こんなお困りごとはありませんか。「もっと肩を回して」と言われると、腰まで一緒に回ってしまう。トップで上体が目標の方へ傾く(リバーススパインアングル)と言われた。肩が横回りになる、トップが浅いと言われる。このページでは、TPIの身体評価16項目の03番「胸郭回旋」が何を見るテストか、制限があるとどう見えるか、スイングにどう出やすいか、当てはまるときに何から始めるかをお伝えします。
書いているのは、六本木のパーソナルジム Disport World です。代表の岡本隼人は、TPI認定(Fitness 2/Power 2)と日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)の資格を持ち、TPI Screen(TPIの身体評価)を提供しています。扱うのはスイングの技術ではなく、身体の側の原因です。16項目の一覧(TPIフィジカルアセスメント)→
胸郭回旋テストは、何を見るテストか?
下半身を止めたまま、上体(胸郭と肩)だけを左右に回せるかを見るテストです。アドレスの構えで両腕を胸の前で交差させ、ベルトから下は動かさずに、上体だけを左右に回してもらいます。見るのは、腰から下が止まっているか、回す代わりに上体を反らす・横に倒す動きで角度を稼いでいないか、左右の回りやすさと滑らかさに差がないか、の3つです。
このテストは、胸の背骨(胸椎)が回る範囲と、下半身を止めておく安定性を、同時に見る組み合わせのテストです。うまく回れないとき、それが「胸が回らない」のか「下半身を止められない」のかで、始めるエクササイズが変わります。骨盤の側を回す02 骨盤回旋と対になり、座った姿勢で胸の回る範囲だけを取り出して見る07 座位体幹回旋とも組み合わせて読みます。16項目の全体と、TPIそのものについてはTPIとはで解説しています。
制限があると、どう見えるか?
胸が回っていない分を、下半身や腰の動きで「回ったように」見せる形で出ることが多いテストです。測っていると、次のような出方があります。
・大きく回そうとすると、骨盤や膝が上体につられて一緒に回る
・回す代わりに、腰を反らす・上体を横に倒す動きで角度を稼ぐ
・片方の向きだけ回りが小さい。回し終わりで震える、息を止める、力む
・下半身を止めると、上体がほとんど回らない
骨盤を手や座面で止めれば、反りや横倒しを使わずに回れる方がいます。この場合は、胸の回る範囲はあり、立った姿勢で下半身を自分で止める使い方(制御)の課題として読みます。止めても回れない方は、胸の背骨を中心とした回る範囲(可動性)の課題を疑います。
どこまで回れば十分かは、出方の型と左右の差を合わせて見るため、測定の場でご本人の動きを見ながらお伝えしています。
スイングには、どう出やすいか?
下半身を止めたまま胸を回しにくいと、足りない回転を反りや傾きで補う、上と下のねじれの差(捻転差)が作れない、といった動きにつながる可能性があります。出方と、回りにくい向きによって、出やすい傾向が分かれます。
01回し方の出方
反り・横倒しで回る
- 出やすい局面
- バックスイング
- スイングで出やすい傾向(可能性)
- 体を反らせて捻転を補う(リバーススパインアングル)。肩の回転面が水平に近づく(フラットショルダープレーン)
02回し方の出方
骨盤・膝が一緒に回る
- 出やすい局面
- 切り返し
- スイングで出やすい傾向(可能性)
- 上と下の捻転差が作れず、切り返しが上体から動く(オーバーザトップ)
03回し方の出方
下半身を止めると回らない
- 出やすい局面
- スイング全体
- スイングで出やすい傾向(可能性)
- トップが浅くなる。足りない回転を腰で補い、腰への負担が増えやすい
04回し方の出方
バックスイング方向だけ回りにくい
- 出やすい局面
- バックスイング
- スイングで出やすい傾向(可能性)
- 捻転が浅くなり、足りない分を反りや傾きで補う(リバーススパインアングル・フラットショルダープレーン)
05回し方の出方
フォロー方向だけ回りにくい
- 出やすい局面
- 切り返し〜フィニッシュ
- スイングで出やすい傾向(可能性)
- 体の回転が途中で止まり、腕や手首の返しで合わせる、上体を起こして空間を作る。フィニッシュが浅くなる
表の「バックスイング方向」は、右打ちの方なら上体を右へ回す向き、「フォロー方向」は左へ回す向きです(左打ちの方は逆になります)。
ただし、36人のゴルファーでTPIの身体テスト12項目と14のスイング特性の関係を調べた研究(Gulginら、2014年)では、統計的に関係が確かめられたのは前屈・ブリッジ・ディープスクワット・片脚立ちに関わる一部の組み合わせで、要旨に挙がった組み合わせに胸郭回旋は含まれていません。
ですから私たちは、このテストの結果だけでスイングの癖を決めつけません。16項目の組み合わせと、実際にお困りのスイングの動きを照らして読みます。14のスイング特性それぞれの意味は14のスイング特性の解説に、反る動きはリバーススパインアングルの解説、肩の横回りはフラットショルダープレーンの解説で書いています。
当てはまるとき、何から始めるか?
