こんなお困りごとはありませんか。レッスンで「トップで肘が浮いている」「フォローで肘が引けている」と言われる。脇を締める意識を持っても、スイングになると元に戻ってしまう。立ったまま腕を回すと問題ないのに、構えると肩が窮屈になる。このページでは、TPIの身体評価16項目の06番「肩関節外旋(90/90)」が何を見るテストか、制限があるとどう見えるか、スイングにどう出やすいか、当てはまるときに何から始めるかをお伝えします。
書いているのは、六本木のパーソナルジム Disport World です。代表の岡本隼人は、TPI認定(Fitness 2/Power 2)と日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)の資格を持ち、TPI Screen(TPIの身体評価)を提供しています。扱うのはスイングの技術ではなく、身体の側の原因です。16項目の一覧(TPIフィジカルアセスメント)→
肩関節外旋テスト(90/90)は、何を見るテストか?
肩が外へ回る範囲(外旋)と、ゴルフの前傾姿勢で肩甲骨を安定させる力を見るテストです。まっすぐ立ち、片腕を肩の高さまで真横に挙げて、肘を直角に曲げます。肩と肘がともに直角になるこの形が「90/90」です。腰を反らさずに、手を上から後ろへ回すように肩を外へ回し、前腕が体の軸(背骨のライン)に対してどこまで回るかを見ます。
次に5番アイアンのアドレス姿勢を取り、同じように肩を外へ回して、立った姿勢との差を確かめます。これを左右の腕で行い、立った姿勢とアドレス、右と左を見比べます。立った姿勢でもアドレスでも回りにくいのか、アドレスで前傾したときだけ回りにくくなるのかで、原因の場所が変わるからです。16項目の全体と、TPIそのものについてはTPIとはで解説しています。
制限があると、どう見えるか?
肩そのものが回らない形と、ほかの場所で回ったように見せる形の、両方が出るテストです。測っていると、次のような出方があります。
・腰を反らせて、前腕が後ろへ倒れたように見せる
・肩がすくむ、肩甲骨が浮き上がる
・立った姿勢では回るのに、アドレスで前傾すると回る範囲が小さくなる
・立った姿勢の時点で、前腕が後ろへ回りきらない
・左右で回る範囲が違う
立った姿勢では回るのにアドレスで回りにくくなる場合は、肩の関節そのものの動く範囲はあっても、前傾したときに肩甲骨を体に安定させる力が足りないことが考えられます。肩甲骨の位置が変わると、肩の関節の向きも変わり、外へ回る範囲が小さくなることがあるためです。立った姿勢の時点で回りきらない場合は、肩の関節の外へ回る動きそのものや、胸椎を反らす動き、広背筋や胸の前の硬さが背景にある可能性を考えます。
どこまで回れば十分かは、腰の反りや肩のすくみといった補い方と合わせて見るため、測定の場でご本人の動きを見ながらお伝えしています。
スイングには、どう出やすいか?
肩の外旋が足りないと、トップで肘が体から離れて浮く(フライングエルボー)、フォローで肘が引ける(チキンウィング)、といった動きにつながる可能性があります。どちらの肩に制限があるかで、出やすい局面が分かれます。
01制限の出方
トレイル側(右打ちの右肩)の外旋が足りない
- 関わる局面
- トップ
- スイングで出やすい傾向(可能性)
- 肘が体から離れて浮く(フライングエルボー)。トップの形と切り返しが毎回そろいにくい
02制限の出方
リード側(右打ちの左肩)の外旋が足りない
- 関わる局面
- インパクト〜フォロー
- スイングで出やすい傾向(可能性)
- 腕が外へ回りきらず、肘が引ける・曲がる(チキンウィング)
03制限の出方
立った姿勢では回るが、前傾すると回りにくい
- 関わる局面
- トップ
- スイングで出やすい傾向(可能性)
- トップの収まりが浅くなる、バックスイングが浅くなる
04制限の出方
足りない外旋を、体の角度で補う
- 関わる局面
- バックスイング〜トップ
- スイングで出やすい傾向(可能性)
- クラブを運ぶために前傾の角度が変わり、前傾が崩れる(ロスオブポスチャー)
トレイル側は目標と反対側の腕、リード側は目標側の腕のことで、左打ちの方は左右が逆になります。どの出方でも、クラブの通り道とフェースの向きがそろいにくくなる可能性があります。
一方で、36人のゴルファーでTPIの身体テスト12項目と14のスイング特性の関係を調べた研究(Gulginら、2014年)では、統計的に関係が確かめられたのは前屈・ブリッジ・ディープスクワット・片脚立ちに関わる一部の組み合わせで、要旨に挙がった組み合わせに肩関節外旋は含まれていません。ですから私たちは、このテストの結果だけでスイングの癖を決めつけません。16項目の組み合わせと、実際にお困りのスイングの動きを照らして読みます。14のスイング特性それぞれの意味は14のスイング特性の解説で解説しています。
当てはまるとき、何から始めるか?
