直らない動きは「動く範囲が足りない」「支えきれない」「速さに見合う力が足りない」「技術・タイミングが合っていない」に分けると、どちらに持ち込むかの見当がつきます。TPI(Titleist Performance Institute)の公式資料と研究をもとに、見分け方と併用の組み方を整理しました。
この記事は、六本木の完全個室パーソナルジム Disport World で、TPI認定(Fitness 2/Power 2)と日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)の岡本隼人が、ゴルファーの身体を実際に測ってきた経験から書いています。扱うのはスイングの技術ではなく、身体の側の原因です。ゴルフの身体づくり(記事一覧・体験)→
・スクール(レッスン)はスイングの形と技術、トレーニングはその形を作る身体の条件を受け持つ。TPIは、効率のよい振り方はその人の身体ができることで決まるとし、専門家のチームで関わることをすすめている
・直らない動きは、クラブなしでゆっくり作れるかで見当がつく。支えても作れない=可動性、支えれば作れる=安定性、作れるのにスイングで崩れる=まず技術・タイミング(速さに見合う筋力・パワーの不足のこともある)
・身体テストとスイングの癖の関連は一部で確かめられている(ゴルファー36名、Gulgin ら、2014)が、テスト1つで癖が決まるわけではない
・手順は「測る→コーチと共有→身体を作る→レッスンでスイングに入れる→測り直す」。追い込んだ直後に新しい形を習わない
ゴルフスクールとパーソナルトレーニングは、何を分担する?
ゴルフスクール(レッスン)が受け持つのはスイングの形と技術、パーソナルトレーニングが受け持つのはその形を作るための身体の条件です。どちらが上ということではなく、見る対象と道具が違います。
TPIは公式サイトで、振り方は1つではないが、その人の身体が実際にできることに基づいた効率のよい振り方は1人に1つある、と説明しています。そのためにスイングと身体の両方を評価し、トレーニング、スイングのコーチング、理学療法などを組み合わせた計画を立てる。そして、ゴルファーは専門家のチームに囲まれるときに最も伸びる、としています。
| 項目 | ゴルフスクール(レッスン) | パーソナルトレーニング |
|---|---|---|
| 受け持つもの | スイングの形・技術・タイミング、球筋 | 動く範囲(可動性)、支える力(安定性)、筋力とパワー |
| 見る方法 | スイング映像、弾道計測、コーチの目 | スイングをしない動作テスト、左右の比較 |
| 答えやすい問い | どう振るか、なぜ球が曲がるか | その形を作れる身体か、なぜ同じ癖に戻るか |
| 変化の確かめ方 | 球筋・弾道の数値、映像 | 同じテストを同じ手順で測り直した数値 |
店の選び方は六本木のゴルフ向けパーソナルジムの選び方に、鍛える理由はなぜゴルファーはトレーニングするのかにまとめました。この記事では、レッスンで言われ続けていることを「どちらに持ち込むか」の決め方を扱います。
なぜ、レッスンで何度言われても直らない動きがあるのか?
