ゴルフのケガとは、ゴルフのプレーや練習の中で起きる、筋肉・腱・関節・骨の傷みのことです。多くの調査で最も多いのは腰で、肘・手首・肩・膝が続きます。大半は1回の外傷ではなく使いすぎで、同じ部位でも右打ちの左(リード側)と右(トレイル側)では負担のかかる局面や動きの向きが違うため、痛む側によって確かめる動きが変わります。
この記事は、六本木の完全個室パーソナルジム Disport World で、TPI認定(Fitness 2/Power 2)と日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)の岡本隼人が、ゴルファーの身体を実際に測ってきた経験から書いています。扱うのはスイングの技術ではなく、身体の側の原因です。ゴルフのパーソナルトレーニング(六本木・TPI測定)→
・多くの調査で最も多いのは腰。2番目は対象で変わり、肘・手首・膝・肩が挙がる
・ケガの大半は使いすぎ。703名の調査では82.6%(Gosheger ら、2003)
・右打ちでは、手首の問題と肋骨の疲労骨折が左(リード側)に偏るという報告がある
・はっきりしている共通の条件は過去のケガ(Robinson ら、2024 ほか)
・痛む部位と側から「まず確かめる動き」を早見表にした。診断ではなく、測る順番の目安
ゴルフで痛めやすいのは体のどこ?
多くの調査で、最も多いのは腰です。部位別の割合や件数を示した4つの調査(オーストラリア2件、米国とスイス、ポルトガル)では、どれも腰が1位でした。ただし703名の調査では、アマのケガは肘・腰・肩の順に挙げられています(Gosheger ら、2003)。2番目以降は対象で変わります。
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| 研究 | 多かった部位(原典の数字) | 対象・方法 |
|---|---|---|
| McHardy 2007(588名) | 腰18.3%、肘・前腕17.2%、足・足首12.9%、肩・上腕11.8% | オーストラリアのアマ・1年間の追跡 |
| McHardy 2007(1,634名) | ケガをした288名の内訳で腰25.3%、肘15.3%、肩9.4%(全369件では腰24.9%) | オーストラリアのアマ・過去12か月の郵送調査 |
| Robinson 2024(910名) | ケガ799件のうち腰(腰仙部)265件、膝82件、肩69件、股関節・鼠径部53件、肘50件 | 米国とスイスのアマ・5か月間、毎週の追跡 |
| Minghelli 2024(140名) | 腰27.0%、手首22.2%、胸郭・肋骨/肩/膝が各7.9% | ポルトガルの大会に出た競技者(18〜72歳)・過去12か月 |
| Gosheger 2003(703名) | プロは腰・手首・肩、アマは肘・腰・肩の順に記載(割合は抄録になし) | ミュンスター大学(ドイツ)の研究グループ・プロとアマ・2シーズンの聞き取り |
Robinson らは休んだ日数で見た「負担」でも比べ、腰・肩・膝の順に大きいと報告しています。TPI(ゴルファーの身体評価を教える Titleist Performance Institute)も、31,000人を超えるゴルファーのデータで、28.1%がラウンドのたびに腰痛を抱えていると公表しています。
1回のケガと使いすぎ、どちらが多い?
使いすぎのほうが、はるかに多いです。703名の調査では、報告されたケガ637件のうち82.6%が使いすぎで、1回の外傷は17.4%でした(Gosheger ら、2003)。ゴルフのケガの多くは、同じ動きの繰り返しの中で少しずつ起きます。
910名を追った研究では、徐々に始まったケガが454件、突然のケガが345件でした。588名の1年追跡でも、再発したケガが最も多く、急に起きるより時間をかけて起きるケガが目立ちました。スイング中に起きたケガは全体の46.2%で、局面ではインパクト(23.7%)、フォロー(21.5%)の順でした(McHardy ら、2007)。肋骨の疲労骨折19例の報告では18名が初心者で、経験者の1名は練習場での練習時間を大きく増やした後でした(Lord ら、1996)。練習量の区切り方は、ゴルフ練習は何球まで?にまとめています。
下半身回旋、座位体幹回旋、90/90、リストヒンジ、頚椎回旋を含む16項目を実測します。左右に分かれる項目は両側とも測り、基準を満たさない側と代償が出ている動きを特定して、数値でレポートPDFにしてお渡しします。痛みがある方は、先に医療機関の受診をおすすめしています。
TPIフィジカルアセスメントの詳細を見る同じ部位でも、左と右で原因が違うのはなぜ?
