野球経験者のゴルフスイングとは、立った姿勢で、動いてくる球に合わせて踏み出しながら回るバッティングの体の使い方を、前に傾いた姿勢のまま、止まった球に対して足を踏み出さずに回る動きへ置き換えていくスイングのことです。有利か不利かは、一概には言えません。野球で鍛えた跳ぶ・投げる力はヘッドスピードと関連する体力と重なる一方、前傾したまま肩と胸を回す動きはバッティングと求められ方が違います。そのため私たちは、野球の打ち方が残る理由が「癖」か「体の制限」かを、先に測って分けることをすすめています。
この記事は、六本木の完全個室パーソナルジム Disport World で、TPI認定(Fitness 2/Power 2)と日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)の岡本隼人が、ゴルファーと野球選手の身体を実際に測ってきた経験から書いています。扱うのはスイングの技術ではなく、身体の側の要因です。ゴルフのパーソナルトレーニング(六本木・TPI測定)→
・野球経験の有利・不利を直接比べた研究は見つからなかった
・違いは、前傾・回る面・地面の押し方・体重の移し方・インパクトの位置
・フライングエルボーとフラットショルダープレーンは、癖のことも体の制限のこともある。測って分ける
・跳ぶ・投げるパワーは、ゴルファーのヘッドスピードとの関連が報告されている(相関)
・肩や肘の古傷に今も痛みがあるなら、先に整形外科へ
野球経験者は、ゴルフで有利?不利?
一概には言えません。野球経験の有無でゴルフのスイングや飛距離を比べた研究も、同じ人のバッティングとゴルフスイングを比べた研究も、今回PubMedで調べた範囲では見つかりませんでした。
共通しているのは、力を伝える順番です。打つ・投げる動作では、一般に体の中心に近い部分から末端へ順に動きが伝わります(Putnam、1993)。バッティングの3次元解析でも、腰の回転が最大の速さ(毎秒714度)に達したあとに、肩の回転が最大(毎秒937度)に達していました(Welch ら、1995)。TPI(ゴルファーの身体評価を教える Titleist Performance Institute)も、上体を止めて骨盤だけを回せることを、ダウンスイングを正しい順番で行うための大切な能力としています。
バッティングとゴルフスイングは、体の使い方の何が違う?
大きな違いは5つです。前傾、回る面、地面の押し方、体重の移し方、インパクトの位置。振って打つ目的は同じでも、球の位置と構えが違うため、体に求められる動きが変わります。
| 比べること | バッティング(野球) | ゴルフスイング(右打ち) |
|---|---|---|
| 前傾 | 上体を大きく前に倒さず、立った姿勢に近い構え | 股関節から上体を前に傾けて構え、その傾きを保ったまま回る |
| 回る面 | ゴルフより立った軸のまわりで回る。バットの通り道は球の高さとコースで変わる | 傾いた背骨を軸に回る。TPIは、バックスイングで肩が背骨の傾きに対して直角に回るのを理想としている |
| 地面の押し方 | 後ろ足に乗ってから踏み出し、着地した前足で受け止める(前足の力は体重の123%という解析がある) | 足を踏み出さず、両足を地面につけたまま足の裏で地面を押して回る |
| 体重の移し方 | 踏み出しで、後ろ足から前足へ大きく移る | スタンスの幅の中で、右足側から左足側へ移る。横に流れすぎるとスウェー・スライドになる |
| インパクトの位置 | 動いてくる球を、来た高さとコースに合わせて体の前で打つ | 地面の近くに止まっている球を打つ。打つ位置は構えた時点で決まっている |
| 共通点 | 腰から肩、腕、バットへと順に速さを伝える | 骨盤から胸、腕、クラブへと順に速さを伝える |
※一般的な動きの違いの整理で、同じ人を比べた研究に基づくものではありません。前足の力と腰から肩への順番はWelch ら(1995)、中心から末端へ順に動く点はPutnam(1993)、肩の回る面はTPIの説明によります。左打ちのゴルフでは左右が逆です。
よく言われるのは、バッティングの「立って横に回る」感覚が残って肩の回る面が水平に近づくことと、踏み出す感覚が強く、骨盤が回る代わりに横へ流れることです。ただし研究の裏づけはなく、同じ形は体の制限からも起きます。横流れはスウェーの直し方で。
野球経験者に出やすいと言われるスイングの特性は?