いきなりスイングの中で肘の位置を直そうとはしません。回る範囲を出し、次に肩甲骨を安定させたまま回す力を作り、最後にアドレスとトップ・フォローの形につなげる、という順に進めます。立った姿勢では回るのにアドレスで落ちる方は、伸ばすことより安定させることを先にします。
回る範囲を出す(仰向け・ベンチ)
肩が外へ回る範囲と、脇から胸の前の伸びを出します。腰を反らせて補う方は、ここで腰を反らさない感覚も一緒に覚えます。
肩甲骨を安定させて回す(立つ・うつ伏せ)
肩をすくめず、肩甲骨を軽く寄せて下げたまま、肩を外へ回す力と腕を挙げる力を作ります。
ゴルフの構えにつなげる(アドレス)
アドレスの前傾を保ったまま肩を外へ回し、トップとフォローの肘の収まりにつなげます。ここで崩れるなら、ひとつ前の段階に戻ります。
代表的なエクササイズ5種
私たちが肩関節外旋に制限が出た方に使う種目のうち、代表的な5つです。どれも痛みのない範囲で、ゆっくり行います。回数と負荷は、測った結果と体力に合わせて決めています。
1. ゴルフクラブ外旋アシストストレッチ
段階1・回る範囲を出す|立った姿勢でも回りきらない方
仰向けで膝を立て、伸ばす側の腕を肩の高さで真横に出し、肘を直角に曲げて上腕を床に置き、前腕を天井へ向けます。反対の手でクラブを持ち、グリップ側を前腕の手首寄りに当てて、頭の方向へ軽く押します。肩甲骨は床につけたまま、痛みのない範囲で外へ回る範囲を広げます。肩がすくむ、肘の位置がずれる、肩の前が抜けるような感じを我慢して押す、はしません。
2. ベンチ広背筋ストレッチ(ラットストレッチ)
段階1・回る範囲を出す|腰を反らせて補う方
このテストでは、脇の下から胸の前にかけて伸び、みぞおちが沈む位置で止め、腰を反らせないことを優先します。やり方は04 オーバーヘッドディープスクワットのページで説明しています。
3. ミニバンド肩外旋
段階2・肩甲骨を安定させて回す|出方を問わず
肘を直角に曲げて体の横につけ、両手にかけたミニバンドを外へ開きます。肘は体から離さず、肩甲骨を軽く寄せて下げたまま、みぞおちを動かさずに行います。肘が体から離れる、肩がすくむ、手首だけで開く形にならないようにします。きつい方はバンドを使わず、脇にタオルを挟んで外へ回す動きだけを確かめます。
4. うつ伏せY・Tレイズ
段階2・肩甲骨を安定させて回す|前傾すると回りにくくなる方
ベンチか床にうつ伏せになり、親指を上に向けて、腕をYの字(斜め上)に上げて下ろします。次にTの字(真横)で同じように行います。腕を上げる前に肩甲骨を下げ、肩をすくめずに、背中の中ほどで腕の重さを支えます。床で行うときは額の下にタオルを置き、あごを上げずに首を反らさないようにします。肩をすくめて首で上げる、腰を反らせて胸を持ち上げる形にならないように。きつい方は肘を曲げて腕を短くし、動く幅を小さくして始めます。
5. アドレス姿勢90/90外旋ドリル
段階3・ゴルフの構えにつなげる|出方を問わず
5番アイアンのアドレス姿勢で片腕を90/90の形に上げ、前傾と背すじを保ったまま、手を上から後ろへ回して少し止めます。両腕とも行います。起き上がって外旋を稼ぐ、腰を反らせる、肩がすくむ形になったら、壁に手をついた浅い前傾に戻します。慣れたら、周りに当たらない場所でクラブを持ち、右打ちの方なら、右腕はトップで肘が地面を向く形、左腕はフォローで肘を伸ばしたまま上腕が外へ回る形をゆっくり作って止め、肘の収まりを確かめます(左打ちの方は逆)。
トップで肘が浮く動きはフライングエルボーの解説に、フォローで肘が引ける動きはチキンウィングの解説に書いています。
測る現場で気をつけていること
