こんなお困りごとはありませんか。レッスンで「下半身から切り返して」と言われても、どう動かせばいいのか分からない。バックスイングで腰が横に流れる(スウェー)と言われる。切り返しで上体から打ちにいき、クラブが外から下りてしまう。このページでは、TPIの身体評価16項目の02番「骨盤回旋」が何を見るテストか、制限があるとどう見えるか、スイングにどう出やすいか、当てはまるときに何から始めるかをお伝えします。
書いているのは、六本木のパーソナルジム Disport World です。代表の岡本隼人は、TPI認定(Fitness 2/Power 2)と日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)の資格を持ち、TPI Screen(TPIの身体評価)を提供しています。扱うのはスイングの技術ではなく、身体の側の原因です。16項目の一覧(TPIフィジカルアセスメント)→
骨盤回旋テストは、何を見るテストか?
上体を止めたまま、骨盤だけを左右に回せるかを見るテストです。アドレスの構えで腕を胸の前で組み、足の裏を床につけたまま、ベルトから下だけを左右に回してもらいます。見るのは、上体が一緒に回っていないか、骨盤が回る代わりに横へ流れていないか、膝の曲げ伸ばしや体重の移動で回ったように見せていないか、そして左右で回りやすさに差がないか、です。
下半身から切り返す動きは、上体と骨盤を別々に動かせることが前提になります。骨盤を単独で回せないと、上と下は一緒にしか動けず、上体と骨盤のねじれの差(捻転差)も作りにくくなります。骨盤を前後に傾ける動きを見る01 骨盤前後傾に続けて、回す向きの動きを見るのがこのテストです。16項目の全体と、TPIそのものについてはTPIとはで解説しています。
制限があると、どう見えるか?
骨盤が回っていないのに、体のほかの場所で「回ったように」見せる形で出ることが多いテストです。測っていると、次のような出方があります。
・上体(肩・胸)が、骨盤と一緒に回ってしまう
・骨盤が回る代わりに、横へ流れる(スウェーやスライドのような動き)
・膝の大きな曲げ伸ばしや、体重の移動で回ったように見せる
・骨盤の向きが、ほとんど変わらない
・片方の向きだけ、回りにくい・動きがぎこちない
上体が一緒に回る方の中には、肩を軽く支えると骨盤だけを回せる方がいます。この場合は、動く範囲よりも、上と下を分けて動かす使い方(制御)の課題として読みます。支えても骨盤がほとんど回らない方や、横に流れずには回り切れない方は、股関節や背骨の回る範囲の課題を疑い、11 下半身回旋(股関節の内旋・外旋)や07 座位体幹回旋の結果と照らします。
どこまで回れば十分かは、出方の型と左右の差を合わせて見るため、測定の場でご本人の動きを見ながらお伝えしています。
スイングには、どう出やすいか?
骨盤を単独で回しにくいと、下半身から切り返す順序が崩れ、横に流れる・上体から打ちにいく、といった動きにつながる可能性があります。出方と、回りにくい向きによって、出やすい傾向が分かれます。
01回し方の出方
上体も一緒に回る
- 出やすい局面
- 切り返し
- スイングで出やすい傾向(可能性)
- 下半身から切り返せず、上体から動く。クラブが外から下りる(オーバーザトップ)、腕に頼った振り方
02回し方の出方
横へ流れる・膝で補う
- 出やすい局面
- バックスイング〜切り返し
- スイングで出やすい傾向(可能性)
- バックスイングで腰が横に流れる(スウェー)。切り返しのあと下半身が目標方向へ流れる(スライド)
03回し方の出方
ほとんど回らない
- 出やすい局面
- スイング全体
- スイングで出やすい傾向(可能性)
- 上下の捻転差が作れない。回れない分を上体で補い、伸び上がる動き(アーリーエクステンション)やオーバーザトップにもつながりやすい
04回し方の出方
バックスイング方向だけ回りにくい
- 出やすい局面
- バックスイング
- スイングで出やすい傾向(可能性)
- 回る代わりに骨盤が横へ流れる(スウェー)。捻転が浅くなる
05回し方の出方
ダウン〜フォロー方向だけ回りにくい
- 出やすい局面
- 切り返し〜フォロー
- スイングで出やすい傾向(可能性)
- 骨盤が目標方向へ流れる(スライド)か、回転が止まって手先で合わせる振り方になる
表の「バックスイング方向」は、右打ちの方なら骨盤を右へ回す向き、「ダウン〜フォロー方向」は左へ回す向きです(左打ちの方は逆になります)。
ただし、36人のゴルファーでTPIの身体テスト12項目と14のスイング特性の関係を調べた研究(Gulginら、2014年)では、統計的に関係が確かめられたのは前屈・ブリッジ・ディープスクワット・片脚立ちに関わる一部の組み合わせで、要旨に挙がった組み合わせに骨盤回旋は含まれていません。
ですから私たちは、このテストの結果だけでスイングの癖を決めつけません。16項目の組み合わせと、実際にお困りのスイングの動きを照らして読みます。14のスイング特性それぞれの意味は14のスイング特性の解説に、横流れについてはスウェーの解説、外から下りる動きについてはオーバーザトップの解説で書いています。
当てはまるとき、何から始めるか?
