こんなお困りごとはありませんか。前傾を深くしようとすると、かかとが浮いたり背中が丸まったりする。インパクトで体が伸び上がり、構えたときの前傾がほどけてしまう。ストレッチはしているのに、どこが硬いのかが分からない。このページでは、TPIの身体評価16項目の04番「オーバーヘッドディープスクワット」が何を見るテストか、制限があるとどう見えるか、スイングにどう出やすいか、当てはまるときに何から始めるかをお伝えします。
書いているのは、六本木のパーソナルジム Disport World です。代表の岡本隼人は、TPI認定(Fitness 2/Power 2)と日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)の資格を持ち、TPI Screen(TPIの身体評価)を提供しています。扱うのはスイングの技術ではなく、身体の側の原因です。16項目の一覧(TPIフィジカルアセスメント)→
オーバーヘッドディープスクワットテストは、何を見るテストか?
足首・膝・股関節の動き、胸椎(背中の上の部分)と肩の動き、そして体幹の安定を、ひとつの動作で一度に見るテストです。足を肩幅に開いてつま先を正面に向け、クラブを肩幅くらいの間隔で握って、肘を伸ばしたまま頭の上へ押し上げます。上体を起こし、かかととクラブの位置を保ったまま、できるだけ深くしゃがんでもらいます。
私たちは、FMS(ファンクショナル・ムーブメント・スクリーン)のディープスクワットと同じ見方で、いちばん深いところを真横から見ます。見るのは次の4つです。
・上体が、すねと平行か、それより起きている
・太ももが、水平より下まで下がっている
・膝が、足の上にそろっている
・クラブが、足の上にそろっている
あわせて、かかとが床に残るか、肘が曲がらないか、いちばん深いところで腰が丸まらないかを見て、膝とつま先の向きがそろっているか、体重が片側へ寄っていないかは正面からも見ます。どこかひとつでも動かないと形が崩れるため、私たちはこのテストを、制限の場所の当たりをつける入口として使います。16項目の全体と、TPIそのものについてはTPIとはで解説しています。
制限があると、どう見えるか?
同じ「深くしゃがめない」でも、崩れ方は人によって違います。測っていると、次のような出方があります。
・クラブが足の上から前へ倒れてくる、肘が曲がる
・かかとが床から浮く
・上体がすねより前へ倒れる、太ももが水平まで下がらない
・膝が足の上からずれて内側へ入る、しゃがむ途中でつま先が外へ開く
・体重が片側へ寄る、いちばん深いところでふらつく
クラブが前へ倒れる・肘が曲がる形は、胸椎を反らす動きや肩、広背筋(脇から背中・腰へ広がる筋肉)の側の制限を示すことが多い出方です。かかとが浮く形は、足首を曲げる動き(ふくらはぎ)の制限のサインとして読みます。足首は十分に動くのに深くしゃがめない場合は、股関節の動きや体幹の安定の不足を考えます。膝が内へ入る・体重が片側へ寄る形は、股関節まわり(お尻の筋肉)の制御の弱さや左右差の手がかりです。
ただし、足首や股関節が硬くて上体が前へ倒れた結果としても、クラブは前へ倒れます。見かけの形だけで原因を決めず、どこまでしゃがめれば十分かも含めて、測定の場でご本人の動きを見ながらお伝えしています。
スイングには、どう出やすいか?
