こんなお困りごとはありませんか。フェースの向きが毎回ちがい、右へも左へも曲がる。手首でフェースを合わせにいく癖が抜けない。フォローで肘が引けると言われる。このページでは、TPIの身体評価16項目の13番「前腕回内外」が何を見るテストか、制限があるとどう見えるか、スイングにどう出やすいか、当てはまるときに何から始めるかをお伝えします。
書いているのは、六本木のパーソナルジム Disport World です。代表の岡本隼人は、TPI認定(Fitness 2/Power 2)と日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)の資格を持ち、TPI Screen(TPIの身体評価)を提供しています。扱うのはスイングの技術ではなく、身体の側の原因です。16項目の一覧(TPIフィジカルアセスメント)→
前腕回内外テストは、何を見るテストか?
肘から先(前腕)を、手のひらを下へ向ける方向(回内)と、上へ向ける方向(回外)に、どこまで回せるかを左右別に見るテストです。立った姿勢で肘を直角に曲げて脇につけ、親指を上にして両手のひらを向かい合わせにします。そこから前腕を外へ、続いて内へ、行けるところまで回してもらいます。
見るのは、回る範囲と、左右の差と、肘や肩・手首で回ったように見せていないかの3つです。クラブを上げてトップで支える動き、インパクトに向けてフェースを返す動きは、前腕の回旋に支えられています。前腕が回らないと、その分を手首や肘、肩で補うことになります。16項目の全体と、TPIそのものについてはTPIとはで解説しています。
制限があると、どう見えるか?
前腕そのものが回っていないのに、近くの関節を使って「回ったように」見せる形で出ることが多いテストです。測っていると、次のような出方があります。
・肘が脇から離れる、肩ごと回して範囲を稼ぐ
・手首を曲げたり反らしたりして、手のひらの向きだけを変える
・左右の前腕が平行のまま保てず、片方だけ先に止まる
・回内と回外の、片方の向きだけが出にくい。または片方の腕だけが出にくい
肘が浮くと、前腕は実際より大きく回って見えます。そのため私たちは、肘の位置を横から確かめながら見ます。片方の腕だけが回りにくい場合、よく使う側の張りや、手首・肘の古いけがが背景にあることもあります。どこまで回れば十分かは、測定の場でご本人の動きを見ながらお伝えしています。
スイングには、どう出やすいか?
前腕の回旋が足りないと、フェースの開け閉めを前腕で行いにくくなり、手首や肘で合わせにいく動きにつながる可能性があります。スイングでは、テイクバックとフォローで左右の腕が逆の向きに回るため、どちらの腕のどちらの向きが出にくいかで、出やすい傾向が変わります。
01局面
テイクバック
- 前腕に要る動き
- リード腕(右打ちの左腕)の回内で、フェースの向きを保つ
- 出にくいときの傾向(可能性)
- フェースが閉じたまま上がりやすく、手首の角度で向きを合わせる癖につながる
02局面
トップ
- 前腕に要る動き
- トレイル腕(右打ちの右腕)の回外で、手のひらを上に向けてクラブを支える
- 出にくいときの傾向(可能性)
- トップで肘が浮く・手首が寝るなどの崩れが出て、切り返しで早くほどける(キャスティング)一因になりうる
03局面
インパクト〜フォロー
- 前腕に要る動き
- トレイル腕の回内でフェースを返す
- 出にくいときの傾向(可能性)
- フェースが開いたまま残りやすい。手首を曲げて補うと、早くほどける動きにつながる
04局面
フォロー
- 前腕に要る動き
- リード腕の回外でリリースする
- 出にくいときの傾向(可能性)
- フェースを返せずに目標より外へ出る球(右打ちなら右)が増え、リード肘を引いて逃がす(チキンウィング)形で補いやすい
左打ちの方は、表の左右が逆になります。ほかにも、前腕の制限がオーバーザトップ(上から下ろす軌道)と結びつけて語られることがあります。リリースの動きが小さくなると、ヘッドスピードが上がりにくい一因になる可能性もあります。
ただし、36人のゴルファーでTPIの身体テスト12項目と14のスイング特性の関係を調べた研究(Gulginら、2014年)では、統計的に関係が確かめられたのは前屈・ブリッジ・ディープスクワット・片脚立ちに関わる一部の組み合わせで、要旨に挙がった組み合わせに前腕回内外は含まれていません。ですから私たちは、このテストの結果だけでスイングの癖を決めつけず、16項目の組み合わせと実際のお困りごとを照らして読みます。各スイング特性の意味は14のスイング特性の解説に、肘が引ける動きはチキンウィングの直し方に書いています。
当てはまるとき、何から始めるか?