右打ちのスイングは左右で非対称で、同じ部位でも、負担がかかる局面と動きの向きが左右で違うからです。股関節と膝は、右がバックスイング、左がダウンスイングからフォローで体重と回転を受けます。肩は、左がトップで胸の前へ引き込まれ、右がトップで外へ回ります。痛む側によって疑う動きが変わります(左打ちは左右が逆)。
リード側に偏るという報告
欧州ツアー選手128名のうち38名が手首の問題43件を抱え、67%がリード側の手首でした(Hawkes ら、2013)。肋骨の疲労骨折は19例中16例がリード側(Lord ら、1996)。Lord らの19例を含む13論文44例のまとめでは、疲労骨折の80%がリード側でした(Lee、2009)。利き手の記載はない報告ですが、肩の痛みがあった競技ゴルファー35名では34名が左肩でした(Mallon・Colosimo、1995)。
トレイル側に負担が出るという報告
エリートゴルファー55名の股関節MRIでは、関節唇損傷がトレイル側37%、リード側16%でした(Dickenson ら、2016)。右打ちのアマ10名は、プロ10名よりダウンスイングでトレイル側の円回内筋(肘の内側から前腕へ走る筋肉)の活動が大きく、著者はアマの肘の内側の痛みの予防や対処に、この筋肉の運動が役立つ可能性を挙げています(Farber ら、2009)。
腰はリード側の股関節とつながる
腰痛歴のあるプロ(42名中33%)と腰痛のあるアマ28名には、リード側の股関節の内旋(内へひねる動き)が少ないという共通点がありました(Vad ら、2004/Murray ら、2009)。トレイル側の股関節には差がありませんでした。
膝も、13名の計測で左右の最大負荷が違い、膝にとって最もきつい局面はダウンスイングでした(Gatt ら、1998)。ただし、どれも片側だけ痛む原因を1つに決めるものではありません。左右差そのものの扱い方は、ゴルフの左右差はなくすべきかで書いています。
部位ごとに、まず疑う動きと体の場所は?
痛む部位と側が分かれば、先に測る動きの見当がつきます。しびれ、夜間も続く痛み、転倒のあとの痛みなどがあれば、この表より先に受診の目安を確かめてください。痛みがある日に、表の動きを自分で試すのは避けてください。下の表は、痛む部位と側から先に確かめたい動きの目安です(右打ち前提・診断ではありません)。
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| 部位と側 | まず疑う動き | 関係するTPIの項目 | 詳しい記事 |
|---|---|---|---|
| 腰(左右とも) | リード側股関節の内旋や胸の回旋の不足を、腰の回旋で補う | 下半身回旋・座位体幹回旋 | 腰痛と運動(ゴルフ) |
| 股関節・左(リード) | 内旋が足りず、骨盤が目標側へ横に流れる(スライド) | 下半身回旋・片脚立ち | 股関節の痛み |
| 股関節・右(トレイル) | 右股関節の内旋に乗れず(回れず)、バックスイングで腰が目標と反対へ横にずれる(スウェー) | 下半身回旋・骨盤回旋 | |
| 膝・左(リード) | 左股関節で回れず、膝が内へ入る・急に伸びる | 下半身回旋・片脚立ち | 膝の痛み |
| 膝・右(トレイル) | 右股関節に乗れず、膝が外へ流れる | 下半身回旋・骨盤回旋 | |
| 肩・左(リード) | 胸が回らない分を、左腕を胸の前へ引き込んで補う | 座位体幹回旋・90/90 | 肩の痛み |
| 肩・右(トレイル) | トップで外へ回る範囲(外旋)の不足 | 90/90 | |
| 肘・左(リード・外側) | インパクトで左肘が曲がって引ける(チキンウィング) | 90/90・広背筋の長さ | 肘・手首の痛み |
| 肘・右(トレイル・内側) | 切り返しで手首が早くほどける(アーリーリリース) | リストヒンジ・前腕回内外 | |
| 手首・左(リード・小指側) | フォローで手首が小指側へ折れる、握る力に頼る | リストヒンジ | |
| 肋骨・左(リード) | 胸の回旋不足、練習量の急な増加 | 座位体幹回旋・胸郭回旋 | 肋骨の痛み |
| 首・背中・左 | バックスイングで頭を残しすぎる、胸が右へ回らず左の肩甲骨で補う | 頚椎回旋・座位体幹回旋 | 首・背中の痛み |
| 首・背中・右 | インパクト後も頭を残す、フィニッシュで急に止める・右肩をすくめる | 頚椎回旋・座位体幹回旋 |
左打ちの方は、左右を入れ替えて読んでください。痛む側の反対や、離れた場所に原因があることもあるため、私たちは痛む側だけでなく両側を同じやり方で測ります。
痛めやすい人に共通する条件は?
はっきりしているのは過去のケガです。910名を5か月追った研究では、過去のケガ・変形性関節症・年齢がケガと関連し、ほかの条件をそろえても残りました(過去のケガはオッズ比2.32、変形性関節症は1.97。Robinson ら、2024)。
過去のケガは、オーストラリアのアマ1,634名の調査でも、腰を痛めた人は以前にも腰を痛めていることが多いと報告されています(McHardy ら、2007)。プレーの量は、588名の1年追跡では関連し(オッズ比3.73)、910名の研究では週に何日プレーするかと関連しませんでした。年齢も588名の研究では関連がなく、結果が分かれています。
どんなときは、運動より先に受診する?