このテストに制限があると、スイング中に前傾を保てない(ロスオブポスチャー)、ダウンスイングで骨盤がボール側へ寄って体が早く起き上がる(アーリーエクステンション)、といった動きにつながる可能性があります。どこに制限があるかで、出やすい局面が分かれます。
01制限の出方
クラブが前へ倒れる・肘が曲がる
- 背景として考えられること
- 胸椎を反らす動き・肩・広背筋の制限
- スイングで出やすい傾向(可能性)
- 腕を上げる局面で前傾を保ちにくく、バックスイングで体が起き上がる(ロスオブポスチャー)
02制限の出方
かかとが浮く
- 背景として考えられること
- 足首を曲げる動き(ふくらはぎ)の制限
- スイングで出やすい傾向(可能性)
- 体重移動がしにくく、スイング中のバランスが崩れやすい。切り返しのあとに下半身がボール側へ出て伸び上がる(アーリーエクステンション)
03制限の出方
足首は動くのに深くしゃがめない
- 背景として考えられること
- 股関節の動き・体幹の安定の不足
- スイングで出やすい傾向(可能性)
- ダウンスイングで骨盤の位置を保てず、体が早く起き上がる(アーリーエクステンション)
04制限の出方
膝が内へ入る・体重が片側へ寄る
- 背景として考えられること
- 股関節まわりの制御の弱さ、左右差
- スイングで出やすい傾向(可能性)
- 前傾の角度を保ちにくい(ロスオブポスチャー)
TPIの解説でも、かかとをつけたまま深くしゃがめない場合はダウンスイングで前傾を保ちにくく、クラブを頭の上に保てない場合はバックスイングで前傾から起き上がりやすい、という結びつきが紹介されています。また、36人のゴルファーでTPIの身体テスト12項目と14のスイング特性の関係を調べた研究(Gulginら、2014年)では、統計的に関係が示されたのは前屈・ブリッジ・ディープスクワット・片脚立ちに関わる一部の組み合わせでした。ディープスクワットか片脚立ちができなかったゴルファーでは、アーリーエクステンション・ロスオブポスチャー・スライドが2〜3倍出やすかった(オッズ比)と、要旨に書かれています。
一方で、この研究の対象は36人で、1つのテストと1つのスイング特性が一対一で結びつくことまでは確かめられていません。ですから私たちは、このテストの結果だけでスイングの癖を決めつけません。16項目の組み合わせと、実際にお困りのスイングの動きを照らして読みます。14のスイング特性それぞれの意味は14のスイング特性の解説に、前傾を保つ考え方はゴルフの前傾キープで解説しています。
当てはまるとき、何から始めるか?
いきなり深いスクワットを繰り返すことはしません。止まっている場所の動く範囲を出し、深さと頭の上の制御を作り、アドレスの前傾へつなげる順に進めます。
止まっている場所の動く範囲を出す(片膝立ち・ベンチ)
かかとが浮く方は足首から、クラブが前へ倒れる方は胸椎と広背筋から始めます。体重のかからない姿勢や、支えのある姿勢で行います。
深さと、頭の上の制御を作る(壁・クラブの支え)
腰を反らさずに腕を頭の上へ挙げる動きと、かかとをつけたまま上体を立ててしゃがむ動きを、支えを使って覚えます。
ゴルフの構えにつなげる(アドレス)
アドレスの前傾を保ったまま体を回し、切り返しで腰が前へ出ないことを確かめます。ここで崩れるなら、ひとつ前の段階に戻ります。
代表的なエクササイズ5種
私たちがオーバーヘッドディープスクワットに制限が出た方に使う種目のうち、代表的な5つです。どれも痛みのない範囲で、ゆっくり行います。回数と負荷は、測った結果と体力に合わせて決めています。
1. ハーフニーリング足関節ドリル
段階1・動く範囲を出す|かかとが浮く方
片膝立ちになり、前足のつま先を壁から拳ひとつ分ほど離して置きます。かかとを床につけたまま、膝を壁の方へゆっくり押し出し、足首の前が詰まらずに膝が前へ出る感覚をつかみます。膝はつま先の真上からやや外へ向け、かかとが浮く・土踏まずがつぶれる形にならないようにします。膝が前へ出にくい側を多めに行います。
2. ベンチ広背筋ストレッチ(ラットストレッチ)
段階1・動く範囲を出す|クラブが前へ倒れる・肘が曲がる方
膝立ちになり、両肘を肩幅でベンチに乗せ、手のひらを上に向けてクラブを持ちます。お尻をかかとの方へ引きながら頭と胸を沈め、肘を曲げてクラブを頭の後ろへ下ろします。脇の下から背中の外側にかけて伸びる位置で、呼吸を止めずに保ちます。腰を反らせて胸を落とすと、伸びが脇から抜けて腰に逃げます。きつい方は肘の幅を広げ、沈む深さを浅くして始めます。
3. ウォールスライド(壁スライド)
段階2・頭の上の制御を作る|クラブが前へ倒れる方
壁から足を半歩前に出して膝を軽く曲げ、背中とお尻を壁につけます。肘と手首の背面を壁につけたまま、両腕をWの形からYの形へ壁に沿って滑らせ、腰が壁から離れない範囲だけ挙げて戻します。腰を反らせて肋骨を突き出す、手首が壁から離れる、肩がすくむ形にならないようにします。きつい方は壁に向かって立ち、前腕を壁につけたまま上へ滑らせる形から始めます。
4. クラブ支持ディープスクワット
段階2・深さを作る|深くしゃがめない・かかとが浮く方
