こんなお困りごとはありませんか。レッスンで「コックが浅い」「タメがない」と言われる。手首の角度を保とうとしても、切り返しですぐにほどけてしまう。インパクトの前後で手首が詰まる感じがして、振り抜けない。このページでは、TPIの身体評価16項目の12番「リストヒンジ(橈屈・尺屈)」が何を見るテストか、制限があるとどう見えるか、スイングにどう出やすいか、当てはまるときに何から始めるかをお伝えします。
書いているのは、六本木のパーソナルジム Disport World です。代表の岡本隼人は、TPI認定(Fitness 2/Power 2)と日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)の資格を持ち、TPI Screen(TPIの身体評価)を提供しています。扱うのはスイングの技術ではなく、身体の側の原因です。16項目の一覧(TPIフィジカルアセスメント)→
リストヒンジテストは、何を見るテストか?
手首を、親指側へ持ち上げる(橈屈)・小指側へ倒す(尺屈)の2つの向きに、どこまで滑らかに動かせるかを見るテストです。立って両肘を体の横につけて直角に曲げ、軽く拳を握って親指を天井に向けます。手のひら同士を向かい合わせ、手の甲と前腕を一直線にした形のまま、拳を真上・真下へ動かしてもらいます。見るのは、それぞれの向きの動く幅と、動きの滑らかさと、肘や前腕で動きを補っていないかと、左右の差です。
ゴルフでは、親指側へ持ち上げる動きがトップのコックに、小指側へ倒す動きがインパクトの前後で手首の角度をほどくリリースに使われます。TPIもこの2つの動きを、クラブのリリースと、スイングで力を生み出すために欠かせないものとしています。16項目の全体と、TPIそのものについてはTPIとはで解説しています。
制限があると、どう見えるか?
手首が動かない分を、肘や前腕の動きで「動いたように」見せる形で出ることが多いテストです。測っていると、次のような出方があります。
・肘が体の横から浮く、肘の角度が変わる
・前腕が回って、手のひら同士の向きが変わる
・手首を甲側へ反らせながら上げる、手のひら側へ折りながら下げる(正面から見て拳が斜めに動く)
・親指側か小指側の、片方の向きだけ動きが小さい、ぎこちない
・左右で、動く幅や動き方が違う
肘が浮く、前腕が回る、拳が斜めに動くといった出方は、手首そのものが動いていない分を周りで補っているサインとして読みます。補い方を止めてもらい、手の甲を前腕と一直線に戻して真上・真下へ動かしたところで見直すと、手首自体の制限か、周りで補っているだけかを分けられます。
小指側へ倒す動きは、親指側へ持ち上げる動きよりも大きく動くのが普通です。そのため、上下の幅の差だけで「親指側が苦手」とは決めません。どこまで動けば十分かは、向きごとの動き方と左右差を合わせて見るため、測定の場でご本人の動きを見ながらお伝えしています。
スイングには、どう出やすいか?
手首の角度が切り返しの早い段階でほどける動き(キャスティング)について、TPIは身体的な主な原因として、ダウンスイングで下半身がうまく使えないことを挙げています。手首の制限やケガは、クラブの角度を作る妨げになりうるもの、という位置づけです。私たちは、下半身から切り返せないと、腕と手首が先にクラブを動かし始めて角度が早くほどけやすくなる、という順で読んでいます。
手首の動き方は、それを補って見る要因です。親指側へ持ち上げる動きが足りないと、トップで十分なコックを作りにくい可能性があります。どちらの向きに制限があるかで、出やすい場面が分かれます。
01手首の動き方
親指側へ持ち上げる(橈屈)が出にくい
- 関わる場面
- トップ〜切り返し
- スイングで出やすい傾向(可能性)
- コックが浅くなりやすい。下半身の使い方の問題と重なると、角度が早くほどける一因になりうる
02手首の動き方
小指側へ倒す(尺屈)が出にくい
- 関わる場面
- インパクト前後
- スイングで出やすい傾向(可能性)
- 手首の角度をほどくリリースに余裕がなく、振り抜きが詰まる一因になりうる
03手首の動き方
左右で差がある
- 関わる場面
- トップ・インパクト
- スイングで出やすい傾向(可能性)
- グリップの中で両手の役割が偏り、トップやインパクトでの手首の形が安定しにくい
どちらの手かでも意味が変わります。親指側へ持ち上げる動きの制限は、コックを作るリード手(目標側の手)で影響が出やすいと考えています。トレイル手(目標と反対側の手)は、トップで角度を支え、インパクトで押し込む側です。右打ちならリード手は左手、トレイル手は右手で、左打ちは逆になります。
また、36人のゴルファーでTPIの身体テスト12項目と14のスイング特性の関係を調べた研究(Gulginら、2014年)では、統計的に関係が確かめられたのは前屈・ブリッジ・ディープスクワット・片脚立ちに関わる一部の組み合わせで、要旨に挙がった組み合わせにリストヒンジは含まれていません。
ですから私たちは、手首のテストの結果だけでコックやリリースの癖を決めつけません。先に骨盤回旋や下半身回旋など下半身の動きを確かめ、16項目の組み合わせと、実際にお困りのスイングの動きを照らして読みます。タメが作れない動きはアーリーリリースの解説に、14のスイング特性それぞれの意味は14のスイング特性の解説に書いています。
当てはまるとき、何から始めるか?