いきなりアドレスで骨盤を回す練習はしません。体重のかからない姿勢で回る範囲と感覚を作り、支えを使って骨盤だけを回し、最後にアドレスへ戻す、という順に進めます。
動く範囲を出す(仰向け・床に座る)
体重のかからない姿勢で、骨盤が上体から離れて回る感覚をつかみます。横に流れる方、ほとんど回らない方は、股関節の回る範囲を先に出します。
骨盤だけを回し、支える(横向き・壁)
お尻の外側の筋肉を働かせ、骨盤を回す土台を作ります。壁で上体を支えて骨盤だけを回し、支えを少しずつ減らします。
ゴルフの構えにつなげる(アドレス)
アドレスで肩のラインを正面に保ったまま、骨盤だけを回します。ここで上体が一緒に回る、横に流れるなら、ひとつ前の段階に戻ります。
肩を支えると回せる方は、仰向けと壁から始めます。支えても回らない方、横に流れる方は、股関節の回る範囲から始めます。同じ「骨盤が回らない」でも、入口のエクササイズは出方で分けています。
代表的なエクササイズ5種
私たちが骨盤回旋に制限が出た方に使う種目のうち、代表的な5つです。どれも痛みのない範囲で、ゆっくり行います。回数と負荷、左右どちらを多めに行うかは、測った結果と体力に合わせて決めています。
1. 仰向け膝倒し
段階1・動く範囲を出す|上体が一緒に回る方・ほとんど回らない方
仰向けで両膝を立て、両腕を横に広げます。両肩を床につけたまま、そろえた両膝を左右へゆっくり倒して戻します。膝を倒す向きが、骨盤を回す向きです。肩が床から浮いて、上体ごと転がらないように。
2. 90/90股関節ストレッチ
段階1・動く範囲を出す|横に流れる方・ぎこちない方・ほとんど回らない方
床に座り、前の脚も後ろの脚も膝を直角に曲げて置きます。前の脚は股関節を外へ、後ろの脚は内へひねった形になります。前半は上体を立てたまま保ち、後半は前の脚の方へ胸をまっすぐ倒します。前の脚のお尻の外側と、後ろの脚の付け根の前側が伸びるのが目安です。背中を丸めて頭だけを前に倒さないように。後ろの脚の膝に痛みやねじれる感じがあれば、続けずに止めます。
3. ミニバンド・クラムシェル
段階2・骨盤だけを回し、支える|横に流れる方・ぎこちない方
横向きに寝て、股関節を軽く、膝を直角近くまで曲げ、膝の少し上にミニバンドを巻きます。かかとを合わせたまま上の膝を開いて閉じ、骨盤は動かしません。お尻の外側の上のあたりが熱くなる感覚が目安です。骨盤が後ろへ倒れて、腰で開かないように。きつい方はバンドなしで、開く幅を小さくして始めます。
4. 壁サポート骨盤回旋
段階2・骨盤だけを回し、支える|上体が一緒に回る方
壁に両手をついて上体を支え、骨盤だけを左右に回します。手で壁を押す強さが変わらず、ベルトのバックルだけが左右を向くのが目安です。肘の曲げ伸ばしや体重の移動で、回ったように見せないように。慣れたら指先だけで壁に触れ、次に手を離してアドレスで行う、と支えを減らします。
5. 骨盤分離ドリル
段階3・ゴルフの構えにつなげる|出方を問わず
アドレスで腕を胸の前で組み(またはクラブを肩に担ぎ)、上体を止めたまま骨盤だけを左右にゆっくり回します。鏡で肩のラインが正面のままかを確かめます。膝の曲げ伸ばしや体重の左右の移動で、回ったように見せないように。崩れるときは壁サポートに戻り、支えを減らしながら進めます。
下半身から切り返す順序の考え方はゴルフの下半身リードに、体が早く開く動きは身体が開く本当の原因に書いています。
測る現場で気をつけていること
骨盤回旋で私たちが気をつけているのは、骨盤が「回っている」のか「流れている」のかを見分けることです。正面から見ると回っているようでも、後ろから見ると骨盤の中心が横へずれていることがあります。そのため、正面と後方の両方から見ます。足元も見ています。つま先の向きが変わると、股関節をあまり回さなくても骨盤が回ったように見え、制限が隠れやすいためです。