立てたクラブのヘッドを滑りにくい床に置き、両手で軽く握って支えにします。かかとを床につけたまま、しゃがめる深さまで下りて止まり、胸を正面に向けたまま呼吸します。クラブに体重を預けて上体が前へ倒れないように。クラブでは後ろへの転倒を防ぎにくいので、後ろへ倒れそうになる深さの手前で止めます。
5. 壁お尻タッチ・アドレス素振り
段階3・ゴルフの構えにつなげる|出方を問わず
壁に背を向け、お尻が軽く壁に触れる位置でアドレスを取ります。腕を胸の前で組んで体を回すか、クラブを持ってハーフスイングまでの素振りをします。スイングの間ずっとお尻のどこかが壁に触れ、前傾の角度が変わらないことを確かめます。切り返しで腰が壁から離れ、体が起き上がる形になったら、振り幅を小さくして戻ります。
足首の硬さとスイングの関係はゴルフで足首が硬いと何が起きるかに、前傾が起き上がる動きはアーリーエクステンションの解説に書いています。
測る現場で気をつけていること
このテストで私たちが気をつけているのは、「腕をもっと高く」と求めるのではなく、真横から見てクラブが足の上にそろっているかで見ることです。腕を高く挙げることだけを求めると、腰を反らせて腕の位置を補いやすくなり、本来の制限が見えにくくなります。また、クラブを握る幅を広げるほど制限が見えにくくなるため、握る幅は広げすぎないようにしています。
見落としやすいのは、かかとのわずかな浮きと肘の曲がりです。正面だけでは分かりにくいので、真横からの確認を手順に入れています。そして、形が崩れたときに「できない」で終わらせず、かかとを少し上げる、腕を胸の前で組むといった条件を変えて試し直し、上半身・足首・股関節や体幹のどの側かを切り分けるところまでを、ひと続きの測定として扱います。原因の場所が違えば、最初の種目も変わるからです。
よくある質問
オーバーヘッドディープスクワットテストは、自分でもできますか?
動きそのものは、クラブや棒を頭の上に挙げて、鏡の前で深くしゃがんでみると確かめられます。ただ、かかとのわずかな浮きや肘の曲がりは自分では気づきにくく、崩れたときに原因が上半身・足首・股関節や体幹のどこにあるかを分けるのも難しいテストです。腰・膝・足首・肩に痛みが出る場合は試さず、医療機関にご相談ください。
かかとが浮くのは、足首が硬いからですか?
足首を曲げる動き(ふくらはぎ)の制限が背景にあることは多いですが、それだけとは限りません。股関節の動きや体幹の安定が足りず、上体が前へ倒れた結果としてかかとが浮くこともあります。私たちは条件を変えて試し直し、足首の側か、それ以外の側かを分けてから取り組む種目を決めています。
ジムで重いスクワットができていれば、このテストも問題ありませんか?
そうとは限りません。重りを担ぐスクワットと、クラブを頭の上に保ったまま、かかとをつけて深くしゃがむ動きとでは、求められる動きが違います。脚の力が十分でも、胸椎や肩、足首の動きが足りずに形が崩れる方もいます。
TPI測定のご案内
深く構えると崩れる、インパクトで伸び上がる動きが続くなら、どこで動きが止まっているかを一度測ってください。TPI測定(TPIフィジカルアセスメント)では、オーバーヘッドディープスクワットを含む16項目を測り、何から手を付けるかをその場でお伝えします。
TPI Physical Assessment
どこで動きが止まっているかを、
16項目の中で確かめる90分
16項目を実測し、制限が出た項目とスイングの傾向の結びつきを、評価レポートとプログラムのPDFでお渡しします。単発で完結し、入会は不要です。
ウェア・タオル無料 | 完全個室 | 六本木駅徒歩4分
TPIの身体評価のうち15項目を、1項目ずつ解説しています。全体はTPIフィジカルアセスメントの16項目へ。
主な参考(タップで開く)
- Titleist Performance Institute. The Overhead Deep Squat Test(mytpi.com). https://www.mytpi.com/articles/screening/the-overhead-deep-squat-test
- Titleist Performance Institute. Loss of Posture/Early Extension(mytpi.com). Loss of Posture・Early Extension
- Cook G, Burton L, Hoogenboom BJ, Voight M. Functional movement screening: the use of fundamental movements as an assessment of function – part 1. Int J Sports Phys Ther. 2014;9(3):396-409. PMC4060319
- Gulgin HR, Schulte BC, Crawley AA. Correlation of Titleist Performance Institute (TPI) level 1 movement screens and golf swing faults. J Strength Cond Res. 2014;28(2):534-539. doi:10.1519/JSC.0b013e31829b2ac4