よく挙がるのは、トップで右肘が浮く「フライングエルボー」と、肩が横に回る「フラットショルダープレーン」です。どちらも野球経験者だけの形ではなく、体の制限から起きることもあります。
フライングエルボーは、トレイル側(右打ちの右)の肘が体から離れ、トップで肘が後ろを指す形です。TPIは「必ずしも誤りではなく、この動きでプレーする優れた選手も多い」としつつ、バックスイングとダウンスイングの順番に影響しうると説明し、体の原因にトレイル側の肩の可動域の制限と、胸椎の制限に肩甲骨の安定性の低下が重なることを挙げています。野球の構えで後ろの肘を上げる動きに慣れているから、と言われますが、研究で確かめられたことではありません。詳しくはフライングエルボーの直し方で。
フラットショルダープレーンは、アドレスで傾けた背骨の角度より水平な面で肩が回る形です。TPIは、ダウンスイングで体や手の補正が必要になり、パワーの低下や当たりの不安定につながりうるとし、体の原因に上体と骨盤を分けて回す力、前傾を保つ体幹の安定性、肩と股関節の柔軟性を挙げています。詳しくはフラットショルダープレーンの直し方で。スライスの体の原因はスライスの原因で。
肩関節外旋(90/90)、胸郭回旋、骨盤回旋を含む16項目を、左右に分かれる項目は両側とも実測します。ボールは打たず、結果を評価レポートとプログラムのPDFにまとめて当日お渡しします。
TPIフィジカルアセスメントの詳細を見るそれは癖か、体の制限か——どう見分ける?
体のテストで見分けます。次の3つは、癖か体の制限かを分ける入口です。どれかで制限が出るなら、体の側が関わっている可能性があります。
肩関節外旋(90/90)
肘を直角に曲げて腕を真横に挙げ、腰を反らさずに肩を外へ回します。立った姿勢と、5番アイアンのアドレスの姿勢で、左右を比べます。TPIは、前傾すると肩甲骨が安定せず回る範囲が小さくなるゴルファーが多いとしています。見方は肩関節外旋テスト(90/90)で。
骨盤回旋
同じ構えで上体を止め、ベルトから下だけを左右に回します。肩が一緒に回る、横へ流れるなら、下半身から切り返す順番が崩れやすい可能性があります。見方は骨盤回旋テストで。
野球は左打ちでゴルフは右打ちという方は、回る向きがバッティングと逆です。どちらの向きに回りやすいかは、左右を分けて測らないと分かりません。3つとも問題がなくても、TPIがフラットショルダープレーンの原因に挙げる体幹の安定性(骨盤前後傾・ブリッジ脚伸展)や広背筋の長さ、股関節の回旋は別の項目で見ます。16項目で制限が見つからなければ技術の領域の可能性が高く、私たちは「技術はコーチ、体はトレーナー」と役割を分けて考えています。スイング解析と身体評価で、それぞれ何が分かるかはゴルフの測定には何がある?にまとめています。
テストは痛みの出ない範囲で。TPIも90/90テストの説明で、痛みや違和感が出るところまでは行わないよう注意しています。腰を反らせて角度を稼ぐと、正しく測れません。肩や肘に痛み・しびれ・引っかかりが出たら中止し、下の受診の目安を確認してください。
野球で鍛えた体は、ゴルフの飛距離に生きる?