いきなりクラブを振ってコックを作る練習はしません。手首と前腕の動く範囲を出し、肘と前腕を止めて手首だけを動かす練習をして、最後にスイングの形へつなげる、という順に進めます。
手首の動く範囲を出す(ストレッチ・四つ這い)
硬かった向きを中心に、手首と前腕を伸ばし、手のひらで体重を受けながら手首の動きを引き出します。
肘と前腕を止めて、手首だけを動かす(クラブ・タオル)
テストと同じ姿勢で、肘を体の横につけ、手のひら同士の向きを変えずに、手首だけを親指側・小指側へ動かします。
スイングの形につなげる(小さな振り幅)
小さな振り幅のスイングで、コックの形を左右同じように作れるかを確かめます。ここで崩れるなら、ひとつ前の段階に戻ります。
補い方を止めると手首が動かない方は「動く範囲」の課題として段階1から、止めても動くのにスイングでは使えていない方は「使い方」の課題として段階2から入ります。
代表的なエクササイズ5種
私たちがリストヒンジに制限が出た方に使う種目のうち、代表的な5つです。どれも痛みのない範囲で、ゆっくり行います。回数と負荷は、測った結果と体力に合わせて決めています。
1. リスト4方向ストレッチ
段階1・動く範囲を出す|出方を問わず
腕を前に伸ばし、反対の手で拳を、手のひら側・甲側・親指側・小指側の4つの向きへゆっくり押して、手首を伸ばします。テストで硬かった向きを中心に、伸びを感じる位置で呼吸を続けます。痛みが出るまで強く押す、肘や肩で逃げて手首が動いていない形にならないように。
2. 四つ這いリスト・ロッキング
段階1・動く範囲を出す|出方を問わず
四つ這いで手のひらを床につけ、指先を前・外・後ろの順に向けて、体重を前後左右にゆっくりかけます。手のひら全体を床につけたまま、手首の付け根に伸びを感じるのが目安です。手のひらの付け根が浮く、痛みが出るほど体重をかける形にならないように。きついときは、ベンチに手をついて体重を減らします。
3. クラブ・リストヒンジドリル
段階2・手首だけを動かす|出方を問わず
片手でクラブを短く持ち、テストと同じ、肘を直角に曲げて親指を上に向けた姿勢を取ります。親指側へは、クラブの重さに逆らって自分の力で端まで持ち上げて少し止め、小指側へは、クラブの重さに任せてゆっくり端まで下ろします。肘が浮く、前腕が回って手のひらの向きが変わる、反動で振る形にならないように。
4. タオル挟みヒンジ
段階2・手首だけを動かす|肘や前腕で補う方
脇にタオルを挟み、テストと同じ姿勢を取ります。タオルを落とさず、手のひら同士の向きを変えずに、拳を親指側・小指側へゆっくり繰り返し動かします。鏡で前腕が回っていないかを確かめます。動きを大きくしようとして前腕が回り、親指の向きが変わらないように。
5. 9時〜3時スイング(L字確認)
段階3・スイングの形につなげる|親指側が出にくい方・出方を問わず
天井や照明、周りの物に当たらない場所で、クラブを持ってアドレスします。目標側の腕が地面と平行になる位置で手首をコックし、腕とクラブでL字を作ります。そのままインパクトを通り、反対側の腕が地面と平行になる位置でも同じL字を作って、左右で同じ手首の折れになっているかを確かめます。手首を使わず腕だけで振る、L字の位置より前でコックがほどける形にならないように。
手首や肘に痛みがある方は、ゴルフで肘が痛い・手首が痛い原因もあわせてお読みください。
測る現場で気をつけていること
リストヒンジでよく見る補い方は、肘が体の横から浮くことと、前腕が回ることです。見かけの幅が大きくても、肘や前腕で作った幅では、このテストが見たい手首の動きは見えていません。そのため私たちは、手の甲を前腕と一直線にしたまま真上・真下へ動かすことを最初に伝え、補い方を止めた状態の動きで見ます。脇にタオルを挟んでもらうと、肘を止める意識を持ちやすくなります。