いきなりアドレスで大きく回す練習はしません。体重のかからない姿勢で胸の動きを出し、座面や片膝立ちで下半身を止めて胸だけを回し、最後にアドレスへ戻す、という順に進めます。
胸の動く範囲を出す(仰向け・横向き)
胸の背骨を反らす動きと回す動きを、体重のかからない姿勢で出します。回す前に、反らす動きから入れます。
下半身を止めて胸だけを回す(座る・片膝立ち)
まず座面に下半身を止めてもらって回し、次に片膝立ちで、下半身を自分の力で止めたまま回します。
ゴルフの構えにつなげる(アドレス)
アドレスでベルトのバックルを正面に保ったまま、上体だけをゆっくり左右に回します。ここで下半身が動くなら、ひとつ前の段階に戻ります。
反りや横倒しで回る方、骨盤を止めても回れない方は、段階1から始めます。骨盤や膝が一緒に回る方、骨盤を止めれば回れる方は、段階2の座る姿勢から始め、段階1の比率は下げます。同じ「上体が回らない」でも、入口のエクササイズは出方で分けています。
代表的なエクササイズ5種
私たちが胸郭回旋に制限が出た方に使う種目のうち、代表的な5つです。どれも痛みのない範囲で、息を吐きながらゆっくり行います。回数と負荷、左右どちらを多めに行うかは、測った結果と体力に合わせて決めています。
1. フォームローラー胸椎伸展
段階1・胸の動く範囲を出す|反り・横倒しで回る方・止めても回れない方
仰向けで膝を立て、フォームローラーを肩甲骨の下に横向きに当てます。両手を頭の後ろで組んで頭を支え、お尻を床につけたまま、胸の後ろ側をローラーの上でゆっくり反らせて戻します。肩甲骨の間が反り、腰は床に近いままが目安です。腰を反らせて肋骨が持ち上がる形にならないように。回す動きの前に、反らす動きを出しておくための種目です。
2. オープンブック
段階1・胸の動く範囲を出す|反り・横倒しで回る方・止めても回れない方・片方だけ小さい方
横向きに寝て、股関節と膝を直角に曲げてそろえ、両腕を前に伸ばします。上の腕を、本を開くように後ろへ開き、胸を天井へ向けます。膝はそろえたまま床から離しません。上になった腕の側へ胸が回るので、回したい向きに合わせて寝る向きを変えます。膝が浮いて、骨盤ごと転がらないように。
3. ベンチ座位クラブ担ぎ回旋
段階2・下半身を止めて胸だけを回す|骨盤や膝が一緒に回る方・止めれば回れる方
ベンチ(ご自宅では、キャスターや座面の回転がない椅子)に膝と足をそろえて座り、クラブを肩に担ぎます。骨盤を立てたまま上体だけを左右に回し、膝の位置と骨盤の向きが変わらないことを確かめます。座面が下半身を止めてくれるので、上と下を分ける感覚をつかみやすい姿勢です。回す側へ体を倒す、腰を反らせて角度を稼ぐ形にならないように。
4. ハーフニーリング胸郭回旋
段階2・下半身を止めて胸だけを回す|骨盤や膝が一緒に回る方
片膝立ちになり(床につく膝の下にタオルを敷きます)、クラブを胸に抱えるか肩に担ぎます。後ろ脚の側のお尻を締め、お腹の力で骨盤を止めたまま、上体だけを左右交互に回します。セットごとに前後の脚を入れ替えます。前の膝が左右にぶれて、骨盤ごと回る形にならないように。座面に頼らず、下半身を自分で止める練習です。
5. クラブ抱え分離ドリル
段階3・ゴルフの構えにつなげる|出方を問わず
アドレスでクラブを胸の前に抱え、下半身を止めたまま、上体だけをゆっくり左右に回します。鏡でベルトのバックルが正面のままかを確かめます。大きく回そうとして骨盤や膝が一緒に回ったら、回す幅を小さくして、止められる範囲から積み上げます。
胸椎がどこで回るべきか、回らないと何が起きるかはゴルフの胸椎の回し方に詳しく書いています。
測る現場で気をつけていること