身体が作れない形は、スイングの中でも作れないからです。動く範囲や支える力が足りないと、別の関節がそれを埋め合わせ、その埋め合わせが毎回同じ「癖」として出ます。
TPIは、深くしゃがむ動きや股関節から深く曲げる動きに制限があると、ダウンスイングで腰がボール側へ突き出る動き(アーリーエクステンション)を強いられることがある、と説明しています。TPIのサイトに載ったゴルフコーチ Oliver Morton の記事も、身体を評価するのは、すべての癖が身体から来ると考えるからではなく、身体的に難しい、あるいは不可能な動きを技術として求めないためだ、としています。
研究でも一部は確かめられています。男女のゴルファー36名にTPIの身体テスト12種を行い、スイング映像から14種の癖を判定した研究(Gulgin ら、2014)で有意だった組み合わせは、前屈とアーリーエクステンション、右側のブリッジとアーリーエクステンション、右側のブリッジとロスオブポスチャー(前傾などアドレスの角度が崩れる動き)の3つでした。オーバーヘッドディープスクワットか左脚の片脚バランスができない人は、アーリーエクステンション、ロスオブポスチャー、スライド(下半身が目標方向へ流れる動き)が2〜3倍出やすかった、という結果もあります。裏を返すと、テスト1つで癖が決まるわけではありません。テストは「この指摘の裏に、この条件があるかもしれない」という仮説を立てる道具です。全体の対応はスイングエラー14種の完全ガイドにあります。
その指摘は技術か、身体か——TPIが挙げる身体の条件
レッスンでよく言われる指摘の多くに、TPIは「その動きを起こしうる身体の条件」を挙げています。対応する項目を測り、足りていればまずレッスンで、足りていなければトレーニングで扱います(右打ちで記載。左打ちは左右が逆)。
| 言われ方(例) | TPIでの呼び名 | TPIが挙げる身体の条件(要約) | 測る項目の例 |
|---|---|---|---|
| 「腰が前に出る」「詰まる」 | アーリーエクステンション | 深くしゃがむ・股関節から曲げる動きの制限、上半身と下半身の分離、臀筋と腹筋 | オーバーヘッドディープスクワット、前屈 |
| 「前傾を保って」「起き上がる」 | ロスオブポスチャー | 深くしゃがむ動きの制限、背骨の動きと広背筋の柔軟性、体幹の安定 | 前屈、座位体幹回旋、骨盤の前後傾 |
| 「右に流れないで」 | スウェー | 右股関節の内旋、分離、右の中殿筋 | 下半身回旋 |
| 「腰が左に流れる」 | スライド | 左股関節の内旋、分離、左の中殿筋 | 下半身回旋、片脚バランス |
| 「外から下ろさないで」 | オーバーザトップ | 股関節の動き、臀筋と腹筋の強さ、下半身を上半身から分けて動かす力 | 骨盤回旋 |
| 「左肘を伸ばして」 | チキンウィング | 下半身のパワー不足、左肩の外旋の不足 | 90/90(肩の外旋) |
右端は、TPIの各特性・各テストの解説から対応づけた項目と、前の章の研究で関連が見られた項目(前屈・片脚バランス)です。TPIの目安は、座位体幹回旋が左右とも45度を超えること、下半身回旋が左右とも60度以上。測り方はTPI 16項目の全解説にあります。
座位体幹回旋、下半身回旋、90/90、片脚バランスを含む16項目を実測し、どの制限がどのスイング特性と結びつきやすいかを、根拠になったテストとともにレポートPDFでお渡しします。普段のコーチとの共有も自由です。
TPIフィジカルアセスメントの詳細を見る自分で見分けるには?——クラブなし・支えありで試す
言われた形を、クラブを持たずにゆっくり作れるかで見当がつきます。支えても作れなければ可動性、支えれば作れるなら安定性、作れるのにスイングで崩れるなら、まずは技術・タイミングの課題です。ただし、ゆっくりなら作れても、スイングの速さの中では筋力・パワーが足りずに崩れることもあります。
TPIの骨盤回旋テスト(アドレスの姿勢で、上半身を動かさずに骨盤だけを左右に回す)の解説にも、上半身を支えても分けて回せなければ可動性、支えれば回せるなら安定性の問題、と区別する手順があります。
クラブなしで、ゆっくり作る
前傾を保って胸だけを右に回す、肩を動かさずに骨盤だけを回す、左脚に乗って止まる。作れて、スイングでだけ崩れるなら、まずはレッスンで扱う技術・タイミングの課題です。チキンウィングのように下半身のパワー不足が関わる動きもあるため、レッスンで変わらなければトレーナーに相談してください。
作れなければ、支えを足す
壁に手をつく、椅子に座る、家族に肩を押さえてもらう。支えがあれば作れるなら安定性の不足で、トレーニングで作ります。その間もレッスンは続けられます。
支えても作れなければ、範囲を測る
座位体幹回旋や下半身回旋を、左右とも同じやり方で測ります。範囲ができるまでは、コーチと相談して打ち方で迂回する方法もあります(次の章)。
どのチェックも、痛みや鋭い詰まりが出る手前で止めてください。反動で押し込む、腰を反らせて回った量を増やす、といった埋め合わせは測る意味をなくし、負担を腰に移します。片脚のチェックは壁のそばで。痛みがある方は、先に下の受診の目安を確認してください。
身体に制限があったら、レッスンはどうする?
