こんなお困りごとはありませんか。「頭を残せ」と言われるほど、肩が回らなくなる。バックスイングで頭が一緒に動き、ボールから目が離れる。インパクトの前に顔が目標を向き、体が起き上がる。このページでは、TPIの身体評価16項目の14番「頚椎回旋」が何を見るテストか、制限があるとどう見えるか、スイングにどう出やすいか、当てはまるときに何から始めるかをお伝えします。
書いているのは、六本木のパーソナルジム Disport World です。代表の岡本隼人は、TPI認定(Fitness 2/Power 2)と日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)の資格を持ち、TPI Screen(TPIの身体評価)を提供しています。扱うのはスイングの技術ではなく、身体の側の原因です。16項目の一覧(TPIフィジカルアセスメント)→
頚椎回旋テストは、何を見るテストか?
首を横へ回し、その向きのまま顎を鎖骨へ下ろせるかを、左右それぞれで見るテストです。足をそろえてまっすぐ立ち、口を閉じたまま頭を片側へ回します。回した位置を保ったまま首を前に曲げ、顎を回した側の鎖骨の中央へ近づけます。反対側も同じように行い、左右を比べます。
見るのは、顎が鎖骨の中央に届くかと、肩をすくめる・口を開ける・体ごと回すといった補い方をしていないか、そして左右の差です。スイングでは、胸が回っている間も顔をボールに向けておくために、首が胸と反対向きに回る余裕が要ります。このテストは、その余裕があるかを確かめる材料になります。16項目の全体と、TPIそのものについてはTPIとはで解説しています。
制限があると、どう見えるか?
首そのものが届かないぶんを、肩や口、体幹で補う形で出ることが多いテストです。測っていると、次のような出方があります。
・肩がすくむ、肩が前に出て、顎との距離を縮める
・口を開けて、顎先だけを鎖骨へ近づける
・体ごと回して、首の回る量を補う
・片側だけ届きにくい(左右差)
片側だけ届きにくい場合、片側の肩をすくめる癖や、視線の使い方の偏りが背景にあることもあります。首だけでなく、上の背中(胸椎)の丸まりや、首から肩にかけての筋肉の張りが関わっている可能性もあります。どこまで動けば十分かは、測定の場でご本人の動きを見ながらお伝えしています。
スイングには、どう出やすいか?
首の回旋が足りないと、頭を残したまま肩と胸を深く回しにくくなり、頭ごと回る、上体が起き上がる、といった動きにつながる可能性があります。右打ちでは、バックスイングで頭を残すには首を左へ、フォローで頭を残すには首を右へ回す余裕が要ります(左打ちは逆)。
01局面
バックスイング〜トップ
- 首に要ること
- 肩が回るぶん、首が反対向きに回って顔を残す
- 出にくいときの傾向(可能性)
- 頭ごと回って視線がボールから外れる。肩が顎の下を通る余地を作ろうと上体が起き上がり、前傾が崩れる(ロスオブポスチャー)
02局面
トップ
- 首に要ること
- 頭を残したまま、上体を傾けずに回る
- 出にくいときの傾向(可能性)
- 無理に頭を残そうとして、足りない回旋を上体の横への傾きで補い、上体が目標側へ傾く(リバーススパインアングル)
03局面
ダウンスイング〜インパクト〜フォロー
- 首に要ること
- 胸が目標側へ回る間も、顔をボールに向けておく
- 出にくいときの傾向(可能性)
- 頭を残したまま胸を回し続けられず、股関節と上体が早く伸び上がる(アーリーエクステンション)。インパクトの直後に頭が起き上がる
そのほか、バックスイングが浅くなる、インパクトの再現性が下がる、首や腰にかかる負担が増える、といった影響につながることもあります。
ただし、36人のゴルファーでTPIの身体テスト12項目と14のスイング特性の関係を調べた研究(Gulginら、2014年)では、統計的に関係が確かめられたのは前屈・ブリッジ・ディープスクワット・片脚立ちに関わる一部の組み合わせで、要旨に挙がった組み合わせに頚椎回旋は含まれていません。ですから私たちは、このテストの結果だけでスイングの癖を決めつけず、16項目の組み合わせと実際のお困りごとを照らして読みます。顔が早く上がる動きはヘッドアップと首・胸椎の関係に、各スイング特性の意味は14のスイング特性の解説に書いています。
当てはまるとき、何から始めるか?