生きる可能性はあります。ゴルファーを対象にした20研究のメタ分析では、跳ぶ力と、メディシンボールを投げるような上半身の瞬発的な力が、ドライバーのヘッドスピードと関連していました。ただし相関で、野球経験そのものを調べた研究ではありません。
Brennan ら(2024)の分析で関連が最も強かったのは、ジャンプの力積(地面を押した力と時間の積。3研究・上級者が中心)で、相関係数は r=0.68。上半身の瞬発的な力(座って、または体をひねって投げるメディシンボール投げなど)は r=0.58で、上半身の最大筋力より関連が大きいという結果でした。一方、柔軟性の指標とヘッドスピードには有意な関連がありませんでした。
つまり、跳ぶ・投げる力はヘッドスピードと、肩や胸の回る範囲は前の節のスイングの形(当たりの安定)と結びつけて見ます。野球で跳ぶ・投げる練習を重ねてきた方は、関連が強い側の力を持っている可能性がありますが、今も残っているかは人によって違います。どれだけ飛距離が伸びるかは、体の状態や練習によって違うため、お約束はしていません。順番はゴルフの飛距離を伸ばす方法、研究はヘッドスピードを上げるトレーニング、野球側は野球のスイングスピードを上げる方法で。
野球で痛めた肩や肘があるときは、どうすればいい?
今も痛み・しびれ・引っかかりがあるなら、ゴルフの練習や測定の前に整形外科を受診してください。私たちは診断や治療は行いません。医師から運動の許可が出たあとに、痛みの出ない範囲で体を測るところから始めます。
右投げで右打ちのゴルフなら、投げてきた右腕はゴルフではトレイル側で、トップでは右肩が外へ回る(外旋する)位置に入ります。90/90テストが見ているのもこの動きです。左投げで右打ちなら、投げてきた腕はリード側になります。古傷のある側がゴルフでどちら側になるかを、先に確かめておきます。痛みについてはゴルフで肩が痛い|左肩と右肩で原因が違うとゴルフで肘・手首が痛い原因で。ゴルフで痛めやすい部位の全体と左右の違いはゴルフで痛めやすいのは体のどこ?にまとめています。
野球経験者のゴルフの体づくりは、何から始める?
測ることから始めます。順番は、測る、回る範囲をつくる、前傾を支える、力をゴルフの形につなぐ、測り直す、の5段階です。
今の体を左右別に測る
TPIの16項目を、左右に分かれる項目は両側とも測ります。投げる側・打つ側と古傷も記録します。
前傾した姿勢で回る範囲をつくる
アドレスの姿勢での肩の外旋、胸椎の回旋、上体と骨盤を分けて回す動き。立ってできても、前傾でできるかは別に確かめます。
前傾を支える
TPIは、前傾を保つ力を体幹(腹部と殿部)の筋力と安定性に結びつけ、骨盤前後傾テストやブリッジ脚伸展テストで見るとしています。
跳ぶ・投げる力をゴルフの形につなぐ
前傾した構えからの回旋の動き(例:体をひねって投げるメディシンボール投げ)に置き換えていきます。
6週後を目安に測り直す
同じ16項目で測り直し、変わったところと残ったところを確かめます。
現場で見えていること——私たちは何を見ている?
私たちが見ているのは、野球で使えていた肩や胸の回る範囲が、前傾した姿勢でも出せるかどうかです。TPIフィジカルアセスメントでは16項目を実測し(左右に分かれる項目は両側とも)、癖と体の制限を分けてから、何から手をつけるかを決めます。
最初に、野球などの競技歴と、ケガの経験を伺います。野球経験者の方は、投げる側と打つ側、ゴルフで打つ側も教えてください。測定ではボールは打ちません。打球の初速やキャリーは測らず、打球を記録する計測器や3Dのスイング解析の機器も持っていません。スイングスピードは、必要に応じてスイングスピード測定器で測ります。結果はレポートとプログラムのPDFにして当日お渡しし、希望される方は6週後を目安に同じ16項目で測り直せます。測るのも測り直すのも、来店でお受けしています。
代表の岡本自身、小学2年生から高校まで野球をしていました。プロ野球選手 赤羽由紘選手(東京ヤクルトスワローズ)・渡邊佳明選手(東北楽天ゴールデンイーグルス)のパーソナルトレーナー(球団名は指導当時)を務めました。2022年からは世田谷区の少年野球チーム「船橋フェニックス」で学年チームの監督を務め、2026年は6年生チームで全日本学童軟式野球大会 第3位でした。経歴は岡本隼人のプロフィールに載せています。
よくある質問は?
