそのものが落ちている、トップが浅くなった、切り返しで横に流れるといった変化が、見出し5・6のテストの結果と重なるなら、身体の側から先に手をつけます。ヘッドスピードとボール初速からミート率を出して切り分ける方法は、ヘッドスピードの平均の記事の「自分の伸びしろを身体から見る」で扱っています。TPIそのものについてはTPIとはで。
現場で見えていること
「飛ばなくなった」と相談に来られる50代の方には、「身体が硬くなったから」と考えて、まずストレッチを増やしている方が少なくありません。測ってみると、回旋は基準を満たしていて、跳ぶ・投げるといった速い動きのほうで力が出ていない方もいます。反対に、片側だけ下半身回旋が基準に届かず、その側で横に流れている方もいます。同じ「飛ばなくなった」でも、失っている場所は人によって違います。
もう1つよく見かけるのが、原因が分からないまま練習の球数を増やしている方です。可動域が足りない状態で打つ球が増えれば、足りない分を腰や肩で補う動きも一緒に繰り返すことになります。私たちは、TPIの身体評価をベースにした16項目を左右で測り、どこで失っているかを分けてから、外す順番を決めます。そして6週後に同じ手順で測り直し(再評価は任意)、変わったかどうかを感覚ではなく数値で確かめます。「年齢のせい」と決める前に、測って分ける価値がある——これが、ゴルファーの身体を測ってきた実感です。役割の分け方はゴルフのパーソナルトレーニングにまとめました。
よくある質問
50代で飛距離が落ちるのは年齢のせいですか?
年齢の影響はありますが、それだけではありません。国の体力調査(令和6年度)では、50〜54歳男性の握力は20〜24歳の99.4%なのに、立ち幅とびは84.9%です。測っている部位が違うのでこの数字だけでは言い切れませんが、研究のまとめでも、先に落ちるのは速く力を出すパワーとされています。股関節と膝の可動域の年齢差は小さいという米国の大規模調査もあり、大きく回らないなら、姿勢や動かしていない期間など変えられる理由を疑ってください。股関節を内側にひねると足の付け根が痛む場合は、先に整形外科で確かめてください。
50代からでもヘッドスピードは上がりますか?
上がりうる、というのが研究の答えです。平均52.4歳のゴルファー17名が8週間・週2回、筋力トレーニング・柔軟性・跳ぶ運動を行った研究で、ヘッドスピードが有意に上がりました(対照群のない研究)。平均65歳や71歳の男性ゴルファーの研究でも、8週間で対照群より上がっています。ただし何ヤード伸びるかは人によって違います。
飛距離を伸ばすには、ストレッチと筋トレのどちらが先ですか?
先に測って、基準に届かない可動域があればそこを外すのが先です。ただしストレッチだけでは速くなりにくく、20研究のメタ分析では柔軟性そのものはヘッドスピードとの関係が見られませんでした。可動域を整えたら、筋力の土台と、ジャンプや投げる種目で「速く出す力」を作ります。
週に何回、どのくらいの期間で変わりますか?
この記事で紹介した研究は、いずれも8週間のプログラムで、頻度は週2回(Hetu ら)や週3〜4回(Lephart ら)でした。国の指針は、成人の筋力トレーニングを週2〜3日としています。変わったかどうかは感覚ではなく、同じ手順で測り直して確かめてください(私たちのTPIフィジカルアセスメントでは6週後の再評価を任意で用意しています)。
腰や膝が痛くても、飛距離のためのトレーニングをしていいですか?
痛みがある状態で、飛距離のためのテストやトレーニングを続けることはすすめません。安静時や夜間も続く痛み、脚のしびれ、力が入りにくい感覚がある場合は、先に整形外科を受診してください。原因が分かり、医師から運動の許可が出てから、痛みのない範囲で始めます。
身体のどこが原因か、自分で確かめる方法はありますか?
TPIの5テスト(座位体幹回旋・下半身回旋・骨盤回旋・ブリッジ+脚伸ばし・閉眼片脚立ち)は自宅でもできます。パワーは、立ち幅とびと握力を国の年代平均と比べると目安になります。基準に届かない項目や、左右差がはっきりある項目が、最初に手をつける場所です。
TPI測定のご案内
年齢のせいと決める前に、まず「どこで失っているか」を測って分けてください。TPIフィジカルアセスメントでは、TPIの身体評価をベースにした16項目を90分で実測し(カウンセリング10分・測定40分・結果の解説20分・プログラムの説明と実技20分)、どの制限がどのスイング特性と結びつきやすいか、最初に取り組む3項目は何かを、評価レポートとプログラムのPDFでお渡しします。実際のトレーニングを受けてみたい方は、身体機能チェックを含む体験トレーニング(90分)もお選びいただけます。
TPI Physical Assessment
飛距離を失っている場所を、
16項目で測って分ける90分
TPIの身体評価をもとにした16項目を実測し、どの身体の制限がどのスイング特性と結びつきやすいかを、評価レポートとプログラムのPDFにまとめてお渡しします。単発で完結し、入会は不要です(6週後の再評価は、会員の方は追加料金なし、会員以外の方は¥19,800・税込)。
まず動いて確かめたい方は、体験トレーニング(90分・¥15,000/毎月先着3名さま¥7,500)もお選びいただけます(先着枠は毎月1日起算、定員後は通常¥15,000)。
ウェア・タオル無料 | 完全個室 | 六本木駅徒歩4分
主な参考(タップで開く)
- スポーツ庁「令和6年度体力・運動能力調査報告書」統計数値表 表1-1・表1-3、調査結果の概要(2025年10月公表。成年の握力・立ち幅とびは男性各年代およそ850〜1,300名。20〜24歳を100とした値は私たちの計算)。
- スポーツ庁「新体力テスト実施要項(20歳〜64歳対象)」(立ち幅とび・握力の方法、実施上の一般的注意)。
- 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」(成人:筋力トレーニングを週2〜3日)。
- Metter EJ, Conwit R, Tobin J, Fozard JL. Age-associated loss of power and strength in the upper extremities in women and men. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 1997;52(5):B267-B276.(ボルチモア縦断研究。最長25年の追跡)
- Reid KF, Fielding RA. Skeletal muscle power: a critical determinant of physical functioning in older adults. Exerc Sport Sci Rev. 2012;40(1):4-12.
- Nilwik R, Snijders T, Leenders M, et al. The decline in skeletal muscle mass with aging is mainly attributed to a reduction in type II muscle fiber size. Exp Gerontol. 2013;48(5):492-498.(若年男性25名・高齢男性26名)
- Roach KE, Miles TP. Normal hip and knee active range of motion: the relationship to age. Phys Ther. 1991;71(9):656-665.(NHANES I、1,683名)
- Edmondston SJ, Aggerholm M, Elfving S, et al. Influence of posture on the range of axial rotation and coupled lateral flexion of the thoracic spine. J Manipulative Physiol Ther. 2007;30(3):193-199.(18〜43歳の52名)
- Brennan A, Murray A, Mountjoy M, et al. Associations between physical characteristics and golf clubhead speed: a systematic review with meta-analysis. Sports Med. 2024;54(6):1553-1577.(20研究)
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