骨盤だけで回せないときは、肩を軽く支えてもう一度回してもらいます。支えると回せるなら上と下を分ける使い方の課題、支えても回らないなら動く範囲の課題として、入口のエクササイズを分けます。股関節そのものの回る範囲は、11 下半身回旋の結果と合わせて読みます。スイングの言葉(「下半身から」「腰を回して」)を変える前に、骨盤だけを回せる身体にしておく。ここを最初に確かめるために、私たちは測ってから始めています。レッスンと並行して取り組めます。
よくある質問
骨盤回旋テストは、自分でもできますか?
動きそのものは、鏡の前でアドレスを取り、腕を胸の前で組んで、肩を止めたまま骨盤だけを左右に回してみると確かめられます。ただ、骨盤の横への流れや膝の曲げ伸ばしは、正面の鏡では気づきにくく、後ろから見ないと分からないことがあります。腰や股関節に痛み・しびれが出る場合は試さず、医療機関にご相談ください。
骨盤が回らないと、スウェーやスライドになりますか?
なるとは限りません。骨盤を単独で回しにくいと、横に流れる・上体から打ちにいくといった動きにつながる可能性はありますが、研究でも1つのテストと1つのスイング特性が一対一で結びつくとは確かめられていません。私たちは16項目の組み合わせと、実際のスイングのお困りごとを照らして見ます。
「下半身から切り返す」練習だけでは足りませんか?
骨盤を単独で回せる身体なら、スイングの練習で順序を覚えやすくなります。一方で、上体と骨盤が一緒にしか動かない、股関節が回らないといった身体の側の理由があると、順序を意識しても再現しにくいことがあります。使い方の課題か、動く範囲の課題かを先に確かめると、何から取り組むかを決めやすくなります。
TPI測定のご案内
下半身から切り返そうとしても上体が先に動いてしまうなら、骨盤だけを回せるかどうかを一度測ってください。TPI測定(TPIフィジカルアセスメント)では、骨盤回旋を含む16項目を測り、何から手を付けるかをその場でお伝えします。
TPI Physical Assessment
骨盤だけを回せるかを、
16項目の中で確かめる90分
16項目を実測し、制限が出た項目とスイングの傾向の結びつきを、評価レポートとプログラムのPDFでお渡しします。単発で完結し、入会は不要です。
ウェア・タオル無料 | 完全個室 | 六本木駅徒歩4分
TPIの身体評価のうち15項目を、1項目ずつ解説しています。全体はTPIフィジカルアセスメントの16項目へ。
主な参考(タップで開く)
- Titleist Performance Institute. The Pelvic Rotation Test(mytpi.com). https://www.mytpi.com/articles/screening/the-pelvic-rotation-test
- Titleist Performance Institute. Sway/Slide/Over the Top(mytpi.com). Sway・Slide・Over the Top
- Gulgin HR, Schulte BC, Crawley AA. Correlation of Titleist Performance Institute (TPI) level 1 movement screens and golf swing faults. J Strength Cond Res. 2014;28(2):534-539. doi:10.1519/JSC.0b013e31829b2ac4