このテストでよく出る補い方は、腰を反らせて、前腕が後ろへ倒れたように見せる動きです。そのため私たちは、みぞおちを動かさずに、手を上から後ろへ回すことだけに集中してもらいます。腰の反りや肩のすくみが出たら、それを止めた状態でもう一度確かめ、補いなしで回った位置を見ます。
もうひとつは、立った姿勢で十分に回っても、アドレスでの確認を省かないことです。立った姿勢では回るのに、前傾すると回りにくくなる方は少なくありません。この差が、伸ばすことから始めるのか、肩甲骨を安定させることから始めるのかを分けます。肩に痛みやしびれ、「外れそう」な不安感が出たときは、そこで止めて測りません。肩の脱臼の経験がある方は、押して補助することもしません。
よくある質問
肩関節外旋テスト(90/90)は、自分でもできますか?
動きそのものは、鏡の横に立ち、片腕を肩の高さで真横に挙げて肘を直角に曲げ、腰を反らさずに手を上から後ろへ回してみると確かめられます。ただ、腰の反りや肩のすくみで補っていることは自分では気づきにくく、アドレスでの確認も合わせて見る必要があります。肩に痛み・しびれ・不安感が出る場合は試さず、医療機関にご相談ください。
フライングエルボーやチキンウィングは、肩が硬いからですか?
肩の外旋の不足が関わることはありますが、それだけとは限りません。肩の関節は動くのに、前傾したときに肩甲骨が安定しないために回りにくくなる方もいれば、胸椎や広背筋の硬さが背景にある方もいます。私たちは16項目の組み合わせと、実際のスイングのお困りごとを照らして見ます。
立った姿勢では回るのに、構えると回りにくいのはなぜですか?
前傾すると、肩甲骨を体に安定させておく力が必要になるためです。肩甲骨が浮いたり上がったりすると肩の関節の向きが変わり、外へ回る範囲が小さくなります。この場合は、伸ばすことより、肩甲骨を安定させたまま回す種目を先に行います。
TPI測定のご案内
肘の位置を意識しても戻ってしまうなら、肩が外へ回るかどうかを一度測ってください。TPI測定(TPIフィジカルアセスメント)では、肩関節外旋を含む16項目を測り、何から手を付けるかをその場でお伝えします。
TPI Physical Assessment
肩が外へ回るかどうかを、
16項目の中で確かめる90分
16項目を実測し、制限が出た項目とスイングの傾向の結びつきを、評価レポートとプログラムのPDFでお渡しします。単発で完結し、入会は不要です。
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TPIの身体評価のうち15項目を、1項目ずつ解説しています。全体はTPIフィジカルアセスメントの16項目へ。
主な参考(タップで開く)
- Titleist Performance Institute. The 90/90 Test(mytpi.com). https://www.mytpi.com/articles/screening/the-90-90-test
- Titleist Performance Institute. Flying Elbow/Chicken Winging(mytpi.com). Flying Elbow・Chicken Winging
- Gulgin HR, Schulte BC, Crawley AA. Correlation of Titleist Performance Institute (TPI) level 1 movement screens and golf swing faults. J Strength Cond Res. 2014;28(2):534-539. doi:10.1519/JSC.0b013e31829b2ac4