レッスンをやめる必要はありません。制限を避ける打ち方を教わる道と、身体と技術を同時に変える道があり、どちらを選ぶかで、スクールとトレーニングの役割の重さが変わります。
前出の Morton の記事は、身体の制限とスイングの問題がつながったとき、身体と技術を同時に改善する道と、身体の特徴を迂回してコーチする道の2つを挙げています。選択は時間・費用・関心などで決まるとしたうえで、可能なら前者をすすめています(可能性が広がり、ケガのリスクも下がるため)。記事の例では、左股関節と足首の動きが限られたゴルファーが迂回を選び、コーチは左足のつま先を20度ほど外へ開かせて、制限の影響を小さくしました。迂回ならレッスンが主役、同時に進めるならトレーニングが範囲を作り、レッスンがその範囲に合わせて形の目標を上げていきます。
トレーニングを加える効果については、対照群や比較群と比べた25研究のレビュー(Ehlert、2020)が、有意な結果の平均でヘッドスピード・ボール初速・飛距離が4〜6.4%伸び、スイングの動きに有意な変化が出た研究も4本あったと報告しています。ただし、レッスンだけの人と併用した人を直接比べた研究は、今回確認した範囲では見つかりませんでした。
併用はどう組む?——5つの手順
手順は「測る→コーチと共有する→身体を作る→スイングに入れる→測り直す」の5つです。1週間の中では、追い込むトレーニングの直後に、新しい形を習うレッスンを入れないことが基本です。
測る
言われ続けている指摘に対応する項目を、左右とも同じ手順で測ります。
コーチと共有する
TPIのアドバイザリーボードに名を連ねるトレーナー Jason Glass は、評価の記録を「医療」「コーチへのメモ」「エクササイズ」に分けて書くと、TPIのサイトで紹介しています。コーチには、基準に届かなかった項目とその左右、取り組んでいること、測り直す時期を伝えます。
スイングに入れる
動くようになった範囲をスイングの中で使えるようにするのは、レッスンと練習の仕事です。
測り直す
同じ項目を同じ手順で測り直し、結果をまたコーチに伝えます。当店の再評価は6週後(任意・¥15,000・税込)です。
追い込んだ直後にレッスンを入れない理由は、運動学習の研究にあります。健康な成人38名が、指先の力を細かく調整する新しい課題を練習した実験(Branscheidt ら、2019)では、1日目に最大筋力がおよそ6割落ちるまで手の筋肉を疲労させてから練習した群は、疲れの抜けた2日目も上達が遅れました。ゴルフの研究ではないのでそのまま当てはめはできませんが、レッスンの前は可動域の種目を軽く行う程度にとどめ、筋力・パワーのトレーニングはレッスンと別の日に入れる組み方をすすめます。
現場で見えていること
当店のTPIフィジカルアセスメント(90分)は、測定ではスイングをせず、16項目を3段階で判定します。レポートには出やすいスイング特性と根拠のテスト、まず取り組む3項目が並びますが、スイングの解析は含まないため、実際のスイングに出ているかは、コーチの目や映像と突き合わせる前提です。
「レッスンで毎回同じことを言われる」という方を測ると、指摘の内容と基準に届かない項目が、上の表の対応どおりに並ぶことが少なくありません。一方で、対応する項目が左右とも基準を満たす方もいます。その場合は、まず技術・タイミングの課題としてレッスンで扱います。「動く範囲や支える力の不足が原因ではない」と分かることにも、測る意味があります。また、身体の条件がそろっても、その範囲を使う打ち方はレッスンと練習で身につけるもので、トレーニングだけでは置き換わりません。測定の流れはTPIフィジカルアセスメントのページにまとめています。
よくある質問
ゴルフスクールとパーソナルトレーニングは両方必要ですか?