動きは、反動をつけずにゆっくり何回か繰り返してもらい、落ち着いた回の動きで見ます。最初の1〜2回は小さく出ることがあるからです。反動で振って届いた位置や、こちらが押して届いた位置は、その方が使える動きとしては数えません。
ご本人が「痛いほどではない」と言っても、動かすたびに同じ場所に重さや詰まり感が出るときは、そこで測るのをやめ、内容を記録します。手首から前腕が引っぱられるような伸び感だけなら、そのまま続けます。
よくある質問
リストヒンジテストは、自分でもできますか?
動きそのものは、鏡の前で両肘を体の横につけて直角に曲げ、親指を上に向けた拳を、真上・真下へ動かしてみると確かめられます。ただ、肘が浮く、前腕が回るといった補い方は自分では気づきにくく、親指側と小指側では動く幅がもともと違うため、どこまで動けば十分かも見え方が変わります。手首や肘に痛み・しびれが出る場合は試さず、医療機関にご相談ください。
コックが浅い、早くほどけるのは、手首が硬いせいですか?
そうとは限りません。TPIはキャスティング(手首の角度が早くほどける動き)の主な身体的原因として、ダウンスイングで下半身がうまく使えないことを挙げています。手首を親指側へ持ち上げる動きの不足は、それに重なる要因として見ます。私たちは手首だけでなく、下半身の動きも含めた16項目の組み合わせと、実際のスイングのお困りごとを照らして見ます。
左右の手首で動きが違うと、スイングに影響しますか?
影響することがあります。左右の手首の動きがそろわないと、グリップの中で両手の役割が偏り、トップやインパクトでの手首の形が安定しにくくなる傾向があります。制限の出た手と向きから始め、小さな振り幅のスイングで、左右同じ形を作れるかを確かめていきます。
TPI測定のご案内
コックを深くしようとしても浅いまま、タメを作ろうとしてもほどけてしまうなら、下半身の使い方とあわせて、手首がそもそも動くかどうかを一度測ってください。TPI測定(TPIフィジカルアセスメント)では、リストヒンジを含む16項目を測り、何から手を付けるかをその場でお伝えします。
TPI Physical Assessment
手首が折れるかどうかを、
16項目の中で確かめる90分
16項目を実測し、制限が出た項目とスイングの傾向の結びつきを、評価レポートとプログラムのPDFでお渡しします。単発で完結し、入会は不要です。
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TPIの身体評価のうち15項目を、1項目ずつ解説しています。全体はTPIフィジカルアセスメントの16項目へ。
主な参考(タップで開く)
- Titleist Performance Institute. Wrist Hinge Test (Radial-Ulnar Deviation)(mytpi.com). https://www.mytpi.com/articles/screening/wrist-hinge-test-radial-ulnar-deviation
- Titleist Performance Institute. Casting(mytpi.com). https://www.mytpi.com/improve-my-game/swing-characteristics/casting
- Gulgin HR, Schulte BC, Crawley AA. Correlation of Titleist Performance Institute (TPI) level 1 movement screens and golf swing faults. J Strength Cond Res. 2014;28(2):534-539. doi:10.1519/JSC.0b013e31829b2ac4