野球をやっていた人は、ゴルフに向いていますか?
一概には言えません。体の中心から順に速さを伝える点はバッティングと共通しますが、前傾・回る面・地面の押し方・体重の移し方・インパクトの位置は違います。両者を直接比べた研究は、今回の確認では見つかりませんでした。
野球経験者がゴルフで曲がるのは、なぜですか?
野球の感覚が残る癖のことも、肩や胸椎の体の制限のこともあり、原因は一つではありません。よく話題になるのは、肩が横に回るフラットショルダープレーンと、トップで右肘が浮くフライングエルボーで、TPIはどちらも体の制限から起きることがあるとしています。癖か制限かを測って分けるのが先です。
野球打ちの癖は、ゴルフで直せますか?
取り組めます。ただし、癖か体の制限かで進め方が変わります。16項目を測って制限が見つからなければ技術の領域の可能性が高いのでコーチと、制限が出るなら体の側から整えます。
野球で肩や肘を痛めたことがあっても、ゴルフはできますか?
今も痛み・しびれ・引っかかりがあるなら、先に整形外科を受診してください。医師の許可が出たあと、痛みの出ない範囲で測るところから始めます。
野球経験者は、ゴルフで飛距離が出やすいですか?
可能性はありますが、言い切れません。ゴルファーの20研究のメタ分析では、跳ぶ力と上半身の瞬発的な力がヘッドスピードと関連していましたが、相関で、野球経験そのものは調べていません。今もその力が残っているかを測るのが先です。
今の体を測るには?——TPI測定のご案内
野球打ちが癖なのか、体の制限なのか。まずは測って分けてください。測定の中身はTPIフィジカルアセスメントのページで、TPIそのものはTPIとはで解説しています。
TPI Physical Assessment
野球打ちは癖か、体の制限か
左右を測って分ける90分
TPIの16項目を実測し、どの身体の制限がどのスイング特性と結びつきやすいかを評価レポート+プログラムPDFにまとめて当日お渡しします。ボールは打ちません。単発で完結し、入会は不要です(6週後の再評価は任意で、会員の方は追加料金なし、会員以外の方は¥19,800・税込)。
まず動いて確かめたい方は、体験トレーニング(90分・¥15,000/毎月先着3名さま¥7,500)もお選びいただけます(先着枠は毎月1日起算、定員後は通常¥15,000)。
ウェア・タオル無料 | 完全個室 | 六本木駅徒歩4分
主な参考(タップで開く)
- Brennan A, Murray A, Mountjoy M, Hellstrom J, Coughlan D, Wells J, Brearley S, Ehlert A, Jarvis P, Turner A, Bishop C. Associations Between Physical Characteristics and Golf Clubhead Speed: A Systematic Review with Meta-Analysis. Sports Med. 2024;54(6):1553-1577.(ゴルファーを対象にした20研究のメタ分析。対象群の内訳の合計は569人)doi:10.1007/s40279-024-02004-5
- Welch CM, Banks SA, Cook FF, Draovitch P. Hitting a baseball: a biomechanical description. J Orthop Sports Phys Ther. 1995;22(5):193-201.(打者の3次元の動作解析と、足にかかる力の計測)doi:10.2519/jospt.1995.22.5.193
- Putnam CA. Sequential motions of body segments in striking and throwing skills: descriptions and explanations. J Biomech. 1993;26 Suppl 1:125-135.(打つ・投げる動作の総説)doi:10.1016/0021-9290(93)90084-r
- Titleist Performance Institute. Flying Elbow(Swing Characteristics). mytpi.com
- Titleist Performance Institute. Flat Shoulder Plane(Swing Characteristics). mytpi.com
- Titleist Performance Institute. The 90/90 Test. mytpi.com
- Titleist Performance Institute. The Torso Rotation Test. mytpi.com
- Titleist Performance Institute. The Pelvic Rotation Test. mytpi.com