首を押し込んで回す練習はしません。首から肩にかけての張りをゆるめ、顎を引いた位置で首だけを回せるようにし、最後にアドレスの中で胸と顔を分けて回します。上の背中が丸い方は、胸椎を伸ばすことも先に入れます。
首と肩の張りをゆるめる(座る)
肩を固定して、首の横から肩の付け根にかけて穏やかに伸ばします。反動はつけず、手で強く引きません。
首だけを回す(座る・四つ這い)
顎を軽く引いた位置を保ったまま首を回す練習と、視線を床の一点に置いたまま胸だけを回す練習で、首と胸を分けて動かします。左右差がある方は、届きにくい側から始めます。
アドレスにつなげる(構え)
アドレスで視線をボールに置いたまま、肩と胸だけをゆっくり回します。頭を無理に残す必要はありません。首が痛む・傾くなら、ひとつ前の段階に戻ります。
代表的なエクササイズ4種
私たちが頚椎回旋に制限が出た方に使う種目のうち、代表的な4つです。どれも痛みのない範囲で、ゆっくり行います。途中で痛み・しびれ・めまいが出たら、その場でやめてください。回数と負荷は、測った結果と体力に合わせて決めています。
1. 上部僧帽筋・首側面のストレッチ
段階1・首と肩の張りをゆるめる|届きにくい向きに合わせて
首を右へ回しにくい方は右手を、左へ回しにくい方は左手をお尻の下に置く側を多めに行います。ベンチに座り、伸ばす側の手をお尻の下に置いて肩を固定します。反対の手を頭に軽く添え、頭を反対側の斜め前へゆっくり倒し、首の横から肩の付け根に穏やかな伸びを感じる位置で止めます。反動をつけない、手で強く引かない、固定した肩が上がらないように。
2. チンタック+回旋
段階2・首だけを回す|届きにくい側を多めに
座るか立つかして、顎を軽く引きます(二重顎をつくる位置)。その位置を保ったまま、頭を左右へゆっくり回し、届きにくい側は無理のないところで止めて戻します。顎が前に出て回る量を稼ぐ、肩がすくむ形にならないように。座って行うのがつらい方は、仰向けで頭の下に薄くたたんだタオルを敷き、顎を引いたまま頭を転がすように回します。
3. 四つ這い胸椎回旋(視線固定)
段階2・首と胸を分けて回す|出方を問わず
四つ這いで顔の真下の床の一点を見続け、片手を腰の後ろに当てて、その側の肩を天井へ回して戻します。頭は動かさず、肩と胸だけを回します。胸が回るぶん、首は胸と反対向きに回ることになるのが、このページでの使い方です。07 座位体幹回旋のページで説明している四つ這い胸椎回旋は、手を頭の後ろに当て、頭も胸と一緒に回して胸椎の回る範囲を出す種目です。こちらは視線を固定して、胸と首を分ける点が違います。腰を反らせない、支える側の肩がすくまないように。
4. 視線固定の分離回旋ドリル
段階3・アドレスにつなげる|出方を問わず
アドレスの姿勢でクラブを胸の前に当て、視線をボールに置いたまま、肩と胸だけをゆっくり回します。ボールを見続けたまま、肩が顎の下を通り抜ける感覚を確かめます。頭が肩と一緒に回る、無理に残して首が痛む・傾く形にならないように。回す量は小さく始め、痛みのない範囲で止めます。
首と上の背中の痛みとスイングの関係はゴルフで首・背中が痛い原因に、胸椎の回し方はゴルフの胸椎の回し方に書いています。
測る現場で気をつけていること
頚椎回旋で私たちが気をつけているのは、動く順番と、補い方です。口を閉じたまま「横へ回す、それから顎を鎖骨へ下ろす」の順を守ってもらいます。よくあるのは、先に顎を引いてから回す、肩をすくめて距離を稼ぐ、の2つです。動きを手で導いたり直したりはせず、指示を繰り返すだけで、正面と横から観察します。