しびれ、力の入りにくさ、安静や夜間も続く痛み、転倒や打撲のあとの痛みがあれば、運動より先に医療機関を受診してください。順番は、受診の目安に当てはまれば受診、当てはまらなくても痛みが続く・悪くなるなら医師に相談、痛む練習は止める、痛みが落ち着いてから負担を集めている動きを測る、です。目安の全体は腰痛・肩こりがある方の運動の始め方(先に病院へ行く目安)にまとめています。腰の不安を、整形外科医・理学療法士・トレーナー・レッスンプロの誰に相談するかは、ゴルフの腰痛予防は誰に相談するかにまとめています。
痛めないために、普段から確かめておく場所は?
痛む場所ではなく、そこに負担を集めている場所を左右で確かめます。TPIは、腰が痛みの最初の原因であることはまれで、足首・股関節・胸椎・肩の動きの不足が腰に負担を集める、という見方を示しています(TPIの記事の筆者が、自身の経験として書いている見方です)。
股関節の内旋(左右)
片脚に乗り、その脚の上で骨盤を左右に回す下半身回旋で、どちらの脚のどちら向きが足りないかを見ます。
胸の回旋(左右)
座って骨盤を止め、クラブを担いで胸だけを回す座位体幹回旋で、腰で回していないかを確かめます。
肩と手首(左右)
肩が外へ回る範囲(90/90)と、手首を親指側・小指側へ折る範囲(リストヒンジ)を、立った姿勢で左右比べます。
片脚で立つ(左右)
目を閉じて片脚で立ち、保てる長さと揺れ方を左右で比べます。乗った脚で支えられないと、その側で回れずに横へ流れます。
どの確認も、痛みが出る手前で止めてください。痛みがある日や、上の受診の目安に当てはまるときは行わないでください。反動をつけて可動域を押し広げるのも避けてください。目を閉じる片脚立ちは、壁や椅子のそばで行ってください。
現場で見えていること
TPIフィジカルアセスメントでは、16項目を、左右に分かれるものは両側とも測ります。片側の痛みを経験した方でも、測ると反対側の股関節や胸の回旋に制限が見つかることがあります。私たちが探すのは、痛む場所そのものより、そこに負担を集めている動きです。
痛みの原因を決めるのは医師の仕事です。私たちができるのは、動きの制限を左右の数値にして、何から手をつけるかを決めることです。痛みのない状態で飛ばしたい方はゴルフの飛距離を伸ばす方法もあわせてどうぞ。
よくある質問
ゴルフで一番多いケガはどこですか?
多くの調査で最も多いのは腰です。オーストラリアのアマ588名では18.3%、ポルトガルの競技者140名では27.0%でした。ただし703名の調査ではアマは肘が先に挙げられており、2番目以降の順位は対象で変わります。
ゴルフのケガは使いすぎが多いのですか?
はい。703名の調査では、ケガの82.6%が使いすぎで、1回の外傷は17.4%でした。910名を5か月追った研究でも、徐々に始まったケガが突然のケガより多くありました。
右打ちで左の手首や肩ばかり痛むのはなぜですか?
左はリード側で、トップでは左腕が胸の前へ引き込まれ、インパクトからフォローでは速く回る体とクラブを受け止める側だからと考えられます。欧州ツアー選手の手首の問題は67%がリード側で、肋骨の疲労骨折は19例中16例がリード側でした。痛みが落ち着いてから、痛む側だけでなく、胸の回旋や股関節の内旋も左右で確かめてください。
ウォームアップをすればケガは防げますか?
研究の結果は分かれています。703名の調査では10分以上のウォームアップに良い影響が見られた一方、588名の1年追跡と910名の5か月追跡では、ウォームアップとケガに関連は見られませんでした。ウォームアップに加えて、負担を集める動きの制限を測っておくことをすすめます。
痛みがあるまま練習やラウンドを続けてもいいですか?
すすめません。ゴルフのケガは使いすぎで少しずつ起きるものが多く、588名の1年追跡では再発が最も多いケガでした。しびれ、安静時や夜間の痛み、転倒のあとの痛みなどがあれば、先に整形外科などの医療機関を受診してください。
TPI測定のご案内
痛みがある方、振ると痛む・痛みが続く方には、先に整形外科などの医療機関の受診をおすすめしています。受診の目安に当てはまらず、痛みが落ち着いてから、そこに負担を集めている動きを左右で測ります。医師から運動の許可が出ている方は、その範囲で測ります。TPIフィジカルアセスメントではボールは打たず、16項目を実測して、評価レポートとプログラムのPDFを当日お渡しします。
TPI Physical Assessment
痛む場所に負担を集めている動きを
左右で測る90分
TPIの16項目を実測し、どの身体の制限がどのスイング特性と結びつきやすいかを評価レポート+プログラムPDFにまとめてお渡しします。単発で完結し、入会は不要です(6週後の再評価は任意で、会員の方は追加料金なし、会員以外の方は¥19,800・税込)。
まず動いて確かめたい方は、体験トレーニング(90分・¥15,000/毎月先着3名さま¥7,500)もお選びいただけます(先着枠は毎月1日起算、定員後は通常¥15,000)。
ウェア・タオル無料 | 完全個室 | 六本木駅徒歩4分
主な参考(タップで開く)
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