全員に両方が要るわけではありません。言われた形をクラブなしでゆっくり作れるなら、まずはレッスンと練習で足ります。作れない形がある、または同じ指摘が続く場合は、身体を測ってからトレーニングを加えてください。痛みがある場合は、レッスンやトレーニングの前に、まず医療機関を受診してください。
レッスンとトレーニングはどちらを先に始めればいいですか?
同時に始めて構いません。先にしておきたいのは測ることです。制限があれば、迂回する打ち方で進めるか、身体を作りながら形を変えるかをコーチと選べます。制限がなければ、まずはレッスンに集中してください。
レッスンとトレーニングは同じ日に受けてもいいですか?
軽い可動域の種目のあとにレッスン、という組み合わせは向いています。避けたいのは、筋力やパワーを追い込んだ直後に新しい形を習うことです。筋肉を強く疲労させてから練習すると、翌日の上達まで遅れたという実験があります(ゴルフ以外の課題の研究です)。
パーソナルトレーナーにスイングを直してもらえますか?
当店ではスイングの指導は行わず、TPI測定にもスイングの解析は含まれません。スイングの形はコーチ、形を作る身体の条件はトレーナー、という分担です。
TPIの評価レポートをスクールのコーチに見せてもいいですか?
構いません。お渡しするPDFはご本人のものです。基準に届かなかった項目とその左右、取り組んでいる種目、測り直す時期が伝わると、コーチは形の目標を決めやすくなります。
TPI測定のご案内
何度言われても直らない動きがあるなら、スイングを変える前に、その形を作る動く範囲と支える力が足りているかを測ってください。結果はコーチと共有して、次のレッスンの前提にしてください。まず身体を動かして確かめたい方は、体験トレーニングからでも始められます。
TPI Physical Assessment
「何度言われても直らない」を
身体の側から切り分ける90分
TPIの16項目を実測し、どの身体の制限がどのスイング特性と結びつきやすいかを評価レポート+プログラムPDFにまとめてお渡しします。コーチとの共有も自由です。単発で完結し、入会は不要です(6週後の再評価は¥15,000・税込)。
まず動いて確かめたい方は、体験トレーニング(90分・¥15,000/毎月先着3名さま¥7,500)もお選びいただけます(先着枠は毎月1日起算、定員後は通常¥15,000)。
ウェア・タオル無料 | 完全個室 | 六本木駅徒歩4分
主な参考(タップで開く)
- Gulgin HR, Schulte BC, Crawley AA. Correlation of Titleist Performance Institute (TPI) level 1 movement screens and golf swing faults. J Strength Cond Res. 2014;28(2):534-539.(男女のゴルファー36名。身体テスト12種と14種のスイングの癖)
- Ehlert A. The effects of strength and conditioning interventions on golf performance: a systematic review. J Sports Sci. 2020;38(23):2720-2731.(対照群・比較群のある25研究)
- Branscheidt M, Kassavetis P, Anaya M, Rogers D, Huang HD, Lindquist MA, Celnik P. Fatigue induces long-lasting detrimental changes in motor-skill learning. eLife. 2019;8:e40578.(健康な成人。実験1は38名、全実験で121名)
- Titleist Performance Institute. About(Our Philosophy)/Swing Characteristics: Early Extension, Loss of Posture, Sway, Slide, Over the Top, Chicken Winging/The Overhead Deep Squat Test/The Pelvic Rotation Test/The Seated Trunk Rotation Test/The Lower Quarter Rotation Test/The 90/90 Test(mytpi.com、2026年9月閲覧)
- Morton O. Making Technical Changes To Compensate For Limited Hip Mobility(mytpi.com、2026年9月閲覧)
- Glass J. Advanced Screening: How I Use the TPI Screen(mytpi.com、2026年9月閲覧)