安全のための決まりもあります。痛み・しびれ・めまい(ふらついて足が出る場合を含む)、首や肩の筋肉がつる感じが出たら、頭を戻す途中でもその時点でやめ、治まっても繰り返しません。その場合は、医療の専門家への相談をおすすめしています。伸びる感じや張りだけであれば、そのまま続けます。
また、首の1項目だけで「原因は首」とは決めません。スイングで首が痛いという方を測ると、首そのものの動きは保たれていて、胸椎の回る量のほうが足りない、ということもあります。「頭を残せ」と言われて首を固めたまま振り、胸の回転まで止まっている形も見かけます。
よくある質問
頚椎回旋テストは、自分でもできますか?
首や肩、腕に痛み・しびれがなく、めまいもない方なら、口を閉じたまま頭を横へ回し、その向きで顎を鎖骨の中央へ近づけてみると確かめられます。反動はつけず、ゆっくり行ってください。肩のすくみや口の開きで届いたように見えることがあり、自分では気づきにくいテストです。途中で痛み・しびれ・めまいが出たらすぐにやめ、医療機関にご相談ください。
首に痛みやしびれがあります。このページのエクササイズをしてもよいですか?
試さずに、先に医療機関にご相談ください。首や肩の痛みに、腕や手のしびれ・力の入りにくさ、めまい・頭痛を伴う場合は、運動で対応する範囲を超えている可能性があります。私たちの測定でも、痛み・しびれ・めまいが出た時点でテストをやめ、繰り返しません。
首が回らないと、ヘッドアップになりますか?
なるとは限りません。胸が回るときに首が反対向きに回る余裕が足りないと、顔が胸と一緒に動き、上体が起き上がる動きにつながる可能性はあります。一方で、上の背中の丸まりや、股関節・下半身の動きが関わっていることもあります。私たちは16項目の組み合わせと、実際のスイングのお困りごとを照らして見ます。
TPI測定のご案内
「頭を残せ」を意識するほど振りにくくなるなら、首と胸椎のどちらに余裕が足りないかを一度測ってください。TPI測定(TPIフィジカルアセスメント)では、頚椎回旋を含む16項目を測り、何から手を付けるかをその場でお伝えします。
TPI Physical Assessment
首が回る余裕を、
16項目の中で確かめる90分
16項目を実測し、制限が出た項目とスイングの傾向の結びつきを、評価レポートとプログラムのPDFでお渡しします。単発で完結し、入会は不要です。
ウェア・タオル無料 | 完全個室 | 六本木駅徒歩4分
TPIの身体評価のうち15項目を、1項目ずつ解説しています。全体はTPIフィジカルアセスメントの16項目へ。
主な参考(タップで開く)
- Titleist Performance Institute. The Cervical Rotation Test(mytpi.com). https://www.mytpi.com/articles/screening/the-cervical-rotation-test
- Titleist Performance Institute. Loss of Posture/Reverse Spine Angle/Early Extension(mytpi.com). Loss of Posture・Reverse Spine Angle・Early Extension
- Gulgin HR, Schulte BC, Crawley AA. Correlation of Titleist Performance Institute (TPI) level 1 movement screens and golf swing faults. J Strength Cond Res. 2014;28(2):534-539. doi:10.1519/JSC.0b013e31829b2ac4