胸郭回旋でよく見るのは、大きく回そうとして骨盤が一緒に回ってしまう形です。「ベルトのバックルは正面のまま、反らさず横に倒さずに」と伝えてもう一度回してもらい、それでも下半身が動くときは、トレーナーが骨盤を両手で支えて回してもらいます。支えれば反りや横倒しを使わずに回れるなら制御(安定性)の課題、支えても回れないなら胸の回る範囲(可動性)の課題として、入口を分けます。これはTPIが示している切り分けの考え方です。
回る範囲の課題かどうかは、座った姿勢で胸だけを回す07 座位体幹回旋でも確かめます。座面で骨盤が止まる姿勢でも回りにくければ、胸の背骨の範囲の課題がはっきりします。途中で背中や脇腹がつったり、痛みが出たりしたときは、測るのをやめます。
よくある質問
胸郭回旋テストは、自分でもできますか?
動きそのものは、鏡の前でアドレスを取り、両腕を胸の前で交差させて、ベルトのバックルを正面に向けたまま上体だけを左右に回してみると確かめられます。ただ、腰を反らす・横に倒す動きで角度を稼いでいることは、自分では気づきにくいものです。腰や背中に痛み・しびれが出る場合は試さず、医療機関にご相談ください。
胸郭回旋テストと座位体幹回旋テストは、何が違いますか?
胸郭回旋テストは、立ったアドレスの構えで、下半身を自分で止めたまま上体を回せるかを見ます。胸の回る範囲と、下半身を止める安定性の両方が関わります。座位体幹回旋テストは、ベンチに座って骨盤と脚を止めた状態で、胸の回る範囲だけを見ます。立つと回れず、座ると回れるなら、範囲よりも下半身を止める使い方の課題を疑います。
リバーススパインアングルやフラットショルダープレーンと関係がありますか?
関係することがあります。胸を回しにくいと、足りない回転を体の反りや傾きで補い、トップで上体が目標の方へ傾く、肩の回転面が水平に近づく、といった動きにつながる可能性があります。ただ、1つのテストだけで決まるものではないため、私たちは16項目の組み合わせと、実際のスイングを照らして見ます。
TPI測定のご案内
肩を回そうとしても腰まで一緒に回ってしまうなら、下半身を止めて胸だけを回せるかを一度測ってください。TPI測定(TPIフィジカルアセスメント)では、胸郭回旋を含む16項目を測り、何から手を付けるかをその場でお伝えします。
TPI Physical Assessment
胸だけを回せるかを、
16項目の中で確かめる90分
16項目を実測し、制限が出た項目とスイングの傾向の結びつきを、評価レポートとプログラムのPDFでお渡しします。単発で完結し、入会は不要です。
ウェア・タオル無料 | 完全個室 | 六本木駅徒歩4分
TPIの身体評価のうち15項目を、1項目ずつ解説しています。全体はTPIフィジカルアセスメントの16項目へ。
主な参考(タップで開く)
- Titleist Performance Institute. The Torso Rotation Test(mytpi.com). https://www.mytpi.com/articles/screening/the-torso-rotation-test
- Titleist Performance Institute. Reverse Spine Angle/Flat Shoulder Plane/Over the Top(mytpi.com). Reverse Spine Angle・Flat Shoulder Plane・Over the Top
- Gulgin HR, Schulte BC, Crawley AA. Correlation of Titleist Performance Institute (TPI) level 1 movement screens and golf swing faults. J Strength Cond Res. 2014;28(2):534-539. doi:10.1519/JSC.0b013e31829b2ac4