いきなりクラブを持ってフェースを返す練習はしません。まず回る範囲を出し、次に肘を脇につけたまま自分の力で回して止められるようにし、最後にスイングの形の中へ戻します。
回る範囲を出す(ストレッチ)
前腕の内側・外側の筋肉を伸ばし、出にくい向きへ前腕ごと回す範囲を広げます。手首だけを動かして伸ばしたつもりにならないようにします。
肘を止めたまま回し、止める(バンド・クラブ)
肘を脇につけたまま、軽い抵抗やクラブの重さに負けずに回内・回外を行い、終わりの位置で止められるようにします。左右差がある方は、出にくい側から始めます。
スイングの形につなげる(素振り)
小さな振り幅で、前腕の回旋でフェースの向きを作る感覚を確かめます。手首でこねる、肘が浮くといった形が戻るなら、ひとつ前の段階に戻ります。
代表的なエクササイズ5種
私たちが前腕回内外に制限が出た方に使う種目のうち、代表的な5つです。どれも痛みのない範囲で、ゆっくり行います。回数と負荷は、測った結果と体力に合わせて決めています。
1. 前腕屈筋・伸筋ストレッチ
段階1・回る範囲を出す|回内・回外の両方
肘を伸ばして腕を前に出し、反対の手で指先を引きます。手のひら側は、手のひらを上に向けて手首を反らせます。甲側は、手のひらを下に向けて手首を曲げます。前腕は回せるところまで回した向きを保ち、肘が曲がらないようにします。
2. 前腕回旋ストレッチ
段階1・回る範囲を出す|出にくい向きを優先
肘を直角に曲げて脇につけ、反対の手で手首のすぐ上の前腕を持ち、手のひらを下へ・上へ向ける方向にゆっくり伸ばします。手首を曲げずに前腕ごと回し、前腕の中ほどにねじれの伸びを感じる位置で止めます。肘が脇から離れて肩ごと回らないように。
3. ミニバンド前腕回旋
段階2・肘を止めたまま回す|出にくい向き・出にくい腕
肘を直角にして脇につけ、ミニバンド(またはタオル)を握りこぶしの親指側から出して、端を反対の手で持ちます。回す向きと逆へ軽く引いて抵抗をつくり、回内・回外それぞれ終わりの位置までゆっくり回して戻します。肩を内や外へ回して、回ったように見せないように。
4. クラブ回旋ドリル
段階2・肘を止めたまま回す|クラブの重さを使う
クラブを立ててシャフトの中ほどを片手で持ち、肘を直角にして脇につけます。ヘッドの重さに引かれないように制御しながら、ゆっくり回内・回外を繰り返し、肩や手首で補わずに止められる位置で一瞬止めます。楽に止められるようになったら、握る位置をグリップ側へずらします。左右差がある方は片手ずつ行い、左右の止まる位置をそろえます。
5. トゥアップ素振り(9時→3時)
段階3・スイングの形につなげる|出方を問わず
アドレスから、シャフトが地面と平行になる位置までテイクバックし、前腕の回旋でトゥ(ヘッドの先)が真上を向く位置で止めます。フォロー側も同じ位置でトゥが上を向くかを確かめ、肘を体に近く保ったまま、ゆっくり往復します。手首でこねてトゥが寝る、肘が浮く形にならないように。周りに人や物が無い場所で行います。
早くほどける動きはアーリーリリースの直し方に、上から下ろす軌道はオーバーザトップの直し方に書いています。
測る現場で気をつけていること
前腕回内外で私たちが気をつけているのは、肘の位置です。肘が脇から離れると、前腕は実際より大きく回って見えます。肘で軽くタオルを挟むつもりで上腕を止めてもらい、横から肘が浮いていないかを確かめてから見ます。手首を曲げたり反らしたりして手のひらの向きだけを変えていないかも、あわせて確かめます。
左右の差は、手のひらの向きだけでは見分けにくいことがあります。そのため、ティーやペンを握ってもらい、その向きで左右を比べます。回内と回外は左右の腕それぞれで見て、どの腕のどの向きが出にくいかを分けて記録します。
手首・前腕・肘を治療中の側があるときは、その側は試しません。多くのエクササイズが反対の手や両手を使うため、無理に進めずにご相談しながら決めています。
よくある質問
前腕回内外テストは、自分でもできますか?
動きそのものは、立って肘を直角に曲げて脇につけ、親指を上にした位置から手のひらを上・下へ回してみると確かめられます。ただ、肘が脇から離れたり手首で補ったりすると実際より回って見え、自分では気づきにくいテストです。手首・前腕・肘に痛みやしびれがある場合は試さず、医療機関にご相談ください。
前腕が回らないと、チキンウィングになりますか?
なるとは限りません。フォローでリード腕を外へ回す動きが出にくいと、肘を引いて逃がす形につながる可能性はありますが、チキンウィングには肩の外旋や下半身の動きなど、ほかの身体の条件も関わります。私たちは16項目の組み合わせと、実際のスイングのお困りごとを照らして見ます。
リストヒンジのテストとは、何が違いますか?
リストヒンジ(12番)は、手首を親指側・小指側へ曲げる動き(コック)を見ます。前腕回内外(13番)は、肘から先を内と外へ回す動きを見ます。どちらもフェースの扱いに関わりますが、動く場所が違うため、別の項目として測ります。
TPI測定のご案内
フェースを手先で合わせにいく癖が抜けないなら、前腕が回るかどうかを一度測ってください。TPI測定(TPIフィジカルアセスメント)では、前腕回内外を含む16項目を測り、何から手を付けるかをその場でお伝えします。
TPI Physical Assessment
前腕が回るかどうかを、
16項目の中で確かめる90分
16項目を実測し、制限が出た項目とスイングの傾向の結びつきを、評価レポートとプログラムのPDFでお渡しします。単発で完結し、入会は不要です。
ウェア・タオル無料 | 完全個室 | 六本木駅徒歩4分
TPIの身体評価のうち15項目を、1項目ずつ解説しています。全体はTPIフィジカルアセスメントの16項目へ。
主な参考(タップで開く)
- Titleist Performance Institute. The Forearm Rotation (Pronation/Supination) Test(mytpi.com). https://www.mytpi.com/articles/screening/the-forearm-rotation-pronation-supination-test
- Titleist Performance Institute. Chicken Winging/Casting(mytpi.com). Chicken Winging・Casting
- Gulgin HR, Schulte BC, Crawley AA. Correlation of Titleist Performance Institute (TPI) level 1 movement screens and golf swing faults. J Strength Cond Res. 2014;28(2):534-539. doi:10.1519/JSC.0b013e31829b2ac4

